今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO 56GS 5646-7010の巻

2017年12月27日 21時43分43秒 | ブログ

今日(27日)は車で外回りに行って来ましたが、やはり今年も押し詰まって道路も混んでいましたね。みなさんは御用納めはいつでしょうか? 私の方は、予定している修理品が揃って到着が遅れていて、では今年最後になる時計をやっています。この56GSの製造は1971年6月で、ワンピースケースの多い56系の中に合ってスクリューパック式の非常に薄型ケースとなっています。

ケースの研磨と風防ガラスの交換のご依頼ですのでベゼルを分離します。

 

 

7000番ケースに比べて非常に薄く作られたケースで、しかも、ラフに使用されたと見えてキズも多いです。じつはケースの研磨を仕事としてはお受けしたくないのが本音です。専用の装置も無く、手磨きで研磨をしても工数ばかり掛かって仕上がりは良くありませんので工賃も頂けませんからね。特にこの薄型の場合は削りしろは殆どありませんね。

手磨きで、荒目の水ペーパーから細目に移行して行くと、決まってラグの部分にこのような荒れた部分が現れます。メカニズムは分かりませんが、ステンレスが腐食しているのか? オリジナルはきれいな平面と見えても、僅かに中央部分が低くなっているので、ペーパー目が残るのかも知れません。しかし、当板を使用して平滑面に削っているはずなんですけどね。この現象が出ると、いくら削ってもきれいな面にならないので厄介なのです。かと言って、元のデザインが変わってしまうような荒研磨はしたくありませんね。

また、ラグ部分のヘアラインの再生も非常に困難です。オリジナルはケースのベゼル受けリングが圧入される前に研磨されているもので、リングが入っている状態では研磨が出来ないのです。また、フラットに見える研磨面も実際には弓状にラウンドしているのも研磨を難しくしています。

これ以上は無理だなぁ。オリジナルにはないクリスタルカットのガラスはメロンパンみたい。

 

 大掃除も年賀状も書いてないので急がないと。。機械は未分解と思います。56系なので、さっさと組みます。

 

56系はカレンダーの早送り機構の揺動レバーが不良になる持病がありますが、オーナーさんが調達してくれました。3つも。故障の少ない歯車が金属性の初期型タイプです。

 

ここに付くんですよ。竜頭の回転方向によって左右に歯車が動いて日車と曜車を動かします。

 

56系は二番車は摩擦カナになっています。

 

 

自動巻きの動力を伝える切換伝エ車のツメ車への注油は難しい。

 

 

アンクルがへそ曲がりの形になっていますね。

 

 

文字盤に若干の汚れが出ているのは惜しい。針を磨いて取り付けます。

 

 

ケーシングをしてローターを取り付けます。

 

 

GSがより豪華になりましたよ。

 

 

と思ったところにレターパックが届きましたよ。きったねいSSベルトが入っていました。バックルのピンが紛失していて、何やらペンチで形を曲げたようです。う~めんどっちい・・

 

こういう加工?をした方の意味が分かりません。バックルが緩くて外れてしまったのでしょうか? なら調整する箇所が違います。

 

サイドもメロメロ。

 

 

忙しいので適当にしておきますよ。

 

 

世間では仕事納めなので、こちらも早く終わらせたいのですが問題が発生しました。なんと秒針は動くのに長短針が動かない。原因は56系の場合二番車が摩擦カナと書きましたが、その摩擦が無くなって空回りしているためです。ご依頼時に不具合をお聞きしていなかったのでチェックを漏らして洗浄注油だけしたのが失敗でした。と言うことで、再度分解をして二番車は修正不可のため、別の部品と交換しています。

仮に筒カナに長針を取り付けて動きを確認します。12時に合わせた針が動いています。

 

で、仕上げておいたSSベルトを取り付けました。これから歩度の調整をして行きます。今年は時計で終わりそうだなぁ。。

では、今年一年お付き合いを頂きましてありがとうございました。2018年もよろしくお願いします。みなさん良いお年をお迎えください。

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OMEGA シーマスター120本物?の巻

2017年12月23日 20時33分52秒 | ブログ

オメガ・シーマスター120(166-027)は1968年ごろのモデルだそうですが、何となく怪しい雰囲気の個体ですけど、私は所有していませんので何とも言えませんが・・ぱっと見、文字盤の艶消し劣化と風防の透明度が気になりました。ベゼルはステンレスバネによって固定されているだけで、ダンパー感がなく、クルクルと回ってしまいます。これでオリジナルなのでしょうか?

巻芯の仕上げが荒くオメガ純正品には見えませんが・・

 

 

針はタッチアップで塗られています。蛍光は、時代相応の劣化はありそうです。

 

機械はCal.562(24石)でカレンダー機構はシンプルな設計ですが、早送りは9時~0時の往復で可能。ハック機能はありません。

 

受けを外すと・・10時の歯車で送っています。

 

 

すべて分解をして行きます。

 

 

550系はクロノメーター級もあって精度には定評があるようです。しかし、天真の部分が削られています。天輪が当たるのでしょうか?

 

機械はパチモノではなく、オリジナルだと思うのですけどね。すべて分解洗浄をしてから組み立てて行きます。

 

二番車のホゾが摩耗気味で筒車が偏心してガタを感じます。

 

 

天真の軸受け部に注油をします。

 

 

カレンダー部を組み立てます。

 

 

この文字盤の仕上げも雑に見えますがインデックスの蛍光塗料は時代はあります。

 

 

真鍮の機械抑えの加工が非常に雑で、凹部はヤスリで手仕上げのようです。オメガで~?

 

機械留めをセットすると凹部が合いませんよ。自動巻き機構をセットして完成。

 

裏蓋内側には、このような刻印があります。

 

 

ベゼルはオリジナルの仕様は知りませんが、ダンパーグリスを塗布してダンパーを利かせておきました。

 

 同じオーナーさんから追加で届きました。オメガのクロノストップですかね。セイコー・スピードタイマーなどと違って、プッシュボタンは1つなので1プッシュ目でスタートさせて2プッシュでボタンを押し込んだ状態でストップ。ボタンを放すと帰零するというシステム。なんでも竜頭を引いたら巻芯ごと抜けてしまったとのことです。しかし、ボタンを押し込んでも針が回ってしまうのでオシドリや筒車などが動いていないようです。

 一度分解洗浄をして組み直して注油をして行きます。

 

 

非常にきれいな機械ですね。ボタンを押すとリンケージを経由してピンセット先の歯車が噛み合います。

 

天真の摩耗も少なく、中々安定した動きです。これから追い込んでいきます。

 

あまりにきれいな機械なので拡大画像を載せておきます。

 

 

SSベルトは傷が多いのでヘアライン再研磨洗浄をしてあります。

 

 

ボタンを押して秒針が走り出したところ。リンケージが複雑のため、ボタンは重い感じです。

 

これでオメガ兄弟は完成です。

 

 

クリスマスケーキが来ちゃいましたので。メリークリスマス・・

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きれいなPEN-EEの巻

2017年12月22日 17時39分51秒 | ブログ

今日はホームセンターへ買い物に出掛けましたが、大掃除もあって買い物をする方の人出が多かったです。明日23日は天皇誕生日で祝日ですから、世の中このままクリスマスに入って行くのでしょうね。私のところはご依頼があれば正月休みもありませんけど。で、当初はメンテナンスなのでUPする予定ではありませんでしたが、問題が見つかってオーバーホールとなりました。PEN-EE #7902XXと1966年11月製の個体です。EEはあまり使用されなかった良いコンディションの個体がありますね。この個体もそんな個体で、オーナーさんが入手前に整備を受けているような印象がありましたので安心をしていたのでしたが・・

あまり画像撮ってません。モルトは両面テープ付のもので貼り替えられていますが、ここは接着でないともたないのです。古いモルトカスも付いたままですので完全に除去します。

 

洗浄をして汚れを落としています。

 

 

後期の個体なのでセレンが生きていて、メーター指針も正常です。

 

 

問題はここです。右の後玉はカニ目に傷かありましたので過去に開けていることは確実ですが、レンズが曇っています。これ多いんですよね。清掃を試みたけれど、クリアーにならないので見なかったことにしようということでしょう。EEは構造上、後玉の状態が確認出来ませんので。

全体に曇っているのですが見にくいですね。

 

 

これでどうよ。左が付いていたレンズ。今回は右のうちのストックと交換します。

 

シャッター羽根に少し錆が出ていますが、他は良好です。洗浄注油をしてユニット完成。

 

組み込んだところ。露出計の感度も正確です。

 

 

ハリオサエが2段になっていますね。後期型のEEN プログラム式EE 1/30、1/250の2速シャッターです。

 

EENの途中からスプールがEL方式になったことが分かります。

 

 

交換をした後玉。

 

 

トップカバーに僅かな歪みがありますので修正をしておきます。

 

 

あとは、38mm、25mmの清掃をしました。

 

 

白内障が治ったので新年早々は世の中明るい写真が撮れるでしょうね。

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SEIKO 新10A寄せ集めで作るの巻

2017年12月19日 10時02分55秒 | ブログ

時間を掛けて部品を揃えていたセイコー新10Aです。カメラの作業が続いて中々手を付けられませんでしたが、ここでカメラの作業が一段落しましたので仕上げたいと思います。機械の新10Aは程度の良い素材が少なく、丸穴車のネジ部破損という持病もあるのですが、疲労の少ない機械がありましたので、もったいないですから形にしておきたいと思いました。ケース、文字盤、風防、針、竜頭(巻芯)はすべてバラバラの個体から程度の良いものを選びました。

新10Aは終戦直後の1946年から製造された機械で7石と10石がありますが、残念ながらこの個体は7石でした。しかし、洗浄をして点検してみるとホゾ穴の摩耗もなく分解回数も少ない良い個体でした。

 

バナナ型と言われる所以の古典的な受けが特徴ですが、終戦直後の物資の無い時代としては美しい仕上げの機械です。

 

中古の文字盤ですが、黄ばみやキズの少ないものを選びました。針の嵌合は厳密には合っていないですね。秒針が問題。中の長めの針を使う予定でしたが、嵌合が合わず、短めの針を着けています。

 

ケースはメッキ仕様のものは腐食が激しく使用は難しいので、ステンレス製を探して来ましたが、これとて文字盤のサイズが多種ですので、適合するものを見つけることは至難です。

 

現在の感覚からするとボーイズサイズになりますね。例によって風防は角の部分の角度を修正してあります。ベルトのサイズは16mmですので、選択肢は少ないのですが茶系は似合いますね。

 

戦中の二重ケースと並べてみます。戦後の平和な空気を感じますね。この後の1950年には秒針が真ん中にある中三針のスーパーが発売されて、スモールセコンドは消えていきます。

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OLYMPUS 35RCを何とかするの巻

2017年12月16日 21時08分52秒 | ブログ

変なところから始まったぞ。カメラ店様経由のご依頼なので予算の関係で限定修理です。オリンパス35RCは距離計連動、シャッタースピード優先EE、マニュアル撮影も可能でコンパクトとマニアさんに人気のカメラですが、コンパクト設計のために露出メーターをカメラの底部に押し込んであって、隣りが電池室になっています。そこで電池の液漏れを起こすとメーターにまで被害が及んでしまいます。現状は不動の状態です。電池室の裏側が激しく腐食していて、リード線もやられています。

この機種はリード線が電池接点のネジに直接半田付けをされているので被害を受けやすいのです。リード線の長さを伸ばしてターミナルを半田付けして分解が可能のようにしました。

 

メーターはうちのストックから見つけて来ました。

 

 

巻き戻しボタンの復帰不良とのことでした。ベタベタに塗られたモリブデングリスが乾いて機能していませんので、すべて清掃をして新しいグリスを塗布して組み立てます。

 

こんなにコンパクトなのに距離計連動ですからね。セルフタイマーユニットがトップにレイアウトされています。これでは露出メーターの収まるスペースは無いですね。

 

トップカバーに腐食有り。採光窓が脱落しています。

 

 

再接着の前に洗浄をしましたら文字の色が抜けましたね。入れ直します。

 

 

厄介なのが裏蓋の劣化をしたモルトの除去。ゴム糊がきつくて簡単には取れません。

 

ベースの塗装を痛めないように慎重に除去しました。1時間以上掛かりましたよ。

 

 

圧板にラインが入っているのを見ますね。これは本体側のフィルムレールが腐食しているのですね。

 

きれいに清掃をして取り付けました。モルトもオリジナルに忠実に貼ってあります。

 

その他レンズ、ファインダーと外観の清掃をして完成です。コンパクトにボディーにEEとマニュアルが出来る仕様は美味しいところを捉えていますね。現在でも人気があるのも理解できます。私も数台はストックしているはずなんですが、さて、どこに入ってしまったやら・・

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