今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ちょっと怪しい里帰りPEN-FT(B)

2012年09月30日 14時25分16秒 | インポート

Dscf027154 その前に、私と同じ歳の1953年製セイコースーパーのジャンクを治していましたよ。スーパーは1950年からの機械でこの個体は初期の10石耐震装置なしです。この年辺たりでは、オートデーターやセルフデーター付きが発売されていますが、稀少のため現在では非常に高価ですので手が出ません。長く酷使されたと見えて、ゼンマイの巻上げ関係の痛みがひどい状態でした。今回は丸穴車とキチ車の歯の磨耗がひどいので交換をしてあります。テンプは意外に良好で、安定して作動を始めました。

Dscf027469 ケースは初期の小型のもので好ましい頃です。文字盤は当時の定番デザイン。ジャンクにしては一見きれいに見えますが、過去の分解時のSEIKO SUPERが拭かれて消え掛かっているのは残念です。秒針はブルーの焼き針風ですが、色は表面だけで着色のようです。リューズのローレットは摩滅して真鍮が露出しています。

Dscf027570 10型ギリギリのケースなので、非常に小型でセイコー純正ですが、汗による腐食が激しく、裏側はニッケルが全て剥離しています。風防には細かなクラックが入っていますが当時の雰囲気を壊さないため、研磨のみで再使用としています。ラグ幅が実測14.5mmのため、男性用で適合するベルト探しが難しいですが、精度はピタリ正確なのが嬉しいところです。

Dscf026725 で、本題です。里帰りのPEN-FT #3332XXですが、セルフレバーがクローム用ですね。過去に分解されているようです。

Dscf026854 え~と、リード線がやり直され、ラッチスプリングが接着されて、ターミナルのナットが傷だらけ。光学系は分解整備をされたようです。気になるのは、セルフタイマーユニットが初期型になっていますね。後期型とは2つのネジ穴の間隔が異なるため、そのままでは付かないはずですが・・・

Dscf027076 巻き戻し軸受けが完全に降下しない。原因は、カギイタ上部の曲げが直角でないため。

Dscf026946 セルフタイマーを見ますよ。観察すると、ネジ穴が合わないので、片側は白い両面テープと瞬間接着剤で留めていますね。なぜ初期型に交換したのかな? 無理に取付けるよりは、オリジナルを治した(不調だったのでしょう)方が良かったのに・・・

Dscf027222 シャッターのテンションシャフトとハンマーを分離しようとすると・・・特殊ネジがヌルっと抵抗感が無くなって折れました。観察すると、腐食が進行していて錆によりネジが太って抜けなくなっていたようです。これは、部品を交換するしか方法がありませんね。

Dscf027316 後期生産機ですが、シャッターの巻上げギヤ関係は、意外に磨耗が進んでいます。ピンセット先の軸受が偏磨耗をきたしています。ギヤの内径も拡大しています。

Dscf027470 セルフタイマーですが、オーナーさんのご希望により、適合する後期型を取りつけてあります。後期型は本体ダイカストの↑部分が四角形となって、セルフタイマーの位置決め保持が容易になっています。

Dscf027317 トップカバーが気に入りません。ターミナルの分離に失敗して、プレートを傷だらけにしたのね。指標の赤もオリジナルではありません。PEN-FTの色入れもやり直されていますが、またやり直します。

Dscf027471 指標の赤丸は微妙に違うでしょ。PEN-FTも直してあります。

Dscf027945 FT本体は完成していますが、セルフタイマーのレバーとボタンがクローム用は変ですね。オークション物なので、前の所有者が交換したものと思いますが何の意図があるのでしょう? ご依頼はありませんがブラック仕様としておきます。塗装で仕上げますので、レバーのメッキは剥離をして、ボタンはうちのオリジナルを使います。

Dscf028042 で、このように仕上げてあります。ついでに、PEN-Wのオリジナルフードのご依頼が二名の方から頂いていたと思いましたので、製作しておきました。ご依頼の方はご連絡をお願いします。

Dscf027571 付属の38mmですがね。こちらも怪しい雰囲気のレンズですね。黒のプレートを留めるビスがオリジナルではありませんよ。ナベと皿を使ってあります。

Dscf027669 前玉側を分解します。シボリクリック用のスチールボールが変ですね。半田を丸めたような、仁丹のような・・。

Dscf027799 グリスはホワイトグリスに交換されていますね。その前に、シボリ羽根に回った油を洗浄しておかなくてはなりません。

Dscf027801 清掃したレンズを組み込んで、スチールボールを新品と交換して組みます。

Dscf027946 やっと、FT(B)の眺めになりましたね。過去に分解をした方たちも自分流に良いと考える修理をされていると思いますが、私は、カメラを製造していた経験から、工場で組んだオリジナルのセッティングが一番良いと信じています。色々な角度から検討され尽くして、規格や工程が決まるものだからです。オリジナルの組立規格を研究することが、このカメラを深く知ることになると思っています。


SEIKO Sportsmatic 5 グレーのオーバーホール

2012年09月27日 18時43分02秒 | インポート

Dscf027668 私所有のセイコースポーツマチック5をO/Hします。キャリバー№は6619Aの21石で、製造は裏蓋刻印から1964-8月となっています。この頃の防水モデルは裏蓋にイルカのマークがあって、外周にモデル名などが書いてあるのですが、凹の刻印ではなくて凸の盛り上がり文字でしたので、使用による摩滅で殆ど判読が出来ないですね。この裏蓋の劣化度を見れば、どの程度使用されていた個体がが想像できます。当時の普及モデルですね。

Dscf027055 画像を取り忘れまして、すでに組立が進んでいます。文字盤下のカレンダーの送り機構を組んでいます。極小のバネを2つ使いますので、紛失に気をつけます。

Dscf027187 日車をセットして一安心。もうバネが飛んでいく危険性はありません。曜車は乗せるだけでCリングは使いません。

Dscf027276 文字盤の色は、この頃に採用が多い濃いグレーですが、パッと見は黒に見えます。針を磨いて12時に日付けが変わるタイミングで取り付けます。リューズの位置は4時となって、腕に当らなくなり都合が良いです。リューズをプッシュすると日付けが変わるようになりました。すり傷は多いですが、クラックはない風防を研磨してケースに取り付けます。

Dscf027315裏蓋側。自動巻き機構はマジックレバー式。磨耗は無いようです。ベアリングに注油をして回転錘を取り付けます。

Dscf027468 撮影用の19mmベルトをセットして完成写真。ケースは研磨をしてあります。蛍光(すでに発光はしません)アラビア数字の黒系文字盤で、ミリタリー調の雰囲気があります。大きさ重さもちょうど存在感のある好ましいサイズです。作動も安定して精度も良好です。ご希望の方があればお譲りします。


帰って来たPEN-FTオリーブ

2012年09月22日 19時39分47秒 | インポート

Dscf026257 到着したダンボール箱を開けると、プーンと抹香臭い香りがしましたよ。昔にオリーブ色にリペイントをしたPEN-FTで、オーナーさんはお寺さんでしたね。「巻上げが出来ない」とのことでしたが、シャッターはチャージ状態で止まっています。観察すると、オーバーホールはしなかったんですね。この頃はリペイントのみの受付でした。18万代ですから、オーバーホール無しではきびしい状態ですね。

Dscf026316 リペイント後はあっちこっちに連れて行ったとのことで、塗装の剥離もあります。ご覧のように、黒のビニールテープもそのままですから、ハーフミラーも交換していませんね。アイピース枠は樹脂の劣化でバラバラに割れています。シボ革はバルナックライカ用を貼っていましたね。

Dscf026446 ちょっとサーキットへ行っておりまして、作業をお休みしていました。少し疲れ気味のため、簡単にUPさせてください。シャッターユニットをオーバーホールして行きます。すべて洗浄をして点検して行きましたが、未オーバーホールの割には、偏磨耗もなく、特に問題はありませんでした。テンション軸にテンションスプリングがセットされていますね。前期の生産機ですので、真鍮のテンションホルダーにスプリングを接続する構造です。

Dscf026511 しかし、電池室には液漏れがあって、リード線の腐食が進んでいましたので、新しいリード線を半田付けしておきます。スプロケット軸は組み込まれています。














Dscf026668 完成したシャッターユニットを組み込んで行きます。
















Dscf026736 ハーフミラーとアイピース枠は交換してあります。裏蓋のバルナックシボ革はPENには似合いますね。















Dscf026812 で、巻上げも軽くなって、シャッターの調子もよろしいと思います。中々、良い面構えになっていますね。益々活躍してくれるものと思います。


ジャンク上がりなのかなぁ? PEN-S 2.8

2012年09月20日 21時00分00秒 | インポート

Dscf025043 かなり使い込まれたと思われるPEN-S2.8 #4172XXで1964-10月、そう東京オリンピックの開催された月に生産された個体。シャッターの張付きで停止するとのこと。フィルムレールの腐食が目立ちますね。画像では写っていませんが、ファインダー窓の左部分に値札シールらしき糊残りがあります。ジャンクでワゴンに入っていた個体でしょうかね?

Dscf025176 いえ、どんな状態からでも治しますよ。Kenkoのフィルターが付いていますが、シボリリングがクルクル回ってしまいます。フィルターを強く締めたのか、固着を緩めたのか?

Dscf025273 ファインダー角のリンクル塗装の剥離が大きい。巻き戻しダイヤルのノブバネ板を止めるネジがノンオリジナルですね。

Dscf025324 内部のホコリの堆積は例によって写らない。コレクションで大事にされた個体ではなく、シャッターは多く切られている個体です。製造年月は裏に捺印。しかし、一度もオーバーホールを受けていません。

Dscf025547 ただ、レンズ部やファインダーは分解を受けていて、すごい接着ですね。駒数カガラスも脱落したものを貼り直してありますが、トップカバーに密着をしていません。

Dscf025688 これすごいよね。光枠がめくれ上がっていますね。光枠の製法は、この個体のように、フィルムを接着したものと、蒸着メッキをしたものがあります。フィルム接着の場合は、不用意にアルコールなどで拭き上げをすると、剥れてしまいます。で、これもそういう事でしょ。

Dscf025773 分かりやすい画像。今回は再接着で対応します。

Dscf025830 シャッター内の汚れも大きいですね。すべて分解して研磨する必要があります。

Dscf025976 無給油でシャッターを多く切った個体は、部品の磨耗が進みます。チャージをすると↑と←が接触するのですが、衝撃のある接触を重ねる部分が磨耗変形して行きます。すると、チャージでゴリゴリっという抵抗感が出て、スムーズに巻上げが出来なくなります。

Dscf026025 メーカーサービスでしたら、部品の交換をするところでしょうけど、そんなものは無い。よって修理屋は部品を修正するのです。今回は、精密砥石で研磨後、鏡面状に磨いておきました。スムーズに作動しています。駒数ガラスは再接着。ファインダーは清掃の上、レンズとミラーの接着をしてあります。修理した光枠はトップカバーに組み込んだ後で倒れのないように接着をします。その他、ターミナルの半田付けが剥離していましたので、再半田をしてあります。Dscf026174

レンズ関係も油と手垢でドロドロの状態でした。すべて洗浄をしてあります。PEN-Sのレンズと絞りはこのようになっています。絞りのクリック機構は内部に組み込まれていますが、PEN-Wは外見は同じように見えますが、絞りクリックは左手で保持しているプレートに絞り値の対応するスリッドが切られていて、それを板バネで押える機構です。分かりにくい説明ですね。要するにPEN-SとPEN-Wとでは設計が異なると言うこと。

Dscf026251 裏蓋のモルト交換と開閉鍵のグリスを交換して完成です。オーナーさんは「安心して撮影したい」とのことでしたが、非力なシャッターが50年近くもオーバーホール無しで動いていた方が不思議なくらい。外観のコンディションは良いとは言えませんけど、巻上げもスムーズで、シャッターも好調ですから安心して撮影をして頂けると思いますね。


珍しいローライ35Sブラック

2012年09月19日 22時37分07秒 | インポート

Dscf024984 うちには珍しいゾナー付のローライ35Sブラックのシンガポール製です。小さなボディーにずっしり重いメカが詰まっている感のあるカメラで、ペンファンの方もお好きではないでしょうかね。シャッターの低速不調とファインダーの曇り(カビ)の改善をします。操作するには、色々と流儀のあるカメラですが、分解も似たようなもので、トップカバーを分離するためには、どうしても巻き戻しレバー軸を外さなくてはなりません。ご覧のような軸部がスプリングピンによって保持されています。これを取り出します。

Dscf0250641外観からのイメージとは違って、内部のメカは、ライカのような作りではありません。スローガバナーなどは、非常にラフな作りで、ペンの方が精密感があるほどです。ガンギ車とアンクルとの接触面が荒れています。その他を修正してスムーズに作動するようにしておきます。

Dscf025154 ファインダーです。本体はプラスチック製で、ドイツ製のプリズム仕様ではないため、空気に触れる面が曇りやカビが生えています。対物レンズの接着を分離して各面を清掃しておきます。

Dscf025284 ファインダーブロックを本体に組み込んだところ。対物レンズの接着はみ出し部分は硬化してから修正します。

Dscf025376 ファインダーブロックには、埃の侵入防止で元通りにテープを貼っています。次に巻上げレバー部の地板を取り付けます。

Dscf025425 この長いプレートは、レンズのロック解除ボタン用です。狭くて奥深い部分のピンと接合するため、この辺かな?と見当をつけて差し込みます。レンズを沈胴させるためには、このボタンを押すことのほかに、巻上げがされていることが必要です。

Dscf025556 アルミ製のカバーですから、不用意にへこませている個体が多いですが、この個体は非常にきれいですね。ファインダーもクリアーになって、低速も快調に切れています。