その前に、私と同じ歳の1953年製セイコースーパーのジャンクを治していましたよ。スーパーは1950年からの機械でこの個体は初期の10石耐震装置なしです。この年辺たりでは、オートデーターやセルフデーター付きが発売されていますが、稀少のため現在では非常に高価ですので手が出ません。長く酷使されたと見えて、ゼンマイの巻上げ関係の痛みがひどい状態でした。今回は丸穴車とキチ車の歯の磨耗がひどいので交換をしてあります。テンプは意外に良好で、安定して作動を始めました。
ケースは初期の小型のもので好ましい頃です。文字盤は当時の定番デザイン。ジャンクにしては一見きれいに見えますが、過去の分解時のSEIKO SUPERが拭かれて消え掛かっているのは残念です。秒針はブルーの焼き針風ですが、色は表面だけで着色のようです。リューズのローレットは摩滅して真鍮が露出しています。
10型ギリギリのケースなので、非常に小型でセイコー純正ですが、汗による腐食が激しく、裏側はニッケルが全て剥離しています。風防には細かなクラックが入っていますが当時の雰囲気を壊さないため、研磨のみで再使用としています。ラグ幅が実測14.5mmのため、男性用で適合するベルト探しが難しいですが、精度はピタリ正確なのが嬉しいところです。
で、本題です。里帰りのPEN-FT #3332XXですが、セルフレバーがクローム用ですね。過去に分解されているようです。
え~と、リード線がやり直され、ラッチスプリングが接着されて、ターミナルのナットが傷だらけ。光学系は分解整備をされたようです。気になるのは、セルフタイマーユニットが初期型になっていますね。後期型とは2つのネジ穴の間隔が異なるため、そのままでは付かないはずですが・・・
巻き戻し軸受けが完全に降下しない。原因は、カギイタ上部の曲げが直角でないため。
セルフタイマーを見ますよ。観察すると、ネジ穴が合わないので、片側は白い両面テープと瞬間接着剤で留めていますね。なぜ初期型に交換したのかな? 無理に取付けるよりは、オリジナルを治した(不調だったのでしょう)方が良かったのに・・・
シャッターのテンションシャフトとハンマーを分離しようとすると・・・特殊ネジがヌルっと抵抗感が無くなって折れました。観察すると、腐食が進行していて錆によりネジが太って抜けなくなっていたようです。これは、部品を交換するしか方法がありませんね。
後期生産機ですが、シャッターの巻上げギヤ関係は、意外に磨耗が進んでいます。ピンセット先の軸受が偏磨耗をきたしています。ギヤの内径も拡大しています。
セルフタイマーですが、オーナーさんのご希望により、適合する後期型を取りつけてあります。後期型は本体ダイカストの↑部分が四角形となって、セルフタイマーの位置決め保持が容易になっています。
トップカバーが気に入りません。ターミナルの分離に失敗して、プレートを傷だらけにしたのね。指標●の赤もオリジナルではありません。PEN-FTの色入れもやり直されていますが、またやり直します。
指標の赤丸は微妙に違うでしょ。PEN-FTも直してあります。
FT本体は完成していますが、セルフタイマーのレバーとボタンがクローム用は変ですね。オークション物なので、前の所有者が交換したものと思いますが何の意図があるのでしょう? ご依頼はありませんがブラック仕様としておきます。塗装で仕上げますので、レバーのメッキは剥離をして、ボタンはうちのオリジナルを使います。
で、このように仕上げてあります。ついでに、PEN-Wのオリジナルフードのご依頼が二名の方から頂いていたと思いましたので、製作しておきました。ご依頼の方はご連絡をお願いします。
付属の38mmですがね。こちらも怪しい雰囲気のレンズですね。黒のプレートを留めるビスがオリジナルではありませんよ。ナベと皿を使ってあります。
前玉側を分解します。シボリクリック用のスチールボールが変ですね。半田を丸めたような、仁丹のような・・。
グリスはホワイトグリスに交換されていますね。その前に、シボリ羽根に回った油を洗浄しておかなくてはなりません。
清掃したレンズを組み込んで、スチールボールを新品と交換して組みます。
やっと、FT(B)の眺めになりましたね。過去に分解をした方たちも自分流に良いと考える修理をされていると思いますが、私は、カメラを製造していた経験から、工場で組んだオリジナルのセッティングが一番良いと信じています。色々な角度から検討され尽くして、規格や工程が決まるものだからです。オリジナルの組立規格を研究することが、このカメラを深く知ることになると思っています。