今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

VISCAWIDE-16ってなに? の巻

2015年10月31日 17時22分56秒 | ブログ

INOBOOさんのご依頼は多岐にわたっていますね。豪華な腕時計ケースと思いきや・・

 

 ホーンスピーカーみたいなデザイン。ビスカワイド16という16㍉フィルムを使用するパノラマカメラですね。太陽光機というメーカーが昭和36年(1961)に発売をしたカメラとのことです。16㍉標準の3枚分の画角をレンズが回転して撮影します。

 

渋いながらも作動はしますね。レンズが向かって左がら右に動きます。

 

 

絞りはとても指先ではセットできないでしょうね。

 

 

おっと三八式歩兵銃の照尺みたいな折り畳み式のファインダー。

 

 

コレクションで実際に撮影はされないと思いますので、メンテナンスということで。

 

レンズ直結の巻上げカムはスローガバナーとゴムタイヤで繋がっていますよ。(ガバナー側もゴム)

 

分解清掃をしながら注油をして行きます。スローガバナーはHとSの2速式でS(スロー)の時には左側の歯車が右に移動して噛み合います。

 

黒い部分がゴムタイヤ。かなり錆が出ていますね。

 

 

巻上げカムを外して注油します。

 

 

レンズの動力はこのゼンマイバネ。かなり腐食が進んで分離すると折れる可能性が高いです。油を浸透させて錆の進行を抑えます。時計用のゼンマイで幅と厚みが同じ規格のものなら流用出来るかなぁ・・

 

回転軸に注油のため分解します。

 

 

汚れていたカバーを清掃して接着をしました。16㍉専用のマガジン。

 

 

右の大きな巻上げダイヤルを巻いてから、中央のダイヤルでシャッターチャージします。左はシャッタースピードHとSのセット。この個体はOFFの位置がありますが、OFFがないモデルもあるようです。ゴムタイヤの歯車を使用しているため、撮影時以外は、ゴムタイヤの接触を解除してゴムの変形を防止するようにします。

底部。開閉鍵があるだけの弁当箱のようです。平面が大きいせいか、中央部が多少盛り上がり気味になっていますね。プレス加工の問題なのか?

 

W123XH45XD55mmと画像から受けるイメージよりも大きく、重量は実測515gで重くキュービックでホールド性もよろしくない。撮影にもコツが必要となるとだいぶ熟練が必要かも知れませんね。マニアックなカメラもあったものです。

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MINOLTA repo 初期型の不動を何とかするの巻

2015年10月28日 21時40分22秒 | ブログ

ご常連の北海道のINOBOOさんから段ボールが来てたんだった。最初はミノルタ・レポの初期型ですね。当時あまり市場に数が出なかったようで、現存数も少なく、コンディションの良いものも中々見つからないとのことでした。特にこのトップカバーのタイプはあまり見かけませんね。

露出メーター部分が陥没していて、カウンター窓も同様に脱落しています。

 

 

幸い、脱落したプラレンズは内部に残っていました。

 

 

まず陥没を修正しておきます。

 

 

そしてプラレンズを接着して補修完了。

 

 

PENを参考にしたであろう巻上げデザインですが、内部の構造は全くミノルタ流。設計者が異なるとこうも違うものか・・

 

コレクション見本だから適当でよろしいとのことでしたが、やはり動かないのはね。シチズンLのシャッター羽根が張り付いて開きません。ココを動かすと羽根が動きます。

 

プログラムシャッター搭載ですからね。ご覧のようにBで解放されています。レンズは清掃できれいになりました。

 

見本と言われると返ってこういう部品が気になるのです。かなり塗装が劣化しています。

 

再塗装をしました。

 

 

接着したプラレンズが硬化したので、露出メーターを組み込みます。ファインダーも清掃してあります。

 

ちょっと貼りにくいモルトを貼って・・

 

 

これで組立完成です。裏蓋ロックカバーを再塗装するとグッときれいになりますね。

 

オリンパス・Penの成功を見て、後発としてデザインコンセプトはかなり参考にして作られたことが良く分かりますね。初期型は上下カバーの材質が真鍮の梨地メッキのため丈夫です。シチズンLプログラムシャッターを搭載した意欲作ですが、営業的にはあまり販売台数は多くなかったのでしょう。操作で感じたことには、PEN-EEに慣れた指には大き目なレリーズボタンが何ともしっくりとして安心感があります。今となっては希少なモデルです。

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36万台なんだけどねPEN-FTの巻

2015年10月24日 22時42分10秒 | ブログ

PENに戻ります。このFTは#3681XXと良い頃の個体なんですけどね。オーナーさんは中古屋さんで購入して使用されていないとのことですが、あんまり良くないですよ。まず、外観もかなり疲労をしていて水気も入った感じ。巻き上げもなんだかなぁ。一番問題は1/4以下がコントロールされていないということ。購入時には最低1秒が正確に切れるかテストしてくださいよ。

ボトムプレートの内側もかなりゴミやホコリが堆積しています。ユニットにもゴミが付いていますね。未整備で販売したということですか・・

 

本体部分はいつものように洗浄組み立てをしておきます。

 

 

1/4秒以下がコントロールされないのは、スローガバナーの不良かコントロールレバー関係の不良が考えられましたが、この個体の場合は左側のスローガバナーユニットが良くないです。

 

中軸下の薄い歯車が、左の歯車をノコギリのように削ってしまうのがこのユニットの欠点です。交換が望ましいですが、その他の部分も分の入れ替えで様子を見ます。

 

シャッターユニットは洗浄組立を完了しました。右のブレーキナットも緩み気味でした。

 

このユニットは過去にシャッター幕を分離しての分解を受けていました。普通はそこまでするのは珍しいですけどね。何を直したのかは不明。

 

36万代の後期のハーフミラーとしては腐食が進んでいます。あまり良い環境で使われていなかったという証拠です。また、右のファインダーの上部にタップ加工が施されていてネジが入っていますね。これは新しい発見です。この個体では、露出計ユニットは従来型が使用されているので必要がなくブランクとなっていますが、最後期の個体に採用された基板別体タイプの露出計ユニットの基板を取り付けるためのネジです。

使用された環境が厳しかったと見えて、カウンターギヤもかなり汚れてゴミも混入していました。すべて洗浄してから組みます。

 

一時はどうなるかと思った個体ですが、仕上げてみるとシャッターも良好で巻き上げもスムーズで一安心です。

 

湿気の多い環境で使われた個体の証拠。裏蓋にポツポツとでっぱりがあります。これは圧板などを留めるリベットの頭が錆びて膨張したもの。

 

本体は完成で、付属の38mmパンケーキですけど、いつも書いていますようにヘリコイドグリスが完全に抜けてしまって、スムーズに回転していません。ここまでにならないうちにメンテナンスをしなければなりません。

すべて分解洗浄をします。幸いレンズの状態は良好です。ヘリコイドは洗浄のうえ、新しいグリスの交換です。

 

観察すると、髪の毛を噛み込んでいますね。

 

 

レンズを組み立てて、グリスを塗布しながら絞りリングを取り付けます。

 

 

完成して本体に装着。ヘリコイドもスムーズになりました。本体も元のコンディションは悪い方でしたが、まぁ、結果オーライということで・・後はFがあるんです。

 

お伴のPEN-Fは#1177XXと、かなり初期型ですね。過去に有名修理屋さんでオーバーホールを受けているとのことですが・・当方に来た時には巻き上げがされている状態で1回シャッターが切れた後フリーズ状態となりました。ボトムカバーを開けて見ると、巻上げが完了しているのに、ピンセット先の巻き上げが完了しないとレリーズボタンを押し込めなくする止メレバーが戻っていません。強制解除で正常に作動を始めましたが・・それより、右の"M"スプリングのバネカケネジが正規のネジではありません。この個体の巻き上げが異常に重いのが気になります。

 ははぁ、バネが規定よりも強く張られているようです。このバネは、リターンミラーを作動復帰させるためのバネですが、ミラーフリーズをすると強く張る方が多いようですが、フリクションの改善でバランスさせる考え方を取るべきだと思います。

2台目なので簡単にUPと思いましたがそうもさせてくれないみたいです。トップカバーを外してみたところ。こうなるのか・・

 

シボ革の剥がし方が乱暴ですね。

 

 

で、巻き上げが異常に重い件。予感はしていましたが、テンションバネも強く張られているようです。固定ネジのロックが外されています。結局、このリペアマンさんは、とにかくバネを強く張れば動く。という考え方のようです。

効率60・・シャッターユニット止めネジは規格外の+ネジ(正規-)に変えられています。

 

 

巻上げ爪のバネは初期型ですから板バネです。以後、コイルばねになります。

 

ここから洗浄後の組み立てに入っています。細かな部品やネジもすべて洗浄しています。

 

シャッターユニットを見ます。あれれ、ブレーキ部分にモリブデングリスが大量に塗布されています。FはブレーキがゴムのOリングなのでグリスは塗布してはいけないのです。そもそも、ブレーキリングがゆるゆるで変ですよ。まさか?

あ~、悪い予感が当たっちゃいましたね。OリングホルダーにOリングが入っていません。ブレーキ無しで組む約束だったのかしら?

 

何故か、Oリングホルダーは激しく錆びているものが多いです。Oリングが嵌るため精度が必要ですので研磨をしておきます。

 

Oリングを嵌めて組み込みます。

 

 

シャッター幕ですけどね。個体差はあるのですが、自由位置は普通はシャッター幕の先端が楊枝の付近に来るはずです。約90°テンションバネを強く張ってあるわけです。

 

完成したシャッターユニットを本体に組み込みました。いえね、スローガバナーも不調で調整に手こずりました。初期のFは古いですからね。

 

朝からの作業で目が見えないのでデジカメの設定を間違えました。アスペクト比が変です。頑固なグレーのネジロックもすべて洗浄してから使用しています。

Fのダイカストは色が黒っぽいですね。素材が違うのでしょうかね。で、何とか完成。バネを正規のテンションにしてありますので巻上げも軽くスムーズになりました。特に不調もありませんので、何の目的でテンションを上げたのか意味が分かりません。強いテンションとブレーキの無いシャッターでは、使いずらかったのではないでしょうか?

 

圧板の天地が一般的な個体と逆になっていました。確かにPENなどの極初期には同様な組立を確認していますが、この圧板の裏に記載されている手書き数字の向きから、画像の方向が正規と認識していたと判断して一般的な方向にセットしておきます。(実害はありません)

オーナーさんは当ブログを継続的にご覧頂いていたそうで、ご自分の所有機の作業についてはどのようにお感じになられたでしょう。本来はPEN-FからPEN-FTへと移行されるお積りのようでしたが、初期型のPEN-Fの実動機も貴重となって来ましたので、両方大切にして頂ければと思います。

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VoigtlanderとTUDORの組合せの巻    

2015年10月21日 21時19分35秒 | ブログ

フォクトレンダーの沈胴レンズとロレックスの弟分チュードルが来ています。まずはレンズを見ます。50mm F2ですが、レンズの各面に結晶状の盛大なカビが発生していますね。これを清掃せよとのご依頼です。

 

レンズを分解して清掃をして行きます。幸いほぼ落ちてくれました。

 

 

ヘリコイドグリスが抜け気味でしたので新しいグリスを追加てあります。

 

 ロレックスの弟分というところでしょうかTUDOR SUBMARINERです。ケースはロレックスと同じオイスターケースですが、中身の機械はスイスETAの定番Cal2824-2(8振動)が搭載されています。純正のベルトはしっかりした作りですが、無垢ではなく巻きですね。かなり汚れが溜まっています。歩度は25秒遅れ程度。

長針の腐食が目立ちますね。文字盤はきれいです。

 

 

分解してみると・・巻き芯部分に大量の油が付着しています。前回と一緒ですね。

 

比較的に分解組立はし易い機械です。すべて分解洗浄をしたところ。ケースとSSベルトも洗浄してあります。

 

 

 流石に精度は良好で、受けを載せるとピタッと決まってくれます。

 

 輪列をザラ回しをして軽くスムーズに作動するかを確認します。

 

 

テンプを載せると、ネジ留めする前に動き始めています。しかし、ネジの頭がセイコーなどに比べて小さく、トルクを掛けにくいです。

 

テンプの耐震装置に注油をします。受け石を抑えるバネはロックを外すだけの構造で、紛失する心配がないので好きです。

 

 ひっくり返して文字盤側を組み立てます。

 

 

 全く調整をしていない状態で・・どうも油切れで遅れ方向だったようですね。

 

 ケースは側面の鏡面部分のみ軽く磨きました。表面のヘアライン部はベルトと同じく、オリジナル性を失わわないようにそのままとします。回転ベゼル外径が約36mmですから、小ぶりなモデルなのでしょうか? 何はともあれ羨ましいですね。

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SEIKO LM スペシャル おまけの巻

2015年10月20日 21時44分18秒 | ブログ

先日、セイコー・ロードマチック・スペシャルをやりましたけど、その時に持ち出した右側の5206-6080のジャンクをついでに現役復帰させようと思い立ちました。この個体はご常連さんの北海道のINOBOOさんから「あげる」と頂いた個体ですが、機械は全く作動せず。(カレンダーはお約束のとおり)ケースは研磨されてカットのエッジが無くなっている。裏蓋のへこみ。純正のガラス風防が非防水時代のドーム風防が接着されているという、まさしくジャンク状態ですね。8振動の高級機ですからもったいないので復活させたいと思います。

まず、適合する風防ガラスを入手しなければなりませんが、幸い、社外品のヨシダS-149が見つかりました。あとはゴムパッキンですが、これもメーカーからはすでに供給されません。そこへ、先日のLMSのオーナーさんから助け舟を頂いて中古のパッキンを送って頂きました。感謝です。

ケースは研磨をしましたが、オリジナルとは違うかな? 風防ガラスに洗浄したゴムパッキンを取付けて(ぴったりです)。

 

ベゼルを圧入して風防を固定しました。

 

 

ところで、この機械動くんかいなぁ? 曜車を外してみると・・あら~、油べったり。油の中で部品が泳いでいる状態。オイラーを知らないのかしら?

 

露出アンダーですみません。内部もベトベトです。香箱の軸部分に大量の油があります。

 

すべて分解をして超音波洗浄をしました。流石に最後の機械式ユニットですので、部品点数も多く高級なユニットです。

 

秒カナを抑えるバネ部にも油は必要です。しかし、オイラーの先に僅かに注すだけです。

 

瞬間送りの複雑な構造ですから部品点数も多く慎重に組み立てていきます。あとは、日、曜車をセットして作動を見ます。

 

風防がいい加減でしたので、汗が文字盤に染みていましたので洗浄してあります。(うっすら残っています)0時00分直後に日、曜日ともパシャッと切り替わります。パチパチパチ👏

 

動き始めはしましたが、不安定な動きでした。原因はテンプの片振りと緩急針の調整が大きく狂っていて、測定不能の状態でした。何とか騙し騙し持って来ましたよ。

 

紺色の文字盤は老眼の目には針が見にくいのですね。革ベルトは何色が似合うのかしら。取りあえずテスト装着のためにカーフ黒ベルトを取り付けておきます。文字盤の大きさが約28mmと小さめなので、私のような細い腕にも装着感は良好です。8振動機ですから、どこまで歩度を追い込めるか楽しみですね。本人は風防ガラスしか購入していないという個体。お二人に感謝です。

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