今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

結構重症でしたPEN-EESの巻

2022年06月30日 22時00分00秒 | ブログ

暑いのでUPをサボりました。最近、直接のご依頼は少ないですが、なぜかカメラ店様経由の修理ご依頼はあるんですね。PEN-EES #7891XXです。外観はきれいな個体ですがシャッター不動とフィルターリングの緩みがあります。EES専用のフィルターが付いていますが、メッキがかなり腐食しています。

かなり長期間放置されていましたね。貴重ですので分解して研磨をしておきます。

 

そのフィルターがスムーズに取り付かない。点検すると1か所変形があります。無理にねじ込むと斜めに入って、それを外そうと力を掛けると、本来は緩まないはずのフィルターリングが緩んでしまいます。で、部品取り機でEEが付いて来ましたが、残念でした。EE用は幅が狭くて中央のレンズがフィルターに当たるので使えないのです。左がEE、右がEES。

問題はシャッターです。背面カバーの取付けネジ3本が緩んでシャッター羽根が脱落しています。EESやPEN-D系もそうですが、オリンパスは大口径のレンズを取付けて製品のバリェーションを増やす手法を取りますが、すると前面が重くなるので背面のネジに負担が掛かり緩みやすくなるのです。

シャッター羽根の取付孔が変形してクラック切れになっています。これは再使用は出来ません。

 

シャッター羽根は規格違いで種類があります。この個体に適合する部品を辛うじてストックから見つけて来ました。

 

同じに見える関連部品も比較してみるとネジ孔位置やピンの直径など微妙に異なります。

 

シャッター取付けプレートのネジは大盛りの緩み止め塗料が塗布されていますので溶かして洗浄しておきます。1か所塗装が剥がされています。アースでしょうね。

 

では、本体を洗浄してスプロケット軸から組み立てて行きます。

 

 

レンズはカビが生えやすいレンズですが、ちょっとありますね。清掃できれいになります。

 

絞り羽根、レンズの清掃を終えて本体に取り付けます。

 

 

フィルターリングは探しましたら新品のストックがありましたのでこれを使います。

 

EE精度は2段近く感度低下でしたので調整をしてあります。

 

 

途中の画像を撮り忘れました。フィルターリングが新品なので輝きが違います。フィルターは研磨のうえ抜けていた色入れをしてあります。「S」の赤はお遊び。

 

当時は定価と現金正価の表示がありました。

 

 

大量にあったEE系が急速に個体数を減らしていますので、コストを掛けて修理を依頼して頂くのは有り難いところです。

 

 

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WALZ オートマットの巻

2022年06月28日 19時00分00秒 | ブログ

連日暑いですね。梅雨は開けたのでしょうか? クーラーを入れずに頑張って来ましたが、昨日は流石に頭がボ~っとして来まして、これは危険と思い今日は今朝からクーラーを入れての作業です。WALZのオートマットですが、当初はこのカメラに多い故障のレリーズロックダイヤルの固着改善だったのですが、全般的にメンテナンスをしておくことになりました。では、先にコパルSVシャッターの清掃と注油などをしておきます。下部にセルフタイマー内蔵ですね。

レンズは定評のあるZUNOWレンズ6cmが付いています。帝国光学研究所はニコンと同じ海軍御用達の企業ですかね? なんとf2.8ですね。前玉裏側のコーティング部に曇りがありますので清掃をしています。

 

ビューレンズもZUNOW製ですね。リングの緩み止めイモネジが小さく、カメラ用のドライバーでは間に合わないので、時計用のドライバーセットから持って来ました。

 

ピントはミノルタと同様に前面のスライドレバーによりますが、ヘリコイドグリスが抜け気味です。追加しておきます。

 

ミラー内は意外にきれいでした。ミラーは交換されているのかもしれません。清掃をしておきます。

 

スクリーンなどの固定バネが特殊です。

 

 

で、すでにレリーズロックダイヤルは外してしまいました。過去にだいぶ苦労をして修理をした形跡があります。事の問題は前面カバーの取付けネジ部に厚い調整ワッシャーを噛ませたため、ロックダイヤルを留める中央ネジを締め込むとダイヤルが前面カバーと接触をしてしまうので、画像のように接触する部分を削り込んだり、中央ネジに小さなワッシャーを噛ませて締めたため、ネジ山1~2山しか掛からないので緩んでしまい、おまけに化粧プレートを留めるゴム系接着剤がロックリングまで回ってしまい回転しなくなった。まで読めた。

削られた部分は殆ど見えませんが、一応タッチアップをしておきます。

 

 

要するに、いろいろな部分との折り合いをどう着けるかです。特にクリック機構などは無いので、指で回せて簡単にズレない程度に調整をしてあります。しかし、この小径で細かなローレットでは、どんな指でも回しずらいですね。

中央に表示プレートを貼って終了。

 

 

このカメラはフィルムを上から下に巻き取るんですね。

 

 

ベビーローライと殆ど同じサイズですが、(下部のピントレバーがある分、少し縦長です。暑さに慣れなくて体調がイマイチですので今日はここまでにします。

 

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PEN-Fをやりますの巻(2)

2022年06月24日 21時10分00秒 | ブログ

では2台目##2408XXをやります。この個体はプリズムが激しく腐食しているので3台目(部品取り機)から調達してあります。外観はかなりばっちいです。

 

トップカバーを開けてみると・・あぁ、お化け屋敷のようです。

 

 

あら、接眼プリズムも腐食だったんですね。では部品取り機から調達します。因みに部品取り機は初期型の1051XXですが、プリズムの腐食は発生していません。初期型でも腐食していない個体もあります。

前板を分離するためにシボ革を剥がしていくと・・あ~騙された。過去の分解者がシボ革を外すのが面倒で、カッターで切ってあったのでした。本当にFは何でもアリだわ・・

 

では洗浄後にモルト貼り、スプロケット軸、スプール軸から組み立てて行きます。底部の三脚環の留めネジに塗布されているグレー色の緩み止めなどは出来るだけ溶かして清掃して組むようにしています。出来るだけね。

シャッターASSYは特に問題は無くメンテナンス完了。ブレーキなども1号機と同じなので省略。

 

初期型より調達して置いたプリズムの取付で問題発生。プリズムのアッパーホルダーが嵌らない。プリズムの寸法を比較すると初期型のほうが0.1~2mmほど幅が大きい。画像の左側が初期型で右側が中期型ですが、微妙に幅が違いますね。よってホルダーも初期型を使います。しかし、初期型には2Fバネのフックがありません。当然バネも使われていません。初期以降はバネが追加されていて、FTの初期までバネがありますが、それ以降は再び省略されます。(ホルダーはバネカケのフックが付いたまま)

ビューファインダーで問題。全反射ミラー側のレンズが過去の清掃でバカボンのほっぺ状態になっています。紙ヤスリか何かで拭いたのじゃないの? 私にはやれと言われても出来ませんね。部品取り機から調達交換します。

全反射ミラーは新品に交換します。

 

 

シンクロ配線のターミナルも無くしていますので追加しておきます。

 

 

シボ革はそのまま再使用としました。ご自分で交換も出来ますしね。メカの組立完成。

 

今日も梅雨の中休みでしたが暑かったですね。熱中症を避けるために水分補給を小まめにしていますが、逆に食欲が減退して来ました。みなさんもご自愛ください。で、すみません、作業は終わっていて今日は別の作業をしていました。ストロボの発光テストやピント調整をしています。Fは古いので、シャッター同調用のシンクロ接片が金属疲労により折れるものがあります。なんとテスト中に折れたこともありました。

1号機の自作バネが使われているなどは慎重に観察しませんと分からないのでFは気が抜けません。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものなので正常には動きませんね。まぁ、いろいろと問題はあります。1号機のツルツル号と2号機のバカボン号の完成です。

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PEN-Fをやりますの巻

2022年06月23日 17時40分00秒 | ブログ

最近はご依頼が少ないPEN-Fをやります。素材は3台来ていますが、2台を仕上げます。まぁ、PEN-Fは古いですから現状の個体は状態の悪いものが多いですね。しかし、PEN-FTとは違った改良前のソリット感はそれはそれで捨てがたいのです。

中の一台はフィルムレールに腐食があります。見かけよりは浅い腐食で撮影には問題はありませんが、長期間、異種金属が接触をしていると腐食し易いのです。

 

まずは一番程度の良い単独で生かせる個体#2389XXから始めます。過去にプロによる整備を受けた記載があります。プリズムの腐食も無く素材としては特に問題は無いかと思います。

 

まずは全て分解の上各部分を洗浄しましたが、なぜか手触りがツルツルする。

 

では、本体ダイカストから組み立てて行きます。

 

 

ブレーキの修復をご依頼頂いておりました。現存の個体はすべてブレーキは利いていません。多少のシャッターショックに影響があるかも知れませんが特に作動に問題はありません。返ってOリングが太って固着しているような場合がシャッター作動に問題が出ます。まずはシャッターを切ってブレーキリングの動きを見ます。全く利いていません。

ブレーキASSYを分離します。

 

 

Oリングのゴムが悪さをしていてブレーキホルダーの内側が激しく錆びています。この錆は完全に研磨しますがOリングはブレーキリングとブレーキホルダーの間に挟まるので研磨をすると当然、嵌合寸法が変わって来ます。元々の部品公差の組合せもありますので、ブレーキはポン付け交換は出来ず、クリアランスを調整しながら組んで行くことになります。

ブレーキの修復が終わったところ。気になったのは地板には水油が光るように大量に塗布されており、クリーナーで取り除いても、触る指がツルツルします。これは普通の油ではなくフッ素系のような物質が入った油だと思われます。この油は前板のミラーユニットにも大量に塗布されていて、ミラーボックスの塗装面に拡散しています。このようなケミカルは有効な場合もあるのでしょうが、私はケミカルに頼った修理はしたくありませんので使いません。さっきから何度も中性洗剤で手を洗ってもすぐにツルツルになります。困ったものです。

で、前板関係です。奇跡的にこの個体のプリズムは全く腐食がありません。保存環境も影響がありますが、どうも製造ロットによっても違いがありそうです。Fはプリズムがピント面になります。FTは前にあるスクリーンに裏側がピント面です。

そのスクリーンは傷が多いですが年数を考慮するとやむおえません。

 

ここで問題が発生しました。仮の作動テストで低速時にシャッターが閉じた後にリターンミラーが閉じない。点検するとシャッター側から伝達を受けるレバーのバネが変です。画像は正規の部品に交換してありますが、正規のものより太い線径で作られたバネがセットされていました。するとレバーの動きが重くなってリターンミラー側のロックが外れない。なぜかリターンミラーのテンションが強く調整されていたので変だと思いましたがリターンミラーが作動するようにしたかったのでしょう。バネが強いんだよ。

例によってツルツルの油が大量に塗布されていたので脱脂をしておいたのですが、翌朝見るとこれです。ネジ孔に油が浸透しいたのです。再度、超音波洗浄をしましたがツルツルは取れません。

まっ、気を取り直して組み立てて行きます。接眼プリズムのコーティングは殆ど残っていません。

 

全反射ミラーはご希望により新品を使います。

 

 

これでメカの組み立て終了。ファインダーのピント調整などをして行きます。

 

きれいになりました。Fは古いので途中でいじられているのですが、予期せぬ落とし穴があったりするので気が抜けません。変な油に手こずりましたがツルツル号の完成です。

長くなりましたのでページを変えます。

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テッサーとクセナーローライ35の巻

2022年06月20日 12時50分00秒 | ブログ

梅雨に中休みでしょうか、蒸し暑い陽気が続いています。作業は定番のローライ35に戻っていますが、特に問題はない気がします。ジャーマニーのテッサー付きとブラックモデルのクセナー付きシンガポールを整備します。

この個体はレリーズボタン座内側に腐食がありますね。露出計の作動不良があるので電池の液漏れを疑いましたが、幸いこの個体液漏れが原因ではありませんでした。危ないのはボタン座の外周が腐食しているケース。この場合は電池液漏れの過去がある可能性が高いので個体選びでは注意点になりますね。

露出計の作動不良の原因はここのネジが緩んでいたためです。このネジはアースの役割をしていて、しかも緩みやすい。ドライバーで触れただけでもメーター針が大きく振れます。まぁ、電池の液漏れでなくて良かった。液漏れの場合、修復が面倒ですからね。

ドイツ製は古いですから巻上げのアイドラーのグリス切れで回転が重くなっている個体も多いです。最悪は軸と固着して軸のカシメが緩んで軸自体が回っているものもあります。

 

沈胴が緩いという訳でもないので、このままでも問題は無いのですが何故か気になる。分解してみるとフィルムの切れカスが挟まっていました。↑の部分でもフィルムが挟まっていましたので、このカメラはフィルムに対して優しくないのかもしれません。

シャッターとレンズを清掃して組みます。

 

 

沈胴のスリーブを挿入してフィルムレールを取り付けます。

 

 

底部をメンテナンスします。底部のネジは緩みやすいネジが多く、特にのネジは緩んでいる場合が多いです。あぁ、チャージ機構にもフィルムが挟まっていました。

 

こちらはブラックのクセナーですが、露出計の感度が極端に低下しています。こちらも電池室の接点が腐食していますので「さては」と思いましたが、腐食はこの部分のみで回路とCdsは無事でした。ラッキー・・接点を磨いておきます。

いつもと同じように全般的な修復作業をしますが、この個体の場合は光学系の汚れが顕著です。ft機なので北米にあったものかと思いますが少し意外です。ファインダーも目いっぱい汚れています。この点はジャーマニーは良いですね。

問題のクセナーレンズがいけません。アメーバー状と白点のカビが大量にあります。

 

後玉もカビですね。テッサーよりクセナーの方がカビ易いということも無いでしょうにね。しかし、ズイコーと違って、清掃でほぼきれいになるのは助かります。

 

シャッターとレンズのメンテナンスをして本体に搭載しました。あとは前玉を取り付けます。すでに外装も清掃済みですからきれいでしょ。しかし、カバーの材質がアルミなのでペナペナ感はありますね。真鍮製だったら良いのに・・

点検をして行くとフィルムインジケーターが緩く軽く回転する。これは裏側の接触面が磨滅気味のためで、過去の所有者がインジケーターを頻繁に使用していたようです。調整をしておきます。

完成テストをしていると、ごく稀に巻き上げレバーがフリーとなって巻き上げが出来ない症状がありました。これは定期的に出てくる不具合で、画像のフランジが下降したままバネで上昇しないのが原因。内径の摩耗や軸の摺動傷が原因です。こちらも修正をして再発は無くなりました。

どちらも写りは優秀と聞いていますが、一度、比較撮影をしてみたいものです。

 

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