今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

1台PEN-FTを挟むのだの巻

2018年06月30日 17時54分38秒 | ブログ

最近、食玩のエフトイズに大戦物が出ていなかったですけど、二式単戦(鍾馗)とP-40の組合せで発売されました。いつもの手の勘による重さ計量法では殆ど差がないので、P-40より胴体が太いから重い方かな?と思いましたが、翼の大きさはP40の方が大きいしなぁ?  ええいヤマ勘で選んだら鍾馗が出ました。無塗装が欲しかったのですが、迷彩塗装の明野飛行学校の機体です。製作は中島飛行機でキ43一式戦闘機「隼」と同じ小山技師長のもとに設計されたキ44は軽戦の「隼」とはうって変わって高翼面荷重のインターセプター(迎撃戦闘機)であった。胴体に翼を合わせてみると如何に翼が小さいか分かりますね。重量増加もあって離着陸が難しく、九七戦(キ27)の軽快な運動性に慣れた当時の陸軍パイロットには不評でした。この辺りは海軍の「雷電」の事情と似ています。二式戦闘機としては双発の「屠龍」も存在したので、単座の鍾馗は二式単戦と区別して呼ばれます。

P-40とのセットの意味は不明ですが、鍾馗の初撃墜は正式採用前の増加試作機9機で編成された独立飛行第四七中隊の黒江保彦大尉がバッファローを撃墜して初陣を飾った。マレー半島スマトラ島での相手はハリケーンかスピットファイヤーかな? 明野飛行学校は陸軍戦闘機のメッカで、大戦末期、米軍機の本土襲来に備えて教官や助教などの練度の高いパイロットにより教導飛行隊を編成した。当時、B29の梯団は相模湾から侵入して富士山を右に変針、中央線の線路に沿って帝都に侵入したが、松戸、成増にあった鍾馗装備の部隊が迎撃した。厳冬期の大月付近上空の高高度で待ち伏せ攻撃を試みたが、排気タービン未装備のため高速のB29を捕捉することは困難で、東京湾へ抜けるまでに一撃か二撃の攻撃が精一杯であった。

では、本題です。別の中古カメラ店様からのご依頼。PEN-FT #1712XXと中前期頃の個体ですが、あまり使われていないようで外観はきれいです。ユニットとしては変更前が使われていて、少し信頼性が落ち気味かも知れません。一番の問題は露出計が動かないことです。

ロータリーシャッター幕の左上に円周方向でキズか入っていますね。何が接触したのでしょう?

 

露出計不動の原因は基板のパターン腐食が原因でしたので電池室は使うとしてリード線は作り替えておきます。しかし、cdsの感度がどの程度あるか・・

 

 

シャッター幕の傷ですが、ダイカスト内面には特に問題はありません。幕が多少歪んでいますので接触をしているのです。

17万台ですと初期の個体と殆ど同じ仕様なんですね。初期が露出計の基板の抵抗が可変式だったぐらいの差。スローガバナーも旧タイプですので、低速側への変速はダイヤルをゆっくり回すこと。

 

巻き戻し軸の先端のクロムメッキが腐食しています。長期に使われなかった証拠。

 

ハーフミラーも腐食しやすいタイプです。ご指示で交換します。20万台を超える付近から怒涛のような各部ユニットの改良が施されていきます。

 

基板のパターンの修復とリード線の交換で露出計は作動を始めました。感度はまぁまぁ有るかなぁ? という感じ。

 

セルフタイマーユニットも改良前の「ジッジッジッ」ってやつ。ただし、駒数カウンター板を留める方式がナットからネジ(凹➡T)に変わっています。

 

リターンミラーニットも変更前。電池蓋もピッチの細かな変更前のタイプなので正確に締め込まないと斜めに入ってねじ山を壊します。

 

付属の25mmは多少の曇りがあるので清掃をします。

 

 

巻き戻しノブもPEN-Fと同じローレットタイプです。製造は1967年9月と古いですが、稀にこの個体のように仕舞い込まれていたような美品が出て来るものです。

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途中もPEN-Fなのだの巻

2018年06月28日 09時58分28秒 | ブログ

不思議なもので、PEN-FをやっているとPEN-Fが集まってくるんだね。この個体はお父様が所有されていたものだそうで、30年間もミラーアップ状態であったとのことです。それを3か月前に近くのカメラ屋さんに持ち込んで少し使っていたら、またミラーアップをした。とのことです。問題はミラーボックス内に油が染みていることです。たぶんカメラ屋さんで油を点したんでしょうね。自転車じゃないんだからそんなことしちゃダメ。スクリーンに染みて行くと樹脂が侵されて乳白が透明になってしまうので緊急に分解します。付属の40mmにも油が飛んでいます。どれだけ油を点したのでしょう。

艶消し塗装が艶々しています。リターンミラー軸に注油したのかな?

 

 

シリアル№がキリ番ですよ。そう言えば画像を隠しても無駄ですけど・・巻き上げレバーが曲がっています。

 

トップカバーが凹んでいます。直して良いものか??

 

 

前板やシャッターダイヤルのネジが締まってなくてグラグラです。特にこのシャッターダイヤルのネジは2本共規格外。下のネジは細くて利いていません。よって、接着剤で固定されているという・・

 

ここでアクシデント。シャッターのテスト中にシャッタースピードをコントロールするコントロールレバーが折れました。少し前にも書きましたが、このレバーは折れるのです。この部分の部品番号は設定されていません。ガバナーASSYで交換せよ。ということです。そんなもの有るわけない。ちょっと探して来ます・・1個だけありました。ここの留めネジは緩み止めのポンチ加工がされているので、同じようにポンチ加工をしておきます。

で、こうなりましたね。

 

 

次は前板関係。すべて分解をして洗浄脱脂をしました。絞りレバー部に塗装剥離が目立ちますね。

 

塗装剥離はタッチアップしておきました。今日中に完成させる予定でしたが、アクシデントがありましたので今日はここまでとします。

 

 

レンズマウントだけ傷が多いですね。頻繁に乱雑なレンズ交換を行う使い方をしていたのでしょうか? 絞りレバーの塗装剥がれを補修してあります。

 

付属の40mmも過去に分解を受けてネジのスリ割りが痛んでいます。グリスも抜けていますから交換します。

 

途中アクシデントはありましたが、調子は良く仕上がりました。二代に渡って使い続けられる幸せな個体ですね。

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OM用ズイコー50mmの巻

2018年06月21日 19時00分00秒 | ブログ

簡単にUPです。ズイコーレンズは接着が強く、分解不能の個体もあるので厄介です。この50mm f1.8はなかり後期の製造ダイブのため初期型とは全く構造が異なりますね。絞り羽根に油が付着しているので清掃をします。初期型と比べて樹脂部品の採用が進んでいます。絞り羽根押さえも樹脂製です。

押さえを取り除くと絞り羽根が現れます。

 

 

絞り羽根と内部の脱脂清掃をします。

 

 

洗浄をしたシボリイタをセットします。

 

 

前群の裏側に絞りクリック機能も持たせている簡略設計。レンズの清掃をして組み立てます。

 

マウント側にも油が流れています。

 

 

初期型(左)にあった前縁のダイヤカット加工も省略されていますね。

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USN BUSHIPSの巻

2018年06月20日 20時48分12秒 | ブログ

最近は忙しくて自分のセイコー・スピードタイマーの部品は揃えてあるのですが、なかなか手が付きません。ご常連さんから興味深い腕時計が来ていますので久しぶりに腕時計をやります。この時計はWW2の頃に米海軍の特殊部隊が機雷などの除去をする潜水爆破部隊が使用していたモデルとのことですが、ケースがきれいで時代がありませんね。オーナーさんによると、近年、アメリカでケースが復刻をされたようで、中身の機械は他のモデルにも使われていた本物を組み込んで仕上げた。ということのようです。当時ケースは「STAR WATHCH CASE」というメーカーが製造し、HAMILTONとELGINが製造を担当したようです。防水のための二重竜頭がかっこ良いですね。オリジナルはガラス風防とケースの密閉に鉛を溶かし込んであるとのことですが、復刻版は風防はガラスですが鉛は使われていないようです。オリジナルは非常に高価ですので復刻版で雰囲気を楽しみたいとのことですが、この復刻版でもかなりの価格になるようです。アマゾンでは、クォーツユニットを使った復刻版が販売されています。https://amzn.to/2xVTPY2

上はHAMILTON Cal 748搭載で下はELGIN Cal 539を搭載しています。二重竜頭の形状が違いますが、この差はオリジナルなのかは知りません。キャリバーは特殊なものではなく、普通に販売されていたモデルにも使われていますね。ダイバーウォッチの元祖のような時計ですから、短時間の潜水時間が分かれば良いわけですね。

2つ共アメリカから取寄せたとのことですが、タイムグラファーに掛けるとデータ的には良好とは言えません。まぁ、歩度がゼンマイの巻き量によって大きく変化をしても、一日(24時間)経過した時に大きく外れなければ良い。という感じです。まず、HAMILTON Cal 748から始めますが、1950年代前半の機械のようですから精度的にきびしいのは当たり前というところでしょう。U.S.Aと彫刻されていますから、まだHAMILTONがアメリカで生産されているころですね。

 

 HAMILTON 748は部品に不良が見つかりましたので、部品をアメリカから取寄せ中のためELGIN 539をやります。こちらも同時代の機械としては、非常に良い作りです。しかし、画像には写りませんが繊維片が付着して出車が少し歪んで回っています。事前の測定では振り角が出ず、非常に重い動きです。

 すべて分解洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

画像を撮り忘れましたが、特殊な板バネを使用したハック機構を備えています。しかし、直径約23mmの小さな機械ですから出車と輪列の組みにくいですね。

 

テンプはブレゲヒゲが使われています。姿勢差に強い方式と言われていますね。オーバーホールでテンプの振り角が230°と大幅に改善しています。

 

裏押エの厚みが厚いですね。加工も丁寧です。

 

 

文字盤と針は複製品なのでしょう。針は変色したように塗ってあります。

 

 

オリジナルの構造や作りを知りませんが、複製としてはしっかりと作られていますね。

 

内面の作り。

 

 

ねじ込み式竜頭ガードにもパッキンが入って防水性は高そうです。

 

 

機械をケーシングします。

 

 

インナーキャップ付き、10角形の対角約25mm(25.4mm=1㌅?)と小さな裏蓋。

 

 

これで完成です。竜頭キャップが特徴的なモデルですね。やはりカーキのベルトが似合うでしょう。現代のダイバーウォッチのように大型ではないので、日常使いにも良さそうです。

 

HAMILTON 748の部品が到着しましたので組んでいます。小さな機械に特異な歯車は非常に組みにくいですね。

 

特に輪列の受ケと地板との嵌合がこの時代の特徴で非常に固く、歯車のホゾが正しくホゾ穴に合っているのかが掴みづらくため、慎重な作業をしなければなりません。オリジナルでないネジが使われているところ多数でしたので部品取りから交換をして組んであります。

日ノ裏側はオーソドックスな設計ですね。裏押えを取り付けます。

 

 

文字盤と針はリプロ部品なのでしょう。針は劣化表現の夜光の塗り方が雑で、裏側が盛り上がっています。作動トルクはELGIN 539の方が強いと感じます。

 

残念ながら天真の摩耗が進んでいるようで、姿勢差が非常に大きいです。振り角は安定していてブレゲヒゲの効果が分かります。

 

本来は天真の交換が必要な状態ですね。ケース直径が32mmと小径ですので、巨大な竜頭キャップとのバランスが目を引いて、これから夏場に使用したくなるモデルです。

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二眼レフZenobiafleXの巻

2018年06月14日 22時54分43秒 | ブログ

二眼レフはA~Zまでの多数のメーカーが存在したとか。このカメラは1956年、ゼノビア光学が製造したゼノビアF-Ⅱというローライコードのコピー機らしい。珍しいモデルのようで、オーバーホールをして行きます。

 

反射ミラーはかなり劣化をしているようです。

 

 

二眼レフの内部は外部からのホコリやゴミの混入が多く、ヘリコイドグリスと混じって清掃が大変。あまり好きな作業ではありません。

 

反射ミラーを清掃してみましたが・・使えないわけではありませんが、作り直しですかね。

 

レンズはテッサータイプのネオ・へスパー77.5mmと半端な規格ですね。シャッターからレンズまですべて自社製造だそうで、レンズメーカーに頼るメーカーが多い中えらいですね。

 

見慣れたコンパー型のゼノビアラピットというのかな? 良く出来ていますよ。全く問題なく作動しますね。

 

スローガバナーやシャッター羽根を洗浄注油して組み直します。

 

 

反射ミラーをオリジナルと同寸法に切り出しました。私、ガラスのカットは苦手なんですね。カッターの良いものが欲しいのですが、道具のせいではないという天の声・・

 

 ファインダースクリーンは摺りガラスとフレネルレンズの組合せ。摺りガラスは交換の予定でしたが、比較的きれいなので洗浄で再使用とします。フレネルレンズは過去の分解でキズがあります。こちらも洗浄します。

 

きれいきれい・・

 

 

巻上げダイヤル周辺のメンテナンスをします。この頃の二眼レフのシボ革ってすごく薄くで0.28mmです。おまけに菓子箱のような紙製? のシボ革は剥離をするとボロボロになってしまいます。

 

 二眼レフの場合、メンテナンスをする時は必ずシボ革を剥離しなければならないという宿命があるんですね。しかし、当時の材質はすでに劣化をしていて剥離をすると再使用が出来ないことが多いわけです。今回も、再使用のつもりで慎重に剥離をしましたが、時間の経過で硬化と縮みが発生して縦方向で2mmも縮んでしまいました。そこでシボ革の型紙を取りますが、ダルマさんだけと舐めているとレリーズボタンの位置関係もあって結構大変・・これで5枚目ぐらいかな? 完ぺきではありませんが、まぁイイかというところ。

 二眼レフ用のシボ革はストックしていない訳です。まぁ、ニコンかPEN-S用でも良いと思いましたが、今回はカメラ用のビニールレザーではなくて、布で裏打ちがしてある早い話が椅子の貼り替え用。厚みは0.8mmぐらいありました。それの布を取り去って0.35mmまで薄く研磨加工したものを使おうかと・・

やっばりカメラ用のシボ革でないと接着剤を塗布するとビニールが柔らかくなって腰が無くなっちゃうんだよね。特に厚みを薄くしてあるので、裏のネジの出っ張りが表面に現れてしまうということが分かりました。まぁ、今回はこれで良しとします。

ついでにね。エキザクタのペンタファインダーですけど、一応清掃はしておいたのですが、接眼部分の補修塗装が下手くそで気になります。ヨーロッパからの仕入れということなので東ドイツ人が補修したのでしょうか?

 

ドイツ人にしては・・

 

 

補修塗装を剥離して母材の研磨をして塗装をしてあります。接眼部の艶は不明のため他の部分の艶を参考にしています。

 

構成部品の全てです。

 

 

こんなところですかね。次のオーナーさんが気持ち良く使ってもらえればよいです。

 

あっ、忘れていた。最後にフィルムを装填して作動を確認しておきます。二眼レフは若い方に人気があるようですね。現代の高性能なフィルムを使用して、このフォーマットの大きさですからハーフ判からしたら贅沢者。魅力的な写真が撮れるのでしょう。

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