大阪のご常連さんはカメラも腕時計も古いのがお気に入り。この個体はセイコーのCHRONOMETER ですけど、クロノメーター級とは関係ありません。戦後すぐの1946年に発売されたモデルで新10A型のいわゆる「バナナ型」というやつですね。製造は第二精工舎の諏訪工場となっています。入手は四天王寺の縁日とのことで、外観のコンディションは素晴らしくきれいですが、それがちょっと怪しい? 1時間に20分遅れるそうです。遅れ過ぎやんか・・
受けの形がバナナの形に似ているのでバナナ型というのかな? 時代を考えるとケースも機械もきれいですよ。しかし、風防は新品が付いていたりで、人の手が入っていますね。サイズが小さくて、ポロッと外れました。
疑問に思うのは、文字盤が使用による劣化(汚れ。日焼け)などが全く無いことです。使用されずに仕舞われていた個体でなければ考えられません。デッドストックに交換されているのでは? 地板も歯車も極端な摩耗や不良は無いようです。
すべて洗浄をして組み立てて行きます。過去に数回は分解されているようですけど、それにしてもきれいな機械です。しかし、機械加工の精度は、この時代特有のものです。
巻真とオシドリの関係がピタッとしない。部品の個体差なのか・・
一応組み上がりましたよ。テンプは元気に作動しているようですが・・
全く未調整の段階。1時間に20分は遅れないようですが、この頃の機械はフラフラと精度が安定しません。この個体はヒゲゼンマイの状態がよろしくなくて文字盤上にすると測定不能に陥ります。天真の摩耗とヒゲゼンマイの接触を疑います。
左の針座が入っていましたが、クラックが入っています。そもそも内径が大きいので別の機械のものでは? 手持ちのスーパーから中央の針座と交換しておきます。
針は鉄の焼き針(ブルー)ですが、あらら、磁気を帯びていて繋がっちゃいますね。
消磁をしておきました。
ここで問題。この時計は1時間に20分遅れるとのことでしたが、確かに機械精度的に遅れ気味ではありましたが、それだけではなく、ピンセット先の筒カナが緩くなって針が置き回り状態になっていたようです。筒カナを締めて摩擦を回復しておきます。
風防は最近交換されたようですが、なんと風防の方が外径が小さく、簡単に外れてしまいます。
手持ちの風防と交換とも思いましたが、ドンピタのサイズが無く、接着で対応します。
当時のオリジナルのままかと言うと、少し疑問もありますけど、状態が良いのは間違いありません。ベルトも古いですが、充分使用可能の状態ですから、保存状態の良いオリジナルなのかも知れません。左は私所有の同型モデル。右は1950年に発売された後継モデルの秒針がセンターにある中三針スーパー。文字盤のデザインが同じですね。このモデルが以後のセイコー腕時計の基礎になります。因みに、全く同じ時計を過去にオーナーさんにお譲りをしています。
まぁ、縁日での入手としては掘り出し物だったでしょうね。しかし、そのままでは実用は無理で、古い時計はいろいろな問題を抱えています。かなり怪しいところもある個体でしたが、今回のように完全な状態に仕上げて販売すれば良いのに。とは思いますけど、そこが縁日物なんですかね。実用には問題のない精度となっています。四天王寺の縁日行きたいな。