今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

今年最後は初期型ローライ35の巻

2021年12月31日 20時40分00秒 | ブログ

あと数時間で新年を迎えてしまうので、今年の作業は今年中にUPしておきますね。今年はローライ35系の修理ご依頼を頂くことが多くなりましたが、最後もローライ35初期型ジャーマニーです。入手直後に私のところへお送り頂いたようです。ありがとうございます。ものの本によると#30261XXは1966年~1967年頃の製造でしょうかね。かなり強い欧米人の体臭がしますので海外からの入手でしょうか。とりあえず洗浄をします。

ピントリングのヘリコイドは完全に抜けていてクルクル回ります。被写界深度目盛りが黄ばんでいる個体が多いですが、ルーペで観察すると手垢ですね。清掃をします。沈胴部は下向きで下降はありませんが首振り現象があります。これはフェルトの劣化で、放置すると沈胴レールが摩耗しますので分解調整をします。

初期型の特徴の金属製巻き戻しダイヤル機構。回転が非常に渋いので分解清掃をします。

 

レンズも前玉の汚れが激しく、内部にはチリが大量にあります。

 

 

これも初期型の特徴。圧板の表面がプレーン。以後はディンプル加工がされています。蝶番部分に変形がありますので修正をしておきます。

 

この個体は過去に分解整備を受けていて、低速不調などの症状はありませんが、動きは良くない。また、巻き上げが少し重いです。巻上げギヤも金属製。

 

人の手が入っている割にはフィルムカウンター窓が接着外れであったり、しっかりと手を入れていません。

 

これもジャーマニーの特徴のプリズムファインダー。かなり汚れていますけど・・

 

 

巻上げのアイドラーギヤはグリス切れで回転が重いです。洗浄とグリス塗布。

 

 

巻上げのクラッチ機構も金属製。以後の樹脂製は将来必ず破損しますが、このタイプでしたら破損の心配がありませんね。

 

沈胴のフェルトは初期型ですと劣化が来ていますので調整をしておいた方が良いです。絞り・シャッターダイヤルに傷が多いので研磨をしておきます。

 

前玉の清掃をします。ホルダー部分の真鍮が腐食して緑青が吹いていますので清掃しておきます。

 

中玉の清掃を終えて絞りユニットを載せたところ。シャッター羽根をセットします。外気と密閉されていませんので、ポケットに入れていたような個体は繊維粉などが侵入しています。

 

沈胴もしっかりとして首を振りません。仕上がったシャッターユニットを取り付けます。被写界深度目盛りは結局入れ直しました。

 

露出計は初期型としてはCdsの劣化は無いようです。回路を清掃をして絶縁テープを貼ります。

 

初期型と来れば多い不具合はカウンターが進まない。全然動きませんね。

 

 

初期型は逆転防止爪に補助バネが入っていないため、経時的にバネ力が落ちてカウンターギヤを止められないのです。以後は鋼板製の補助バネが追加されていますが、この個体は入っていないので製作して追加しておきます。

 

これで正常に動くかと思いきや、カウンターギヤの復帰が緩慢です。

 

 

原因は、過去の分解で左のリターンバネが絡んでいたのです。正しい状態に直して取付けます。

 

あ~、今年中に間に合いました。初期型としては巻き上げも軽くしっかりとした個体になったと思います。今年のUPはこれで終わりです。今年一年のお付き合いありがとうございました。みなさん、良いお年をお迎えください。

 

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明日は大晦日の巻

2021年12月30日 12時10分00秒 | ブログ

明日は大晦日ですが、みなさんは大掃除は終わりましたか? 私のところは年末年始も仕事ですので大掃除はしないのですが、部屋にある70年代製のソニーのオーディオタイマーが壊れまして、次に作業机の前のセイコーの鉄道用懐中時計が止まり、その次に普段使いのセイコー・シルバーウェーブが止まりまして、現在はスマホでしか時間が分かりません。新しい年も迎えるので電池交換をしておきます。この時計は以前にも登場していますが80年頃に銀座の服部時計店で購入してホンダS800のダッシュボードに取付けていたものです。当時のクォーツは機械時計の面影も残していて、現在の使い捨てユニットではなくホゾ石も使われていて注油で長く使える機械ですので文字盤を分離して注油をします。

キャリバーは7550Aとなっており5石が使われています。では注油をして行きます。

 

 

裏側にも注油。

 

 

文字盤と針を取り付けます。

 

 

クォーツ時計は秒針をインデックスにピタリ一致させるのは難しいですね。特に、腕時計用の機械を大きな懐中時計に使うので、針が長くなって僅かな角度ズレでも先端では大きなズレになってしまうのです。なので適当・・

 

こちらはシルバーウェーブです。やはり同時期の製品でキャリバーは7546Aですが、懐中時計の機械と仕様違いの同じ機械ですね。

 

こちらにはカレンダー機構が付いているので少し面倒です。

 

 

カレンダー用の歯車があります。

 

 

同様に注油をして行きます。

 

 

こんなに大きさが違うのに同じ機械とは意外ですね。機械式のCal6310からクォーツへの移行は腕時計用の機械が流用されたのでした。これでお正月が迎えられます。

 

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ローライ日記の巻

2021年12月28日 20時30分00秒 | ブログ

いつの間にか今年も押し詰まって来ましたね。私も今日は整体に行って外出は今年最後でした。大晦日や元日もたぶん作業はしていると思いますけどね。このローライ35Sは角がへこんで修正をされています。これが無かったら美品なのに・・

問題は、巻き戻しレバーを操作してもスプロケットがフリーにならない。

 

 

巻き戻しレバーのシャフトを抜いてみると・・

 

 

先端のピンの長さが短い(左が正常)。これですとスプロケット軸のクラッチを制御できない。このピンは圧入されているのですが、なぜ短いのかは不明。

 

これはローライ35ジャーマニー。初期型なので裏蓋上側の遮光毛糸が痛んでいます。これは交換です。

 

初期型は露出計が不動の個体が多いですが、殆どは回路不良かCdsの不良です。しかし、この個体はゴッセンのメーターが不良です。なんとか修復しました。

 

清掃をしていて気が付きました。ASAダイヤルプレートが割れています。これも交換です。

 

修理をしたメーターを組み込んで、レバーアテを熱カシメしたトップカバーを締めます。

 

初期型頃の個体は、巻き戻しダイヤルの回転部汚れで回転がスムーズでない個体が多いです。分解清掃をしておきます。

 

こんな故障もあるの見本。フィルムカウンターが戻らない。原因はリターンバネの終端を掛ける突起が経時劣化で折れていたもの。ローライ35系は樹脂部品がネックの不具合が多いですね。

 

ローライコードⅤaですが、バイバイキーンじゃなくてローライキンが付いています。これはローライフレックスとローライコードで35mmフィルムを使用するためのアダプター。そのフィルムカウンターが進まない不具合。

 

分解してみると・・

 

 

原理はボタンを押す力を回転に変換してカウンターを動かすというもの。逆転防止爪の調整が悪くギヤが僅かに戻ってしまうため進める爪がギヤに掛からない。爪を調整します。

 

ボタンを押すと快調にカウンターが進みます。

 

 

レンズを清掃するためにフィルムゲートアダプターを取り外します。

 

 

シャッターは低速止まりですので全体のメンテナンスをして行きます。

 

 

ファインダーを清掃して専用マスクはスクリーンの上に置くだけです。

 

 

フィルム巻き戻しアダプターを引いて35mmフィルムを装填します。

 

 

専用の巻上げスプールにセットします。シャッターを切ったら、先にフィルムカウンターボタンを押してカウンターを進めてから巻上げます。

 

これは別のアダプターセット。やはりカウンターの進み不良で来ていました。この故障が多いのかな?。ローライキンには取付け機種によって種類があるようです。

 

程度の良い革ケースがついてきれいなⅤaでした。ローライキン装着の場合、基本的に縦型の写真になりますね。ハーフカメラと似ていますが、横型で撮影する場合は二眼レフカメラを横向きにしなければならないのは厳しいでしょうね。

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良い面構えのローライ35ブラックの巻

2021年12月23日 20時30分00秒 | ブログ

大変有難いことですが、最近、中古店様の他に直接、ローライ35系の修理ご依頼を頂くことが多くなりました。同じ機種のUPを避けると、2週間に1度程度の更新になってしまいますので、それもどうかと思いますから連続のUPとしますがご了承くださいね。この個体は適度に使い込まれていて塗装の剥離が目立ちます。しかし、トップカバーがアルミ製ですので、キラッと光る金色にはならないのですね。

#60293XXの頃は前面のダイヤルネジが一般的な光沢メッキではなく、梨地メッキになっているんですね。ブラックモデルだけの仕様なのかしら?

 

例によって回路の腐食断線により露出計は作動しません。直します。

 

 

ファインダー内部の汚れも進んでいて曇っていますので清掃します。その他、各ギヤの分解洗浄とスローガバナーのメンテナンスをしておきます。

 

使い込まれている関係で、沈胴がスライドが緩めになっていますので、分離してフェルトの調整をします。沈胴のチューブは摺動傷も無くきれいです。

 

フィルムレールを取り付けます。

 

 

最近問題の巻上げギヤ。下部にはカムが付いていて、自然にクラックが入って折れてしまうことがあります。この部品は非常に貴重です。中華辺りで作ってくれないかなぁ。メーターは正常に作動しています。

 

巻上げレバーアテが欠損していて、円形のシボ革が貼られていますので当方製作の部品に交換しておきます。

 

こうなります。

 

 

レンズとシャッターですが、ダルマ落し構造のため横から空気が入り易く、使い込まれた或は布製袋などに入っていた個体は繊維片やチリが大量にレンズに付着しています。

 

中古店様の仕入は海外が多いですから、距離リングの表示をftからmに変更するのはお約束の作業ですが、今回はその逆でmからftにして欲しいとのことです。使い込まれた証、ヘリコイドグリスが完全に抜けてクルクル回りますのでグリス交換をしてあります。

 

フィルムの装填テストで巻き戻しが重い症状があります。巻き戻しダイヤルを分離して清掃をします。

 

メーターも作動するようになって、まだまだ活躍できますね。

 

 

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過渡期の初期PENの巻

2021年12月19日 15時00分00秒 | ブログ

シャッターボタンなど初期の三光から変更箇所が出てきた頃のPENですね。片耳よりもシャッターボタンの方が早く変更されたわけか・・オーナーさんから、「駒数計が72枚以上になっても止まらない」とのご指摘がありましたが、歯車の歯数差で動いているだけですから止まらないですね。

この頃の個体は後玉の曇りが必ずあるはずです。

 

 

裏蓋をどうしたの? 外側のへこみを内側から叩いてまた凹ませた?

 

 

すみません。急ぎの修理が入ってしまって・・作業はすでに終えていてUPがまだでした。トップカバーを分離するとファインダーの対物レンズが飛び出して来ましたよ。この個体は過去に修理をされたサインがありましたが、何を修理したのやら・・

ピントリングのイモネジ1本のスリ割りが殆んどなく緩めることが出来ません。緩めますけど・・気が付くのはピントリングのローレット幅が普通のものより広いと思いますね。仕様なのか途中で別の時期のものに交換をされているのかは不明。

では、ダイカスト本体と部品を洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

この頃のスプールのスリップ機構は内径に拡張バネが入っている構造ですので、経時的に樹脂が割れている個体が多いです。この個体は無事でしたが、まぁ、時間の問題です。この後、軸側にコイルスプリングを仕込む構造に変更されて、以後は他の機種も同じスタンダード仕様となります。

オーナーさんから駒数計の動きについてご指摘がありましたが、40枚のギヤと41枚のギヤの差で駒数針を動かすシンプルな構造のため巻き止めはありません。

 

すでに巻上げダイヤルカバーはネジ留め式で、駒数ギヤにはウェーブワッシャーが入る(三光は入らない)仕様に変更されています。ただし、組立用の対角2穴は開けられていません。

 

シャッターの構造はシンプルですので故障は少ないです。この個体はシャッター羽根にめくれがありますね。

 

ガバナーの輪列を分離して洗浄組立します。

 

 

さて、問題のファインダー。対物レンズは樹脂製ですので清掃には注意が必要です。その他、バラバラ接着が外れて来ます。

 

すべて清掃をして接着しました。厚紙製のダストカバーは何度かの剥がしでヨレヨレですので作り直しておきます。

 

この個体は最初のチェック時に巻き上げでチッチッチッというラチェット音がしませんでした。原因は、この頃は逆転防止爪が2枚になっていますが、その1枚のバネが掛かっていませんでした。何を整備したのかな?

 

レンズは過去に何度か清掃を受けていますね。後玉のコーティングは・・

 

 

巻き戻し軸のガタが大きいです。本来は調整ワッシャーが入っていたはずですが、途中でなくしているのです。追加をしておきます。

 

三光ではない片耳という過渡期の個体も貴重ですね。これで完成です。

 

 

その「急ぎの修理」ですけどね。私がオーバーホールをして中古カメラ店様から販売されたローライ35ですが、カメラが到着したら巻き上げが出来ないというクレームで戻って来ましたよ。そんなはずは・・早速分解してみると・・あ~、巻上げの樹脂ギヤの歯が欠けています。

分離して見ると・・これはレンズを沈胴させたままで巻上げをしてしまったということです。このカメラの操作に慣れていない人のミスではありますが、そう簡単に壊れないよ。それをクレームで戻すかな? このギヤは破損が多く、調達に苦労するのに。

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