今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO 56GSブルー文字盤の巻

2017年03月27日 21時03分08秒 | ブログ

カメラファンの方すみません。同じオーナーさんのご依頼なので時計を続けます。またまた、セイコーGS 5626-7041と裏蓋式の後期型です。品の良いブルーの文字盤で針も腐食がありませんので水気の侵入は無い良いコンディションの個体と思います。

しかし、かなりラフに使われていて、ケースの傷は多いですから先に研磨をしておきます。当て板を使って平面に研磨をして行くと、中心部分がへこんでいることが分かります。GSでも研磨精度はこの程度のようです。

 

ベゼルも傷だらけです。ベゼルはなるべく研磨をしたくありませんが、仕方がありませんので研磨をします。

 

風防ガラスはオーナーさんからの支給ですが、純正品で外径などの寸法は合っていますが、ガラスの厚みとべセルで抑える鍔の部分の寸法が異なります。ここが違うと文字盤との位置関係に影響します。(右がオリジナル)

 

いつもの56系ですので作業は同じです。過去の分解修理は1度だけと思われます。

 

では、香箱から輪列を組み込んでいきます。

 

 

飛ばし易いコハゼをセットして角穴車を取り付けます。

 

 

ひっくり返して日ノ裏側を組立てて行きます。

 

 

この個体も56系の持病であるカレンダーの早送りが出来ませんので、揺動レバーを交換してあります。ちゃんと変わっていますね。

 

きれいなブルーの文字盤ですが、細い長針や秒針が老眼の目には非常に見えにくいです。

 

最後に自動巻き機構と回転錘に注油をして取り付けます。

 

 

ケースと一緒にヘアーライン再生洗浄をしておいたSSベルトを取り付けて完成。精度的には+2~5秒/日で安定しています。

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SEIKO ELNIX SG を仕上げるの巻

2017年03月22日 23時22分47秒 | ブログ

関東地方の三連休の中日は暖かな良い天気になりました。最寄駅の青梅線、東中神駅は駅舎の建替え工事中ですが、新しい駅舎の改札から入れるようになったとのことで、冬の間は乗らなかった自転車に空気を入れて見物に行ってみましたよ。まだ、駅舎の構造物は半分しか出来ていませんけどね。現在は、E233系が入線していますが、昔はかなり最後までぶどう2号色の73系など旧型国電や電気機関車のED16が走っていたのでした。

北側に改札口が無い駅でしたので、北側に住んでいる私としては不便だったのですが、今度は改札口が出来て便利になりました。

 

南側に回ってみました。お~、都会の駅みたい。

 

 

右半分しか出来ていないです。左に残っているのが旧駅舎、瓦葺きですよ。区画整理の関係で、青梅線では一番最後まで残りました。ホームのプレートには「1964」と入っていましたので、東京オリンピックの頃に建てられた駅でしょうね。「ある機関助士」という記録映画には西立川-東中神間での実習が記録されています。あの頃は、塀の向こうは米軍の立川基地でした。(実習車両は103系)

https://www.youtube.com/watch?v=g5x6jqruI4Q

で本題です。セイコーのエルニクスの中でもSGは無接点テンプと8振動の特別調整品です。機械のO/Hの前に、SSベルトとケースを仕上げておきます。オーナーさんのご希望で、伸びるエクステンションを取り付けますが、取付部を削らないとセット出来ません。

 

片側0.3mmづつ削って取り付けました。その他ヘアーラインと洗浄をして完成。

 

 

ケースはそれほどひどい状態ではないのですが、固着していたベゼルを外すと・・汚れの堆積と錆びですね。

 

ここで、オーナーさんから支給して頂いたカットガラスが適合しないというハプニング。全然違うでしょ。正しい風防が届くまで他の部分を進めます。

 

適合した風防ガラスが届くまで機械をやっておきましょう。クォーツまでの過渡期の製品なので、文字盤側のカレンダー機構はゼンマイ式時計と変わりませんね。

 

流石に高級機なので地板は金ピカです。この個体は、極端に遅れるとのことでしたが、タイムグラファーの測定では精度は出ています。問題は筒カナの不良です。竜頭の針回しが軽いです。

 

しかし、修正が出来ないのでジャンク機から調達しようと思いましたが、裏蓋が開かない。強力オープナーでやっと開けると・・裏蓋にパッキンが入っていませんでした。錆ついて機械が取り出せません。

 

まぁ、いろいろあって交換しました。

 

 

普通の機械式時計と逆にテンプが動力源となって歯車を作動させます。良く解らん基板を取り付けます。

 

16石に注油をして組立完了。

 

 

文字盤と針を取り付けました。

 

 

待っていた風防ガラスがやっと届きました。発送が遅い業者さんには困ってしまいます。オーナーさんのお好みでカットガラスをセットしましたが社外のヨシダ製です。

 

カットガラスを取り付ける場合はカットの角度を正確に合わせる必要がありますので、ちょっと神経を使いますね。

 

調整を終えていた機械をケーシングします。

 

 

最初に仕上げておいた純正のSSベルトを取り付けて完成です。風防サイズ的には28.5mmとボーイズサイズですが、厚みはカットガラス仕様もあって12.6mmと厚くなっています。精度的には+5秒/日で動いていますが、もう少し追い込むことは可能でしょうね。

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歴戦の勇士PEN-S 2.8の巻

2017年03月20日 20時31分35秒 | ブログ

セイコー・エルニクスは部品が揃うまでペンディングにします。

その間に、以前にもPEN-Sのオーバーホールをご依頼頂いたオーナーさんから、まだPEN-S 2.8 #2680XXが来ています。しかし、外観がかなりよろしくないですね。本体のブラック塗装は殆ど剥離しています。塗りたくなりますね。

シャッターリングにも腐食が出ていて汚れも蓄積しています。

 

 

内部は比較的きれい。シャッターユニットの取付けネジが外された形跡がありますので、過去に修理を受けているようです。シャツターは正常に作動しています。

 

裏蓋も汚れが目立ちます。底部角にへこみが有ります。

 

 

裏蓋の先端部分は変質したモルトが悪さをして錆が出ており、そのまま固着しています。では、全体のオーバーホールをして行きますが、特に問題は無いのではと予想します。

 

たった今完成しましたのでUPして行きます。過去にシャッター分解歴は分かっていましたが、あまり丁寧には組立されていませんね。

 

ファインダーの反射ミラーがここまで腐食しているのは珍しいです。

 

 

白いネジの緩み止めは壊されていますので分解は間違いないです。で、ここで疑問。シャツターの製造は39.12(1964年12月)と捺印されていますが、カメラ本体は1962年-6月となっています。ということは、シャッターを載せ替えたということですね。因みにPEN-Sの生産開始は1960年-6月とのことです。

載せ替えたシャッターユニットに特に問題はありません。すべて洗浄をして組立をして行きます。

 

シャッター完成。多少、シャッター羽根の摩耗はありますが、調子は良いシャッターです。

 

とにかく50年分の汚れが付いているようなダイカスト本体とカバーですから、洗浄に時間が掛かります。劣化して軟化したモルトが再度固まった状態です。

 

モルト下の塗装部分は完全に剥離してしまいます。丁寧に洗浄したところ。

 

 

細かな部品もすべて洗浄をすれば、後は問題なく組立をして行くだけです。

 

 

カム板(シャツターリング)は腐食が進んでいましたが、磨き出して洗浄しましたのでピカピカしています。

 

レンズのヘリコイドはピッチが細かい初期型です。意外にレンズは素晴らしくきれいで、持病の後玉コーティングも完全です。レンズも移植された可能性もありますね。

 

洗浄によって、殆ど剥離していた彫刻文字の塗料が完全に抜けてしまいました。

 

文字は艶消し黒で、「S」は調色をして入れておきました。

 

 

初期の個体はメッキの梨地が細かく、光り気味ですが、使用過程での磨滅もあって撮影が上手く出来ません。完成してみると、やはりダイカスト本体の塗装剥離が目立ちますね。塗装して差し上げれば良かったかと思いますが、オーナーさんは実用本位の方で、特にご希望がありませんでしたので、今回はこのままとします。見かけはあまり良くない個体ですが、意外にシャッター・レンズは良好な個体でした。

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リコーキャディーのニコイチの巻

2017年03月17日 20時12分22秒 | ブログ

九州のご常連さんからリコーキャディーです。2台来ていますが、良いとこ取りで1台仕上げます。発売は1961年で、セレン式の露出計は内蔵していますが、LV値を読み取ってからセットする方式ですね。シャッターはセイコーシャ#000/561でB・1/4~1/250.レンズは25mmf2.8 3群4枚となっています。

ベースとする方はトップカバー角の打痕がありますね。巻き戻しダイヤルは左回転でポップアップします。

 

ファインダーのスリガラスと見えるのは、マイラーのようなフィルムの片面をマット加工をしてあるもの。オートハーフも同じですね。よって、RICOHのロゴのプリント加工が可能になります。しかし、前回のファインダー清掃時の再接着が下手くそで、接着剤がはみ出していますね。確かに接着しろが無いので面倒ではあるのですが・・検討の結果、セレンも不良のため、もう一台のトップカバーASSYを使うことにします。

ファインダーはPENによく似た設計で、コンパクトな露出計共、トップカバー側に収納するのもPENと同じですね。

 

マットフィルム面に接着剤がはみ出していますね。これは使いたくありません。

 

シボ革を剥がさなくとも、コンパクトなシャッターユニットは取り外すことが出来ます。

 

採用するトップカバーにもサイドに打痕がありました。修正します。

 

 

裏蓋は悩むなぁ。上の方が内側はきれいですが、下の方が外観塗装がきれい。下を採用。

 

きれいに見えても、1961年製のカメラですので、内部は埃だらけ。分解して洗浄してあります。では、組み立て開始。

 

底部にある巻上げダイヤル。チャージ機構を組み立てて、モリブデングリスを塗布してあります。

 

裏蓋も洗浄をして本体に取り付けます。

 

 

問題のシャッターです。分解前のテストでは、不調になる時がありました。レンズはきれいです。

 

あぁ、ここのネジが緩んでいますね。ガバナーを正確にコントロール出来なかったようです。

 

地板組み込み式のガバナーはギヤに錆が出ています。回転もスムーズではありません。

 

すべて超音波洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

シャツター、絞りリング共洗浄して組み込んであります。前面の距離リングはローレットにアルマイト剥離がありますので、もう一台の部品を使います。

 

後玉を清掃をしてセットしました。

 

 

本体側は完成。

 

 

ファインダーはハーフミラーのメッキ剥離などもあって、良い部品を選んで組み立てました。

 

画像撮り忘れた。ファインダーと露出計をトップカバーにセットをして本体に取り付けました。巻上げはポップアップ式のダイヤルで、ノブ式よりは巻き戻し操作は楽な気もしますが、連続で巻き上げるのはノブ式の方が理に叶っているのかな?

 

露出計はセレンがダウンのため作動しなくなっているものが多いようです。移植したセレンは良好で針も元気に振れています。やはり、同じモデルでも、製造が後期のものが生きている可能性が高いですね。

 

あれっ、巻上げダイヤルが無い? PENに慣れているせいで、巻上げダイヤルを探してしまいます。下だよ。

 

ということで、良いとこ取りで仕上げたキャディー。きれいですね。

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フジカドライブのメンテナンスの巻

2017年03月16日 18時49分52秒 | ブログ

すみません。更新が遅れました。別の仕事と病院通いが続いていましてね。中々作業が進みません。歯石を取りに歯科に行ったら虫歯が見つかっちゃってね。しかし、軽症なので20分で治療が終わりました。幾つになっても、歯を削られる音はイヤですね。小心者の私としては、肩に力が入ってしまいます。治療が終わったので、晴れてチョコレートが食べられる♪

で、フジカドライブのメンテナンスからやっています。巻上げ時のゼンマイからの異音と露出計感度のご依頼。ギヤ列の注油、グリス塗布とゼンマイへのグリス塗布をしていますが、ゼンマイは時計の香箱のように密封されている訳ではなくて解放部分もありますから、多量にグリスを塗布することは出来ません。ゼンマイの底部プレートを外すと2枚の歯車が見えます。歯の形に注意。決まった回数を回転すると、歯が長い部分がかち合って回転が停止する機構。

露出計は作動していますが、感度低下があります。可変の調整抵抗を見ると、調整範囲が少なく、0抵抗としました。取り外しても良かったですが・・

 

調整は、ホルダーから取り出して行います。

 

 

 

感度は上がりましたが、まだ足りない状態です。

 

シボ革がトップカバーにまで回り込んでいるため、剥離した部分を接着します。巻き戻し軸横にセルフタイマーユニットがあって、セルフタイマーダイヤルのギヤと連動しています。巻き戻しダイヤルは取付けはネジ式ではないので注意。

ゼンマイのダイヤル角に打痕があって底部プレートも大きく変形しています。

 

 

古い接着剤を取り除き、打痕による陥没部分を修正しました。底部プレートも変形を直します。

 

ピッタリと底部プレートを接着しました。

 

 

巻上げ音も軽快になりました。

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