今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

題名に迷うPEN-Fの巻

2015年05月28日 21時47分56秒 | ブログ

沢山のPEN-F系を見て来ると、最初の印象で大体素性の見当はつくものなんですね。この個体は、分解機で巻き上げも重く、何かされているのではと感じました。私の場合は、まずマウントのネジを見ます。スリ割りが乱暴に笑っています。これはその程度の分解を受けているということです。

圧板裏に2つの修理履歴が書かれていました。本来1つで良いはずのラッチスプリングが何故か2個付いています。意味不明??

 

内部の古いモルトはすべて取り去られて、新しく貼られていません。

 

 

シボ革の剥離も乱暴のため切れています。接着もゴテゴテ。

 

 

そのくせ、外から見えるモルトは新しく貼り替えてあります。いわゆる手抜き?

 

 

本来、リペイントをご希望でしたので、トップカバーなどの分解を済ませていましたが、改めて前板を見たところ・・・あら~、騙されましたね。腐食したプリズムのメッキ面を剥離て表面鏡を貼ってあります。これ、過去に何度も見ている改造なのですが、厳密には反射面の位置が異なるわけです。このような改造をされている個体のファインダーは極端に暗い傾向にありますね。前板関係は作業の最後なので、良く点検せずに失敗でした。さて、これからどうなるのか私にも分かりません。

 

「魔改造」ねぇ。しかし、この方法は結構ポピュラーなようで、過去にも多く見ていますよ。PEN-Fはプリズムの腐食がありますので(FTは殆どなし) 仕方のない処置なのかも知れませんが、しかし、頭が良いなぁ。私のような組立屋上がりでは知識も無く考えもつきません。まぁ、最後までたどり着けるのかも不明ですから、その時に適切な題が付くでしょう。組めるところを組んでいきます。

シャッターユニットのメンテナンス。巻上げギヤ軸に摩耗、テンション軸に線状痕あり。ブレーキは、まぁ、利いているので再使用とします。

 

問題は、やはりプリズムだね。表面鏡を接着した分、厚みが増えてホルダーに正確に収まらない。また、PEN-Fでは標準のプリズムホルダースプリングが省略されています。ピンセット先の遮光クロスの位置が間違い。正確には下のホルダーの下側に入ります。これでは光線が漏れてしまいます。オーナーさんのご判断で、プリズムは再使用とのことです。この個体はトミーがやったと言われたくないなぁ・・

プリズムを分離します。右側が正規の状態。考えたものですね。頭がよろしい。で、これからの作業はチマチマと進むことが予想されますので、UPは非定期になるかも知れません。今週は「ペンスケ展11」も開催されていますからね。

 

ちょっとブレイクタイム。知り合いから頂いたELGINの腕時計。どこかの有名な時計に似ていること。殆ど新しいのにSSベルトのピンが脱落して使用できない状態です。そこで、φ1.20mmのSSピンを孔の寸法に合わせてφ1.12からφ1.18mmのテーパ型に仕上げて圧入して修理完了。でも使わないなぁ。。

で、PEN-Fはメカは、ほぼ完成ですが、例のプリズムの位置が正規の位置に収まっていないため、上のルーペなどの位置精度(角度)が出ない。一つ嘘をつくと、次々と嘘をつかなくてはならなくなる状態ですかね。結局、その後に苦労をするので、私は魔改造や手抜きはしたくないのです。

あ~ぁ、アロンソ止まっちゃったぁ。予選の時から原因不明のシャットダウンが起きていたからね。ホンダも頑張らないとダメだなぁ。で、PEN-Fは、このようにしましたが、白は吹いている塗料の霧が見えないのと老眼で厳しかったです。ここから先が決まっていません。他の作業を先行するかも知れせん。

では再開。なんですが、ブラックではない明るい系の色の場合は、いろいろ難しい問題がありましてね。まぁ、それを見せないのが腕ですが・・

 

裏蓋にシボ革を貼って本体に取り付けました。

 

 

本体の光学系にも問題があったりで、かなり完成までに時間が掛かってしまいました。PEN-F-P1とでも名づけましょうか? 女性が持つと、かなりお洒落ですね。

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訳ありなPEN-D3の巻

2015年05月26日 20時46分02秒 | ブログ

MazKenさんの方のお仲間から訳ありで緊急なご依頼がありましたので白PEN-Fはちょっとお休みして作業をします。確かお父様のカメラとのことでしたが、急ぎの時にすごい個体が来ましたよ。真っ黒けの汚れ放題ですねぇ。だいたい動くのかなぁ・・

電池は入れっぱなしで液漏れを起こしており、電池蓋は固着して開かない・・。

 

では、ケースごと分離するしかありません。電池ケースはボタン電池が使えるタイプになっていますね。SSでも改造をやっていたようですけど。

 

電池蓋は腕力で開けるしかありません。

 

 

内部もホコリの混入が多いです。メーターが作動をするのかは不明。

 

 

レンズも厳しいですね。来週月曜日からの旅行に持っていかれるとのことですが、写るのかなぁ・・。

 

とにかく、すべて分解洗浄をしますが、劣化したモルトがダイカスト本体を侵しています。

 

うちじゃないと洗浄はしませんよ。長時間を掛けてすべて洗浄をしてあります。少しは見られるようになりましたかね? これで作業の半分は終わったようなものかも。

 

あっ、一つ洗浄するの忘れていた。しかし、納屋の軒下にでも吊るしてあったのかしら?

 

シャッターは過去に分解を受けていました。例の姑息なお呪いがしてありますのでプロでしょうね。ヘリコイド部にこれだけゴミの混入した個体は初めてかも知れない。ガリガリなので洗浄グリス交換。

 

ハウジングの鍔の部分が割れちゃっていますね。どんな扱い方をしたのでしょう? まぁ、これだけ保管環境が悪いとダイカストの風化も進んではいますが。

 

栄というよりは誉発動機かなぁ? 夜遅くまでかかってシャッターユニットまでは完成させておきます。きれいきれい。

 

急ぎの仕事で、画像を撮っている時間も惜しいのですが、ネタの宝庫のような個体なので。メーター窓と駒数窓が傷だらけ。

 

前玉に傷が多いですが、このレンズに多い曇りは少ないです。

 

 

電池室からのリード線は酸化をして半田付けが利きませんので、新しいリード線に交換です。

 

メーターと駒数窓の研磨。ファインダー接眼部のへこみを修正してあります。

 

 

電池は現行のボタン電池が使えますので便利です。オーナーさんは「裏蓋の外し方が分からない」とのことでしたが、そのはず、劣化したモルトで張り付いており、力一杯に引っ張って分離しました。なぜか、圧板が天地逆に取り付いていました。その方がセットするのに難しいと思うけどなぁ。

露出メーターもしっかりと作動します。

 

 

深いご事情がお有りのご様子ですので頑張って修理(というよりレストアだなぁ)をしました。しっかりと写真で記録されてください。

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珍しいdemi RAPID+Minoltina-Pの巻

2015年05月15日 18時36分13秒 | ブログ

北海道のINOBOOさんは珍しいカメラを沢山所有していますね。これはCanon demi RAPID です。アグファのラピッドシステムを採用したカメラで専用のカートリッジを使用しますが、枚数制限などで普及せずに消えていったシステムですね。各社取りあえず参戦したというところでしょう。現在でも工夫をすれば撮影は出来るようですけど、INOBOOさんは展示用なので脱落したCds窓のガラスを接着して欲しいとのご依頼です。そうは言っても、デミ特有の最中構造のため、トップカバーを分離するためにはシボ革を剥離して前カバーを外さなくてはなりません。デザイン優先のカメラは整備性は良くないです。

電池蓋が液漏れで固着していましたので、内部にも腐食が広がっています。やっと前カバーを分離してガラスを再接着しておきます。

 

接着しろが少ないので、外側から接着剤が見えないようにします。きれいに貼れていますね。

 

 

ちゃんとカートリッジも付いています。現在は入手は難しいようです。

 

 

デミはデザインは素敵ですよね。オリンパスとは個性が違います。当時、修学旅行で女生徒が持っていたのが羨ましかった記憶があります。

 

これも通好みのカメラ。Minoltina-P 。シボ革を交換して欲しいとのご依頼ですが、一見きれいに見えますけどね。

 

よく観察すると、過去の修理の時に破れて接着をしてありますね。

 

 

サイドもこのように破れています。

 

 

このモデルは裏蓋がフラットでないので接着が難しいのですが、取りあえず前面から。数種から選んで頂いたシボ革をカットします。すでに寸法は収縮していますので、0.5mm幅を大きく取ります。右上端にわずかなトップカバー用の突起があるので再現します。

 

シボ革を切り出したら、接着の前にお団子の串で癖を着けておきます。シボ革の中にはガラス繊維が入っていますので、平面の状態で接着をすると剥がれやすくなるのね。

 

接着剤を着けなくても形状が安定していますね。

 

 

向かって左側。セルフタイマーの小判穴と吊環の逃げを正確に加工しておきます。

 

 

 このカメラでシボ革を交換する場合の問題点。裏蓋がフラットではなく、中央が盛り上がっていますね。単純な直線的なカットではピタッと合いませんし、工場のような強力な糊でジュラコン棒で圧着をしてやっと接着が可能なのですね。私、昔貼っていましたので・・乾燥糊をケトンで部分的に溶かしながら貼って行くもので、全面に糊を塗布して一気に貼るものではありません。

シボ革に予め貼られている両面テープでは何の役にも立ちません。すべて剥離をして接着をして行きます。平面のシボ革を弱い糊で三次曲面に近い形状に貼ることは困難があります。

 

何とか貼り終えて一安心。シボ革が新しくなるとカメラがスカッとしますね。オリジナルの雰囲気は壊していないと思います。

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Zuiko3種レンズを清掃するの巻

2015年05月13日 22時07分48秒 | ブログ

九州のご常連さんからZuikoレンズが3本来ています。40mm.20mm.と50-90mmズームです。残念ながらあまり良いコンディションではありませんが、地方の方ですと、ご自身の目でコンディションを確認して購入することは難しいとのことですね。年々、コンディションは確実に落ちていきますからね。まず、40mm f1.4 ですが、各面のコーティングに盛大なカビが発生しています。カビの多く発生しているレンズは、内部に湿気が入り込んだ経歴がある場合が多いようです。

3本ですから細かくは書けませんが、ピントリングの内側などにも汚れが入り込んでいますので、レンズだけではなく、すべて清掃をして行きます。

 

アルミの本体です。腐食気味ですね。雨の中で使われたような履歴があるのかも知れません。しかし、それを見抜くのは難しいですね。

 

ここまでカビが進んでいると、清掃では完全に取り切らないのです。40mmの場合は後玉のコーティングがカビているものが多く、すでにコーティングを侵していますので、除去はまず不可能です。しかし、出来るだけ慎重に清掃して行きます。

次は20mm f3.5ですが、Zuikoレンズの場合、前面リングが緩まないものがありまして、この個体も親の仇のように固着していました。4時間を掛けてやっと分離しましたが、このような個体には決まって、画像のように(黒い)緩み止めが塗布されています。塗布は良いけど、工具を使っても回らない(破壊になる)のは困ったもので、分解を想定していない組立です。製品として緩む事故が起きるより良いということでしょう。分解する者の身にもなってよ。

で、このレンズは高価で購入されたとのことですが・・残念ながらジャンクです。20mm、25mmの持病のレンズのガラスが曇ってしまう症状です。何度もプログでお書きしているのですがね。レンズ口径が小さいので、曇っていてもあまり目立たないのか、通販などで販売されているようですね。これは清掃をしてもだめなのです。(2枚)

使えないのであれば仕方ないのでこのようにしておきました。

 

 

最後は50-90mm f3.5です。この個体は、過去に分解清掃を受けており、コーティングに円周状の目立つキズがあります。

 

キズのレンズはズームのレンズですね。

 

 

前群も分解清掃をしますが、先に後玉を清掃しておきます。

 

 

前群の画像を撮り忘れました。ズームレンズは、とにかくレンズの枚数が多いので閉口します。最近はレンズアダプターで色々なレンズをお使いになられる傾向がありますが、やはりオリジナルのPEN用Zuikoレンズは貴重ですから大切にしましょうね。購入は、出来るだけご自身の目で確認をするか、通販の場合は特にレンズの曇りについてはコンディションを問合せてから入手するようにしましょう。

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ORIENSTERのカレンダーを治すの巻

2015年05月11日 20時13分55秒 | ブログ

北海道のINOBOOさんから時計とカメラが来ていますけど、右は現行のオリエントスター(自動巻き)で、左は先日仕上げてからお気に入りで使用中のご先祖様のオリエントスター・ダイナミック。おんなじマーク。実使用で日差+10秒ぐらいと少し甘く見ていましたが侮れません。比較すると現行は大型なのにびっくりします。まぁ、当然か? ケースもがっちり、風防はガラス。SSベルトも無垢で、高級な感じはしますね。インジケーター付きだし。ヤフオクで、2時位置のカレンダー切り替えボタンが作動しないとのことでジャンク扱いを入手されたとのこと。

裏スケの裏蓋を取って観察します。良く知らない機械ですが、ボタンのプッシュピンと切り替えレバーに隙間が空いていますね。試しに楊枝でボタンを押してみると切り替わります。これはボタンに不用意に触れてカレンダーが切り替わらないように故意にクリアランスを取ってあるのではないのかなぁ? 知らないけど・・

まぁ、ボタンを指で押して切り替わるようにしたい。とのことで、特に調整機構も無いようですので、下駄を履かせるしか方法は無いですね。ということで、φ0.9の真鍮丸棒を0.5mmに加工をして接着をしてみます。

 

ボタンを押すと・・切り替わりますね。

 

 

ただし、ボタンには、セイコー、スポーツタイマーのようにコイルスプリングも入っていませんので、非常に軽い力でカレンダーは切り替わってしまいます。無意識に何かに触れたことで誤操作の心配があると思いますけどね。

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