今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

個性的なPEN-FT

2011年03月31日 13時24分09秒 | インポート

Dscf2405521_2 ご自分でもメンテナンスをされて、うちのハーフミラーやセルフボタンを購入して頂いている方のPEN-FT #4408XXですがね。リターンミラーの貼り替えをご希望です。それほど状態は悪くはないと思いますが、精神衛生上のご依頼でしょう。そこで、前板を分離してミラーホルダーを取り出そうとすると、あれれ、→にあるはずのM1.4X2.5のイモネジがありませんね。接着をされています。改めてカメラを点検すると・・あぁ、フレネルレンズが純正以外に交換されているのね。詳しくは書きませんけど、それが原因でしょう。

Dscf240687 リターンミラーを分離してみました。おっと、これはすでに交換された形跡がありますね。ホルダーの接着面をヤスリ掛けしています。接着剤も瞬間接着剤に近いようなものですね。今はこういう材料を使うのかなぁ・・道理で、剥離に苦労しました。

Dscf240862 新しいリターンミラーを接着してあります。組み込むには丸一日置いて養生することが必要です。

Dscf241177なんとか調整が取れて完成しています。通常は全体のオーバーホールの中で行う作業ですね。部分修理では結局、工数は掛かって費用が見合いません。交換ご希望の方はオーバーホールと同時にお申し付けください。

しかし、クロームボディーにブラック用のボタンも意外におしゃれですね。私は発想も出来ませんでした。天道虫のレリーズボタン。これ可愛いですね。操作感も悪くはありません。これ、どこで売っているのでしょう? 


おかしなタイマーレバーのPEN-FT(B)

2011年03月27日 22時08分20秒 | インポート

Dscf236385 ペンスケ展のご常連さんからきれいなPEN-FT(B)が来ています。塗装の磨耗も最小で、ほとんど使用されなかったような個体ですね。銀座で入手されたそうで、さすがに良い商品が集まっているようです。ただし、問題ありで、セルフタイマーがグラグラで機能していません。セルフボタンも何やら変ですよ。どうも純正のボタンではなくて、瞬間接着剤で接着されており、ボタンを分離することが出来ません。出来ませんって言ったって、それではタイマーレバーが外れませんし、トップカバーも取ることが出来ませんよ。で、ボタンは外れぬまま、裏技でレバーを外したところです。

Dscf236575 よくよく観察すると・・・何をしてくれるのかなぁ、ボタンホルダーまで完全に接着されています。どうも素性の良くない方は瞬間接着剤がお好きのようですよね。私も全く使わないこともありませんが、1回使ったら、次に使う時には接着剤が硬化しているのが常ぐらい頻度は少ないです。

Dscf236725 なんとか分解してみるとね。ご覧のように内部まで接着剤が回っており、ボタンとしての機能は果していません。そのボタンですが、これはホームセンターに売っているアルミのリベットの頭を黒く塗装してものです。幸いアルミでしたので、ボタンホルダーのネジ山は壊されていいませんでした。

Dscf237154内部の瞬間接着剤を取り除いてあります。ボタンはうちのオリジナルを使います。ブラックモデル用は真鍮素材に塗装を施します。この修理も「あとはどうでも」修理なんですね。普通では二度と分解出来ない状態です。こんなに苦労しなくても、うちに注文してくれればすんだお話なんですけどね。しかし、この状態で銀座のショーウインドウに並んでいるんですね。なんか、タイマーレバーでこの個体のUPを終ってしまいそうです。

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では、おまけでもう一枚。めでたくトップカバーを分離して内部を点検して行きます。露出メーターユニット基板別体タイプですね。しかし、この個体#2799XXは確かに後期の個体ですが、工場で組まれたものではなくて、後にSSで交換されたものでしょう。ピンセット先のビスに塗布されているネジロックが合いません。そもそも露出メーターユニットには塗布された形跡もありません。

Dscf237351 さすが、ベテランマニアさんと言って差し上げたいのですが・・一杯食わされちゃったかも知れませんよ。まぁ、カメラとして完全であればそれはそれで良いとは思いますが・・(とフォローしている私って) 見る人が見るとこの景色はおかしいわけなんですよ。シボ革は両面テープ貼りでこれは良いとして、27万台としては本体が合いませんね。これは13万台までの初期型に属するボディーです。セルフタイマーはジジジッっという改良前のもの。前板を留めているビスがスリ割りですが、これは中期ぐらいまで。しかし、圧板は後期の2点留めタイプですね。これは36万台付近の部品です。上下カバーが殆ど新品と思われる部品というのもミステリーですね。上下カバーなど新品の部品を在庫していた修理屋さんが適当な本体と組み合わせて1台のブラックを作った? これは作ったご本人に聞いて見なければ推理はむずかしいところです。どちらにしても、この本体の製造された頃にはブラックは無いはずですから純正部品で作られたニセモノ(ちょっと可愛そうですが)と言わなければなりません。本体が初期であれば露出メーターユニットが交換されていても納得が出来ます。銀座でいくらで買ったのかなぁ ??

Dscf237455 長くなるのでシャッターは飛ばしますよ。状態は悪くはありませんでした。前板部分ですが、リターンミラーとフレネルレンズは非常にきれいです。ユニットは改良前のタイプですが、これも良好でした。ピント調整をされています。これらのことから前板はこのダイカスト本体とセットのものでしょう。最大に見て18万台ぐらいまでの可能性はあります。しかし、到底27万台には届きません。

Dscf237911完成。セルフタイマーレバーの白の色入れをしてから組立てています。ボタンもうちのオリジナルが付いています。

で、この個体のいわれですが、ボディーは中期までのタイプですが、消耗は少なく保存状態も良い。上下カバーや電池室など、細かな部品に至るまで新品(新品と言うところがポイント)で組まれた可能性が高い。裏蓋も蝶番のピンが一度抜かれていることから、交換されていることは間違いない。と言うことはどう言うことでしょう? 母体となるカメラを純正部品を使用して外装をブラック化して欲しいと依頼された可能性もありますが、その費用を考えれば本物のブラックモデルを探した方が良いですね。どちらにしても、このカメラはメーカーからの部品供給が受けられる環境にいたプロの方が作られた可能性が高いと思います。シボ革の両面テープの劣化状態やハーフミラーの曇り方を見ると5~10年ぐらい前に作られたものではないか? その頃でしたら、修理屋さんに部品として在庫が有ったのではないでしょうか? 少なくともアマチュアが部品を集めて組立てたとは思えません。ニコンのFなども、後年に部品組みのアイテム仕様が作られたようなお話しは聞いたことがありますね。

カメラとしてはO/Hを終えて調子は非常に良い状態にあります。個人として納得されてお使いになられるには何の問題もありませんけど、この個体が正真正銘のブラックモデルとして流通してしまうのはちょっと気になりますね。リペイント機でしたら、どなたが見てもオリジナルではないと判断が出来ますが、ここまで純正部品で巧妙に組まれてしまうと、私も分解してみなければ分かりませんでしたので・・・


ちょっとブレイク オリエント・ラッキーカレンダー

2011年03月26日 12時42分25秒 | インポート

Dscf235798 最近は計画停電などで作業が遅れ気味ですので、O/Hをしたい時計も溜まっています。週末でしたので深夜に1台だけやらせて頂きました。

オリエントの普及機ラッキーカレンダー17石(1960年ごろ)という機械ですれど、香箱の角穴車を留めるビスと裏押さえが折れていて作業が止まっていました。で、やっとジャンクを調達しましたので分解してみると、ビスは問題ありませんでしたが、裏押さえはこちらも折れていました。残念、ここは弱いんですね。まぁ、無くても作動には支障は無いので組んで行きます。

Dscf235842 これが調達したビスです。セイコーではこの部分は正ネジで隣りの小さい方のビスは逆ネジなんですが、この機械は両方逆ネジでした。過去に分解した人が緩めようと締め込んでネジが弱っていたのでしょう。香箱に入ったままの折れたネジは幸い取り出すことが出来ましたので、香箱(ゼンマイ)はオリジナルを使います。

Dscf235936 あとはいつもと同じ作業で組みましたが、この機械はカレンダーが装備されています。1960年ぐらいからなんですね。(防水はまだです)機構は3時の位置の歯車(隣りはアイドラー)により24時間で1回転をして爪により外周のカレンダーリングを進めています。この頃には疲労で目が利かなくなって良く見えていません。

Dscf236051 オリジナルの針(剣)はインデックスと同じ銀色ですが、ちょっと洒落てジャンクの金めっきのものを使います。しかし、過去にかなり乱暴に扱われたために曲がっています。曲がりの修正と研磨をして取り付けます。この時、カレンダー付ですから、針が12時に来た時に日付が変わるように同調させなければなりません。

Dscf236215 露出オーバーでハッキリしませんが、針が金なのでちょっと華やかになりました。風防はカレンダー窓が丸なのが特徴ですけど、ちょっと気に入っています。しかし、クラックがありますので交換をしたいところですが、オリジナルを見つけるのは難しいでしょうね。バンドは当時のオリエント純正新品で、尾錠にはORIENTの文字が入っています。セイコー、シチズンに次ぐシェアのメーカーでしたので、出てくれば価格は安めなんですが、玉数は少ないのです。私はこういうランクの製品が性に合っているのです。


ペンスケ展7緊急支援のPEN-S 2.8

2011年03月24日 20時50分24秒 | インポート

Dscf2351551 最近は計画停電の影響で作業効率が低下しています。都内23区は除外されているのと、停電地域であっても変電設備の関係で、今だ一度も停電していない地区も存在する。緊急事態ですから協力はするけど、ちょっと不公平感はありますよね。米軍横田基地の周辺も停電しないと聞いた。アメリカに気を使っているのかな? テレビを見ていたら港区あたりに住む奥様が「こちらは停電しないから節電なんかしていない」とのたまっていた。あなたのような人々が節電をすれば、こちらはロウソクの灯でカメラを眺めなくて済むんですよ。で、愚痴はこのぐらいにして、ペンスケ展7の作品を撮影中に不調となったPEN-S 2.8 #1097XXが来ましたので、緊急で対応します。ストロボが同調しないとのことですが、シャッターもかなり遅いですね。初期型なのにシャッターは分解されていない模様。初期型で未O/Hでは無理ですね。しかし、保存状態は良好な個体です。画像の中でも初期型の特徴が見て取れます。↓シャッターのハウジングがブラック。↑スプールシャフトが三光ペンなどと同じ初期タイプ。ピンセット先のシャッターユニット留めビスの頭が小さい。

Dscf235213 イレギュラーの作業なので画像は撮らずさっさと組んでいきます。すでにここまで組んでいますが、この個体の地板は加工が特殊で使いにくいタイプでした。スピードが上がらない傾向があるんですね。一部の部品に磨耗が認められましたので修正で組んでありますが、本来は交換した方が良いです。シンクロの未同調は接点の接触不良(真鍮面の酸化)とスプリングの張力劣化ですね。接片の再研磨とスプリングの矯正をしておきます。

Dscf235545 取りあえずメンテナンスでストロボは発光する状態としましたが、今一信頼感が乏しい。左がこの個体に付いていた初期型のコンタクト接点で、右が中期以降のタイプ。形状は同じですが、初期型は接点部分のみニッケルメッキが施されています。右のタイプは全体にニッケルメッキが施されています。真鍮表面が酸化していない新品当時であれば問題はありませんが、長期保管で表面が酸化していますので、ネジ部などに導通不良が発生する可能性があります。そこで、右のタイプと交換をしておきます。途中で表面処理法が変わったと言うことは、当時でも問題はあったのでしょう。後期になると(S3.5など)バイクのコンタクトポイントと同様の接点の突起(凸)が付くようになります。

Dscf235654 ご覧のように発光していますね。よくよく見ると、この個体は初期型としては保管状態は最高の美品でありことが分かります。ファインダーなんか見事でしょ。シャッターは未分解でしたが、かといって、全く分解されていない個体でもありません。キズをつけずにきれいに開けていますのでプロ(これこそ)の作業でしょう。しかし、駒数カニ目ネジはこの頃は孔が非貫通であると思いますが、通常の貫通タイプがついていますね。キズをつけて交換されたものかも知れません。あまり使われていなかった個体の割には、スローガバナーの連動レバーに段付き磨耗があります。よって、ちょっとシャッタースピードが上がりません。特に、一度作動を止めるB(バルブ)のシャッター羽根の開閉が緩慢の傾向にあります。潤滑が足りなかったのでしょうね。


PEN-FT ニ兄弟

2011年03月19日 18時46分21秒 | インポート

Dscf232663 え~と、今日は計画停電の実施が中止となりましたので、今のうちに作業を進めます。しかし、この停電で経済活動に与える影響は大きいと思いますよ。車のガソリンも昨日、地震発生後はじめて入れることが出来ましたが、1時間30分の行列に並びました。

で、PEN-FTが続きます。この個体は#1361XXと最初期ではないけど結構初期ごろの製品。この個体も巻上げレバーが固着してシャッターも切れないお手上げの状態ですね。未分解機かな? と思いましたが、かなり前に分解を受けていますね。観察すると、各ギヤや軸受けは潤滑が全く無い状態。この状態で作動させるのは磨耗を早めるだけです。固着の原因もその辺りにあるのかも知れません。

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モルトの残骸やグリスに付着したホコリなどでかなり厳しい状態です。ここまでの点検では、固着の原因は判りません。プリズムのコーティングも曇りが激しい。ハーフミラーも腐食が進んでいます。初期の頃であれば当然の状態です。ピンセット先に虫の抜け殻がありますね。長期放置されていたカメラでしょう。カメラだけにカメ虫じゃないですよね。

Dscf233053 では、ダイカスト本体と各部品を洗浄した後組立てて行きますよ。すでにスプロケット軸は組み込まれています。電池室のダイカスト側に貼られているモルトも交換してあります。電池接片に新しいリード線を半田付けしてありますが、今回は熱に強いULチューブを使用したため、ちょっと太めです。これらを組立てて行きます。

Dscf233184 FTが続きますので細かな部分は飛ばしますが、シャッターユニットは潤滑不足の状態で、それによりギヤの噛み込み状態となっていました。各部品には損傷はありません。また、巻上げレバーのユニットですが、この個体は故障する前に落下か衝突の衝撃を巻上げ側に受けていますね。ユニットが変形していることも作動不良の一因です。修正をしてありますが・・問題は、手に持っている前板の方です。過去に分解をされていますが、リターンミラーユニットがよろしくない。初期のユニットですと、作動不良のユニットがありますが、このユニットを正常に作動させる(安定性)に苦労しました。現在は正常に作動しますが、将来的(って何時でしょうね)には不具合が出る可能性もありますね。

Dscf233261 ハーフミラーは、製造時期によって仕様が変わっていますが、初期の頃ですと、画像のような銀色(銀メッキなので)のものが使用されています。現存のものはこのような状態となっているのです。これは交換になります。

Dscf233349 リターンミラーユニットの調整に時間をとられましたが、今日は計画停電もありませんでしたので、なんとかこの状態まで仕上げることが出来ました。この頃はすでにセルフタイマーユニットは改良型となっているのが分かりますね。リターンミラーの周辺腐食がありますが、今回は清掃として交換は致しません。

Dscf2336951 1台目は完成で2台目をやります。デジカメ画像ですときれいに写っていますが、兄弟だけにニ兄弟ともかなりきったねぃカメラです。こちらは#2591XXと良い頃の個体ではありますが、消耗も進んでいます。オーナーさんからトップカバーのへこみを修正のご希望ですが、部分と巻き戻し側にもへこみがありますね。しかし、角部分ですから、金属組織が強い力で圧縮されたものですから元には戻りません。出来るだけ歪みを取るようにしておきます。

Dscf234159 う~ん、どうしてもきれいに写ってしまいますね。現物はホコリだらけです。ボトムキャップの接着が剥離しています。これは意外に多いトラブルで、キャップ式の個体(中後期まで)では、かなりの確率で剥離しています。裏蓋で抑えているだけになっているのです。29万台辺りからはキャップではなく樹脂プレートの接着になりますから剥離はしません。

Dscf234438 これでもきれい写ってしまいますね。かなり使い込まれた個体です。使い込まれたからと言って内部はきれいな個体も存在しますが、この個体のようにホコリの混入が顕著な個体もあります。接眼プリズムの状態は特に悪く、コーティングは白化しています。

Dscf234858 ホコリまみれのシャッターユニットを洗浄した後、点検をしましたが、意外に悪い部分はありません。ギヤ軸の磨耗も少ない方です。スローガバナーユニットも良好です。シャッター幕とドッキングしておきます。

Img_3646 で、今晩も計画停電の実施中です。9時20分までの予定でしたが、この後20分で電気が来ました。あ~良かった。

Dscf234979 では、作業を再開します。本体の組立はほぼ終了しています。使い込まれた個体の圧板はフィルムを通したすり傷が多くなりますが、このまま使用するとフィルムに傷が付き易くなりますので研磨をしておきます。

Dscf235096 こんな感じですね。