桜も咲いて春が来ましたね。F1も初戦オーストラリアGPが開催されましたけど、事前の評判を裏切ってトロロッソ・ホンダは惨敗でした。2台のうち1台は完走したけど最下位。もう一台がエンジントラブル(MGU-H)で早々にリタイヤ。速さも無ければ信頼性も無いのでは致命的です。ルノーエンジンに換装したマクラーレンのアロンソは5位入賞。悔しい~。問題はホンダエンジンだったと証明されてしまいました。これでは来年のレッドブルへの搭載はありませんね。それにしてもホンダの技術力って・・技術立国日本は危機的な状態ですね。まぁ、次戦の挽回に期待しますけど。
で、本題。持ってる人は持ってるんですね。私だって数台しか持ってませんよ。三光PENなんですけど3台も。サンコイチで程度の良い個体を作って欲しいとのご依頼です。しかし、戸籍の無い幽霊個体は作りたくないので、元になる個体を選定して、細かな部品は程度の良いものに交換するというスタンスで行きたいと思います。
3台を吟味してこの個体#1101XXをベースにすることにしました。ファインダー樹脂の劣化も少ないと思ったのですが、よくよく観察すると過去に研磨されているようですね。かなり乱暴に・・
そこで、他の2台を調べると、樹脂の白化が少ない方は取付穴部分が欠けていました。そこで、一番程度の悪いもので仕上げることにしました。
研磨した状態。⇧の画像のように研磨をして痩せてしまった印象はありませんね。
対物レンズなどを接着しました。オーナーさんのご希望に「ファインダーがきれいなこと」というのがありましたが、このぐらいで良いですかね。
本体のグレー塗装が一番きれいな個体を選びました。すべて洗浄をして組み立てて行きます。しかし、三光時代のナットのスリ割りは以後のものより細く、標準で使用している工具が使えません。組立工程の簡易確実性がまだ考慮されていない時代の設計に見えます。
スプロケット軸、スプール軸を取り付けました。巻き上げダイヤルのカバーは熱カシメタイプですので本体からの分離が出来ません。モルトを貼るのが厄介です。
#1101XXのシャッターは羽根が解放のままで停止していますが、なるべくオリジナルで組みたいので、このユニットを修理することにします。
分解洗浄をして行きます。
組立完成でシンクロ接点の導通を確認しています。問題なし。
過去の分解によって紙製の遮光カバーは傷んでいますので接眼レンズ部分も含めて新製しておきます。
レンズの後玉は清掃できれいになりましたが、この部分については後期生産機のレンズと交換されているものもありますね。
カム板のメッキは3台とも比較的良好ですのでオリジナルを磨いてそのまま使用します。
見えないところでも差異はあるのですが、良い機会ですから外観から見える後期生産機との違いを書いておきますね。右が三光。みなさんが一番良くご存じなのはレリーズボタン。たぶん設計者の米谷さんが指の感触を確かめながらデザインしたのでしょうね。前後方向に指が滑らないことを重視した気がしますね。カニ目ネジはこの個体は正ネジですが#1157XX付近では逆ネジに変更されています(緩み止め対策)。また、カニ目は貫通していません。(その後は貫通)指標は金色で、これは三光以後もしばらく継続して銀色に変わっていきます。また、駒数板関係の設計が異なるため三光の方が駒数板が奥まっています。
左が三光。巻き戻しクランクは後期とは全く別設計です。ダイヤル本体も肉抜きが無く非常に重く、クランクの部品構成も複雑です。製造コストの制約から部品点数を極限まで減らしたカメラですが、初期には、まだ無駄が有ったということか。以後の仕様が部品点数や組立工数から見ても合理的でしょうね。しかし、三光の構造もある意味凝っていて捨てがたいと思うのですね。距離測定基準線の横線が貫通していないのも三光の特徴。
いわゆる「片耳」という吊環ですね。ストラップを付けて手にぶら下げるカメラと考えれば、部品点数が通常の半分になってコスト低減と思ったのかは知りませんが、ねじ込み式ですから、基準トルクで締め込んで、ぴったり垂直にならない組み合わせもあるわけです。私の製造経験では、嵌合が良くない組み合わせの場合は別の部品と交換して解決することがありましたが、(ネジ切に個体差)たぶん、組立現場で同じようなことをしていたのではと思いますね。鋼製の薄ワッシャーで調整されている個体もありますけどね。よって、以後の2つ吊環となると、トップカバーを締め付けることが出来ないので、ネジを1本追加してあるわけです。また、シボ革も製造時期によって材質の変更があり、そのためかグレーの色合いが違っています。左の以後タイプは材質が黄ばんだのでしょうね。私は三光の色が好きです。
ついでにシボ革ですが、裏蓋には「MADE IN JAPAN」が熱プレスされています。巻上げダイヤルカバーは、この個体は熱カシメによって本体に取り付けられていますが、意外に早くネジ留めに変更されます。成形金型がチープのようで、成形に曳けが目立つのもこの頃です。
これもみなさんよくご存じですね。Flash¬表示。
シャッターダイヤルにはCOPALと彫刻されていますが以後はCOPAL-Xとなります。
⇧上の方で書きましたスプロケットとスプール軸のナット。三光はスリ割りが非常に薄い。専用工具をセットするのにも神経を使って組立工数も掛かるでしょう。左の以後タイプが生産状合理的と思います。
裏蓋のカバーを留めるリベット。右が三光で頭が丸いリベットです。以後は少し大きく台形のリベットになります。カシメの確実性とカメラの座りを改善したのでしょう。
シャッターユニットを取り付ける4本のネジの頭が小さい。シャッターユニットには、常に操作による力が掛かりますので、ネジの緩みが起こりやすいのですが、市場に出た製品に緩みの不具合が出たのでしょうか? 以後は頭の大きなネジに変更されます。また、スプールですが、この個体はグレー色ですが、下の取説に写っている初号機(或は生産試作)では黒になっていますね。実際のところ、破損の多い部品なので、途中で交換されている場合もありますから、良く分かりませんね。以後のタイプでは、スリップ機構を再設計されていますので、互換性はありません。
このように黒になっています。
ということで、当初はサンコイチとか考えましたが、3台共、時代を考慮すると程度は悪くはなく、一部の部品を除いてほぼオリジナルで組み立てました。他の2台もジャンクにするのではなく、メンテナンスをしたい気持ちがありますが、ご依頼がありませんので・・
取説の焦点深度表。
http://www.tomys800.sakura.ne.jp/