コーワSWが2台来ています。いつ見ても変なデザインだなぁ、と思うのですが、定期的に来てくれるカメラなので嫌いではありません。当時としては珍しい28mmを搭載したカメラですね。
外観は悪くはありませんが、シャッター羽根が開きませんね。シャッターユニットはセイコーSLVですからシャッター羽根の張り付きが多いユニットです。その他、巻上げが固着する症状がありますが、巻上げレバー部の二重巻上げ防止機構の作動不良で、リターンスプリングが弱いのも原因です。これは、多くの個体に発生している症状です。
保護フィルターを掛けていなかったこともありますが、レンズは前玉に曇りやカビが発生し易いですね。
広角28mmレンズですので、カメラ自体の厚みも極力薄く設計されており、裏蓋は圧板の逃げを作っているほど。ファインダーも薄く作れるケブラー式としています。
プリズムを取り出したところ。コストが掛かっていますね。状態の悪い個体はあまり見たことがありません。清掃をしておきます。
では、セイコーの機械台に載せて、シャッターのオーバーホールをして行きます。
シャッター羽根の張り付きだけかなと思っていましたが、どうも、そうは問屋が卸してくれないようです。タイマー用のガバナーの動きが良くありません。(ピンセット先の歯車は移動します)
何か無理な力が掛かったのでしょうかね。分解してスムーズに作動するようにしてあります。
一難去ってまた一難。今度は、スローガバナーがいけません。下が組み込まれていたユニット。洗浄注油をしても、スムーズに作動せず、バネでの復帰が止まってしまいます。上が良好なユニット。こういうへそ曲がりは稀にあります。今回は、上のユニットに交換することにします。
完成したシャッターユニットをカメラ本体に組み込んで完成です。他にはメカは無いので、シャッターユニットを供給されれば、意外に簡単にカメラを製造出来た時代ですね。巻上げレバーは程度の良い方に交換してあります。
これは2台目ですよ。こちらのシャッターも羽根ががっちりと張り付いていました。各部洗浄をして、タイマー用カバナーを組んだところ。
で、同じ作業なので画像は省略して完成。各リング部の汚れはこちらの個体の方が汚れていて、洗浄に手間が掛かりました。調子は非常に良いと思います。
化粧プレートと後玉を取り付けてシャッターASSY完成。こちらの方がレンズの状態はよろしいです。
なになに、ブラックにリペイントだって? トップカバーのレリーズボタン座、ファインダー、アイピースなどカシメを分離しなければならないのが面倒ですねぇ。底蓋は凹んでるし・・・カバー内のホコリの混入が激しいです。巻上げ部の二重巻上げ防止機構などが非常に簡単な部品で行われていることが分かりますね。この機構で行くと、レリーズボタンを半押しで離すと、ロックが掛かってしまいます。押し込んだら最後まで押してシャッターを切ることになります。
オリジナルのブラックモデルは、距離リングもブラックなんですね。アルミのパールアルマイトだからねぇ・・・
リペイントの下準備で、トップカバーのカシメ部品3点を外します。底蓋は大きな打痕が有って、全体時にも歪が出ています。画像は凹みを修正したところ。打痕の直接の原因部分は、陥没していますので、ここまでが精一杯です。特筆すべきことは、今までリペイントをした、どのカメラよりも、メッキ厚が厚かったこと。カメラ製造に不慣れなのか、他の国産メーカーの倍程度の厚みがクローム、ニッケル共あります。これはライカより厚いメッキです。ご覧のように、使い込まれて状態の良くないボディーなのに、母材の真鍮まで到達している腐食は皆無です。
手は塗料とシンナーで荒れ放題だよ。では、本体側から組立をして行きます。裏蓋のロック機構ですが、動きが渋いのが多いですね。潤滑をして塗装をしたカバーを取り付けます。
巻上げ側の裏蓋蝶番も塗装しました。
オリジナルは黒アルマイト処理だと思いますけど、再アルマイトはダメージが大きいので、今回は塗装で仕上げてあります。彫刻文字の色入れをして、レバーを取り付けてからグリスを交換したヘリコイド部にドッキングです。
画像が増えますけど、UPしないと皆さんにニュアンスが伝わらないので続けます。シャッターメーカーから既製のシャッターを調達して、自前のボディーに搭載するためには、チャージとレリーズの連動を考えなくてはなりませんが、これが各メーカー独自に苦心しているところです。SWでも、リング状のリンケージを2つを使って対応していますが、中間に位置決め付きのスペーサーが入りますので、シャッターを本体に取付けるのは位置合わせに苦心します。この個体では、チャージのレバーが曲がっていますね。無理な巻上げをしたのでしょう。熱処理が入っていますので、修正すると折れる危険性があります。
シャッターを搭載して連動を見ます。清掃済みのファインダーも取り付けて行きます。
トップカバーは色入れ、3点部品の取り付け、カウンター窓の接着をします。
アイピース側から。このカバーはプレスに難があって、裏側から叩いて修正をした後、梨地を打っている形跡があります。平面の中央部分が陥没傾向にあることも特徴で、少数生産なので、金型を修正せずに手修正で仕上げていたように感じます。(私の経験からの感想です) メッキ厚が厚めなことも、歪みの修正目的もあったのかも知れません。
このカメラは慢性的にトップカバーの巻き戻し部の落とし込みと、それを受ける本体側の勘合があっていないようで、どの個体にも軸部のは大量の高さ調整用ワッシャーが入っています。この個体では1.1mm分。それによって、トッフカバーを留めるナットのねじ山がひと山掛からない状態です。部品精度が甘いと、最後の組立で破綻が来るものです。
トップカバーを取り付けました。留めネジの位置はPENの流儀に似ています。留めビスが欠落していますので、PENから流用しています。
底蓋を取り付けました。あれだけへこみが大きかったですから、この程度で精一杯です。
これで完成ですね。巻き戻しダイヤルに比べて、巻上げレバーの光沢があり過ぎで、梨地の粒度の違いかメッキ厚が厚いのか? どちらにしても品質管理が出来ていないわけです。
上面から。
これでクローム、ブラックが揃いました。このカメラのホールド感が何故か慣れた感覚なのはどうしたことだろう?と考えましたら、笹の葉状のラウンドした本体、中央に段付きのデザインがPEN-F系に良く似ていると気がつきました。おまけに、巻き戻しダイヤルまで、PENと同様に中央が窪んでいます。PEN使いさん達には、違和感の無い感触のカメラですね。
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