最近、PEN以外のリペイントのお問合せを多く頂くのですけどね。気が乗らないのでやらない。で、自分所有の時計の未整備が溜まっていますのでやって行きます。まずは、セイコー・スーパーです。この機械は、私とほぼ同じ歳なのでライフワークとしてレストアしています。いろいろなバリエーションがあるので、飽きないモデルです。この個体は1954年1月製で、私が1ヵ月年上です。文字板や風防は、かなり黄ばんで時間の経過を思い知らされます。しかし、ケースはセイコー純正のステンレス製のため、目立ったダメージが無いのが良かったですね。状態は、全く不動。リューズも固着して動かないというところ。殆どの場合、リューズの部分から水が浸入して、巻上げ歯車関係が錆び付いているのです。
スーパーでも初期のモデルなので、石の数も少ない頃です。三角形の受けの二番受けの穴石は人工ルビーが入っていません。テンプは、チラネジ付きで、耐震装置はありません。長期に作動しない状態でしたので、組んだ直後のザラ回しは重い感触です。
注油をしてから作動させます。エージングで、テンプの振り角も大きくスムーズに動き始めました。姿勢差に対する変化は少ないようです。
巻上げ部分にダメージが集中していました。リューズはオリジナルではなくて、マーベルあたりの部品でしょう。巻き芯を保持するオシドリとオシドリピン(ケース内)は腐食が激しく、不具合となるため交換しています。そもそも、この個体は、分解しようとしてリューズを抜こうとオシドリピンをドライバーで回したところ、錆び付いて固着していたので、スリ割りが折れて、分解不能となったために、オークションに出されたと推測します。その程度で分解を諦めるのなら最初から分解しないことです。
ケースは大きなダメージは無く、研磨で良好となっています。
裏蓋の摩滅はあまりありませんね。セイコー純正の鶴のマークが入っています。文字板は、上塗りのクリアーが黄ばんでいますが、醜くは無いので、そのまま使用します。それほど高性能ではないのに、外周の秒目盛は五等分されています。これ以前の製品でも、クロノメータと印刷されている文字板を見ますが、クロノメータ規格というわけではなく、そのぐらい正確ですよ。という程度の意味です。のんびりした時代です。秒針が他のモデルよりも長くて、秒目盛の位置が見やすくなっています。だから、意味はないってば・・
しかし、バカにしたものではありませんぞ。昨日から、平置きで日差+10秒と優秀です。ゼンマイ一杯の持続時間も申し分ありません。風防は、適合した新品の持ち合わせが無かったため、とりあえず再使用としました。なるべく部品を換えないほうが時代の雰囲気があると思います。まぁ、そのうち、リューズと一緒に交換するかもしれませんけどね。次にも1956年製のスーパーが控えています。スーパーのコレクションが溜まってきましたよ。
次はLMロードマチックです。実は、高校生の頃に所有していたセイコー5DXと良く似たデザインだったので仕上げることにしました。ケースは、大きくラウンドしたタイプで、文字板はブルーというよりは紺のソリッド色です。無傷であった風防のガラスをケースからの分解時に割ってしまいました。すでに純正のガラスは在庫が無くて、社外のこのモデル用があったので入手しましたが、板厚がちょっと厚いですね。予備の部品取り機も厚いので、この個体に接着されていたガラスが薄かったのかも知れません。私は薄い方がフラットな感じで好きだったのですが・・・ケースとベセルは研磨済み。手に持っている風防ガラスを接着します。
この56系の機械で問題になるのが、カレンダーを早送りするための揺動レバーという部品。これが、かなりの割合で不良となっています。この個体も不良でした。日車を回す爪のスリップが早いために日車を押し切らないのが原因ですので、ポンス台にて、少しカシメを矯正してやります。今回は、成功しましたが、重症の場合は直りません。天下のセイコーとしては、考えられないような耐久性のない設計と思います。
途中の画像を撮り忘れました。当初は、機械にセットの左の文字板で組んでいましたが、風防ガラスを通すと紺よりも黒に見えるのと、秒のドットが消えている部分と、インデックスのくすみが目立つため、急遽、部品取り機の文字板を使用しています。まったく同じモデルですが、微妙に色が異なっています。使用条件の違いというよりは、元々、微妙に色と反射の見え方が異なっていた文字板のようです。針とリューズも交換しました。やはり風防ガラスの出っ張りが微妙にバランスを崩しているようで、オリジナルのガラスを破損したのは失敗でした。まぁ、雰囲気は、高校生の頃のセイコー5 DXに近いので、早速普段使いで使います。
そこに、古いPENのお客様から、国鉄備品のセイコーのストップウォッチが届きました。ご親戚の方が使用されていたものだそうです。国鉄物と言えば19セイコーの懐中時計が有名で、コレクターさんも多く、市場にも流通していますが、ストップウォッチは珍しいですね。運転士や駅務員ではなくて、機関庫などの整備で使われた物でしょうかね。昭和26年の採用ですから、↑上のスーパーと同じ時代の製品です。普通、懐中時計の場合は各地方の鉄道管理局の彫刻も入っているものですが、この個体にはありません。状態は不動ですが、稀に針が動くことがあるとのことで、機械としては生きているようです。
裏蓋を開けると、裏に42.10.19 校正? (不鮮明)と捺印されていますので、1967年までは現役だったようです。時計と比較して、ストップウォッチは、機能が限定されていますので、部品構成はシンプルです。特に錆などの損傷はありませんので、全体のオーバーホールと注油をして行きます。
小さな腕時計に慣れていると、大きな機械はストレスがありませんね。構造は時計と一緒です。しかし、一つずつの部品が大きく、がっちりとしていますので面食らいます。
5振動の機械ですね。歩度調整をして行きますが、短時間の測定なので、あまり影響は無い気もしますね。
国鉄職員ですと白の綿手袋で使用されていたのでしょうかね。元気良く、現役復帰しています。
http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/