その前に、先日入手したセイコー・スーパーの初期型をO/Hしています。この個体は、埼玉県の秩父市と2つの村が合併した時の記念品のようです。ケースもステンレスだし、石の数も多いので気張りましたね。しかし、非常に組みにくい個体でした。上面の受けがありますが、これが全く精度が甘く、ダボ孔にもスムーズに入らないので、当然歯車のホゾにも入ってくれません。30分ぐらい苦闘してやっと入ったところ。スーパーにしては珍しいダメユニット。テンションを掛けてテンプにトルクが伝わっていることを確認します。
文字盤は汚れがあって、何故か長針が欠落していたというジャンク品。同時期のジャンクから短長針を移植しています。秒針は塗装剥れがありますので一緒に交換と思いましたが、なんと穴径が異なっており使えません。とりあえずこのまま再使用としておきますが、色としては、鉄道模型のスカ色が近似色ですね。文字盤の清掃とケース・風防も軽く磨いてあります。
初期の小型ケースですから、こんなに小さいのです。リューズはマーベルか何かに交換されている可能性があります。ラグ幅15mmですので、ベルトを探すのに苦労します。
裏蓋です。合併記念 秩父市と彫刻されています。秩父は、私もC電子の独身寮に居ましたのでご縁があります。1954年5月製ですが、調べてみると、歴史的に符合しています。
では、レポです。じつは3台来ていまして、どれか良さそうな個体を選んで仕上げるという寸法。まぁ、どれをベースにしても大差は無いので、エイヤッとこれに決めた。しかし、露出計不動と絞り羽根が動いていませんね。
露出計をチェックしてみると、メーターは正常でセレンの感度不良。かろうじては発電していました。そこで、正常に作動をしているユニットを調達します。ご覧のように、セレンの受光部とファインダーが一体モールドされています。
古いので劣化したモルトが悪さをして錆が発生していますね。PENと違って、裏蓋の接合部にもモルトが貼ってありましたので、全て取り除いて清掃、貼り替えをしておきます。
シャッターを分解してみます。絞り羽根が動かないのは、古い油で羽根が張り付いているもの。それを無理に動かそうとしてリンケージにダメージがあるものです。
全て洗浄して組み立てました。しかし、絞り羽根とシャッター羽根が二階建て構造で組むため、なんと組みにくいシャッターなんだろう。慣れていないせいもありますれけど、PENの合理的な部品構成を改めて感じますね。まぁ、ごつくてトルクに余裕はあるので、故障は少ないのではと思いますけどね。でも、私の好みじゃないね。
カム板の化粧プレートに腐食がありましたので、程度の良いものと交換して組んであります。ピンセット先の針金(バネ)はレリーズボタンの復帰用ですが、なんとも、素人改造のようなやっつけ設計ですね。これは、小さなサイズに35mmの大型カメラの流儀で設計したことによるツケでしょうか。
底部から見ると、チャージのリンケージがあります。これも大型カメラと同じ流儀。PENの設計は、簡略設計により、極力、部品点数を減らして同じ作動を実現し、コストの低減と軽量化を計るという点で、根本的に異なると感じます。当然カメラの重量は増加をするため、軽量化(或いは軽快に見せるため)のためか、上下カバーをアルミアルマイト製としてあるため、殆どの個体にへこみがあるのはキヤノンデミと同じ。オーナーさんが選択した底カバーにも、中央部に大きな歪みがあります。
フィルムカウンターの機構も、古い一般的な設計。部品点数も多く、作動はガチャガチャ、クツワムシのようです。ここで、上カバーを付けると、裏蓋を開けてもカウンター目盛がSに復帰しないという問題が発生。いろいろ調べてみると、このカウンター板は歪があってきれいな水平で回転していない。そこに、ある位置(16)に来ると↑のバネと接触をするためでした。
PENには無い特徴は、露出計を内蔵して手動のプログラム式を採用しているところ。橙のメーター指針に緑の針を合わせれば適正露出。ダイヤルにはライトバリュー表示があります。
今回は、ベースに選定した個体に、他の2台の程度の良い部分を移植すると言うもの。残った2台もジャンクとはしません。PENブームを見て慌てて製品化したという感が強いカメラで、市場にも多くは出なかったと思われますので、今となっては希少性はあるのでしょうね。