今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

今年最後のOM-1の巻

2016年12月30日 15時55分18秒 | ブログ

 今年もいつの間にか押し詰まってしまって、このOM-1が最後になりますかね。私、OM-1の巻き上げレバーの化粧プレートを剥がすのが苦手なんですね。で、この個体は過去に修理を受けていまして、たぶん新品に交換されたプレートの接着もオリジナルより強く、無傷で剥がすのに半日掛かってしまいました。やっと剥がすのに成功と思ったら、ナットのカニ目穴に接着剤が塗布されて塞がれています。やれやれ、カニ目工具でもビクともしませんね。

ナットの下の黒い樹脂カバーと接着されているのです。

 

 

ピンバイスで接着剤を取り除いてやっと分離に成功しました。で、この個体は若い女性の方のお譲りなるとのことで、剥離したシボ革の接着と点検のご依頼でしたが、電池を入れても露出メーターは動かず、シャッターは低速はスローガバナーが粘って止まってしまいますね。スローガバナーを洗浄するためにユニットを取り出します。

OM-1のシャッター幕は殆ど劣化が見えますね。

 

 

超音波洗浄と注油をして組み込みました。

 

 

前板を組み込んだところ。配線とペンタプリズムを組み込みます。

 

 

 露出メーターは回路の見直しで修復しました。このペンタプリズムはSSで交換を受けているようです。

 

この頃のシボ革は、それまでのゴム糊ではなく基材なしの両面テープなので、長期間を経過すると接着が剥がれて来ます。しかし、生地にガラス繊維が入っていますので、PEN系のような収縮は免れています。

 

セルフタイマーの黒い座はネジ留めの応力で割れていますね。

 

 

清掃をしたスクリーンをセットします。

 

 

これで完成です。この個体が1,000円のジャンクだったとは・・掘り出し物だったと思いますね。と言うところで、これで今年の作業は終了とします。一年間、当ブログにお付き合いを頂きましてありがとうございました。では、皆さん良いお年をお迎えください。

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世の中御用納めPEN-EE-3の巻

2016年12月28日 20時18分47秒 | ブログ

今日28日は御用納めの企業が多かったようですね。太平洋側は元日までは晴天が続く予報ですが、今日も風が冷たかったですね。私の方はボチボチと作業はして行く予定です。で、PENもEE系はメンテナンスご依頼は少ないですが、EE-3は1973年の発売ですね。シリアル№は#55681XXと桁が多く、EE系は大量に販売されたんですね。比較的新しい製品なので、状態の良い個体も多く残っているようです。この個体はシャッターボタンが黒の後期型です。

この頃になると、どこまでコストダウンが出来るかのサンプルのように設計の簡略化が進んでいますね。フィルム押えの板バネは厚いモルトになっています。

 

ホットシューの接点部分の黒樹脂が白化するものが多いです。シューホルダーも平板を折り曲げ加工されたもの。

 

では、すべて分解洗浄をしてから組み立てて行きます。まずはモルトを貼りますが、古いモルトの接着剤が強固で、きれいに取り除くのに手間が掛かりました。

 

後ろは以前のPENの標準設計。スプールの軸受けは真鍮の別部品ですが、手前のEE-3はダイカストに直接軸を嵌合させています。設計寿命まで持てばよいという判断でしょう。

 

従来は巻上げダイヤルと別部品のギヤは一体モールドです。スプールギヤの樹脂化はPEN-S3.5の中期から使われています。

 

少ない部品点数でよく考えられた駒数ユニットですが、本来は留めネジ3本の設計が2本に省略されています。

 

レンズにはカビが多いですね。この種類のカビは殆ど清掃出来ます。

 

 

後玉も同じようにカビがあります。すへで清掃できれいになりました。

 

 

シャッターユニットの清掃注油をして本体に組み込みます。比較的新しいためセレンは良好です。

 

EE精度を点検します。感度低下は無く良好でした。

 

 

元箱はうちの資料用ですが、初期のEEなどに比べて簡単な箱になっちゃいましたよね。取説も冊子ではなく、1枚ものですからね。まぁ、永く生産したメーカーですから、どこまで手を抜い・・元い。コストダウンできるが知り尽くしているんですね。性能的にはフラッシュマチック用の目盛りが追加されるなど使いやすい改良はされています。

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珍しいねPEN-EMの巻

2016年12月26日 18時10分08秒 | ブログ

PEN-EMは意欲作ではありますが、当時の電池(単三X2)で巻き上げ全自動はちょっと無理があるような気がしますね。この個体はホットシュー付の後期型ということになりますが、絞り優先電子シャッターのコパル・エレクには「65-12」の捺印があります。で、電池室のターミナル部破損をしています。破損の前までは作動機であったとのことでしたが、シャッターは開きませんね。

単三電池を縦入れの接点部は奥まっていて、前面カバーなど全てのカバーを外さなければなりません。取り出した接点部。当初は、電池液漏れのためダイカスト本体が腐食して粉を吹いていると思いましたら、あらら、樹脂の基板が侵されているものでした。

接着により脱落したターミナルを修復してからリード線を半田付けします。透明テープを貼って絶縁を完全にしておきます。

 

 欠損部分に黒塗装をして完了。見えないけどね。

 

 

電磁コイルは生きています。結局シャッター羽根の張り付きと駆動メカ部分のフリクションの増大が原因でした。絞りダイヤルに連動して4時~6時の抵抗値が変わります。短絡をするとシャッター羽根は閉じます。

 

1965年製のトランジスタがパンクしていないのが不思議なくらい。電子素子の設計寿命はとうに過ぎていることでしょう。

 

PEN-EE系に似たファインダーには虫の抜け殻入り。遮光紙で密閉されているのに、どこから入ったのでしょう?

 

 裏蓋のモルトはすべて取り除かれていますね。上はうちの資料機ですが、全面にベタで貼られたモルトはエレガントではないですね。劣化したままで放置した個体は本体塗装を侵してしまいます。

 

このようにオリジナルと同様に貼ってあります。

 

 

内部もきれいですね。右端の電池室部分の塗装が侵されている個体が多いです。

 

電源が3Vなんでねぇ。巻上げはゆっくりですが、模型用のマブチモーターかな(笑)フィルムカウンターは減算式で、0では作動しませんので、予め枚数をセットしてから作動させます。

 

カバーのメッキに初期の腐食が出ていましたが、清掃できれいになりました。きれいな個体で完全に作動する個体は非常に貴重ですね。電池を内蔵した重量は実測で590gでした。やっぱり重いですね。

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頑丈ボディーのコニカ Ⅲの巻

2016年12月22日 22時53分25秒 | ブログ

その前にと、今日の午後は古い腕時計のブルースチール針を青焼きをするめのフライパンを作っていました。小さな10型の機械が主ですので、針も短いので、手持ちの30φの真鍮棒からミニ旋盤で削り出しです。肉厚を厚くするのは温度を均一に保持するため。中に切削で出た真鍮の切粉を入れます。これも熱の伝導を安定されるため、でしょうね。時計師さんがやっている方法をパクりました。あとは、取っ手をつける加工をする予定。

で、たまに見ますね。コニカ Ⅲ型。昭和30年前半のカメラだと思いますが、当時のカメラはとにかく頑丈で重い。高級品ですから重さもステータスなんでしょうか。2段巻上げのセルフコッキング。シャッターは作動する時としない時があります。ファインダーは汚れがひどい状態。メンテナンスで何とか復活させようかと・・

シャツターユニットを分離しました。

 

 

チャージ機構のグリスはカラカラの状態。

 

 

シャッターはSEIKOSHA-MXL. レンズはHexanon 48mm f2と明るいレンズ。

 

 

今日は作業が進んでいません。なぜか? シャッターユニットからレンズが外れなかったのでした。通常の手順ではうんともすんともネジが緩みません。それではと、セイコーの時計風防を外す専用工具にレンズの外径に合わせてジュラコン材を旋盤で加工をしてアダプター(白い部分)を作りました。すると1秒でネジは緩みました。やはり工具は大事だわ。

あぁ、シャッターも精工舎だったのね。それなら緩んで当然かもね?。MXLは見慣れた眺め。この頃のシャッターはなんと作りが良いことか・・

 

 完成したシャッターに清掃をしたレンズをセットしてあります。チャージのリンケージの清掃と新しいモリブデングリスを塗布した本体とドッキングします。

 

あぁ、この頃のファインダーはすでにプリズムではなくなっていますね。随分と寂しい眺めのような・・二重像のハーフミラーに注意しながら清掃をしました。

 

フィルムカウンターは順算式でスプロケット軸の真鍮カムによって作動します。接触面にグリスを塗布。

 

縁日物なので、かなり汚れと初期腐食がありましたので、頑張って磨きましたので光ってアンダーに写っています。フィルムカウンター座もピカピカです。

 

細かな部品もすべて磨き出しました。

 

 

巻き上げレバーの作動が重い原因の一つ。底部のリンケージ部もグリス切れでした。すべて清掃をしてグリスアップでスムーズ(でも重い)になりましたかね。

 

黒いライトバリューリングがあるのでリングの幅は狭く操作はし難いかな? マニュアルで操作しなければ良いのか・・指標の色が抜けていたので入れておきます。

 

フィルム室内部はきれいで、あまり使われていませんね。二重像の蒸着は中央部分のみ。

 

縁日物で当初は付属のフィルター狙いで入手したジャンクですが、立派になりましたね。入手価格を聞いたらびっくりしますよ。縁日物恐るべし。

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下手人はネコ PEN-Dの巻

2016年12月18日 21時18分56秒 | ブログ

関東地方は冬晴れが続いおり、日課のウォーキングも寒くて億劫ですが、カミさんに買ってもらったユニクロのウエアは少し歩くと汗をかくほど暖かいです。で、今日の当ブログは訪問者数は減ったのに順位は5200番に上がっていました。どうも閲覧数の順位みたいです。これ、どう違うのかな??

まず、Zuiko 20mmの清掃です。使い込まれたレンズで、後玉のカビと中玉のクモリ、ヘリコイドグリスの硬化などがあります。

まず、マウントの取付けネジを見ます。過去に分解を受けていますね。

 

 

結構な汚れです。ヘリコイドグリスも変質しています。

 

 

中玉のクモリは持病ですが、この個体は幸い清掃できれいになりました。

 

 

次は、過去にオリーブでリペイントをしたPEN-Dですが、オーナーさんの飼い猫ちゃんが棚に飾ってあったPEN-Dを床に落としてしまったとのことです。シャッターが不動になりました。グスン。

PEN-D系は巨大なレンズのためレンズ部が重く、落下をするとレンズに受けるダメージが大きいのです。特に、シャッター地板のレンズを取り付ける部分が非常に薄い設計で、強い衝撃を受けるとクラックが入ってしまうのです。元々、PEN-S程度のレンズしか想定していないシャッターを発展使用していますからね。無理なんですね。

シャッター単体にしても正常に作動しません。地板の外観にはクラックがなく、ほっと安心をしたのですが・・あぁ、ダメですね。シャッター羽根を作動させるリングが円周方向に動くレールの一か所に地割れのようなクラックが発見されました。

縁にも上方の向かってクラックが入っています。これによって地板に歪が起きて、シャッター羽根が正常に作動できなくなっています。これは地板の交換をする以外にないのです。ニャン太では叱れないしねぇ。

 

PEN用にコパルに製作依頼をしたが、初代PENには間に合わずPEN-Sから搭載された#000シャッター。コンパクトに製作するため地板も薄く設計されています。その基本設計はそのままでPEN-Dにも搭載されたことから、重いレンズに衝撃を受けると地板に損傷が起きるのです。で、オーナーさんとのご連絡がつかず、やっとご連絡がついて、ご所有の他のPEN-Dからシャッター一式を交換することになりました。到着までしばし作業中止・・。

やっと到着しました。別の作業をしていれば良いのですが、気持ちが切れてしまうのでやりません。部品調達用の個体はジャンクという訳ではなく保管中の個体とのことでしたが、1/500がデジカメ1.6秒のスピードで解放に写ってしまいます。全然眠い状態なのでオーバーホールをして搭載します。

オーナーさんは、交換用のユニットの方が距離のクリック感がしっかりとしているとのことでしたが、クリック感はピンセット先の溝に板バネが落ち込むだけの構造で、返って潤滑が切れている個体の方がクリック感がはっきりしているのです。

シャッターの地板。こちらはクラックなどはありません。

 

 

どんどん組み立てて行きます。絞りダイヤルはこの板バネによってテンションを掛けています。この個体は3個が組まれていますが、個体によって絞りの作動重さが異なるため、1個や2個の板バネとなっている個体もあります。組立作業者が感覚によって板バネの数を選択していたのでしょう。

レンズも曇っていますね。

 

 

前面カバー(距離指標)も程度の良い方を使います。

 

 

シボ革を貼りました。ここのチャージコロは紛失し易い部品です。シャツターユニットを交換していますので、PEN-D系は特にチャージの関連機構の調整が必要になります。

 

シャッターユニット内にも設計変更箇所がありましたが、巻き戻しダイヤルにも変更があります。ノブの巾が違うのと、➡の表示位置が異なります。

 

まぁ、思わぬ災難に遭った個体でしたが、何とか復活をすることが出来ましたね。猫ちゃんでなくとも、最近は地震の確率も高いですから、棚に飾っておくのは考えものです。皆さんも注意しましょうね。

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