今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

コダック・シグネット35 2台の巻

2021年07月28日 22時00分00秒 | ブログ

オリンピックは日本選手の金メダルラッシュが続いていて盛り上がっていますね。特に女子柔道は幾つメダルを取るのでしょう? 前回の東京オリンピックの時は女子柔道は無くて男子の軽量級、中菱級、重量級、無差別級だったと思います。東京大会から正式種目となった柔道は、完全制覇が命題でしたが無差別級で神永選手がオランダのヘーシング選手に袈裟固めで破れました。いくら柔道と言ってもあれだけの体格差では、抑え込まれたら外すことは出来ないと子供の私でも分かりました。あれは悔しかったですけど、試合後に取ったヘーシング選手の態度は立派だと思いましたね。その後、プロレスラーに転身したのはちょっとがっかりした記憶があります。76歳で他界されています。聖火台までの長い階段を一気に駆け登った聖火の最終ランナー坂井義則さんも他界されていて私の中の東京大会が遠くなって行きます。

で、腰痛が悪化して通院したりで作業は進んでいません。販売用のコダック・シグネット35を2台同時に仕上げます。海外から素材として輸入された個体ですので、鋳込まれたままのアルミダイカストが酸化しています。このままでは商品になりません。

酸化と汚れがひどいのとレンズも汚れています。一皮研磨することにします。

 

 

片方の個体はステンレスの裏蓋ロック(吊環)がへこんでいます。こちらは右のロック側です。

 

こちらは左の蝶番側。同じようにへこんでいます。ステンレスは硬いのにどんな扱いをしたのでしょうね。こちらは本来は分解出来ませんが強引に分解をして荒修正します。

 

シャッターは両方とも不動で、内部も汚れてはいますが、構造が簡単なので清掃と注油で復活します。たぶん・・

 

距離計部分の部品構成か2台で異なっていました。設計変更をされているようです。こちらの個体はすでにハーフミラーが交換されていてすごく薄い板厚です。オリジナルは1.5mm程度あります。もう一台の方はハーフミラーはオリジナルのままでしたが、蒸着メッキが完全に茶色に風化していて使えません。交換します。

距離計の調整は、この指標の裏に隠れています。

 

 

ハーフミラーが規格より薄いので縦ズレ調整がシビアです。のロックネジを緩めてで調整します。

 

 

フィルムを装填していないとシャッターが切れません。前面底部の二重露光レバーをスライドさせればシャッターは切れますが・・

 

 

レンジファンダー窓の防眩黒塗装が剥離しているのが気になります。塗膜が古いので拭くと簡単に溶け出してしまうのです。

 

こんなもんかなぁ? 修正をしておきました。商品ですから化粧直しは大事です。

 

 

では、もう一台の方のハーフミラーを交換します。オリジナルは板厚1.6mmありました。完全に劣化していて拭けば素通しガラスになってしまいます。

 

最初の個体とはハーフミラーのホルダー部分が異なります。縦調整はのネジで行います。その他、フィルムカウンターが進まない不具合がありました。画像の右側部分がカウンターギヤを作動させる部分です。

 

いろいろあって2台の美品?となりました。

 

 

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ローライ35の整備の巻

2021年07月26日 21時10分00秒 | ブログ

オリンピックは日本選手も頑張っていますね。しかし、水泳はやはりアメリカが強い。前回の東京オリンピックの時もアメリカ選手団はティーンエージャー中心で大活躍をしました。泳げは「いっちゃ~く、ドン・ショランダー君アメリカ。じか~ん、53秒4。これはオリンピック新記録であります」の連続で表彰式ではアメリカ国歌が流れるのが定番でした。その時の惨敗から山田スイミングクラブのような強化クラブが出来て、子供の頃からの英才教育で優秀な選手を育成するようになったのでした。

で、ローライ35の販売用の整備をします。実動なので大きな問題は無いかと・・まず、ジャーマニーの個体をざっと状態を見て行きます。定番はヘリコイドグリス抜けです。

 

レバーアテが欠損してネジをねじ込んであります。これでは商品にならないので製作して交換します。

 

トップカバーの角アタリですが、過去に修正を試みたようで凸になっているところがあります。この場合、アイピース側も盛り上がる変形がありますので修正しておきます。

 

メーター窓も貼り直されていて接着剤で樹脂が溶けてメロメロになっています。

 

電池室からの回路が導通不安定ですので修正をしておきます。

 

 

画像では写りませんがとにかく手油で汚れています。これでは買ってもらえません。シボ革を清掃しておきます。

 

ジャーマーニーですけど、このファインダーがプリズム式だけで後の変更はすでに行われている個体です。

 

メーターガラス(樹脂製)は接着剤により溶けて修理をした指紋が残っています。これは研磨をしてから接着します。

 

レンズの汚れも多いですが清掃で良くなりました。

 

2台目はシンガポールのブラックです。

 

 

普通、接眼レンズの固定は両肩の熱カシメですが、この個体のようにエポキシ接着の場合もあります。分解はこの方が楽です。

 

露出計は作動していますが、絶縁シートが劣化をしていてじきにボロボロになってショートしますので交換をしておきます。


シャッターテストをしてみると、カメラのレンズを天に向けると低速(1/2秒)が速く切れてしまう症状有り。レリーズボタンを押すとのレバーが下がりアンクルがガンギ車に連動するはずがアンクルの動きがスムーズでないため遅延が働かないもの。

巻上げギヤ関係とスローガバナーのメンテナンスをしてトップカバーを閉めます。

 

レンズはSクセナーが付いている個体です。

 

 

汚れが目立ちます。清掃でかなりきれいになります。

 

リヤマウンティングのネジを締める時はシャッター羽根を動かしながらでないと噛み込んでしまうことがあります。

 

Sクセナーレンズの違うところ。あれ、リング留めネジの1本が完全に抜けています。

 

 

これで良いかなと思いましたら裏蓋がへこんでいました。

 

 

裏側からの方が良く分かりますね。これを修正しました。


 

これでかなり良い個体になりました。販売商品の日常メンテナンスでした。

 

 

 

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美品なのに液漏れローライ35Sの巻

2021年07月24日 21時00分00秒 | ブログ

昨夜の開会式見ました? 私は最初だけちょっと見ましたが、今のスタイルはあぁいうのでしょうね。私の世代だと「ちゃんと分列行進してこい」とか思っちゃいますけどね。今日から本格的に競技が始まりましたが、重量挙げの三宅選手や体操の内村選手は残念でした。ピークを過ぎた選手には一年延長は長かったと思います。実績のある選手に頼るのは前回の東京オリンピックと変わらないと思いました。当時、水泳の山中聡子さんや体操の小野喬さん(鬼に金棒小野に鉄棒)はローマオリンピック以前から活躍した選手ですが、期待された東京オリンピックでは残念ながら良い成績は上げられませんでした。オリンピックの大舞台ではベテランより若い力が活躍すると子供心に思いました。私とすれば「三宅」と聞けば前回の東京オリンピックで重量挙げで金メダルを獲得した三宅義信選手です。金メダルを取りそうな状況となったので教室の授業を止めて視聴覚室のテレビで観戦しました。その娘さんが35歳での出場とのことで「だれか後継者がいないのかよ」と思いましたね。ボロボロで引退は可哀想です。

で、本題ですが、使用感のない美品のローライ35Sなんですが、残念ながら電池の液漏れなんですね。普通は露出計基板の損傷などとなるのですが、この個体は液漏れのガスがカメラ内に回っていたようで、巻き上げが完全に固着しています。露出計もダウンです。

固着していた巻上げギヤをやっと分離しました。軸が完全に腐食しています。直接漏れた液が掛かった訳でもないのにすごいですね。

 

クロメート処理のギヤ地板の裏側まで激しく錆びています。

 

スプロケット軸のクラッチギヤが固着していた上下に動きません。

 

 

ファインダーのレンズを拭くとコバルト色のような汚れが付きます気化したガスがファインダー内部まで侵入しています。


この個体は使用感が少ないので未分解と思っていましたが、巻上げのタイミングが変です。過去に分解を受けているようです。


いろいろあって、基板の修復、巻上げ機構の洗浄グリス、スローガバナーの洗浄注油などで何とか作動するようにしました。

 

レンズ内もガスによる腐食が見えますが、あれっ、距離リングが回らないよ。事前に見逃していました。ヘリコイドまで腐食されているようです。

 

何とかシャッターユニットを取り出しました。レンズの状態が良くないですね。

 

 

後玉のコーティング劣化、汚れやホルダー部分もガスで腐食気味です。シャッター羽根や絞り羽根を分解して洗浄します。

 

前玉の内側のコーティングもガスの影響はありますが、何とかなるでしょう。ヘリコイドネジ部はラップ作業で動くようにしました。

 

最後にトップカバーを取付けて、巻き戻し軸をセットしようとするも入らない。裏側からなら入ります。軸の先端部が腐食で太っていたのが原因でした。軸を交換します。

 

電池の液漏れのダメージが出やすいカメラですがそれにしても今回のダメージは多岐に渡っていましたね。私もここまでは初めてです。まぁ、何とか直って外観は美品ですね。

 

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貴重なMAITANI-FTの巻

2021年07月19日 17時30分00秒 | ブログ

この後期型になるPEN-FT #3628XXは今となっては貴重な個体となりました。状態は後期型としてはあまり良好ではなく、巻上げのゴリツキ、ハーフミラーの劣化などが顕著です。

 

設計者のオリンパス米谷氏は晩年精力的に講演会を開催していましたが、この個体は1998年7月12日に東京・カメラ博物館で開催されました講演会のおり、オーナーさんが直接サインを頂いたものです。じつはその会場に私とMazKenさんも居たのでした。講演前にカメラ博物館さんのご配慮により米谷氏に対して取材をさせて頂いていました。トップカバーにサインをすることが多かったと思いますが、この個体は内部にしてありますね。クローム面は超硬ペンでも硬いですからね。では、完璧に仕上げないと・・

最終号機は何番台かは確認していませんが40万台の個体は存在します。36万台も最終に近い頃ですので新しいので未分解と思い込んでいましたが分解修理を受けていました。ファインダーハウジングの遮光テープが剥がされている。露出計の基板を改造されている。ストロボリード線が潰されている。などが確認出来ます。


電池室からのリード線が断線したようで、別のリード線と半田付けしてあります。これは新製します。

 

後期型には珍しい駒数ガラスの劣化(ワレ)。交換ご希望です。

 

 

ダイカスト単体にしました。上下のレール部にモルトを貼る方がいらっしゃいますが必要ありません。返って裏蓋のスムーズな開閉を阻害します。

 

では、洗浄後にモルト貼りから組み立てて行きます。

 

 

電池室のリード線を新製しておきます。

 

新しいのでシャッターユニットやチャージギヤなどには摩耗はありません。しかし、巻上げの感触はあまり良くない個体です。逆止爪用バネが外れています。

 

リターンミラーユニットも摩耗は少ないのですが、何故かギヤ鳴りがします。FTのシャッターユニットとミラーユニットは個体によって作動の滑らかさに差があるので厄介です。

 

ファインダーハウジングのレンズ清掃とモルト貼り。

 

 

今日はメカを完成させて露出計などの調整をしただけでした。じつは、梅雨明け以降の猛暑ですが車のエアコンが利かなくて修理工場に行ってました。冷媒ガスR134aが1缶(150g)抜けていて補充したら復活しました。本来は回収が原則ですけど、物理的に抜けてしまう分は致し方ないですね。そこで最近の新車には新しい冷媒ガスのR1234yfが使われています。環境問題に対して有効なガスのようです。

で、ハーフミラーを交換します。36万台としては劣化が進んでいる状態です。30万台以降でもこんなになって来たかなぁ・・因みに露出計ユニットは従来のタイプですが、この少し後から基板別体タイプに変更されます。生産完了間近で何故変更したのでしょうね。米谷さんにお尋ねしましたら「そんなのは無い」と言われましたけど。だってあるもん。多分、米谷さんには変更の報告は無かったのでしょう。

すでにオリンピックの予選が始まっていますね。色々なお考えはあろうかと思いますが、多分若い世代の方でも人生最初で最後の国内オリンピックです。みなさんで応援しましょう。今日、自衛隊のブルーインパルス機が開会式の予行で大空に五輪の輪を描いたようです。前回大会の再現をやるんですね。あの時は台風一過の秋空に86セイバーで描きましたが、今回は夏空にT-4で描きます。いままで晴天なので金曜日の天候が気になりますが上手く描けますように・・

それと開会式で短時間でも良いので開会式の入場行進で演奏された「東京オリンピックマーチ」を演奏して欲しいです。感動です。

(180) 東京 ・ オリンピック ・マーチ ( 1964 )  作曲 ・ 古関 裕而 - YouTube

 

メカの組立は完成。

 

 

あとは駒数ガラスどうするか・・


 

オリンピックの音楽は一度使用した曲は使えないみたいですね。しかし、福島復興オリンピックと言うなら、福島県が生んだ作曲家、古関裕而氏の名曲を使うべきだと思いますけどね。リンクの音源が当時私が聞いたオリジナルに近い演奏です。行進曲軍艦でも、最近の自衛隊音楽隊も良いけど、やはり当時の海軍軍楽隊の演奏が一番迫力があります。

で、駒数ガラスですが、オリジナルの中古を使おうかと思いましたが、接着がゴム系とエポキシ系の二種類で接着されていて、材質的に溶剤は使えないので剥離が困難なんです。アルコールでも樹脂が劣化をしていて溶けてしまう状態ですからね。そこで、以前に製作した当方オリジナルを塗装しました。このオレンジ色の再現も難しいのです。もうストックが殆んどありませんので以後は対応出来ません。

上が私のサイン入りグレーFVで駒数ガラスは今回と同じく当方オリジナルを使用しています。アクリル製なので純正より透明度が高くすっきりと見え傷もつきにくいです。

米谷さんの葬儀にもPENが飾られていました。

 

 

前回のオリンピックの方がシンボルマークやポスターのセンスが良いと思いませんか? 全く古さを感じませんね。

サイン入りの個体は1回の講演会で100台ぐらいはされていたのではないかと思いますが、現在どのくらい現存しているのでしょうね。所有されている方は大切にされてください。

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高くなったフジカミニの巻

2021年07月19日 15時10分00秒 | ブログ

関東地方は梅雨明け三日で暑いです。でもまだエアコンは入れないで頑張るよ。で、いつの間にかフジカミニの相場が上がっていたんですね。1964年9月の発売とのことですから前回の東京オリンピック開催の前月です。あの時は日本中が熱気に包まれていましたが、今回のオリンピックはコロナに包まれて残念です。女性向けとして焦点固定シャッタースピードは単速1/125として撮影の簡便さを狙っていますが、意外にフィルムり装填や巻上げダイヤル、巻き戻しボタンを押し続けないと巻き戻しが出来ない等、あまり操作が簡単なカメラとは言えません。

で、良くあるのが光線漏れ。現オーナーさんがモルトを貼ってありますが、ここではないと思いますね。

 

じゃぁどこなの? これが意外に特定は難しいのです。一番ありそうな場所はファインダー部分です。光線を通してみると・・

 

まぁ、ここが原因とは特定できません。しかし、いつも思いますが、この部分のモルトはファインダー部分で途切れる構造のため、劣化して消滅している純正モルトの貼り方が気になるのです。しかし、殆どやり直されているしなぁ・・

この個体はカメラ市で入手されたそうですが、その時の整備でしょうか軟質スポンジとモルトを重ねて苦労した形跡があります。

 

れはあとの作業で気づいたのですが、裏蓋のモルトはあまり丁寧でなく貼ってありましたので剥がしましたが、巻き戻しボタン部に遮光材がありませんね。ここは軟質スポンジが貼ってあったような記憶です。

 

厚みの適当な軟質スポンジが手持ちに無いのでモルトで作りました。

 

 

特殊なカメラ形状からモルトも簡単な形状ではありません。それを同じ幅の直線で貼ってありました。場所によって微妙に幅が異なります。しかし、これで遮光漏れが解消したかは分かりません。そういうカメラです。

もう一つの大きな問題はフィルムカウンターの進みが規則的でない。

 

 

過去に同じ現象を改善しようとレバーを曲げたり爪の角度を変えたり、最後はバネの形状まで変えてオリジナルの形が分からなくなっています。只でさえ微妙な組立位置でカウンターの動きが変わってしまうカメラですから、ここまでオリジナルでなくされると熱処理が入っている材質ですから曲げの修正をすると折れる確率が高いです。

裏側のギヤの状態も点検しておきます。

 

 

次の問題はレンズの汚れです。60年代のレンズですので汚れています。生きているセレンとメーターASSY を取り外します。

 

するとこのように見えます。シャッターは単速ですから非常に簡便です。バネをはじくだけ。絞り機構はPEN-EEに似ています。

 

分解の部品展開も何となく似ていますね。3群3枚ですからレンズの清掃は比較的楽に出来ます。

 

すべての清掃を終えて組み立てました。このピンをセレンのダイヤル溝で動かします。

 

ガリレイ式ファインダーもPENに似ていますブライトフレームを消さないように清掃します。

 

裏蓋開閉ボタン赤が落ちていますので入れておきます。

 

 

特徴的な前面ガラスの紫系コーティングが劣化しています。本来はフィルターで作り直した方が実写には良いでしょうね。何とか仕上がりました。

 

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