今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

2台のローライ35の巻

2024年03月31日 12時00分00秒 | ブログ

しばらくPEN系の限定修理をしておりました。で、次はローライ35なのですが、最初の1台は普通のローライ35Tに見えますよね。

 

しかし、側面を見ると本体の塗装部分ですが、リンクル塗装になっていますね。35Tは製造の簡略化か普通のつや消し塗装だと思います。

 

本体の底部を見ます。使われているネジがすべて-ネジです。少し調べましたが、この個体は本体は35で上下カバー(と前玉)が35Tだと思いますね。残念ですが、これは部品取りにすることになります。

では、気を取り直してローライ35ブラックです。露出計は不動で汚れ放題ですね。

 

前面ですが、この個体の良いところはアルミの上下カバーなのにへこみがどこにもないことです。これは何とかなるかもしれません。

 

と思ったのですが、最初から問題です。巻き上げレバーのネジを取り除いてもレバーが取れません。観察すると強力なネジロックか瞬間接着剤を流してあるようです。

 

カバーがアルミですから、無理にレバーを引っ張ると巻き上げギヤでカバーを変形させてしまう危険があるのでレバーがついた状態でカバーを分離します。

 

こんな状態です。瞬間接着剤のはがし液を滴下して少し待ってから分離します。

 

露出計不動の原因はCdsからの線が腐食断線していたものでした。これはラッキーでした。配線の交換をします。

 

後は大きな問題はないので通常のメンテナンスをしていきます。メーターもしっかり作動していますね。

 

沈胴チューブのフェルト調整。

 

 

レンズは後玉に汚れが目立ちます。シャッターも分解して清掃します。

 

 

完成したシャッターユニットを組み込みます。

 

 

清掃した前玉にヘリコイドグリスを塗布してから取り付けて無限調整をします。

 

完成してみると、ブラックモデルでは珍しく、どこにもへこみや傷が無い良い個体となりました。

 

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久々のPEN-FVの巻

2024年03月25日 17時00分00秒 | ブログ

ローライ35系は続いて作業をしましたが、特にお書きすることもありませんでしたので省略します。ローライ35のオーバーホールご依頼をお待ちしております。で、久しぶりにPEN-FVに行きます。外観はきれいですね。しかし、リターンミラーUPの症状があったために、シャッターとリターンミラーユニットのチャージのタイミングがズレたところにセルフタイマーを掛けてしまったのでニッチモサッチモの状態出来ました。画像は応急に復帰させたところ。大きな問題はないと思いますがフリクションが大きいので全体のオーバーホールが必要です。

フィルムカウンターが戻らない。吊り輪がぐらぐらの状態。

 

 

セルフタイマーのボタンが固着していて分離が大変でした。(過去に分解を試みてあきらめた形跡あり)よって内部は未分解の状態。

 

吊り輪のネジは初期は接着剤で固定されていましたが、以後はそれをしていないので緩む個体があります。

 

マウントを外します。左側上下に調整シムが入っています。

 

 

残念なことにプリズムのコーティングは手遅れです。全反射ミラーは清掃できると思います。

 

この個体#1310XXのご依頼は北海道ご在住の方で、リサイクルショップでの入手だそうです。製造は1969年8月ですからFTで言うと#305000付近の個体と同じですのでシャッターユニットなどは変更後の仕様で信頼性は高いです。という訳であまり書くことはない気がします。まずは吊り輪のネジに緩め止めを塗布して締め込みます。

では、いつものようにダイカスト本体の洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

おそらくほとんど使用されていないユニットです。チャージギヤや軸受けにも摩耗がありません。洗浄後メンテナンスをしていきます。

 

シャッターユニットが組み上がりました。シャッター幕の状態もよろしいです。

 

例のプリズムのコーティングですが・・

 

 

頑張って慎重に清掃しました。左下角に僅かな剥離。

 

 

セルフタイマーリンケージのレリーズ部分の調整がきつ過ぎてタイマーが途中で止まる時がありましたので調整しましたが、他は問題はなく組立が終わりました。問題のフィルムカウンターギヤなどを洗浄して取り付けます。

カウンターギヤの戻りが悪いのはリターンスプリングの劣化と「オヤギヤ」に付いている「コギヤ」の動きが悪いため。洗浄して取り付けます。

 

全反射ミラーは再使用としています。トップカバーを閉じます。

 

 

底部はこのようになっています。リターンミラーユニットは変更後のタイプが使われています。

 

ストロボの発光テスト。

 

 

カメラに付属の38mmは#3819XXですから本体のセット品ですね。38mmは途中で内部の構造が変更されていまして、変更後のタイプは分解がし難いです。のカムのネジを取り外さないと絞りとヘリコイドの分離が出来ませんが、ネジは何度も分解するとネジ山が壊れます。変更前の部品設計の方が整備性は良いと思いますが、分解するなということでしょう。

後群の間にカビが生えやすい。

 

 

レンズを分離して清掃をしますが、ほとんどの場合曇りは完全には取れません。

 

 

これは25mmですが、このレンズに多い症状は絞りリングの回転が異常に重い個体があります。これはカムと鏡胴の間にグリスが流れ込んで固まっているためです。分解洗浄をします。

という訳で、FVは変更前のユニットが使われている個体が多いのですが、この個体は変更後のユニット機で、長期放置によりフリクション増大のため不具合となっていただけの個体で、素材としては外観も含めてどこにも欠点がなく、非常に良いと思いました。

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6桁24万台のローライ35

2024年03月21日 10時30分00秒 | ブログ

ローライ35のシリアルは普通7桁の頭が3だと思いますけど、この個体は6桁の#247XXX です。補修部品などに交換されたのでしょうか? ご存じ方は教えてください。レンズのシリアルから推測すると#3020000付近の個体ではないかと思いますが・・で、この個体も色々あります。画像のようにカウンターが戻らずシャッター不調のほかに絞り羽根が動きません。何があるのでしょうか・・

トップカバーの裏側は特に気になるところはないですが、メーター窓は通常両端2か所の接着ですが、全周接着されていますね。しかし、これだけでは判断は出来ません。メーターに47.6.22と記入されています。修理記録でしょうか? 昭和46年とすれば西暦1971年です。ローライ35の発売は1966年(昭和41年)ですから修理をされても不思議はない頃です。メーターは当初作動と思っていましたが、実際には明暗による変化がありませんでしたのでCdsの交換が必要でした。何か重修理の予感・・

とりあえず絞り羽根の作動不良について調べます。右のレバーが上下してシャッター側の絞りと連動しますが、上側には動かないようです。

 

シャッターユニット側を見ます。あらら、連結の樹脂部品が破損しています。のレバーの動きが不良で、この部品に負荷が掛ったものかも知れません。樹脂の色が透明ですが今まで見た記憶がありません。普通は黒です。

先に通常のメンテナンスをしておきます。

 

 

絞りの作動レバーの動きが良くありません。これがすべての原因かも知れません。メンテナンスをして正常に作動するようになりました。

 

シャッターを分解して清掃をしていきます。破損した樹脂部品は使えないのでストックの部品(黒)を使います。

 

新しい部品をセットして絞りユニットを載せます。

 

 

洗浄をした裏蓋。前回の個体と同じでカウンターが戻りません。初期のドイツ製に多い不良。巻き戻しダイヤルは初期の金属製ですが、回転がゴリゴリのため分解清掃をします。

 

最後になってメーターの感度不良が判明しましたのでCdsを交換しました。丸一日休みなしの作業で完成しない重修理になりました。

 

これで終わりと思い、巻き上げのテストをしていくとフィルムカウンターが途中から進まない。原因はのLOCKING SPRING というカウンター盤の逆転を止める樹脂製の爪ですが、これがへたっていて逆転を止められないのです。以降はこの爪の下に板バネを追加して爪のへたりを防止する処置がとられていますが、ドイツ製の初期製品には板バネが入っていないのです。これは製作して追加しておきます。なんでもドイツ時代の製品が良いわけではありません。

こちらも前面の化粧プレートを貼るのに苦労しました。いずれ皆さんのカメラも同じ症状となりますので対応部品を考えおく必要があります。ということで「やれやれ」完成です。販売のためのメンテナンスで済む個体もありますが、今回のような個体もありますね。

 

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313万台のジャーマニーの巻

2024年03月20日 20時00分00秒 | ブログ

しばらくローライ35です。送られて来た個体はまず不具合を診断します。この個体はかなり項目が多くて、メーター不動をはじめ10項目以上気になるところがあります。その項目をカルテに書き込んでいきます。

 

惜しいね。角がへこんでいます。淵の部分は陥没しているので戻りません。軽く修正をしておきます。

 

沈胴チューブを抜きますのでフィルムレールを分離しておきます。

 

 

メーターは幸い回路の不良でしたので修正をして復活させてあります。その他、沈胴の作動不良、レンズのカビ多い、ヘリコイドグリス抜け、ファインダーの汚れなどがありますので分解して清掃をします。

 

この個体はシボ革もかなり汚れていますね。しかし、劣化はないので清掃できれいにしておきます。

 

スローガバナーに問題があるので前面を分解して修理をします。

 

 

絞りはこのカムによって右のレバーにより駆動します。

 

 

トップカバーは洗浄してレバーアテを熱カシメ、メーター窓の接着をしてトップ内は終了です。

 

 

初期の製品や保管の悪い個体は前面の化粧リングの塩ビのような材質が縮んでおちょこになっています。これの修正は非常に厄介で、この個体のようになると修正は無理かもしれません。どなたかリプロ品を作ってくれないかしら・・

 

裏蓋はカウンター盤が途中で止まります。これは初期製品に多くなっている故障です。また、カウンター窓が黄ばんでいます。巻き戻しダイヤルの黒樹脂の劣化もローライ35の厄介なところ。回転もゴリゴリなので分解清掃をします。

 

カウンター窓があらきれい。カウンターも軽く作動します。清掃をした巻き戻しダイヤルを取り付けます。

 

この個体は保管が良くないです。ローライ35のレンズはあまりカビは生えない印象ですが、中にはこのような個体もありますね。

 

レンズはきれいになりました。完成したシャッターユニットを取り付けます。

 

 

ここで問題発生。B(バルブ)の時、シャッターが閉じない。原因は色々あるのですが、多くはこのバネの張力劣化です。特に古いドイツ製に多いです。の部分が長いのでどうしても伸びますね。シンガポール製になってバネ力を強化されたと思いましたら、35T辺りでドイツ製と同じ仕様に戻ったりして不明です。これは交換します。

前面の化粧プレートは何とか貼りました。全体に縮んでいますので次に分解する方は貼れるかな?  樹脂のギヤやカム、シボ革と今回のプレート。ローライ35のウィークポイントはすべて樹脂部品ですね。

 

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ローライ35Tのメンテナンスの巻

2024年03月15日 21時00分00秒 | ブログ

ローライ35TとTEです。どちらも箱に入って眠っていた個体とのことで使用感は殆どありません。この頃のシボ革は初期の材質と違い、柔らかな質感で劣化も早い傾向にあります。そこで、メンテナンスと同時にシボ革の張替もご希望でした。私の場合、アキアサヒ製を使用しますが、オーナーさんのご希望で35Tをブラック、35TEをネイビーブルーとしましたが、私の眼にはどちらもブラックに見えてしまいます。

35Tは基本的に35の復刻ですから同じ仕様ですが、部品の材質が変化しています。上下カバーが35の真鍮からアルミの梨地アルマイトになっています。左の私の私物の真鍮梨地クロームとは風合いが違いますね。

 

巻き上げレバーもアルミ製となっています。軽いこと・・

 

 

まず露出計が動きません。しかし、電池の電解液漏れでもない限り、新しいユニットですからメーターやCdsが壊れていることは稀です。

 

回路の修復で復活しています。

 

 

いくら新しいと言ってもファインダーは汚れて曇っています。

 

 

レンズを分解清掃をして戻します。

 

 

底部を開けると必ずと言ってよいほど切れたフィルムが出てきます。清掃と潤滑をします。

 

沈胴の摺動が、やや荒れ気味なのでフェルトを取り出して洗浄しました。ドイツの初期など古い個体はフェルト自体が痩せてしまっている場合があり、交換が必要なケースがありますが、この個体の場合は洗浄によって嚙み込んだ汚れを除去してあげれば再使用が出来ます。

問題のシボ革交換です。まずオリジナルのビニールレザーに比べてどうしても厚みが厚目なのと、オリジナルは端部が薄く成形されていますが、本革の方は抜型で抜いたまま両面テープを貼られているため、このまま貼ると本体側の段付きより出っ張ってしまうのです。

オリジナルのシボ革を剥がすと糊が残ります。これを除去しておきませんときれいに貼れません。しかし、溶剤を使用すると、下地のリンクル塗装が弱いため塗装が落ちてしまいます。

 

本体側の段付きと面一になるように調整をしてこのように貼ってあります。革の硬さがもう少し硬いと寸法安定性が出るのですが、それ用の革ではないと思いますので仕方ありません。貼る面積が小さいので位置合わせにごまかしが利かないのでローライ35のシボ革交換は難しいです。35Sプラチナの純正シボ革でも段付きより出っ張り気味でしたので、自然素材を使うことの難しさです。

メンテナンスをしたシャッターユニットを搭載しました。

 

 

じつは間違えました。35Tがネイビーブールでした。そこで同じように貼り替え作業をしたのですが何故か貼りにくい。原因は革の厚みでした。純正のビニールレザーは0.65mm で本革ブラックは両面テープ貼りの状態で0.7mmでしたが、ネイビーブルーは0.96mmありました。色によって厚みが違うというよりは素材の革の厚みが全く同じには出来ないのでしょう。

純正より0.3mm以上革が厚くなると同じように貼っても革の長さが足りなくなります。また、のようにトップカバーより革が飛び出してしまいます。

 

裏蓋のシボ革を貼ります。デジカメのレンズを通すと確かにネイビーですが、実際はもう少し黒に近いです。純正はシボ革を貼った後でストラップ座をカシメていますが、ストラップ座は取り外せないので純正革はカッターナイフでカットして外します。おそらく抜型の試作時は純正に近い厚みの革が使われたと思います。このまま普通に貼っていくと終端では1mm以上革が足りなくなります。また、接着は両面テープ仕様ですが、引っ張り気味で貼った場合は両面テープでは強度が足りません。今回は接着剤で固定してあります。良い感じに貼りたい場合は、両面テープを剥がして革を0.7mm程度まで薄く削ってから貼ると剝がれにくく寸法的にも適正になると思います。

ローライ35TEです。ほとんど使用感がないのにシボ革だけが劣化をしているという・・初期のドイツ製のシボ革がカチッとしていて劣化もなく最高です。シボ革は35用のため沈胴着脱ボタンの孔を開けなくてはなりません。また、この個体は絞りのロックレバーがあるタイプですので問題はありませんが、ロックレバーが無いタイプの場合はレバー部分のシボ革を追加しなければなりません。

裏蓋も悲惨な状態。

 

 

劣化をした後期のシボ革は蝋のような表層がこのように剥がれます。

 

 

沈胴のフェルトが汚れていて摺動感が良くありませんので洗浄します。別にシャッターユニットのメンテナンスをしておきます。

 

シボ革を貼りました。やはりブラックは厚みが薄い分だけ貼りやすいですが、裏蓋側は慢性的に横幅が足りない傾向がありました。(私の主観)

 

ローライ35系の場合、シボ革を本革で貼り替えるのは意外に難しく手間のかかる作業です。特に側面の終端部などは曲げてすぐにカットですから純正より厚いと収まりが悪く、標準の両面テープ貼りでは接着力が足りません。適切な革調整と接着剤の併用が良いと思います。しかし、良心的な価格で供給してくださることには感謝ですね。

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)