今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

珍しいフレクサレットⅥという二眼レフ

2011年11月29日 23時11分07秒 | インポート

Dscf307664 昨日、重いものを持って持病の腰痛が再発してしまいました。師走の忙しい時に困ったことです。まぁ、我慢できないほどではありませんけどね。で、ご常連さんから珍しい二眼レフが来ていました。フレクサレットⅥというカメラで、旧共産圏のチェコスロバキヤ製のカメラだそうです。チェコと言ったら、私たちの年代なら体操のチャフラフスカだけどね。60年代後半のカメラらしいですが、共産圏の製品としてはしっかりと出来ている印象ですね。巻上げノブや距離レバーの作動が非常に重いです。レンズも曇っていて、シャッターはスローが不調という感じですね。では、簡単にメンテナンスをしておきます。

Dscf307781 j巻上げノブ周辺を分解してみました。ははぁ、作りはごついですね。カメラというよりは、一つ一つの部品を見ると工業用の機械のように金属素材から削りだした部品構成です。ダイヤルの逆転防止機構には、コイルスプリングが使われていて、非常にシンプルに設計です。

Dscf307933

シャッターは過去にいじられていますね。画像上がスローガバナーで左のピンセット先がセルフタイマーです。スローガバナーは洗浄注油で復活しましたが、セルフタイマーがいけませんね。観察すると、真鍮の歯車がありますね。これがピンセットによるキズが多数付いており、動きが変です。ピンセットで突いているうちにホゾを折ってしまったようです。同じ機種でもセルフタイマーのユニットには種類があるようですが、あまり調子の良いユニットではなさそうです。

Dscf307873 レンズはベラー80mm f3.5 というテッサータイプで、写りには定評があるようです。チェコはガラス製品では有名ですからね。コーティングーは単純なようで、きれいに清掃が出来ました。ヘリコイドグリスは柔らかめをチョイスしてのですが、やはり動きは重めですね。シボ革は薄いグレーの布目柄で、中々おしゃれです。

Dscf308066 一緒について来たファインダーです。レンズが曇っていますので清掃をしておきます。と言うことで、今日は腰が痛いので簡単に終了です。

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PEN-F X2+PEN-FTの三兄弟

2011年11月22日 19時52分13秒 | インポート

Dscf306766 先日、ラジオを聴きながら作業をしていましたらね。初代のホンダトゥデイのコマーシャルに使われていた曲が流れて来まして、あっ、懐かしいなぁと思っていたら、「岡村孝子というアーチストのはぐれそうな天使」という曲紹介をしていたので、YouTubeで検索したら出て来ました。へぇ、こんな人が歌っていたんだぁ。私、音楽界のこと知らないからね。コマーシャル用に作られた曲だと思ってました。初代のトゥデイはホンダZの再来かと思ってディーラーに見に行ったのですけど、丸目がカッコ悪いので買うのを止めた記憶があります。この方、若い頃よりあとの方が美人ですね。http://www.youtube.com/watch?v=N3v2xtdBuWg

で、お仕事。PEN-F2台とFT1台、それぞれにレンズ付きで、何セットもサブ機をお持ちなんですね。基本はO/Hですけど、それでは、一番症状が悪化しているPEN-F #2439XXからやりましょうかね。この個体、巻上げもシャッターも切れないという状態ですが、原因は・・・

Dscf306855 巻上げがこの位置で固着していますね。本来は、ピンセット先の隙間分だけ巻上げが進むわけなんです。原因は、ブレーキのOリングの劣化です。ゴムが硬化をして柔軟性を失ったために最後のひと巻きが出来ないので、チャージが完了せず、シャッターも切れません。これは交換することになりますね。

Dscf306964 もう一曲。今日のラジオから私の好きな鬼平犯科帳の後テーマ曲が流れて来まして、ジプシーキングのインスピレーションと言う曲だそうです。時代劇なのに不思議に雰囲気がマッチしています。中村吉右衛門の存在感は圧倒的で、脇役も味のある役者ぞろい。今度終了する水戸黄門の里見浩太郎とは雲泥の差ですね。

http://www.youtube.com/watch?v=uwLJTs3y7hw&feature=related

で、PEN-Fですが、先に本体の洗浄と巻上げ機構を組立てておきます。復元レバーがやけに錆びていますね。スプール軸の駒数板と接する部分が異常に荒れており、復帰不良のトラブルともなりますから研磨をしておきます。

Dscf307075 ブレーキですけど、現存の個体は大体こんな状態ですが、この個体はOリングがセットされるフランジ内の錆がひどいですね。湿気が溜まるためか、Oリングのゴムにニッケルメッキなどを腐食させる性質があるのか? 上のブレーキリングはバイクで言えばブレーキのライニングに当りますが、こちらにも錆が発生しています。こちらも完全に平滑面としておかなければなりません。錆の発生によって、Oリングのセット位置が錆による膨張で、押し上げられていますから、ブレーキの固着という症状が現れます。

Dscf307177 フランジ内は完全に錆を落として磨き上げておきます。厳密に言うと内径は少し小さくなっている訳ですけど、Oリング側で調整することになります。

Dscf307215 シャッターを作動させて見ますと、どうもシャッタースプリングのテンションが低めです。スローも安定しませんので、スローガバナーを点検メンテナンスをします。スローガバナーは時計と同じ原理なのですけど、潤滑が無い状態で長期に作動させているため、不調のものが多いのです。幸い、歯車の損傷などは認められません(磨耗はあります)ので、このユニットであれば正常に作動するはずです。

Dscf307378 結局、シャッタースプリングのヘタリですね。#2439XXと、初期型ではないのですが、チャージをした状態で長期に放置されたような過去があるのでは? 私は、極力、テンションは上げない調整を心がけていますが今回は少しだけ上げました。調子は良好。オーナーさんの指示書では、リターンミラーすり傷で交換となっていましたが、この程度はきれいな方で、リターンミラーのすり傷は写りませんから交換はしません。何でも新しく交換することが良いとは限りません。重要な部分は、なるべくオリジナルを維持すべきです。それが私の考え方です。

Dscf307455 これはもう1台のPEN-F #2553XXですが、同じ頃の個体ですから仕様はほぼ一緒です。スプロケットの滑りがあるようです。右がこの個体にセットされていたスプロケットとクラッチですが、巻き戻しボタンを僅かに押し込んだ状態でクラッチが解除されてしまいます。工場での調整で、下のクラッチの寸法をプレスして長く調整した形跡がありますね。これは、組み上がった寸法差で巻き戻しボタンの解除される位置が異なるのを調整したためです。ちょっとクラッチを長くし過ぎた結果、スプロケットとクラッチの掛かりが浅くなって磨耗をしてしまったものでしょう。左の良品セットと交換しておきます。(クラッチの長さに注意) この頃は、まだ調整組みが必要だったのです。FTでプレス調整されたものに出会ったことがありません。たぶん・・・

Dscf307588 すみませんね。師走が近づいて他の仕事も忙しくなって、バタバタしています。2台目のPEN-Fはスプール以外は、1台目と同じ作業でブレーキのOリングの交換、全反射ミラーの交換で完了しています。3台目のPEN-FTですが、こちらも画像を撮る暇も無く必死で完成に近いところまで終っています。オーナーさんからは露出計の針の指示不安定のご指摘があって、FV仕様のご希望がありましたが、新規に組立た結果、正常に作動しますので、オリジナルのFT仕様としてハーフミラーを交換してあります。ダイカストボディーは#2728XXと後期のタイプですので、底部のリード線の通る逃げの溝がついたタイプです。全体的には良い個体だと思います。

で、忙しい中、左の時計が来ましたよ。右の51系亀戸の機械と同じ機械を搭載したセイコー5 DX 5139-7040 27石で、マニア中では「座布団」と言う変形ケースのモデルになります。これが意外に程度か良くて、精度も申し分ありません。文字盤や針の腐食も無いですね。右の時計の部品取りとして入手したのですが、もったいないですね。右の時計も今だ未オーバーホールですが、精度も良好で、ゼンマイの持続時間も長いです。この亀戸の51系は非常に優秀なキャリバーのようですね。ちょっと大柄で重いのが難点ですが、昔は、このぐらいの重さはなんとも感じませんでした。時代を感じるのは、曜日の表示で、70年代の56系などでは、土曜日は表示で日曜は表示ですが、この時計の60年代では土曜日までは他の曜日と同一の黒表示になっています。会社は週休二日では無かった頃のなごりですね。ゼンマイの持続時間も当時では問題は感じなかったのですが、週休二日の現代では、放置をすると月曜日の朝には止まっているというケースも出てきます。現代の高級機械式時計では、ゼンマイを工夫して長時間の作動を保証しています。(セイコー5搭載の機械は手巻き機構は省略されています)

Dscf307561 カメラ3台は全て終了で、一緒に来ているレンズを見ます。100mm f3.5は、手頃で使いやすいレンズ。この個体は殆ど使用されませんでしたね。しかし、カビが発生し易いのも特徴です。幸い、コーティングの損傷はなく、きれいになりましたね。

Dscf307616 メンテナンスを終えたFTに装着します。オーナーさんによって、カメラやレンズの状態が分かれるのも面白いところ。機能が完璧であれば外観はどうでも良いという実用派の方もいらっしゃいますけど、この方のように、3セットとも素晴らしいコンディションの個体を所有されている方もいらっしゃいますね。私は、どちらのタイプも理解出来ますよぉ・・。この個体はオークション入手だそうですが、素性の良い個体に当りましたね。

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メディカルPEN-F改造機+PEN-FT(B)

2011年11月15日 23時08分02秒 | インポート

Dscf305488 今日は、眼科の大学病院の検診日で出掛けて来ましたけど、電車のトラブルでラッシュ以上の混雑には今の体力では堪えました。よって、カメラの作業に着手する気力が残っていませんのでお休み。で、時計で悩んでいます。左が、少し前にご紹介した「昔、私が愛用してい時計の同型」としていましたが、ちょっと疑問になって来ましたよ。右の時計は、画像を見て似ていると落札した時計。不動でケースも風防もキズだらけのジャンク品で1.000円でした。不動はテンプの不具合で、在庫の部品と交換して取りあえず作動させています。そして、ケースと風防の研磨をしてみましたら結構見られるようになりましたね。(文字盤は見本のような放射タイプではなく単純な紺)しかし、このモデルはデザインは左(12型)と似ていますが、サイズが11型と大きい。このサイズだったかなぁ? 記憶の彼方なので確信がありません。しかし、リューズのサイズが少し大き目なのと、日送り時に押し込んだ時の感触は正しくこれだった気がします。こちらは亀戸製の5139-6000で5.5振動でした。左のモデルは諏訪製の6106-7000で5振動です。キャリバーは全く違いますが、両方、同時代のセイコー5 DXなんですね。やっぱり、部屋の大掃除をして現物を見つけなければ結論が出ませんね。暮れの大掃除の時に・・・

Dscf3053221 では、導入部だけ・・PEN-FVに見えますが、この個体はPEN-Fメディカルを通常使用が出来るように改造した個体ですね。私のしわざではありませんよ。観察していると、メディカル機は後期型のダイカスト本体が使われていることが多い気がします。まぁ、たまたま、製造時期が同じだったので、FTと同一に資材手配をされただけなのでしょうけど。で、不調なのですが、巻上げがスカスカに抜けてしまう現象あり。これは、巻上げレバー下の巻上げカムと連動させるための爪にテンションを与えているスプリングの脱落ですね。また、巻上げのフィーリングが最近に無いガリガリの悪さなので、一度、すべてO/Hをさせて頂きますよ。

Dscf305555 では、いつものように全て洗浄してから組立てて行きます。巻上げレバーがプラプラで巻上げが出来ないという故障は、じつは、別に1台来ているのですが、原因はこの辺ですね。奥の本体に見える巻上げカムと巻上げレバーをピンセット先の爪でロックするのですが、爪のリターンバネが脱落していたのです。オーナーさんが気づかれて保管していたため、再使用していますが、すでにバネが伸び気味なんですね。それでバネ掛かりが外れて脱落したというわけ。バネの両端は接着をして脱落を防止しておかなくてはなりません。また、別の1台の方は、バネは脱落していませんが、爪の留めビス部が磨耗をして作動が不正確になっていると思われます。引っかかりでバネの力で戻らない場合は、カムから爪が外れて「プラプラ」現象となります。この留めビス(スリ割り)部分には、非常に大きな力が掛かるため磨耗が進んでいますが、スリ割りビスはカシメ加工により分解出来ない構造となっていますのでレバーASSYの交換となります。

Dscf305655 シャッター本体は完成。調子は良好と思います。で、前板部分ですが、よくよく観察すると、このフレネルレンズはPEN-FTのものではないですね。かといってPEN-Fのものでもない。抑えバネも違うけど、どちらかと言えばFの形ですね。FとFTは設計が違うのですが・・

Dscf305711 裏側を見るとね。前板とミラーユニットはメディカルのもので、当然、プリズムやフレネルレンズは他のFTから移植することになるのですが、この個体は違うやり方をしているようです。セットされているプリズムは黒塗装が大きく剥離しているものです。この個体は、鉛筆書きでいろいろ意味不明の数字が書き込まれていましたので、プロの方の作業に間違いないと思われますが、規格外の部品を使って組まれていますので、分解は怖いので、今回は見て見ぬ振りでこのまま再使用します。

Dscf306255 ダイカスト本体は後期型ですね。裏蓋の圧板も二点留めの後期型のそれで、製造時期は、PEN-FTで言うと38万代辺りでしょう。FVと違ってセルフタイマーが省略されていますので、マウント12時のビスは本来不要ですが、化粧ビスとして内側からスペシャルナットにより取付けられています。シャッターダイヤルはFVと共通のものですが、Fとは正面状は同じ部品に見えますが、実際は異なります。リード線は全てやり直しています。

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完成したところ。製造が後期と新しいことと、メディカル機はあまり酷使された個体は少ないので、非常にきれいなボディです。FTともFVとも違うちょっと変な個体。人と違った仕様のカメラを所有したいというお気持ちは理解出来ますし、本来、通常使用出来ない個体の廃物利用ですから、個体数維持の観点からも許容される範囲の改造だと思いますね。

Dscf305996 PEN-FT(B)に行く前に、笹原ペンさんから時計がいろいろ届いています。しかし、コンディションは厳しいですね。左の時計はラドーの990と言うモデル。機械にはAS1902/03 1858で、ゴールデンホースにも採用されていますね。と刻印されています。一応防水時計なんですが、問題は内部に水が侵入していること。風防ガラスの内側と文字盤は特にひどいですね。裏蓋のゴムパッキンはすでに利いていませんが、幸い機械に錆の発生は無いように見えます。(分かりませんが) 右のモデルは、先日、ブログに書き込み頂きましたクイーンセイコー(ハイビート)です。(でしたかな) 手巻き式の非防水ケースのため、内部には水が侵入しており、文字盤下の機械も手遅れの状態です。リューズの巻き真部分も乱暴にニッパでカットされていますので、ジャンクとして処分されたものでしょう。ハイビート機でしたので、再生してみたかったモデルですが、この状態では手の施しようがありません。

Dscf306145 ラドー990の方は、取りあえず文字盤の清掃をして見ました。ニスが剥離した部分もありますが、何とか見られます。応急的に各部に注油をして無理に動かしています。ケースと裏蓋は超音波洗浄をしました。かなりの鉄錆が出ました。これは、ステンレスベルトの可動部分のピンに鉄芯が使われていて、それが錆びているためです。バイクのチェーンと同じように縦にして水平に持ってみれば、ベルトの伸びが分かります。かなり曲がりますね。残念なことに3本の針(剣)は湿気により全て腐食して手遅れです。さて、部品として保管するか、再生するかです。

Dscf306457 さて、PEN-FT(B)です。こちらは特に問題はない個体のO/Hです。じつは、42mmを装着するとフリーズするとのことでしたが、原因はカメラ側ではなくレンズのシボリ作動が重くなっているのです。現存の42mmの多くが作動が重い状態ですので、購入される場合は、実際にご自身のカメラをお持ちになってテストをされることが肝要です。オークションや通販では非常に怖いですね。で、シャッターユニットです。点検しましたが問題はありません。ブラック塗装が摩滅している割には磨耗は少ないユニットでした。すでに超音波洗浄をしてピカピカになっています。

Dscf3066151 カラーバランスが変ですみません。こうしないと白の色入れが黄ばんでいるのが補正されてしまうので・・・シューを装着していたために白の塗料が変質してしまっています。これは入れ直しのご希望です。

Dscf3067641 本体は完成しています。巻上げの感触は非常に軽くスムーズになりました。アイピース枠は破損のため交換してあります。トップカバーの色入れは全て入れ直してあります。ところで、セルフタイマーボタンにカニ目孔が開けられていますが、このまま再使用でよろしいのかなぁ? 交換も出来ますけど・・

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パソコンのディスプレィが写り込むほど塗装の表面は摩滅しているのに、不思議に角は出ていないという個体。故意に研磨剤で磨いたのでしょうかね。このまま組もうとしましたが、シャッターダイヤルのガタが多過ぎでした。これを修正して、おまけにBの橙色が完全に抜けていたので入れ直しておきました。セルフボタンはオーナーさんからのご指示がありましたのでうちのオリジナルボタン(ブラック)に交換しますが、その前にセルフレバーの色も劣化が進んでいましたので他の部分とのつり合いが悪いですから入れ直しです。その他、ハーフミラーは当然交換してあります。外観的に、ちょっと荒れていた個体でしたが、まじめな子になりましたね。あとは、42mmかぁ・・

Dscf306712 その42mm f1.2ってやつだね。大口径で明るいレンズとのことで、みなさんどうしても使いたいレンズのようです。しかし、ウィークポイントはレンズの中玉の曇りと絞り時の作動がスムーズでない個体が多いこと。このレンズも、過去に同じ理由で分解されていますね。絞り羽根の作動が悪いので、鉛筆でシコシコ擦ったり、カムレバーをヤスリ掛けしていますね。カムの山に乗る時が作動が重くなるため、カム山まで削っていますね。困ったことを・・・元々、大きな絞り羽根を作動させるためにカメラ側に大きな作動トルクを要求するレンズなのですが、そのカメラは自動車で言えば20万㌔ぐらい走った馬力の落ちたポンコツで、荷物は新車の頃よりも重いときているので作動不良にもなるわいな。特にPEN-Fなどでは余計でしょうね。

Dscf3068871 途中の画像を撮り忘れました。絞りユニットは全て洗浄の上、調整してあります。ヘリコイドグリスが抜け気味でしたので入れ直してあります。中玉の外周にはうっすらと曇りが始まっていますね。で、作動は軽快で、FT(B)にセットで1/500 f16で全くストレスなく絶好調となっています。削っても治らないのですね。

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憧れのRADO Golden Horse (但し復刻)

2011年11月12日 00時46分51秒 | インポート

Dscf304825 オークションで、ラドーのゴールデンホースの復刻版を入手しました。と言っても、現在、日本国内に限定で発売されている現行の「復刻版」は高価なので1980年代頃の復刻版(と言うかキャリバー変更)です。何故か異常に安く落札出来たのですが、出品者が発送時に動かなくなったとのことで返金を申し出て来ましたが、「問題ありません」と送ってもらい、気持ちだけと返金して下さいましたので、え~、それじゃ、セイコー5と同じ値段になっちゃう。元々安値だったのに、申し訳ないような気がしました。

初代の本物は1958年頃、酒田時計貿易によって輸入されました。当時は高級舶来時計と言っていた時代です。ちょっと派手な金時計は、銭湯へ行くと、小金持ちのおじさんが湯船の中に時計をしたまま入浴していたのを記憶しています。え~、防水時計なんだって。とか羨望の的でしたね。余談ですが、当時、デパートの時計売り場には水槽にセイコーマチックが沈められたディスプレィがあって、魚はいないのかなぁ?と眺めたものです。何故か我が家にもゴールデンホースが有って、兄が使っていましたので憧れの時計でしたね。

で、この復刻版は中身のキャリバーはスイスのETA #2782という機械が搭載されています。お~、金めっきされているんですね。不動の直接の原因は、機械を固定するビスが脱落してギヤに噛み込んでいたものでしたが、取り除いて裏蓋を閉めると秒針が止まってしまう。何度やっても同じです。当初はてん輪に裏蓋が接触をするのではと考えましたが、クリアランスを測定して、その可能性は消えました。そこで、自動巻き機構(左の2点)を外してから裏蓋を閉めると秒針は止まらない。錘(ローター)の動きも悪いので、この辺に原因がありそうです。

Dscf304914 手持ちなのでブレた画像ですみません。自動巻き機構を裏返しして点検してみると・・・あれェ、ローターの留めビスが入る先端の部分が盛り上がって破れています。これは、ローターを留める時に規格よりも長いビスを挿入して底を突き抜けたようです。それで、裏蓋を閉めると自動巻き機構が押されて、破れた先端が、二番車と接触して動きを止めていたようです。

Dscf305095 破れて盛り上がった部分を修正をして仮に組んでみましたら、お~、止まりませんね。復刻版と言えども、すでに30年ほどの時間が経過していることを考慮すれば、まずまずのコンディションではないでしょうか。風防もリューズもオリジナルで、初代の雰囲気を良く再現していると思います。ラウンドした文字盤やドーム型でカレンダー部はレンズ付きの風防が60年代初期の雰囲気を良く表しています。12時の下の赤いアンカーは時計の傾きに応じて動きますが、子供の頃は、これがすごく精密に感じて記憶に残っています。(特に裏側にメカは無いそうです)流石にステンレスベルト付きの金めっき側は恥ずかしくて身に付けられないので、大人し目のSS側の黒ベルトが良いですね。調べてみると、輸入元の酒田時計貿易は、RADOの販売権をスウォッチの奪われて、10年ほど前に倒産していました。昔はクイズ番組などで賞品として提供していましたね。「酒田時計貿易から、スイスの高級時計ラドーをプレゼント」とか言ってね。ほかに、平和堂貿易というのもあったような・・ETAの機械式ユニットは、現在でも多くのメーカーの時計に採用されています。#2782も探せば見つかるかも知れませんので、部品の調達は可能のように思います。さて、このままO/Hをしましょうか? ちょっと考えます。

Dscf304824 「今なに」をご覧頂いているファンの方からPENのご提供を頂きました。資料的に貴重なコンディションを有していますのでご紹介しておきたいと思います。製造番号は#2850XXで、いわゆる三光PENの特徴と言われるFlashjマーク、レリーズボタン、巻き戻しダイヤル、フィルム位置指標などはすでに変更されている頃の個体ですが、みなさんが見える特徴から判断されるのとは別に、すべて分解検証している私が見た印象は少し異なります。後の工場製とは明らかに異なる部品は、どちらかと言えば三光PENの頃の特徴と一致します。まぁ、いきなり全ての変更が行われたのではなく、製造過程で、少しずつ変更改良が進んだと考えるのが妥当と思いますが、その意味では、三光PENと後の工場製のスタンダードPENとの間を埋める貴重な個体だと思うのです。純正UVフィルターと当時のストラップ(金具部分のみ)と皮ケースも付属しています。ファインダー上の先端部の樹脂が白化していましたが、これは、皮ケースに長期に保管されたためかも知れません。底蓋の腐食は軽い研磨によりほとんど気にならない程度になっています。

Dscf304985 問題としたいのは塗装色とシボ革の色です。画像では違いが分かりにくいと思いますが、左は三光PENの裏蓋で、右がこの個体のものです。新品の状態を良く残していますが、先日苦労をした塗装色は明らかに黄色系がありません。本来はこの色であったものが、経時的に変色をして左のような色に変化をして行ったと言う気もしますね。変色した見本に一生懸命に調色をしても再現は出来るはずがありません。また、大きく差があるのはシボ革の色です。本物は画像よりも青味の強いグレーです。カメラの状態から、殆どの時間を皮ケースの中に保存されていたと考えられますので、紫外線なとの影響は最小で新品時の色彩を残しているのだと思われます。しかし、この当時の色の管理はアバウトであった気もしますので、全てがこの色であったという断定は出来ませんね。

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付属の皮ケースについて研究されていらっしゃる方があれば、お聞きしたいところですが、私のところにある革ケースは、殆ど左のもので、皮の感触が子牛皮のように柔らかで、内装生地が赤、灰、紺のものです。今回のPENに付属していた皮ケースは、皮の材質が少し硬い(しっかり)もので、内装生地の色は濃紺になっています。果たして初めからのオリジナルかはわかりませんが、このあたりの付属品を研究されても面白いかもしれませんね。私は時間が無いので・・・余談ですが、米谷さんの講演中に、このケースを作っていた下請けさんのお嬢さんの結婚式だったかに出席されたとかのお話しがあったと記憶しています。標準の付属品ですから、当時は相当の数量を発注されていたので、深いお付き合いがあったのでしょうね。

Dscf305277 皮ケースと同じく、付属品のストラップですが、初期に付属していた皮を編んだもの用の金具だけが付いていました。これがこの個体の標準品であったとすると、皮のストラップは三光PENだけの付属品ではないことになります。画像の皮ストラップは私のコレクションです。金具といい、皮で編んだストラップといい、非常にコストの掛かった付属品だと思います。全体のコストを抑えられた製品にしては、皮ケース共々、気張りましたね。その後、ストラップは、みなさん良くご存知のチープなビニール製になります。あれ、私の手元には100本以上あります。

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修理は推理だPEN-FT

2011年11月07日 17時33分43秒 | インポート

Dscf303515 先日、緊急で入ったPEN-FT #1757XXの続きです。う~む、修理は推理だとは言いましたけれど、またまた、難解な個体が来ましたね。これ、どこで入手しましたか? どうも、 いろいろな頃の部品が寄せ集められているようです。推理としては、本体はおよそ30万代付近の個体をベースとしてミラーユニットはメディカル機からの調達。トップカバー、露出計ユニットやプリズムとそれに付随する細かな部品は#1757XXを使用した個体ではないのかなぁ? と思いますけど、メディカル部品を使うなど、かなり手馴れて豊富に部品を所有している方の作ですね。ジャンクのニコイチで、1台生かしたということでしょうけど、他に救済する方法が無かったのかなぁと思います。

Dscf3034781 オーナーさんから、駒数カウンターが撮影中に戻ってしまう。というお訴えがありました。分解してみると・・・あらら、削っちゃったのね。推理はこうです。駒数カウンターの戻りが悪かったもので、それでは、「駒数板の動きが固いのだろう」「では削ってクリアランスを大きく取れば楽に動くようになる」という想定のもとに「エイッ」っと削ってしまったということではないのかな? あのね、工業製品は厳密な公差管理の中で部品は製造管理されているのです。間違っても「削る」というケースはありません。(私の経験では)正規の組立寸法を変更すると、どこかに不具合のしわ寄せが来るものです。 駒数ギヤを削ったために、その下のギヤに上下ガタが発生して、場合によってはストッパーが外れてしまい、駒数計が0に復帰してしまうのでしょう。

Dscf303673 まぁ、三光PENの時代ならあり得ましたけどね。基本となっている本体は30万代付近の後期ボディーですが、何故か、電池室がネジピッチの細かい前期型になっていますね。電池室のネジ山は、電池蓋を斜めにねじ込んだりすると、ねじ山を壊してしまう事故が起こりがちなのですが、オリジナルの状態が悪く交換したものかも知れませんね。しかし、ネジピッチの細かな前期型の方が、ねじ山を壊しやすいので、それで後期型はネジピッチを粗くして誤挿入を防止しているのですけどね。電池室のリード線は交換しておきます。

Dscf303852 念のために、交換されていたメディカル用のミラーユニットを分離して点検してみます。あれ、バネの先端が接着されています。この状態で固定されると機能を果せないのです。意味が判っていないようです。

Dscf303945 前板関係ですけどね。何か変なのです。ダイカスト本体は30万代付近の部品と言いましたね。なのに何でプリズムホルダーのバネが付いているのでしょう。このバネは中期までの個体に使用されていたもので、それ以降は省略されています。ホルダーの留めビスも2本なので(後期は1本)前期型の部品を使用したのでしょう。

Dscf304095 前板を組んだところで、変だと思いましたよ。見る方が見れば、この画像で分かるのですが、この前板はこのダイカスト本体とセット物ではありませんね。ピンセット先の留めビスがスリ割りで、前板自体もスリ割り用のザグリ加工がされています。この本体とセットであれば+ビス用となっていなくてはいけません。他の部分と違い、これは困るのです。トップカバーの付け替えなど、色々なニコイチを見てきましたが、この個体は、部品の構成を見ても推理というかストーリーが描けません。精度を無視して形だけ寄せ集めた個体と言うことになります。

Dscf3041421 駒数カウンターが撮影途中で0に復帰してしまう原因はもう一つありました。巻き上げレバーASSYの画像です。左は正規品、右が今回の搭載品。どこが違うでしょうか? そう、右の搭載品のレバーの角度(出張り)が低いですね。裏蓋を閉めるとこのレバーが押されてギヤがロックされるわけです。観察すると、すでに曲げようとしたキズが確認出来ますので、修正は試みたようです。今回は修正で再使用とします。

Dscf3042321 巻上げレバーカバーも変でした。FTの正規の部品はAですが、この個体にはBのものが付いていました。と言うか、本来は付かないものを無理に瞬間で付けてあつたということ。これはFVやメディカルに使用されているカバーです。交換しておきます。やれやれ・・・

Dscf3043541 この個体は通販で購入されたものだそうです。結局、5倍ルーペやセルフタイマーも旧型が使われているところから、#1757XXのダイカストボディーの状態が悪いので、FTで言えば30万代頃に製造されたメディカル機のボディーとユニットを使用して、前板やその他の部品はすべて#1757XXのもので組み上げたということではないのでしょうか? 製造時期の異なる部品を組み合わせると、調整が困難のケースも発生します。今回では、ファインダーのピント調整範囲を超えて調整不能でした。FTも日々消耗して行きますので、他の個体からの部品の流用や、場合によっては「ニコイチ」も仕方の無いことだとは思いますが、その場合でも製造が同時期の個体を選ぶとか、セット部品はバラさないなど、一定の配慮は必要だと思います。そうでなければ、今回のような形だけの個体が出来上がってしまうことになります。

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Dscf304666 難儀なPEN-FTはお帰りになりました。時間が中途半端なので、ここに続けます。こんなレンズの清掃依頼が来ていましたね。タムロンのSP 90mm f2.5 というレンズで、思いっきりずんどうな形をしています。同じレンズが2本ですが、どちらもクモリが発生しています。分解してみますと・・このレンズが曇っていますね。しかし、清掃をして見ましたが、僅かに曇りが残ります。これは汚れではなくて、ガラス自体が曇っているようです。2本とも同じ症状ですから持病なのでしょう。実用上は問題ない程度には清掃しておきました。尚、同梱でPENとお米を頂きました。お米は初めてだなぁ・・ありがとうございました。

Dscf304715 で、だいぶ前に製作したPEN-FTアンスラサイトがシボ革の修正で里帰りしています。おっと、こんなのリペイントしましたかね。自分で忘れていました。嫁に行った娘が里帰りしたようで、何となく照れくさいです。まぁ、元気そうで良かった。すでに修正を終えていますので組み上げて帰しますよ。