今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

災難にあったPEN-Wの巻

2024年09月12日 14時00分00秒 | ブログ

今年は記録的な猛暑だそうで、スーパーに買い出しに行こうと車のドアロックを開けようとしたら開かない。エアコンの使用によりバッテリーが上がったようです。現在バッテリーを持ち帰って充電中。早く涼しくなってくれないかなぁ。。で、暑い中の作業になりますが、PEN-W #1068XX(1964年11月製)という満身創痍状態の個体が来ました。

外観の塗装剥げを補修塗装してありますが、確かに塗装の第一の目的は母材の保護ですから間違いはないのですが・・

 

タッチアップではなく補修塗装でしょうねぇ・・

 

 

過去にあまり程度のよろしくない分解を受けていまして。ピントリングの回転が途中で重くなる。リングが斜めに組まれていますね。

 

シャッターユニットを留めるネジが斜めに入っています。シャッターユニット側のハウジング部の雌ネジが心配です。

 

シャッターは油漬け状態。シャッターは油を付ければ動くというものではないのです。

 

シャッター羽根も油が回っています。これはすべて分解洗浄のうえ脱脂をする必要があります。

 

ハウジング側の雌ネジ4か所はすべてネジ山が壊れた状態でした。修正をしたところ。の雄ネジはネジ山が損傷していますので使えません。交換します。

 

すべて超音波洗浄のうえ組み立て完成。いやはや災難な個体です。

 

 

この個体はまだ災難を受けていました。駒数ネジですが、ねじ切ってしまい、頭の部分を接着剤で留めてありました。これは姑息です。PEN-Wの頃は左ネジなのを知らずにねじ切ったのでしょう。「押してもだめなら引いてみな」という歌、知らないかな? 昭和の歌など知る方も少ないかぁ・・

厄介な作業ですが、残ったネジ部を取り出します。一連の改悪の修正作業はオーバーホールとは関係が無いので費用は頂戴しますよ。

 

無事取り出して当方オリジナルの駒数ネジを取り付けたところ。もう他にないだろうなぁ・・

 

と、ここで宅配便が来ました。先日アイピース枠の破損を接着で処置したカメラ店様からのPEN-FTですが、アクセサリーシューを取り付けて破損してしまったとのこと。カルテに取り付けちゃダメと書いておいたのですが・・で、急ぎなので今回は修理ではなく新品に交換して出します。改めて書いておきますが、アイピース枠の材質も強度劣化をしていますので、アクセサリーシューの取付けは破損の危険がありますので取り付けないようにお願いします。

レンズの分解清掃をしますが、絞り表示とクリック位置が合っていませんね。裏側のリングナットが緩んでいるためです。

 

すべて分解をします。リングナットのネジ部に塗布してある緩み止めが完全に劣化をしていて機能をしていません。しかし、この状態の個体としてはレンズのコンデションは悪くはないと思います。

内部ですが、スプロケットは樹脂製に変更された後の個体です。裏蓋の圧板に腐食が出ているので研磨をしてあります。

 

ひどい目に合った個体ではありますが、どっこいカメラの機能としては良く仕上がりました。ペンなど誰が分解しても一緒、ではないと思いますよ。

 

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微妙な時期のPEN-FTの巻

2024年09月10日 13時59分59秒 | ブログ

PEN-FT #2117XXは変更前のユニットが使われていて製造からも時間が経過している微妙な頃の個体です。このような個体が何故か女性の手に渡ることが多い印象です。で、古いので過去に分解を受けています。作業の流儀は修理される方様々でそれぞれに特徴がありますが、同様な個体を最近見るようになりました。修理のご依頼内容は、巻き上げが出来ない時があるのとシャッタースピードの不調ですが、分解をしてみると内部が油汚れで完全に清掃されていません。また、接眼プリズム押さえのネジが緩んでいてプリズムがぐらぐらです。

巻上げの引っ掛かりはここです。吊輪を留めるネジが緩んで巻き上げカムと接触をしているのです。ここの緩みは私もうっかり見逃すことがありますが、この頃は接着剤を併用されていない時期なので緩みは確認しなければなりません。

問題は、最近よく見るようになったハーフミラーです。汎用のミラーから切り出されたと思われますが、そもそも純正とは反射率が異なります。また、左端のTTL№部分が素通しになっていないため、特に晴天の日中では針の動きと数字が暗くて私のような高齢者には非常に見にくく感じます。今回はオーナーさんのご指示でこのまま再使用とします。シャッタースビートについてはスローガバナーの組み込み不良ですね。

シンクロの配線がプツンとカッターで切ったように切れました。古いリード線でつけ直しした可能性もあります。ターミナルへの配線も半田付けの半田が酸化していて被覆も溶けています。過熱なので温調半田ごてですよ。

#2プリズムのコーティングが・・この頃のコーティングは弱っているので拭き上げには慎重が重要です。

 

セルフ周りが変です。まず、セルフユニットを本体側に留めるネジ2本に入るワッシャーの片方が欠落して組まれているのでセルフレバーがトップカバーに接触して傷になっています。これはワッシャーを追加して組みます。また、セルフレバーを巻いた時ロックされません。これは逆転防止のコロの動きが悪いのです。そもそもチャージをしてもシャッターが切れません。レバーも水平ではないので、ユニットを別個体から移植された可能性もありますね。移植する時は各部の同調を取らなければなりません。

なんやかんやで組み立て完成。

 

 

トップバーの巻き戻しダイヤル下の留めネジの片方が欠落していましたので純正ネジを追加して組みます。

 

セルフレバーは本体に接触せず水平になっています。

 

 

これで完成です。

 

 

で、一つお願いです。私は良く知らないのですが、最近ヤマト宅急便で送られて来る送り状に画像のようなタイプがあります。事情は分かりませんが、このプリント印字が非常に細くて薄く、特に数週間経過したものでは更に印字が薄くなるのです。カメラをお返しする場合、この送り状から新しい送り状を印刷しますが、元々、郵便番号の記載が省略されていますのでサイトで調べて印刷しているような状況です。殆どの方はメール中に郵便番号、住所、電話番号などを記載して頂いているのでそちらを見て対応するのですが、中にはどこにも記載が無い方もいらっしゃいます。今後、この送り状が多くなりますと支障が出て来ますので、まず、お問い合わせのメール中にデータを記載して頂ければ助かります。中には匿名で問い合わせをしたいという方もいらっしゃるようですが・・

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デジタル温調はんだごての巻

2024年09月07日 13時00分00秒 | ブログ

相変わらず残暑が厳しいですね。現在、作業で手一杯のため、ひと段落つくまで更新はお休みさせてください。で、作業に使う半田ごてですが、電子工作用の30Wから鉄道模型用100Wまで数本所有していますが、最近発売になっていたデジタル温調の半田ごて(goot PX-280)https://amzn.to/3XGcFfr\を購入してみました。任意のこて温度に設定出来るのとスリープ機能があります。

特に古い基板は劣化していて温度を掛け過ぎるとパターンが剥離し易いので、出来るだけ低い温度に設定して使用します。こての温度が適正なので、半田の酸化も防げて快適に作業が出来ます。また、リード線の被覆が溶けるようなことも少ないです。

現在は標準のこて先を付けていますが、もう少し先端の細いタイプの方がより精密な作業が出来るかもしれません。こて先の交換もネジ式で簡単に交換できます。

 

、現在はPEN-FT#3263XXの作業中ですが、この頃の個体としてはハーフミラーの劣化が激しいです。よほど保管の環境が悪かったのでしょう。フィルムレールにも腐食が発生しています。

アクセサリーシューを付けるとアイピースが破損します。接着剤で貼って研磨をします。

 

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PETORI 17というカメラの巻

2024年09月03日 20時00分00秒 | ブログ

UP予定が無かったので画像が少ないです。大阪のご常連さんからずっと前に来ていました。いつも食玩のヒコーキを入れて頂き恐縮しています。今回は試作で終わったエンテ型(先尾翼)戦闘機の震電でした。私が初めて震電のプラモデルを作ったのは小学一年生だったと思います。三共のピーナッツシリーズと言うのがありまして、単発戦闘機は殆どシリーズされていました。値段は30円だったと思います。変わったヒコーキだなぁと思いましたが、その時は実用機とばかり思っていましたね。

で、このモデルはペトリが1962年頃に輸出したハーフ版の輸出専用機のようです。年代を考慮するとコンディションは良く、PETRI-Sシャッターは正常に作動しています。では、ファインダーの清掃などをして行きます。ファインダー像の上部にEEのメーター針が見えますが、決して見易くはありません。赤枠のセルが脱落していましたので接着をしておきます。

EEメーター針の反対側をレリーズと連動して動くギロチンレバーで押さえるという設計。

 

マニュアル撮影も可能のようですが、じゃ、EEはどこでセットするの? ここら辺が直感的に操作が出来ないペトリらしいところ。絞りの先(左)へセットするとAUTOになります。左の方に書いてはありますね。

シューの溝部分にも汚れがありますので分解をして洗浄します。

 

 

巻き戻しダイヤルの上下ガタの修正はワッシャーを入れますが、何と6枚も入ります。PENでも前期型は同様な修正方式でしたが、設計変更により調整ワッシャー無しで組み立てが出来るようにしています。

巻上げは底部のダイヤルによりますが、機構はなんとカバー側についているのでした。本体側はチャージレバーがあるだけですね。注油をしておきます。

 

ローレット部分に指を当てて巻上げをします。巻上げは軽く意外に軽快に巻けます。

 

 

裏蓋のロックが変な機構です。ダイヤルの回転でロックする方式。しかし、動きが非常に重い。分解清掃とグリス塗布で組みます。

 

一見、蝶番式の裏蓋に見えますね。

 

 

反対側はフックになっている取り外し式です。裏蓋も洗浄してあります。

 

 

きれいに見えたレンズですが、後玉の内側のコーティングの劣化で、清掃でも少し曇りが残りました。

 

国産なのに国内未発売で入手の出来ない輸出専用機の収集も楽しいのでしょうね。

 

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PEN-F系もやってますの巻

2024年09月01日 17時00分00秒 | ブログ

最近、PENの修理ご依頼が少ないです。PENの作業もしておりますので修理のお問い合わせをお待ちしております。で、特に取り上げる大きな話題もありませんが、簡単にUPして行きます。レンズ付きのPEN-F #1476XXですが、巻き戻しダイヤルのレバーがへこんでいますね。

これは、中央のネジが純正ではないためです。このネジでレバーを留めていますので、規格外の高さの低いネジを使うとレバーが下がってしまいます。純正ネジに交換します。

 

PEN-Fは古いですから殆ど分解をされています。駒数盤を留めるネジの下に入るウェーブワッシャーが入っていませんでした。これが入っていないと駒数ギヤに上下ガタが出て、噛合いが外れる可能性があります。追加して組みます。

F用の38mmはヘリコイドグリスが完全に流化していて内部はドロドロです。すべて洗浄脱脂をしてから組み立てます。

 

 

花文字や他の文字も色入れが抜けかかっていますので入れ直しておきました。

 

これはPEN-FV #1062XXですが、初期型なのでシャッターユニットやセルフタイマーユニットも変更前が付いているはずですが、この個体恐らくSSにてタイマーユニットを後期のものに交換されています。すると、留めるネジ位置が変更されているのでネジ孔が合わないのです。そこで、巻き戻し軸部分にタップを立てて取り付けてありますね。

本体の組み立て完成。

 

 

こちらも38mmが付いていました。

 

 

これで完成。

 

 

こちらはPEN-FTブラック #2486XXですが、シューを取り付けていたのでトップ面がへこんでいます。これを修正します。

 

電池室の液漏れがリード線を伝わって基板を侵しています。問題はそれだけではなかったのです。

 

ガスの影響でしょうね。Cds基板も侵されていて、取り出しのターミナルと中央部分から割れておりました。貴重なブラックモデルですから直さないわけにもいきません。ストックのユニットに交換して組みます。

これで完成と思ったのでしたが・・

 

 

フィルムの巻上げテストでスプールが滑ってフィルムが巻けない症状。分解をしてみると、右が組まれていたバネで標準バネ(中央)からカットされています。左は当方オリジナルの強化バネです。これは稀に見ますが、この部分は過去に分解を受けていませんので、工場で組み立てた時、バネが強くてスプールの回転抵抗が大きいのでカットして合わせた。のではないかと思います。しかし、条数を減らしてしまうと経時的にバネの張力が弱くなってしまうのでしょう。今回は標準バネに交換して解決します。

色々問題のある個体でした。これで完成です。

 

 

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