今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

女子カメラの花文字PEN-F

2011年08月29日 21時34分32秒 | インポート

Dscf287051 前回O/H仕上げをしましたPEN-Fは、まだ嫁入り先が決まりません。ご希望の方はお問合せください。http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/

Dscf286835 それでははじめましょう。PEN-Fが続きます。この個体は女性オーナーさんのPEN-F #1563XXですが、女性はFTよりもFがお好きのようですね。決め手はやはりfの花文字だそうです。で、中古屋さんで購入後、リターンミラーが剥離しまして、購入店に連絡しても対応はしてくれなかったそうです。元々の接着カスもそのままで、ゴム系接着剤で貼ってあったようですね。巻上げはゴリツキで非常に重い。そもそも、低速の1秒が速いですね。故障によって速くなることは全く考えられなくもありませんが、通常の使用では無いですね。このような場合は、シャッターのテンションを上げられている場合が考えられます。

Dscf287159メカを見て行く前に、OLY・・・と花文字の色入れが抜け掛かっていますね。特に、花文字は金色の塗料ですから、真鍮粉の風化で退色剥離をしてしまうのです。

Dscf287293 女子カメラだし、折角ですからお化粧直しをしておきました。

Dscf286966内部の光学系は特にメンテナンスを受けた形跡は無いようですが、前板の分解は受けています。リターンミラーのホルダーは分離せずに剥離したミラーを貼ったようです。当然そうでしょうね・・・

Dscf287351_2 剥離したリターンミラーは、スリ傷が多いために再使用は断念して新品に交換することにします。

Dscf287446 で、このように新しいミラーを接着後、前板に組み込んでおきます。左は洗浄したミラーの駆動ユニット。

Dscf287582_2 それでは、シャッターユニットを点検していきましょう。画像はすでにハンマーを取り外したところですが何やらすごいことになっていますね。右のブレーキを留めるナットはすでにスリ割りが壊されており、分解を試みたようですが断念しています。そこで、ブレーキのOlリングに水油をつけてあります。多分、Oリングが固着したためにブレーキに不具合が出たため、水油をつけてごまかしたということかな?

Dscf287651 すでに分離を断念した壊れたナットなので、開けることは更に困難なのですが、開けないことには仕事になりませんので開けました。Oリングは油に弱く変質しています。全て分解洗浄のうえ、Oリングを新品に交換します。

あっと、ここでご報告。このシャッターのテンションは通常の2倍のダブルテンションが掛けられていました。シャッター不調でバネを強く張る。知恵の無い人の考えたがることです。

Dscf287777 これがシャッターのスプリングね。2倍に張られたため、自由位置がへたってしまっています。このスプリングは疲労していますので、皆さんも、巻上げたまま放置をしないように(開放する)してくださいね。

Dscf287863 まぁ、なんだかんだあってほぼ組み上がっています。全反射ミラーは交換してあります。残念ながら、フレネルレンズに傷で汚れが隙間に入って2ヶ所取れないのと、この個体も残念ながらプリズムに腐食が出ています。

Dscf288027 と言うことで、女子カメラなので頑張っちゃいました。いえ、女性はメカに弱いのは仕方の無いことですので、安心して撮影をして欲しいので力を入れて組み上げます。この時代は金のエンブレムがステータスだったのでしょうかね? キングセイコーとおそろいで花文字もピカピカですね。巻上げは軽く軽快。調子は非常に良いと思いますね。


良好なPEN-Fを作りましょう

2011年08月23日 20時36分15秒 | インポート

Dscf285833 リューズの防水パッキン(Oリング)はすでに純正部品はなく、代替品ですがそれでも高価です。しかし、取り付けないわけには行きませんのでセットしてあります。点検のところ、リューズの頭も僅かに曲がっており、ジャンクはどこまでもジャンクなのはカメラと一緒です。リューズの新品は4.000円もします。こうして見ると文字板外周の湿気による劣化が目立ちますね。高温多湿の日本で使用されるのは時計としても厳しい条件でしょう。そのうちリダンを考えるとして、とりあえず、過去の分解による汚れや指紋を清掃します。表面のクリアーは非常に弱く、アルコールでも溶けてしまいますので、拭き上げは厳禁です。そこで、セイコーの工場で使用されている「ハイポンタック」という粘土のような粘着物で汚れや埃を吸い取ります。

Dscf286066 裏側の自動巻きローターを取り付けて、研磨しておいたケースに収めてみます。ワンピースケースのためピンセット先のリングを回すことによってキャリバーをケースに固定します。この状態でしばらく精度など様子を見て問題がなければ風防ガラスをべセルで圧入します。現在のところ平置きで日差+5秒程度です。

Dscf286151 で、カメラの方ですが、ご常連さんからPEN-FとFTをお譲り頂きました。特に故障やジャンクの個体ではなく、丁寧に扱われて来た個体ですが、整備済みの素性の良い個体をお探しの方(特に初心者の方)のためにお譲り頂きました。未使用美品などをお探しのコレクターさんは専門の中古屋さんでお探し頂くとして、実用のための良品をお出しして行こうと思っています。O/H後はご希望の方にお譲りしたいと思います。

Dscf2862971 では、いつものようにダイカスト本体まで完全に分解洗浄をした状態から組立てて行きます。じつは、この時点では気がついていませんでしたが、画像を注視すると分かることが・・・のスプロケット軸とスプロケットギヤを組むネジ部ですが、ねじ山が痩せているのが分かります。この後、スプロケットギヤをねじ込むと・・ズルっ、いやな感触です。これはねじ山がらせん状に破壊してネジが利かなくなった状態です。元々、工場での組立時、この部分は非常に大きなトルクで締め込まれていますが、材質が真鍮のためねじ山が破損気味で組立られている個体があります。一回目の組立では留まっても、再度の分解組立ではねじ山が持たないのです。他の方の修理では、ここまで分解されているケースはまず無いのですが、うちのように全て分解をする場合はリスクがあるのです。

Dscf286355 と言うことで、良品のスプール軸と交換して組立ててあります。#1804XXですから、巻上げレバーの巻上げ爪は変更されたタイプになっています。

Dscf2865551 特に問題は無いシャッターユニットです。過去に分解歴がありますが、SSでしょう。ブレーキも良好に利いています。ここで見過ごすところでした。目視では問題ないように見えるのナットのネジロックですが、これが工場での塗布が少し少なくて緩んでおりました。常にカムによって叩かれていますから緩みやすいのですが、このまま放置すると故障の原因になるところでした。

Dscf286664 底部のギヤ列です。幸い磨耗の程度は軽微ですね。ピンセットの下ギヤには負荷が掛かっていますから、しっかりと潤滑させて組立てておきます。

Dscf286724 前板のプリズム関係ですが、残念ながらプリズムに1点腐食がありますね。Fの場合は、プリズムが腐食している個体が多いです。殆どの場合、画面全体に点々と広がっています。この個体の場合は端に1点ですから撮影時にもあまり気にならないと思います。その他、フレネルレンズは清掃できれいです。

Dscf286815 元々、故障機ではありませんので、問題はなく組み上がっています。全反射ミラーは、再使用は可能でしたが、新品と交換してあります。

Dscf287051これで完成です。PEN-FTより古い機械ですから、最近のPEN-Fは使用による磨耗劣化に加えて高温多湿の環境下に長くあったことで状態の良いものは少なくなっていますね。この個体は、レンズマウントの磨耗やキズも殆ど無い使用頻度の少ない個体で、点々と所有者が移って程度を落とすことなく固定の所有者のところにあったものと分かります。実際の使用については改良版のFTの方がいろいろな意味でよろしいとは思いますが、現存のFでは殆ど利いていないブレーキも機能していますのでショックも少ないです。初代のソリッド感を味わって実際に撮影で使用したいという方には良い個体だと思います。ウィークポイントはプリズムに1点の腐食です。ご希望の方はメールでお問合せください。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


OLYMPUS WIDE-Sのメンテナンス

2011年08月21日 19時10分42秒 | インポート

Dscf2858751 ちよっと中途半端なので時計を進めています。欠落していたハック用のバネはジャンクのLM(ロードーマチック)から調達してみれば何のことは無い→のバネで、ゼムクリップの半方のような形。これならφ0.1のステンレスバネ材を使って5分で自作出来ましたね。リューズの引き抜きによって、右に見えるハックレバーを押して、画像ではセットしていないテンワと接触させて停止させる構造ですね。56系のユニットは小径薄型に設計されているため、各歯車が非常に薄く出来ており「これで持つのかいな?」と心配になりますね。日曜送りギヤ以外は持った訳ですけど、この個体は自動巻きの伝え歯車の磨耗が目立ちました。

Dscf285887 一応キャリバーの組立は終了しましたので、カレンダーを組み込んでから文字板を取り付けます。剣(針)はカレンダーが12時を超えた時に切り替わる位置に調整して取り付けます。風防ガラスは純正が入手出来ましたのできれいですが、文字板の劣化が目立ちます。これを自分の手で再生出来ないのはちょっと残念なところ。針とインデックスには曇りが発生していますので、せっせと研磨をしてあります。リューズのOリングは手配中です。8振動とはいえ、普段見慣れているロービートの5振動と比較すれば秒針の動きがスムーズです。同じ機械を採用のグランドセイコーは10振動になります。画像で分かりますでしょうかね?針が何度も抜き差しされて特に秒針がヨレッとしていますね。複製品の出ていますが、現行のグランドセイコーのようにブルゥに塗っちゃおうかな・・・

Dscf285467で、カメラの方ですがPEN関係はご指示が決まりませんので掛かれないのでOLYMPUS WIDE-Sのメンテナンスをしておきます。ファインダーの清掃ご依頼ですが、対物レンズがコンパクトPENと同じ2枚重ねになっていまして、これが接着が強固で分離が出来ない。無理をすると割れちゃうからね。画像では見にくいですが、中間の菌糸上のカビがあります。これをなんとか清掃するわけです。

Dscf285615 ハーフミラーにも多少の剥離はありますが、まぁ、年代を考えればきれいな方でしょう。メッキを傷めないように慎重に清掃して行きます。

Dscf285752 トップカバーの巻上げレバー下部分が不自然にへこんでいましたので平面に修正をして、いざ組んでみましたら、あれ~、レバーがトップカバーと接触しますね。あぁ、それでへこませてあったんだぁ。巻上げ軸には磨耗により上下のガタと倒れもあって設計どうりには回転しないのです。また、へこますわけにも行きませんので、巻上げ軸に角ワッシャーを自作して入れることでクリアランスを確保してあります。

Dscf285285 フィルム装填時に20枚を超えると巻上げが引っかかり巻上げが出来ないとのことですので、リンケージを点検します。すでに軸の磨耗がありますから、フィルムの負荷が大きくなるとスムーズに作動さなくなるのでしょう。潤滑もカラカラの状態でした。シャッターとの連動をさせるためのバネが折れていましたので、自作により交換してあります。


トップカバー微妙に変形のPEN-S3.5

2011年08月19日 20時57分00秒 | インポート

Dscf2840531 関東地方は北の高気圧が降りて来て、やっと涼しくなりました。昨夜までの熱帯夜から開放されて良く眠れるでしょう。ほっ。

前回O/HをしたPEN-FTはお譲り先が決まりました。ペンスケ展などでお話しをお伺いしますと、「O/H済みのFTを販売して」とのお声を多数お聞きしますので、なるべくご希望に沿うようにと思っておりますが、年々、程度の良いベース機も少なくなっており、レストアに掛かる工数を計算しますと、採算的には非常にきびしいのが現状です。その辺のご理解が頂ければ継続してお出しすることは可能なのですが・・

で、今回のPEN-S 3.5 ##1474XX(1967-3製)ですけどね。何やら沢山の付箋がついて来ましたね。3.5ですからそれほど経時的に劣化をしている個体は少ないのですが、この個体はトップカバーに微妙な変形があって、オーナーさんがお気にされているようです。カウンターガラス側横のビスも欠落していますので、それによっても変形が進みます。

Dscf284241 画像にすると良く分からない程度なのですが、確かに変形というか歪みはありますね。観察すると、カウンターガラスが再接着をされていますので、その時の分解時に不用意に指で力を掛けたのでしょう。カバーは本体に取り付けた状態で構造物として強度を発揮しますが、単体の状態では非常に弱いのです。また、接眼窓部のへこみもご指摘になっていますが、この部分は元々プレスの段階でかなり内側に変形しているものが多いです。これは、接眼窓をプレスで打ち抜く後工程での変形とプレス型の構造的な問題。オリジナルの梨地では目立たなくとも、リペイント時にメッキを剥離して研磨をしてみると、接眼部が大きくへこんでいることが判明して、そのまま塗装をすると目だってみっともないので修正に苦労することは度々あります。普段はそのような修正はあえて書いていないだけです。

Dscf284424 どうでも良いけどさ。この個体は前回の修理?から、あまり時間が経過していないのではないの? シボ革ですが、アルコール系の接着剤で貼ってありまして、ご覧のように硬化せず糸を引く状態。接着強度が無いため、シボ革自体も縮んでしまっています。そもそもO/Hだけにシボ革を全て剥離する必要がどこにあるのかな? メーカーで貼った接着強度は絶対に出せませんから、必要最小限以外の部分は剥がさないこと。この接着剤を落とす作業には閉口しそうです。

Dscf284386 ファインダーの対物レンズも例の硬化しない接着剤で留まっていますね。鳥モチ接着かなぁ・・

Dscf284567 シボ革の接着剤を完全に清掃して洗浄してあります。シャッターユニットは分解を受けています。特に疲労はありませんが、塗布されていた水油が気になりました。そもそも無限調整が大きくずれていましたが、これで撮影出来たのでしょうか?

Dscf284612 オーナーさんのご希望により、カウンターガラスは新品と交換してあります。↑の方の画像と見比べてくださいね。接着とはこうするのですよ。トップカバーの変形は極力修正をしてあります。

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これで完成です。縮んだシボ革は修正をしながら貼ってあります。欠落していたトップカバー横のビスですが、この個体 #1474XXの頃はPEN-S 2.8と同じスリ割り(-)ビスが正解ですので、純正のスリ割り化粧ビスをつけてあります。この後の生産機では+ビスになります。元は悪くないのに分解でコンディションを落としていた個体ですね。


お盆休み中のPEN-FTとKING-SEIKO

2011年08月13日 11時15分30秒 | インポート

Dscf28381598 毎日暑いですねぇ。日本国中お盆休みですから旅行や帰省に出掛けていらっしゃる方も多いと思います。修理のご依頼も一段落ですが、私はこの猛暑では外出の予定はありませんので、在庫のPEN-FTのO/HとキングセイコーをO/Hして行きたいと思います。PEN-FTはご希望の方にお譲りします。暑い中、中古屋さん回りをして探すよりはO/H済みを入手出来ますので楽ちんだと思いますよ。#1944XXは1968-3月製造の個体になります。

Dscf283768 こちらはセイコーのKING-SEIKOです。1970-11月諏訪製造で、56系(5625-7000)というセイコー自動巻きの定番キャリバーを搭載したモデルです。上級のグランドセイコーと同じ機械ですが、グランドセイコーは特別調整品で、キングセイコーは量産品というところでしょうか。この個体はジャンクとして入手したもので(良品は高価です)外観の状態は良くないですね。ケースと風防はキズが多数ありますから、大切に使われた個体ではないですね。風防は普及時計のようにプラスチックではなくてハードレックスというガラス製です。普通の使用ではあまりキズはつかないのですが、それにしては深いキズが多いです。この風防は研磨することが出来ません。幸い、時計部品商社に最後の1個の在庫がありましたので確保です。良く見ると文字板も良くないなぁ。湿気浸入による外周の自然劣化と分解キズも見えます。ガラスを交換すると劣化が目立ちますのでリダンもしたいところです。このキャリバーの欠点である日送り不良は現状では正常に作動しています。裏側のゴールドのメダリオンは外周部を無理に押し込んだような痕跡がありますので、或いはこの個体のオリジナルではないかもしれません。GSやKSには分解マニアが多くて、寄せ集めの個体の可能性もありますね。その辺りはカメラと一緒です。まぁ、自分で治して楽しんで使うことが目的ですからどうでも良いのですが・・

Dscf283951 裏側を見ます。一見、裏蓋のように見えますが、工具を掛ける溝がありませんね。このケースは一体ケースで、裏蓋はありません。したがって機械は前面の風防を外して取り出すようになっています。防水性を考慮してのケースと思いますが、バンドの足の中央に、テンプの調整が出来るビスがありますので、あまり防水性が良いとも思えませんね。真ん中には金メッキのメダリオンがついています。外周に圧迫キズがあるので、オリジナルではない可能性もあります。ヤフオクなどでは、純正ではない(複製)メダルも販売されています。このモデルの次が最終型になりますが、そのモデルには中央のメダリオンは省略されます。机に置いた時には、このメダル部分が当りますのでメッキの磨耗が気になりますね。

Dscf283761 では、本体から組立てて行きますが、元々不良の個体ではなく、仕上げ用に保管していたものですので特に問題はないですね。マニアさんは後期型がお好きですので、どうしても中期頃までの個体が残る傾向にありますが、後期型が良いのは、製造が新しい(とはいっても)分、光学系などの状態が良い傾向にあるためで、巻上げの感触などはギヤの規格変更で、返って保管の良かった中期までの個体をメンテナンスした方が良い傾向にあります。スプロケットギヤの留めビスは殆どの個体で緩んでいますので、ネジロックを併用して組立ておきます。

Dscf283851 リターンミラーです。O/Hに入って来た個体では問題なくそのままお出しする状態(右)ですが、せっかくですから新品でスカッときれいにしておきましょう。左は貼り替えた状態。

Dscf283937 交換したリターンミラーを組み込んだ前板を本体とドッキングします。シャッターユニットは全く問題はありませんので洗浄、注油をしてしあります。

Dscf284024組立完成です。リターンミラーとハーフミラーを新品に交換してありますが、リターンミラーにすり傷が無いのはやはり気持ちがよろしい。

Dscf284115梨地メッキには使用による小スリキズはありますが、大きな凹みや塗装の劣化はないですね。仕上がってみると非常にすっきりとした個体です。巻上げフィーリングも中期頃までのスムーズな感触を維持しています。暑い中、中古屋さんを探し回っている方にはメンテナンス済みの個体ですからよろしいと思います。ご希望の方にお譲り致しますのでメールでお問合せください。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/

  Dscf284555

8月15日は終戦記念日という敗戦記念日ですね。この国は都合の悪いことを言い換える悪い癖があって、戦時中でも撤退を転進といったそうな。そして誰も責任を取らないのは今回の原発事故でも一緒。で、カメラの方は、次のPEN-Wの分解をしておりましたが、暑いし、世の中は連休中なので、それではと、ちょっとサボって時計で遊んでいました。キズだらけであったケースは研磨をしましたのできれいでしょ。SS(ステンレス)だから腐食しないと思ったら大間違い。ちょうどPEN-Wのトップカバーの真鍮のようにポツポツとピンホール状に多数の孔が開いていて、軽く研磨をしただけでは取りきれません。同じ人の汗の塩分が原因なのでしょう。かといって、あまりラグの部分を削りすぎるとデザインが変わってしまいますから、ギリギリの兼ね合いで研磨しました。ネット上では、リューターにバフをつけて磨くのが一般的なようですが、それをすると、角の部分まで削れて稜線がタレてしまうのです。ここは自動車板金で習得した方法のあて板をつけて、自分の手でシコシコと磨くのが一番よろしいです。プロに依頼すると一万円ぐらい掛かるとか。まぁ、手間と技術だからそんなもんでしょうけど、私としてはPEN-WのO/H工賃とほぼ同じでは割に合わないので自分でやります。

下の風防ですが、左がこのユニットに付いていた古いキズだらけのもの。右はデッドストック新品。このモデルは枠つきで新品の輝きがきれいです。こうなると文字板の黄ばみが気になりますが、リダンはやはり一万円以上掛かります。その仕事、私がやりたいなぁと思います。どこか弟子入り出来ないかしら?  と、ここで失敗。リューズを見ると防水用のOリングが入っていませんね。セイコーの純正は手に入らないかもしれないなぁ。このケースは裏蓋がありませんので、機械をO/Hした後でリューズだけ引き抜くのは非常に困難なので、Oリングを調達してからの組立になります。それまで、機械のO/Hは進めておきます。

Dscf2848851 5626AのキャリバーはLM(ロードマチック)と基本的には共通で、ハイビート化(8振動/秒)をした25石の機械です。それまでの機械と比べて非常に薄く小径に出来ていますね。自動巻き機構を専用設計としているので、それまでの手巻き機械に自動巻き機構を追加した機械とは比較になりません。それは良いとして、この機械のウィークポイントは←のギヤです。竜頭を正逆に巻くことによって、日付と曜日が別々に早送り出来る非常に便利な機構ですが、歯車の基部が回転方向によって動いて上のギヤか左のギヤのどちらかに接するようになっていますが、歯車が樹脂製のため摩滅をして、日付や曜日の早送りが出来ない個体が多数あります。すでにメーカーには部品在庫は無いので、基本的に同じ機械のLMジャンクから調達される場合が多いようです。この個体は健在でした。

Dscf285095 機械のレイアウトはそれまで見慣れた古典的な機械のものとは全く異なりますのでじっくり観察する必要があります。一部のギヤの磨耗と回転ローターの裏側の腐食が目に付きました。このまま組むか、ジャンクのLMを調達してギヤを交換するか・・

Dscf285377 と思ったのですけどね。分解前にハック(秒針停止)機能が利かないのを思い出しまして、点検をして見ますと・・・あぁ、バネが無くなっていますね。がハッをさせるためのレバー。このレバーでテンワと接触させて秒針を止める機構ですが、レバーを押し付けるためのバネは本来の部分にセットされているはずです。これが前回の分解時に紛失させて気づかずに組んだものでしょう。当然プロはこのようなミスはしませんのでアマチュアの仕事です。カメラの世界でも時計の世界でも事情は同じなんですね。よって、LM(ロードマチック)の部品取りを入手するまで組立は中止としますね。