今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

二眼レフをやっつけておきますの巻

2023年02月26日 21時00分00秒 | ブログ

たくさんの修理ご依頼を頂いておりましてブログの画像を撮っている余裕がありません。当分、簡単なUPになります。PENファンの方、もう少しお待ちください。で、ローライフレックス・オートマットⅤをやっていますが、古いのと長期間放置の個体ですので外観の程度も良くありません。まず、裏蓋をロックするSHAPED SCREWって言うのかな。それが欠損しています。社外でしょうがストックがありましたので取り付けます。

放置のためかフードが固着して開きません。無理に開けると壊す危険があるので4つネジを外して取り外します。

 

開閉の作動を制御するコロが原因のようです。

 

 

このコロが錆びついて全く回転しません。分解して錆を落とし注油をします。この後は撮影が出来ませんでした。

 

最近、ローライ35(特にジャーマニー)のフィルムカウンターが固着して動かない(戻らない)と言う故障が数例出ています。駒数盤と樹脂ギヤの接着剤が原因の場合や、今回は樹脂ギヤの内径の荒れによるダイカスト側の軸受けとの固着が原因でした。ローライ35は樹脂部品が不具合の原因になることが多いようです。

こちらはローライコードⅣですが、上のオートマットよりもっと程度が良くないです。私はO/Hを始める前に、まず外観の清掃から始めます。汚いカメラを触りたくないのもありますが、清掃で各部を動かしている間に、不具合の部分が良く見えて来るからです。巻上げダイヤルのアルミが腐食しているのと、シボ革が無くなっているので補修をして欲しいとのご指示です。

まず、アルミのダイヤルを磨きます。ローレットの溝に入っている手垢も清掃して行きます。

 

この時代のシボ革は本革なので、まず汚れ落としのブラッシングをしてから栄養の保革清掃をしました。ワックスなどは厳禁です。ジャンクのローライフレックスから調達した本革から切り出したものを貼って行きます。

 

この時代のガラススクリーンは汚れが焼き付いていて洗剤では落ちない場合があります。車の窓ガラス用のうろこ取りなどが良さそうな気がします。

 

レンズは前玉の内側に曇りがあります。組立は一般的なネジ込み式ではなく、スチールボールで位置決めをして裏側からプレートをねじ込む方式です。

 

長期間革ケースに入っていた個体は湿気のせいか内面反射防止塗装にカビが発生しています。かなりきつい粗面のため拭き取るのは非常に困難で無理をすると塗装面を痛めます。

 

私の技法で清掃しました。

 

 

シャッターはO/Hを終えましたのでこれで良いかとフィルムを入れてテストをすると、1枚目のシャッターを切っても次の巻き上げが出来ません。側面プレートの分離はフォーカシングダイヤルを取り外す必要があります。ダイヤルの先端部が別パーツでねじ込まれているので分離します。

この2枚合わせの歯車の動きが良くありません。観察すると過去にも分解を受けていて、バネが変形しているのも原因です。

 

洗浄と注油、バネの矯正で改善しました。カウンター盤をセットしてリンケージの清掃と注油をしておきます。

 

シボ革を貼ります。

 

 

面のシボ革も貼って組み立て終了。

 

 

磨き出したダイヤルが光ってシボ革も違和感はありません。時代を考慮すると純正の革ケースは良くもっていますね。

 

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ジャンクにならないジャーマニーの巻

2023年02月23日 10時30分00秒 | ブログ

キリが良いところでもう一台ローライ35ジャーマニー#3157XXXをやっています。カメラ店様からの個体ですが、海外仕入れのカメラは現品を確認出来ませんので信用取引なわけですが、中には定期的に酷い個体も入って来るわけですよ。仕入れたものは何とか商品にしないといけない訳ですが・・この個体は状態も悪いしかなりいじられています。リンケージの表面が削られていますが、かなり錆が出ていたのでしょう。部品取り用のシンガポールの方がよっぽど程度が良い・・

露出計は動かない、シャッターも変。裏蓋もこれだもんなぁ・・

 

 

では、プロですから仕上げなければいけないのです。ジャーマニーは古いということかファインダー周辺が激しく腐食している個体を見ます。部品の表面処理が良くないのか?

 

巻上げギヤ下も同様です。ひたすら錆落としです。

 

 

シャツターもこれですからね。草むらにあったカメラでしょうか?

 

 

沈胴などの不具合を解決してトップカバーのレバーアテも付けました。あとは問題の露出計ですが、これがいけません。不動の原因はメーターコイルの断線でした。湿気が原因でしょうね。万事休す。

 

Cdsや回路の問題でしたら直しようもありますがコイルは直せません。これはユニットを交換するしかありません。仕方ない、虎の子のユニットを出しますが、このユニットは電池の液漏れにより電池接点が完全に溶けて無くなっているものでした。リン青銅板から接点を作り直します。

めでたく露出計作動となりました。露出計が作動しないと商品として価値が下がります。

 

で、カバーを閉じて完成となったハズでしたが・・

完成テストでシャツターを切っていると・・低速2秒が速くなって来ました。おまけにBが止まりません。あ~、また分解です。

問題は、スローガバナーを作動させるレバーとの接触面が摩耗をしていてガバナーを介さずにシャッターが切れてしまう。画像の黒いレバーがシャッターを切ると左から右に回転して、ガバナーの接触面を押す構造です。どれだけ使い込まれたらこうなるの?

ローライ35のスローガバナーは種類があるのは承知していましたが、この部分に機械としてウィークポイントがあるのでしょう、接するレバーと共に形状が変更されています。全く同型のユニットを探して来ました。

 

レバーも対で交換します。メインバネはとりはずしは比較的容易ですが、取付けが難しいです。専用の工具などがあるのでしょうか?

 

まぁ、何です。通常の何倍の工数を掛けて、ジャーマニーと言っても初期ではありませんので、何が何でも直さなければならないことは無いかなぁと思わせた1台でした。

 

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ローライ35系兄弟の巻き(2)

2023年02月19日 20時00分00秒 | ブログ

さて、ローライ35Sブラックの方です。画像ではこの程度にしか写りませんが現物はもっと汚れ放題の個体です。現役機というよりは放置機? シャッター低速止まりなどがありますが、大きな不具合は無いようですので通常のオーバーホールです。

 

そのためレンズやファインダーにカビが発生しています。

 

 

巻き戻しダイヤルは殆どこのように劣化していますね。

 

 

接眼レンズを取り外してみると、ブライトフレームガラスにカビが多く発生しています。

 

の部分が陥没しています。幸いカバー側は凸になっていませんが、カバーがアルミ製で柔らかいので、このままにしておいた方がカバーにやさしいのか・・やっぱ直しておきます。

 

そのトップカバーですが、汚れを洗浄してみると・・なんと艶消しも完璧に残っていて、アルミ製なのにへこみも無い。すばらしいカバーです。じつは殆んど使われなかったのでは?

 

沈胴の感触が良くない。分離して調整をします。

 

 

沈胴チューブは戻してあります。では、過去に分解歴がある(あるんだぁ)シャッターユニットを分解清掃して行きます。

 

ローライ35系のレンズは比較的にカビが生えにくく、生えていても清掃で取り除けるという印象がありますが、この個体の場合はレンズの各面にカビが生えています。

 

ゾナーレンズは分解はし易いのですが、異形のレンズ座などが入るので、分解時はどのように入っていたかを記録しておいた方が良いです。ほぼ清掃が出来ましたが、絞り羽根の前面にうっすら残りましたかね。作業前と比較したらまずまずです。これだけカビの多いレンズは珍しいので保管が良くなかったようです。

ストラップの金具部分のみを取り付けます。最近は社外のストラップも出回っているようですが、金具からストラップが抜ける事故もあるようですので注意をしないとね。私は昔購入した純正新品を所有しています。

 

汚れ放題の裏蓋も洗浄してあります。こっちも忘れずに巻き戻しダイヤルを黒くしておきます。

 

 

仕上がって見れば目立つアタリも無くきれいな個体となりました。オーナーさんの選択眼は正しかったようですね。

 

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ローライ35系兄弟の巻(1)

2023年02月18日 21時00分00秒 | ブログ

ローライ35と35Sのブラック兄弟が来ています。どちらも大きなへこみは無く、まずまずの状態ではないかと思いました。ただし、2台とも手油でネチネチの感触。これが一番嫌い。

 

では、ローライ35 #61888XX (シンガポール)から始めますよ。大きな不具合は無いので書くこともあまりないと予想します。まず、ストラップを外します。トップカバーの側面にへこみがありますね。荒出し修正をしておきます。

 

レバーアテが欠損でファインダーはブライトフレームもかなり曇っています。

 

 

いつも気になることですが、巻き戻しレバーの基部の樹脂が白っぽく劣化していますね。高級コンパクトとしてはちょっといただけない材質劣化です。

 

沈胴はグラつきが大きいと思います。フェルトの調整が必要です。また、前玉のヘリコイドグリスが完全に抜けています。

 

ファインダーのレンズを分離して清掃をして行きます。接眼レンズの固定方法は簡単で確実です。

 

清掃をしたファインダーを本体に戻します。スプロケット軸には小さなワッシャーが入るので忘れずに。

 

で、大きな変形は無いと思っていたトップカバーですが、左肩に打撃を受けて下がっていますね。底面が大きくズレているのが分かります。

 

荒修正をしたところ。違いが分かりますか? レバーアテも追加してあります。

 

 

この程度の変形で済んでいるのは材質が真鍮だからです。ジャーマニーはアルミが多いと思いましたね。この個体は裏蓋底部も真鍮製で、その分カメラが重いです。私はこちらが好き。

 

シャッターは過去に分解を受けています。ネジの緩み止めを溶かさないのでスリ割りが壊れています。また、バネが故意に曲げられています。直すと折れる危険性があるのでこのまま使いますが私の仕業ではありませんからね。

 

沈胴は調整してあります。完成したシャッターユニットを取り付けます。

 

 

巻き戻しダイヤル基部は黒くしておきました。

 

 

シンガポール製は部品は本国からの支給とシンガポール製があるようですが、このシリアル個体はどうなんでしょうか? シャッター(絞り)ダイヤルの化粧ネジのメッキが腐食しています。ジャーマニーで程度の悪い個体でもメッキ腐食はあまり見ませんね。

清掃をした前玉に新しいグリスを塗布して取り付けます。

 

 

専用のフィルターって何かかっこ良くないよね。巻き上げが重い個体でしたが、完成後は軽く巻き上げが出来る調子の良い個体となりました。

 

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作業再開PEN-S3.5の巻

2023年02月16日 13時00分00秒 | ブログ

中古カメラ市用の作業が終わりました。美品の初期ローライ35の完成が間に合わなかったのが残念ですが、お休みなしの長時間作業で少々疲れました。で、ぼちぼち通常の作業を再開です。PEN-S3.5の後期になるとシャッターユニットがコパルによって設計変更を受けるのですが、永く使うには変更前のユニットの方が良いので、オーナーさんに生産時期の近いドナーを探して頂いていました。このユニットに換装しますが、仕様は良いのですがシャッター羽根などの腐食が目立つ個体です。

全て分解をしてハウジングも完全に洗浄します。特に摩耗は無いようです。

 

 

やはりシャッター羽根は気になるので、元々のユニットに使われていた羽根を使いました。

 

PEN-S3.5改は終了。次は2台のPEN-Wをニコイチで仕上げてというご依頼。私は正体不明のような組立はしたくないので#1091XXの悪い部品を最小限入れ替えるという方針で行きます。

 

私のところに来るカメラは皆同じですが汚れが目立ちます。シボ革の溝部分にごってりと手垢が詰まっています。修理工賃の中には含めておりませんが、私が汚いカメラを触りたくないので洗浄しているだけです。

 

PEN-Wの問題はレンズですが、特に後玉のバルサム切れ(黄変)とコーティングの劣化です。この個体の場合はバルサムはほどほどでコーティングの劣化です。すでに殆ど拭き取られています。

 

すでにシャッターユニットはオーバーホールを終えて本体に搭載しました。シボ革を貼ります。

 

メッキを洗浄研磨しておいたカム板を取り付けます。

 

 

本体はレンズ前群を残して完成。トップカバー側はファインダーのレンズを分離して清掃と再接着をしてあります。

 

この個体は駒数ガラスの汚れ(小キズ)が多く、駒数盤が見えにくい状態でしたので研磨をしておきました。新品と交換しても良いのですが、PEN-Wはトップカバーが塗装仕様のため、エポキシ接着剤が塗膜と強く融合しているため剥離はPEN-Sなどのメッキ仕様より困難で注意をしないと塗膜が剥がれます。

何故が外観の悪い#1027XXの方が後玉が良いです。奇跡的にコーティングも生きています。

 

過去に分解した方も後玉を外そうとしてリングナットを緩めた形跡がありますが、結局、緩めることが出来ず傷を付けています。

 

では、左側の後玉とリングナットを移植します。

 

 

後玉の側面。口径違いのレンズを貼り合わせてあります。

 

 

前群の前玉に裏側に汚れがありましたので分離して清掃します。

 

 

本当はレンズの移植はしたくないのです。同じカメラのレンズであっても製造時期のロットの違いや公差の変更もありますので・・まぁ、交換のお陰て、最近見るPEN-Wでは一番レンズがきれいでしょうね。

 

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