今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

今年の締めはローライコードⅣの巻

2023年12月30日 10時30分00秒 | ブログ

御用納めも過ぎて、いよいよ明日は大晦日ですね。ご依頼のカメラもまだ多数残っていますので明日も作業はしますが、ブログはこのローライコードⅣで締めさせていただきます。とは言っても画像を撮っていませんし皆さんもお忙しいですから簡単にです。ほとんどの個体はレンズに曇りがあります。この個体もビュー・テイク共かなり曇っています。

ビューレンズを分解して清掃をしていきます。

 

 

テイクレンズの方も前玉の裏側が曇るのが定番です。

 

 

シャッターのメンテナンスをしてからフィルムカウンターの作動不良を見ます。カウンター盤の回転が固着して正規の位置に戻っていません。

 

これも多いトラブルで、組み立て時に塗布されていた水油が揮発して粘っているためです。本体側とギヤを洗浄します。

 

フード内の汚れも定番です。内部の清掃とミラー・スクリーンを清掃して組み立てます。

 

フォーカシングダイヤルを取り付けてカバーを付けます。

 

 

裏蓋の4脚にへこみがあってギッタンバッコンになっている個体が多いですがこの個体もそうでした。裏蓋単体では修正が出来ていても、本体に取り付けてロックレバーを締めるとガタになるので、それを見越した修正が必要です。

ということで、今年も一年当ブログとお付き合いを頂きましてありがとうござしました。来年もまたよろしくお願いいたします。では、みなさん良いお年をお迎えください。

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これで御用納め? PEN-Wの巻

2023年12月26日 20時00分00秒 | ブログ

いよいよ今年も押し詰まってきましたね。みなさんは御用納めは何日でしょうか? 私は例年大晦日も正月も作業をしていますけどね。で、これで今年中の作業はお終りかなぁ。PEN-Wが2台です。どちらもシャッター不調と汚れ放題で年月を感じますね。

しかし、特に問題はないと思われますので、特別なこともなく淡々と作業をしていきます。すでに分解をして、本体の洗浄をしてあります。次はシャッターを組んでいきます。

 

洗浄しましたら本体は意外にきれいになりました。シャッターユニットが完成しました。調子は良好です。

 

ストロボの発光テストをしてシボ革を貼っておきます。

 

 

と、ここでカメラ店様から突っ込みです。

 

 

巻き上げレバーがプラプラになる症状。これ、最近生産の古いドイツ製に多く出ています。部品名FLANGE という巻き上げギヤのクラッチですね。おそらくジュラコン樹脂製と思いますが、シャフトに嵌って上下に摺動する部品ですが、長い間に摺動面に傷がついたり摩耗をしたりでスムーズに動かなくなっているのです。メーカーSSでしたら問答無用で新品部品と交換ですが、それがありませんので苦労をすることになるのです。

何とか終わらせてPEN-Wに戻ります。磨き出したカム盤を取り付けます。

 

ファインダーの前面ガラスと対物レンズを清掃して接着をしました。本体と組み合わせます。

 

レンズはいけません。バルサム切れというよりはバルサムに曇りが出てしまうのがPEN-Wレンズの特徴かな?

 

群と後群にバルサム貼り合わせがあるのですが、この個体は両方に曇りが出ています。また、前群レンズは組立時に軽圧入の感じでセットされているため分離のできない個体が多いです。最近は前群のバルサムを取り去って、2枚のレンズをそのまま重ねてリングナットで締め込まれているものもありますので入手時には注意が必要です。と言っても注意のしようがありませんが・・バルサムをやり直してくれる業者さんもあるようですが私は知りません。

すでに2台目をやっています。本体にスプロケット軸を取り付けています。1台目の個体は#1939XX 1964年10月製ですがスプロケットはアルミ製です。下の2台目は#1079XX 1964年11月製でスプロケットは樹脂製に変更されています。コストダウンですね。

オーバーホールをしたシャッターユニットを取り付けます。

 

 

2台目の個体はファインダーの前面ガラスと対物レンズを取り外して清掃を受けていました。再び分解しますが、前回の分解時に前面ガラス角にカケがあります。ここの分解は非常に困難でメーカーは製造後に分解は想定していないと思います。無理をすると対物レンズを割ってしまいます。私は次の修理の方が簡易に分解できるように(部品にダメージを与えないため)接着は必要にして最小としています。

こちらのレンズは打って変わってきれいですね。バルサム劣化の差は紫外線や高温多湿なのでしょうかね。使用しない時はレンズキャップをしましょう。

 

まぁ、一勝一敗というところでしょうか。今年中にもう少し作業が出来そうです。

 

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女性PEN使いさんのSOSの巻

2023年12月25日 10時00分00秒 | ブログ

定期的に女性PEN使いさんからSOSが入りますね。今回の状況は、「ファインダーで精密にピントを合わせてもピンボケの写真になる」というもの。リターンミラーの再接着はされていないかの質問に「修理屋さんで貼り直しています」とのことでした。

当方でフィルム面とファインダーのピントを確認すると、やはりファインダー側がかなり前ピンとなっていて、調整ポイントを確認すると調整範囲を超えていることが分かりました。このカメラはファインダーの調整範囲が狭く、工場で組み立てたままの個体であっても、調整範囲ギリギリで調整が取れている個体もあるので、ミラーや接着の不適当によって調整が取れないケースがあります。

それでは、リターンミラーを取り出すために分解をしていきます。

 

 

前板からリターンミラーホルダーを分離しました。

 

 

すでにリターンミラーは純正から張り替えられていましたが、問題は使われた接着剤のようです。おそらくセメダインのスーパーXかと思いますが、この接着剤は硬化後はゴムのような弾性となり接着厚が厚くなる傾向があります。

当方の新しいリターンミラーを純正と同じ方法で接着をしました。前板にリターンミラーを取り付けてからスクリーンやミラーユニットを組み立てて行きます。

 

完成した前板を本体に取り付けます。その前に、シャッターユニットの点検とチャージギヤにモリブデングリスを塗布と注油をしてあります。

 

ハーフミラーはコストの関係でオリジナルを再使用とします。

 

 

メカの組み立て終了。無事、ファインダーの無限調整が取れました。

 

 

PEN-FT #2481XXと中期頃の個体ですが程度は悪くはありません。「リターンミラーの剥離」はこのカメラの持病ですから、どの個体にも起きる可能性があります。その場合は正しい基準で再接着と無限調整が必要です。

(追加します)完成の点検をしているとフィルムカウンターが戻らない不具合。ギヤ類はちゃんと洗浄して組んであるはずなのに・・原因はモルトです。純正では部分にある裏蓋を開けた時に駒数ギヤを開放するピンがありますが、その右側のみモルトが貼ってある仕様ですが、この個体は左側も通して貼られています。ピンの動きが干渉でスムーズに動かないのです。このようにモルトを貼る方もいますが、「過ぎたるは何とか」で不具合の原因にもなり得ます。

ターミナルにリード線をネジ留めするのに空回りをして締め込めない。

 

 

これは樹脂の絶縁体がのカシメが緩んで空回りをしているためです。これは良くある不具合でグリコのおまけのようなチープな品質です。再カシメをします。

 

最後にストロボの発光テストをして完了です。

 

 

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キヤノンデミSのメンテナンスの巻

2023年12月21日 20時00分00秒 | ブログ

もうすぐクリスマスかぁ、すぐに新年が来ますね。直接のご依頼カメラが溜まっていて、今年中にすべては無理となりましたが頑張ってやります。レンズはPEN-FT用ズイコー40mm。レンズに小さなカビと絞り羽根に油が回っていますので清掃しています。使用されたレンズの割にはレンズなどの状態はよろしいです。

これはキヤノンデミのSの方ですね。1.7の大きなレンズが付いています。カバーはデミと同じ最中構造ですが、レンズの関係で上下にも分割されています。デミは何をするにもシボ革を剥がさなければなりません。

 

このカメラはシャッター羽根の張り付きで故障となっている個体が多いですね。シャッタースピードは1/500~1/8 B と高速側が有利で下は1/8なのでスロー不調は起きにくいです。

 

セイコーシャLの内部はきれいです。各部の洗浄とガバナーに注油、ヘリコイドグリスが完全に抜けていますので洗浄してグリス交換をします。

 

ケブラー実像式ファインダー。倒立像を正立像に戻すため豪華にプリズムが使われていますね。レンズも含めて曇っている個体も多いですが、この個体の状態は良好です。


シャッターユニットとファインダーを本体にセットしました。ファインダーは約7mmオフセットされています。

 

このネジはシャッターダイヤルのクリックバネ留めも兼ねているので、クリック感を調整しながら締めます。

 

巻き上げ機構の清掃とグリス塗布をした本体に露出計ユニットをセットして上カバーを取り付けます。

 

裏蓋のモルト交換。デミ、ダイヤル35とオートハーフのモルト貼りは意外に面倒で苦手です。そのため型紙を作ってあるのでモルトを切り出します。

 

こんなところですね。裏蓋を本体に取り付けます。

 

 

取り付けるとこんな感じ。

 

 

発売は1964年9月とのことですから東京オリンピックの開催前月ですね。今見ても古さを感じさせない可愛らしいデザインは秀逸。一方の雄、PENは工業デザイナーでもある設計者、米谷さんの人間工学から来る合理的なデザインで、それはそれで素晴らしいですが、女性をターゲットとしたデミはキヤノンのデザイン力を感じます。しかし、この時代の常で、明るい30mmf1.7の大きなレンズ搭載のお陰で、重量は重くなり、初代28mmf2.8のように気軽にポケットに入れるという分けにはいかなくなったね。後にレンズ交換可能のデミCも登場してきます。

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珍しいリコーフレックスmillion の巻

2023年12月19日 17時30分00秒 | ブログ

カメラ店様から珍しいリコーフレックスmillionという二眼レフが来ました。「シャッター不調だけ安価に直して」とのご指示でしたが、そうもいかないようですよ。

 

リコーのHPから引用。「米国で流行した横長画面の撮影ができるように画面マスクと巻き取り窓を裏蓋に追加。裏蓋番号窓が複雑になっている」とのことですが、なるほどね。

 

安価に発売するため、板金ボディーですね。レンズにはカビがありますが清掃は出来そうです。

 

発売は1957年とのことですから、この時代の国産カメラのミラーは腐食で使えませんね。交換になります。ファインダーレンズもカビがありますが分解清掃をします。

 

題はシャッターが動きません。セルフタイマーも固まっているようですので分解洗浄をします。HPではシャッターはリケン製となっていますが、セルフユニットは「購入品」となっています。コパルかな?

シャッター羽根の洗浄とスローガバナーとセルフユニットを組み込みます。

 

セルフタイマーを掛けて正常にシャッターが切れています。因みに、シャッタースピードのスペックには種類があるようですが、この個体はB 1~1/300でした。

 

二つ目の問題は、リコーフレックスはレンズのヘリコイドグリスが固まって回転しないものが多い印象ですが、この個体も撮影レンズが固着していました。力技で分離します。レンズの清掃とヘリコイドグリスの交換をします。

ミラーは交換してあります。

 

 

これ何というのかな? 内部のフィルムを装填するマガジン?

 

 

こちらも問題あり。スプールホルダーにテンションを掛けるバネの支点のリベットが外れています。再カシメをしますが、常に板バネのテションが掛かっているのにカシメしろが殆ど無いので、たぶん多くの個体で外れているのではと思います。

ルーペはローライフレックスよりも大きい? 立派なものが付いています。これを清掃しておきます。

 

リコーフレックスでもローライフレックスでも作業の手間は一緒です。millionとは総販売台数が100万台を記念してのモデルだそうです。この個体もft機ですのでアメリカに大量に輸出されて外貨獲得に貢献したのでしょう。

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