今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

コンディションは良くないよPEN-Dの巻

2016年07月31日 21時32分57秒 | ブログ

先日、きれいなPEN-Dをやっちゃいましたからねぇ。比較するのは可哀想な初期型のPEN-Dです。オーナーさんは「縁あって手元に来たので使ってやりたい」とのことで、このような方は多いです。日本人はやさしい民族だなぁと感じますね。確かに手間はかかりますけど大丈夫。好きで程度を落としてきたんじゃないのです。一生懸命に治します。でもばっちい。シャッターは眠い状態。

PEN-Dの生産開始は1962-6月とのことですから、この#1243XXは1962-10月製と半年ぐらい経過した頃の初期型です。トップカバーがへこんでいます。D系はこれが多いです。

 

何かUPが長くなりそうな予感がします。露出メーターは感度低下です。基板のない調整抵抗のみの初期型ユニット。

 

オーナーさんからは巻き上げが重いとのご指摘。確かにD系はSWなどと比較して余計なリンケージやリターンスプリングが負荷となっていますので重いのです。しかし、ちょっと重すぎの感じはします。スプリングが折れていますね。

過去に分解を受けているシャッターです。作動が非常に重く、羽根がゆっくりと開閉します。れれっ、後玉が曇ってますね。

 

結構腐食が来ています。その他、裏蓋などの塗装部分の剥げと錆が進んでいます。

 

ちょっと、見にくいですが、D系は後玉が曇ります。清掃では取れません。

 

 

シャッターの作動が緩慢なのはシャッター羽根の油の問題ではありません。

 

 

左側の磨き軸が命です。ここが腐食しているものは万事休す。

 

 

では、全て超音波洗浄をした後、組み立てて行きます。基本的には悪いシャッターではありません。

 

O/Hをしたスローガバナーをセットします。

 

 

後玉はあれでは仕方ないので、こうしておきました。

 

 

お約束の栄発動機。今回は発動機架付とかいっちゃって・・

 

 

本体の組立。まずは折れていたスプリングを交換取付けをしないとスプール軸が付きません。

 

分解時、かなりの確率で半田付けが取れるターミナルを再半田しておきます。

 

露出計は調整抵抗を取り去ってもまだアンダーですね。比較的丈夫なD系の露出計ですけど、流石に初期型はきびしいところ。ユニットの留めネジは真鍮3本。その後、左下のネジは省略されて孔加工もされなくなります。D2,D3では、導通確保のため片方が鉄ネジになります。

トップカバーのへこみは修正しました。接眼部の遮光モルトを貼っておきます。

 

で、シャツターリングを仮付けして回転させてみると、8 B 部分で回転が異常に重くなる。原因を探って行くと・・これでした。カム板の山を調整(シャッタースピード)するため工具で潰してあるのですが、内径から飛び出しています。この部分がシャッター本体に接触するのです。シャッターリングを取付けて回転させれば回転ムラは顕著に分かりますが、シャッターユニット単体での供給では不具合が発見出来なかったものかも知れません。

まぁ、いいや。修正によってスムーズに回転するようになりました。どうして、性能は先日の極美品と変わりません。初期型ですから、取説も初期の版ということで。

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SEIKO スピードタイマーの針交換の巻

2016年07月27日 20時26分47秒 | ブログ

まぁ、私はガラケーなので、ポケモンGOは出来ないのですけどね。しかし、ここの所、関東地方は気温が上がらず、梅雨明けはお預け状態。夜のウォーキングには、ちょうど良い気温なんですけどね。

さて、少し前にUPしましたスピードタイマーですが、針の状態が悪かったので、オーナーさんがリプロ部品を調達されて来ましたよ。まずは、6138-0040通称「黒馬」です。長短針はオリジナルより少し短いようです。

拡大すると、長短針と秒針は手塗りで補修してあります。

 

 

小窓の針は白で使いますが、センターの秒針は黄色がオリジナルのようですので、やはり手塗り(面倒なので)で塗装しました。元の針も補修ですので、オリジナルの色が分かりません。う~ん、黄色、白、赤で調色だね。

 

基本的にはe-bayで流通している針セットを使用しましたが、秒針だけは長さが短いのでヤフオクで入手が出来る針を使用します。小窓針の色も何となくきれいではありませんね。

 

元々、文字板もリプロ部品のために目盛りの精度がアバウトなため、針位置の決定には苦労するところです。「当たらずといえども遠からず」違和感の無いところで・・

 

プッシャーの防水用Oリングはカチカチに硬化していて機能を果たしていないどころか固着の原因にもなっています。しかし、このサイズは汎用が見つからないのです。右はe-bayで取り寄せたOリングとバネのセット。バネの自由長は若干長いようですが、オリジナルが劣化をした可能性もありますので、リプロ品を使うことにします。

ケースに収めて完成。針が新しくなると視認性も上がり、腕時計が若返ったように見えます。次は6138-0010です。

 

6138-0010ですが、小窓の針が脱落しました。古い純正針を何度も抜き差しをすると孔の拡大で緩くなってしまいます。そこで、こちらはヤフオクで入手をしたリプロ針と交換することにしました。小針は黒に塗装済み。同時に風防ガラスの交換で純正部品を支給頂きましたが、これが問題になるのでした。

長短針は純正とは塗り分けが異なりますが、こちらの方が視認性は高いです。純正針は大切に保管してください。長いオレンジの秒針はオリジナルのまま使用としました。この後、ケースの風防交換で問題が発生。どうしてもベゼルが圧入できないのです。改めて適合する部品番号を調べてみると・・なんと部品間違いでした。あ~、作業前に確認を怠ったことが原因でした。そんなことで、完成の画像は撮り忘れました。

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元箱付きのPEN-DをOHするの巻

2016年07月25日 16時00分43秒 | ブログ

私は足のリハビリのために毎夜近所をウォーキングしているのですけどね。ここ数日、スマホを翳して暗闇を徘徊している女性や、自転車で走り回っている若者に遭遇することが多くなりましたよ。今話題のポケモンGOというスマホゲームなんでしょうね。日本は安全で平和だなぁ、と感じます。しかし、最近は夜すれ違う人の会話が日本語でないケースが増えて来ました。外国人蔑視ではありませんが、昔のような安全な日本では無くなりつつあるようにも感じますので、若い女性の方はお気を付け頂きたいと思います。

で、本題です。遅れて来たペンマニアさんが続きます。元箱付きに引かれて入手をされたというPEN-Dですが、どうしてどうして、殆ど使用の形跡のない良い個体ですよ。オークションで非常に安価に入手されたそうで、喜んでよいのか悲しむことなのか・・未分解の個体ですが、シャッターユニットを留めるビスのスリ割りが・・元々、ネジの成形不良なのかなぁ?

長期に保管されていた個体は決まって裏蓋の先端部分が変質したモルトにより腐食しています。これは表面研磨をしてタッチアップをしておきます。

 

Dシリーズの中では安価に入手が出来るPEN-Dですが、では、コンディションの良いもの。と限定をすると意外に少ないのです。しかし、この個体はメッキの劣化もなく、本当に程度が良いと思います。革ケースに仕舞われたままだったのでしょう。

シャッターのO/Hをします。殆ど使用されていない個体ですので、摩耗はありませんね。シャッター羽根は6枚タイプです。(5枚仕様も存在します)

 

右側の本体部分はPEN-Sなどと、ほぼ同設計ですが、左側の部分が大きく異なります。

 

絞りリングにはグリスを塗布してセットします。リングの回転トルクを調整する接片はこの個体では3個使われています。(1個、2個の個体も存在します)調整使用なのでしょう。

 

組み上がったシャッターユニット。重いわぁ。零戦の栄発動機を操縦席から見た状態。この上に7.7mm機銃が2丁載ると・・

 

D系の場合、使われた個体は鏡胴のリングメッキと塗装部分に劣化が進行していますが、この個体のきれいなこと。素晴らしい。

 

露出メーターはセレン式のため、電気的配線は一切なし。2本のネジで個体されているのみ。

 

裏蓋の仕上げとモルトを貼った後、ネームリングを取付けて完成。

 

 

これだけのセットで2500円とは掘り出し物でしたね。良い買い物をされました。

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コンディションが惜しいジョンブリアンの巻(続編)

2016年07月21日 19時43分05秒 | ブログ

少し前にUPしました残念な状態のジョンブリアンですけど、オーナーの「遅れて来たペンマニア」さんが熱心にジャンクパーツを集めて来られました。それでは良好なパーツを選んで組み直しをすることにします。

 

しかし、3台分解して状態を比較選択してから仕上げげて組み込むという作業は意外に手間の掛かる作業です。まず、剥離が少なく程度が良さそうなピントリングを調達しようと観察すると・・ピントリングを固定する3本のイモネジのうち1本しか留まっておらず、そのネジが固着して緩みません。推測するに、ピッチの異なるイモネジ(前期と後期では異なる)を無理にねじ込んだためにアルミ材のため噛み込んでしまった。勿体ないことするなぁ。そもそも、彫刻文字の特徴から、このパーツはこの個体オリジナルのものではないと思います。

よって、レンズの後玉を前面から取り出すことが不可能のため、裏側が分離しました。幸い、このレンズは良品で使えます。

 

基本的な考えとしてはトップカバーの付け替えはしないのですが、2台のジョンブリアンのシリアル№が非常に近く、同じ日のラインを流れていたと思われ、各部の使用も全く同一のため、今回は交換することにしました。とは言っても、状態は程度問題で完璧ではありません。駒数角に当たりがあります。修正します。

よくよく観察すると、こちらの角も凹んでいて、すでに先端の鋭い金属棒によって叩かれていました。これによって表面に「えくぼ」が出来ています。板金の仕方を知らないようです。研磨後、駒数ガラスの研磨と色が抜けた彫刻文字のやり直しをしておきます。

 

シャッターリング(カム板)は標準PENのものが良さそうです。こちらも研磨洗浄をして仕上げておきます。

 

その他、シューも交換します。では、交換作業に入ります。

 

 

 ファインダーブロックの遮光カバーが再度の剥離でヨレヨレとなったので、製作してある新しいものと交換して接着をします。

 

レンズの後玉は交換してあります。シャッターリングを交換して取り付けます。

 

 ピントリングは仕方ありませんので、タッチアップをして使用することにします。

 

これで完成しました。前回の状態よりはきれいになりましたね。

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SEIKO ロードマチックの摩耗金ケースの巻

2016年07月18日 20時30分55秒 | ブログ

またまた、笹原ペンさんから来ましたよ。しかし、いつもながら厳しい時計が多いですね。セイコー80年代のLMロードマチック5605-7020です。面倒なワンピースケースが標準のモデルですが、金メッキ側は使用された個体はメッキの剥離によりひどい状態になっているのが普通です。本来は7000系のステンレスケースに入れ換えた方が良いのですけどね。

まず、デッドストックでもない限り、金メッキ側はこんな悲惨な状態が多いです。腕に当たる部分が磨滅して竜頭もチビちゃって・・

 

ワンピースケースですから機械はベゼルと風防を外して取り出しますが、ベゼルの強度が残っているか・・人の汗と油でベトベト。

 

風防ガラスも傷が多いですが、幸いプラ製なので研磨をします。

 

 

専用工具S-14で取り外しました。機械自体は水気の侵入は無く、程度は悪くはない模様。

 

勝手知ったる56系。洗浄してどんどん組み立てて行きます。ウィークポイントの揺動レバーはちょっと怪しい感じ。

 

輪列も組んで行きます。二番車の受石に多少の欠けがあります。

 

 

カレンダーは曜日は無いタイプ。

 

 

事前の測定よりオーバーホール後は多きく進み方向で振り角も大きくなりました。フリクションが大きかった個体です。少しずつ絞って調整中。

 

水気が入らなかったために、お約束の回転錘の腐食もありません。25石ですぞ。(23石が多い)

 

やっぱり、カレンダーを早送りする揺動レバーが弱っていました。4時位置の揺動レバーがスリップして、6時の歯を僅かに遅れない状態。稀に遅れる時もありますけど・・

 

調整が終わった機械をケーシングで風防ベゼルを圧入します。

 

 

上の2点は私所有の7000番ケース。状態の良い金メッキケースは少なくなりました。その内、7000系のステンレスケースを見つけて入れ替えると良いでしょう。

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