今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

きれいなローライ35Sの巻

2024年09月30日 21時00分00秒 | ブログ

言われてみれば、ローライ35Sはブラックモデルが多く、きれいなクロームモデルが少ないようですね。カメラ店様から届いた個体はへこみや使用感も少なく良い素材に見えます。また、書くことが無いかも知れません。

とは言っても放置は長かったようでファインダーのカビ曇りは進んでいます。ドイツ製のガラス製であればこのようなことは無いわけですが・・

 

巻き戻しクランクの回転が非常に重いです。黒い樹脂も白化していますので分解清掃をして組みます。

 

ローライ35系のメッキはライカなどとは違いそれほど良くありません。国産のメッキと同等でしょう。長く保管された個体は、メッキがこのようにポツポツと腐食します。メッキ面は多孔になっていて、人間の汗の塩分が付着したままで湿度の多い場所に長期間置かれると孔から塩分と湿気が入り込み腐食が発生するのです。出来るだけ腐食を取り除き洗浄します。

ファインダーのレンズを分解して清掃します。

 

 

前から2枚目の対物レンズのカビがすごいですね。

 

 

スプール軸の清掃グリス塗布をして清掃の終わったファインダーを組み込みます。

 

底部のチャージ関係も清掃とグリス塗布をしておきます。

 

 

残念ですが電池蓋の本体側のネジ山が摩耗しています。電池蓋のコインをセットするスリ割はメッキが摩滅して真鍮が露出しています。気の短いオーナーが、ネジ山を合わせずに強引に締め込んでいたのでしょう。雌ネジはダイカスト本体に切られているため交換することが出来ません。みなさんも注意してください。

トップカバーを洗浄しレリーズピンにグリスを塗布して取り付け。一度外して置いたメーター窓を接着します。

 

シャッターユニットを分離したついでに、沈胴のスライドが気になるのでチューブを分離してフェルトの調整をします。

 

清掃後組立て。ローライ35と設計違いのリングを取り付けておきます。

 

 

シャッターとレンズの清掃。ヘリコイドグリスが流化してシャッター羽根、絞り羽根にも油が付着しています。これを洗浄して組みます。

 

ブレードリングとブレードシムの接触によりシムに傷がありますね。リングの加工仕上げが良くないのかも知れません。

 

基本的にはローライ35と同系のシャッターですが、左端にヘリコイドネジ部があります。グリスを交換してあります。

 

メッキのボツボツもきれいになって非常に良好な個体となりました。真鍮地に梨地クロームのカバーは重量感があってブラックモデルとは違う魅力がありますね。

 

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305万台のローライ35ドイツの巻

2024年09月27日 19時59分59秒 | ブログ

その前にローライコードⅤです。「巻上げノブのロックが解除されない」というもの。これは稀にある症状で、毎回ロックするわけではないので原因特定が厄介です。まずは、巻上げノブのワンウェイクラッチ部を洗浄注油をしてみます。

症状が続きます。観察していくと、フィルムカウンターに付いているバネが巻き上げギヤと接触することが分かりました。

 

2枚のギヤが揃っているこの状態では巻上げが出来ません。

 

 

バネの力によって2枚のギヤがズレた状態でロックが解除になります。バネの張力劣化と変形により、巻き上げギヤと接触して2枚のギヤがズレないのが原因です。バネの形状を修正して改善しました。このように微妙な部品の組み合わせにより不具合が発生する機構です。

で、ローライ35#3055XXXとドイツ製としては初期型ではない中期付近の個体でしょうか? 外観はへこみもなく非常にきれいです。では、メンテナンスをして行きます。

 

過去に分解を受けていますがきれいな分解です。レンズなどのチリが出始めていますのでシャッターの分解清掃をしておきます。

 

最初に気になっていたのはドイツ製にしては露出計の針が元気に振れ過ぎるです。点検するとCdsが汎用に交換されていました。ドイツ製ではCdsの寿命を迎えている個体が多いので交換は仕方ありませんが、低輝度側の半固定抵抗の調整が利きません。よくよく観察すると、配線が間違っていました。トリマーに関係なく素通しになるターミナルに配線されています。一度抵抗を分離してから配線をやり直しでトリマーの動きに同調するようになりました。

ドイツ製としては使用頻度が少なくCdsの劣化による交換を受けている個体ということで、他は特に手を入れるところが無いですね。無造作にテーブルに置かれるのでキズが多くなる底部も非常にきれいです。開閉レバーは旧型の樽型で巻き戻しクランクは変更された樹脂製になっている仕様。

ガラス製のファインダーも光枠もくっきりでクリアーに見えます。

 

 

たまにはメンテナンス作業だけで良いコンデションになる個体もあります。ブログの種がないので私は困るのですが・・。

 

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保管がねぇPEN-FTの巻

2024年09月24日 11時00分00秒 | ブログ

長かった残暑も終わり、朝方めっきり涼しくなって来ましたね。体調を崩さないようにしましょう。で、今回のご依頼ですが、フィルムカメラに興味を持った娘さんにお父様がプレゼントをするためメンテナンスをしたいとのことです。お話をしていくと、お父様は若い頃に私と同じロードレースをされていたとのことで当時のお話を楽しくさせて頂きました。到着したカメラを拝見すると、汚れてはいますが、ブラックモデルの塗装の劣化が殆どない本来は美品レベルです。しかし、保管が悪かった。特に光学系に大きくダメージを受けています。今回はその辺を中心に作業をして行きます。あと、露出計も不動です。

#3213XX (1969年10月製)にしてはハーフミラーの劣化が進んでいます。リターンミラーにも劣化がありますね。

 

PEN-FTの白の色入れが黄ばんでいます。悪名高いアクセサリーシューのゴム部に反応したものです。ただし、装着の傷は皆無でラッキーです。ここは色入れをやり直します。

 

では、いつものようにすべて分解洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

最近必ずチェックをしておくのが、スプールバネのテンションです。スプロケットを掛けずにスプールのみでフィルムをセットしようとするとスリップをして巻き取れない症状の個体が目に付くようになりました。

当初、リターンミラーは再使用と思っておりましたが、交換をご希望でしたので前板関係を分解します。スクリーンに黄ばみと縦キズがあります。

 

やっぱり交換したほうが正解のようです。しかし、通常は32万台でここまで劣化することは無いですね。

 

№2プリズムにはカビがあります。

 

 

古いリターンミラーをホルダーから外し、新品を接着して一晩置きましたので組み立てて行きます。

 

ぐっと良くなりました。

 

 

前板完成。トップカバーを洗浄後、PEN-FTの色入れをやり直してあります。

 

シャッター関係は特に摩耗はないのですが、前板(リターンミラーユニット)と組み合わせると巻き上げフィーリングが悪くなる症状が出ました。これはこのモデルの持病のようなもので、ユニットの位置関係などを微調整しますが、勘合するユニットの片方を交換するとピタッと症状が止まることが多いです。相性ですかね?

ルーペのレンズにもカビがありますね。

 

 

分解をして清掃します。

 

 

接眼プリズムのコーティングも劣化をしています。慎重に清掃をします。

 

 

ハーフミラーは問答無用で交換します。

 

 

組立はほぼ終了。修理をした露出計の調整や無限遠の調整、ストロボの発光確認などをします。

 

付属の38mmも同じような状態です。レンズのカビと絞り羽根の張り付きや汚れです。

 

この38mmは後期の設計変更をされたタイプで、絞り羽根の分離がやり難いタイプです。すべて洗浄脱脂をします。

 

やれやれ保管が良かったらねぇという個体でしたが、何とか美品に戻りました。こんなきれいなFTブラックを使う女性はきっと絵になりますね。

 

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ペトリ・コンパクトの巻

2024年09月16日 14時00分00秒 | ブログ

右下のプレートがPETRI CONPACTになっていてfeet表示機ですので輸出されたカメラでしょう。何となく東南アジア風のような雰囲気のデザインで、緑のファインダーもエキゾチック。フィルムカウンター部の印刷の色が緑、オレンジ、赤と東南アジアのトゥクトゥクを思わされるような配色。この個体はシャッター不調やファインダー内のレンズの脱落などが有って、分解歴もあるようですので分解前にピントをチェックしてみると・・あら、像が結像しない。

裏側からレンズを確認してみると・・「後玉が無い」オークションでの入手だそうですが、これはひどいですね。このカメラの後玉は白濁し易いので、外して置けばきれいに見えるだろう。とかでしょうか? 或いは専門でないリサイクルショップなどだと分からないでしょうね。

手持ちのペトリハーフを見てみます。ちゃんと入っていますね。このカメラは後玉も含めて、シャッターを本体から分離するのは非常にやりづらい。

 

ファインダー前面の緑ガラスを外さないと対物レンズの清掃が出来ませんが、観察すると接着をやり直しているようにも見えますね。ここも無理をするとガラスが割れるので厄介です。

で、オーナーさんが手持ちのペトリハーフを送って下さるとのことですので時間つぶしに・・このカメラの接眼部カバー? と前面右下のプレートは剝がれやすく、欠落している個体もありますので簡易型で複製をしてみました。右はオリジナル。

オリジナルは金属プレスに塗装仕上げ、複製は黒色樹脂に塗装仕上げ。簡易型による製作ですので多少ヤレっているのはご愛敬。無いよりはマシというところ。

 

前面右下の銘板も接着が剥がれ易く、アンダーカバーによって固定されている状態の個体もありますね。この個体も紛失しているので作ることにしますが、オリジナルはアルミt=0.6mmですので同じ板厚の真鍮で作りました。オーナーのイニシャルなどを打刻すると良いですね。

すみません。昨日は私のペトリハーフをやっておりました。オーナー様から部品取り機が到着しました。当然後玉は分解歴があって恐らくコーティングは剥離されていると思いますがレンズ自体はクリアーなため、これを使用することにします。ペトリ・コンパクト(左上)は外観の洗浄を終えているところ。

緑色の前面ガラスはグリーンオンマチックと言うのだそうで、光枠の黄色が見やすいとか何とか。私の個体は透明ガラスに変えてやろうかとも思っていましたが・・で、オリジナルはエポキシ接着剤を浸透させずに上から盛ってあるだけ(再剥離を考慮)ですが、この個体はすでに剥離されてゴム系接着剤で貼ってありました。また。レンズの剥離もし易いです。ちょっと触ると剥離します。

剥離時に金属工具を当てると簡単にガラスが掛けたり傷が付くので私は使いませんが、すでに過去の分解でガラス端面が欠けています。

 

フィルムカウンターの送り機構は旧来のオーソドックス(部品点数多い)な方式。

 

ファインダーの清掃とガラスの接着、フィルムカウンター部の清掃と注油を終えてカバーを閉めますが、カバー内側のクロームメッキの薄さ。銅下やニッケルなどは無いのかも知れません。

シャッターはペトリ内製のCARPER-Sというタイプ。作りは精工舎やシチズンには及ばない、コパルのちょっと下ぐらいかな?

 

すでに何度も分解を受けていてスローガバナーの状態も良くありません。分解洗浄をします。の板バネはシャッター羽根の戻り用。なんか心もとない。

 

画像を撮り忘れたので昨日の私の個体の画像。部品点数は意外に多く、レンズは3群4枚の3ユニットに分かれます。安価なハーフカメラの設計ではない。

 

これはペトリ純正のフィルターでサイズはPENと同じ22.5mm。

 

 

コンパクトにはオリンパスペン用が付いて来ました。使いやすさとしては少し微妙な円錐形のダイヤル類。しかし、加工の難易度は高くコストも高いでしょうね。少なくともPENよりは・・

シャッターのチャージはダイレクトにトリガーレバーで巻けますが、なんとスプロケットの送りはチェーンに依っています。しかも復帰はゼンマイバネ式という凝った機構。この機構とトリガーレバーの収容のためアンダーカバーが厚めになっていますね。

気が付きませんでしたがコンパクトとハーフでは巻き戻しダイヤルの仕様が違いますね。コンパクトの方は真鍮にメッキでハーフはアルミのアルマイトです。これは製造時期による変更かも知れません。

気になるのはトリガーレバーの形状。収納を考慮するとこれしか仕方がないのでしょうけど、先端が尖っていて現代では出来ないデザインでしょう。

 

革ケースはPENに似た形状ですが、キルティングと言うのかな、私の子供の頃(このカメラと同時期)は帝人テトロンなどのキルティングのジャンパーが流行っていた頃でした。そのデザインを採用したのでしょう。

初代PENの発売(1959年)から遅れること1年の1960年発売だそうで、PENに衝撃を受けて力を入れて製品化したように見えますが、PENの最少部品による合理的な設計は理解されず、従来の流儀による設計でPENを超える性能とした。ように見えます。PENを良く知る自分としては、部品点数が多すぎて、これでPENと同じ価格帯で販売したわけですから意外に利益は少なかったのではと心配になるほどです。それだけPENの設計がビジネス的には優れていたということでしょう。ペトリは安かろう悪かろうと言われたりしますが、このモデルについてはPENに無い高級感を感じます。

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災難にあったPEN-Wの巻

2024年09月12日 14時00分00秒 | ブログ

今年は記録的な猛暑だそうで、スーパーに買い出しに行こうと車のドアロックを開けようとしたら開かない。エアコンの使用によりバッテリーが上がったようです。現在バッテリーを持ち帰って充電中。早く涼しくなってくれないかなぁ。。で、暑い中の作業になりますが、PEN-W #1068XX(1964年11月製)という満身創痍状態の個体が来ました。

外観の塗装剥げを補修塗装してありますが、確かに塗装の第一の目的は母材の保護ですから間違いはないのですが・・

 

タッチアップではなく補修塗装でしょうねぇ・・

 

 

過去にあまり程度のよろしくない分解を受けていまして。ピントリングの回転が途中で重くなる。リングが斜めに組まれていますね。

 

シャッターユニットを留めるネジが斜めに入っています。シャッターユニット側のハウジング部の雌ネジが心配です。

 

シャッターは油漬け状態。シャッターは油を付ければ動くというものではないのです。

 

シャッター羽根も油が回っています。これはすべて分解洗浄のうえ脱脂をする必要があります。

 

ハウジング側の雌ネジ4か所はすべてネジ山が壊れた状態でした。修正をしたところ。の雄ネジはネジ山が損傷していますので使えません。交換します。

 

すべて超音波洗浄のうえ組み立て完成。いやはや災難な個体です。

 

 

この個体はまだ災難を受けていました。駒数ネジですが、ねじ切ってしまい、頭の部分を接着剤で留めてありました。これは姑息です。PEN-Wの頃は左ネジなのを知らずにねじ切ったのでしょう。「押してもだめなら引いてみな」という歌、知らないかな? 昭和の歌など知る方も少ないかぁ・・

厄介な作業ですが、残ったネジ部を取り出します。一連の改悪の修正作業はオーバーホールとは関係が無いので費用は頂戴しますよ。

 

無事取り出して当方オリジナルの駒数ネジを取り付けたところ。もう他にないだろうなぁ・・

 

と、ここで宅配便が来ました。先日アイピース枠の破損を接着で処置したカメラ店様からのPEN-FTですが、アクセサリーシューを取り付けて破損してしまったとのこと。カルテに取り付けちゃダメと書いておいたのですが・・で、急ぎなので今回は修理ではなく新品に交換して出します。改めて書いておきますが、アイピース枠の材質も強度劣化をしていますので、アクセサリーシューの取付けは破損の危険がありますので取り付けないようにお願いします。

レンズの分解清掃をしますが、絞り表示とクリック位置が合っていませんね。裏側のリングナットが緩んでいるためです。

 

すべて分解をします。リングナットのネジ部に塗布してある緩み止めが完全に劣化をしていて機能をしていません。しかし、この状態の個体としてはレンズのコンデションは悪くはないと思います。

内部ですが、スプロケットは樹脂製に変更された後の個体です。裏蓋の圧板に腐食が出ているので研磨をしてあります。

 

ひどい目に合った個体ではありますが、どっこいカメラの機能としては良く仕上がりました。ペンなど誰が分解しても一緒、ではないと思いますよ。

 

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