今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

三光は三光なのだがPENの巻

2016年01月27日 20時42分11秒 | ブログ

その前に業務連絡。昨日メールを頂いたAki〇〇 Taka〇〇maさん。「表示できない形式」のため、セキュリティー上メールを開くことができません。せっかくお問合せでしたら残念ですので、普通に開ける形式で再度お送り頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。で、遅れて来たPENマニアさんの今年最初のご依頼は三光PENですね。何度も手が入っていそうですね。ファインダーの接着剤はみ出しが気になります。

シャッターユニットの留めネジはこの頃は頭の小さなタイプですが、1本無くしてしまったということですね。

 

巻き戻し側の角が打痕で陥没しています。「治りますか?」とのことですが治りません。角は1トンのプレスで押し出しても出ません。無理をするとクラックが入ります。

 

画像より実際の方がはるかにばっちい。

 

 

他はそれほどでもないのですが、ファインダーブロックのダメージが大きいですね。この頃は対物レンズはプラ製なので、溶剤系の接着剤は厳禁なのよ。もう遅いけど・・本体に「ゴミ」って書いてあるね。工程の手直し品ですね。

 

何したのかな? 対物レンズのセットされる部分が折れて接着したあります。こんなところ折れるかなぁ? 人様のおやりになることは分かりません。

 

表面が風化して白くなったブロックを研磨して艶を再生しておきます。古い接着剤はなるべく削り落としておきます。

 

 

シャッターは特に問題はありません。シャッター羽根にも錆はないですね。ユニット式ではないガバナー機構を分解洗浄します。

 

巻上げ系とシャッターを本体に組み込んだところ。画像を忘れましたが、巻上げダイヤルカバーは初期の熱カシメではなく、それ以降のネジ留め式に変更されています。ということはダイカスト本体の金型も変更されているということです。三光のポイントのうち、一番早く変更された部分ということになりますかね。巻上げダイヤルの留めネジは正ネジです。

この個体で一番のウィークポイント。なるべく復元に努めます。対物レンズの下部に遮光紙を貼ります。

 

全体の遮光紙もヤレていますので新しく作り直しておきます。

 

 

角はこの程度でやめておきます。過ぎたるは何とか・・

 

 

カム板を載せて回転させると、うん? 嵌合がきつく「B」の手前で固着気味になる。部品精度がよろしくない頃の製品でも、組立の段階で嵌合調整をされて組んであるはず。使用過程で摩耗をした状態で嵌合がきついというのは外部からの応力によって変形した以外には考えられません。よくよく見るとカム板のメッキも劣化がないし、そもそも、COPAL-Xって変だなぁ? この頃はXの彫刻は付いていないはずだけどね。断定的なことは書きませんが、基本的に同じ図面で製作された部品であっても、製造時期によって公差の変更などにより微妙に寸法が異なって、嵌合の不具合が出る場合もあるんですよね。

死者に鞭打つようで申し訳ありませんが、この頃はこんな表示ですかね。メッキの劣化具合もこの程度が妥当で、この個体のリングはきれい過ぎるのですね。ついでに言うと、後玉も違うなぁ。たぶん・・

 

初期のPENはファインダーの対物レンズの四隅を墨塗りしていないため、接着剤が前面から丸見えになるので、接着は慎重に行わなければなりません。遅れて来たPENマニアさんには新年初めの個体としては残念な結果となりましたが、個体数を維持するためにはニコイチも仕方がないとは思います。

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後期型ユニットのPEN-FVの巻

2016年01月22日 19時39分36秒 | ブログ

PEN-FVは、FTで言うと前期型のユニットで組まれている個体が多いのですが、この個体#1273XXはダイカスト本体と中身のユニットも全て後期型で組まれている個体です。製造は1969年8月ですから、FTではおよそ28万台付近になります。分解歴はありますが、特に問題のない素晴らしい個体です。

シャッターユニットを洗浄組立したところ。メインバネは条数の多い後期型です。チャージギヤは最後期のナット式ではなく、その前のカシメ仕様です。

 

メカは殆ど問題はありません。光学系に手が入っていますが、残念ながらプリズムのコーティングは全て剥がされています。プリズムホルダーに隠れる部分は残っていますので、ホルダーを分離せずにゴシゴシやっちゃった・・

 

ルーペのモルトは貼られていない状態でした。清掃をして貼っておきます。

 

 

接眼プリズムの奥側のコーティングは健在。FTで言う28万台なら生きていて当然。接眼側はフキフキするので仕方がないです。

 

メカ完成でいつもの画像。全反射ミラーは交換しています。過去に調整された形跡はないのに、ファインダーのピントがかなり行き過ぎてましたね。

 

FTのように露出計ユニットが無いため、ダストカバーの形状は異なります。再接着をします。

 

ダイカストの洗浄をしても、長期保管でカビが発生している個体は頑固に落ちませんね。塗装面が粗面なので拭いてもダメなんですね。

 

裏技でここまでが限界ですね。

 

 

FT本体は完成。付属の42mmですが、絞り羽根と駆動系が大径のため、油が付着すると作動が非常に重くなって、復帰も緩慢な動きとなります。悪化するとカメラ側がフリーズします。

 

絞り羽根の油が付着していますね。

 

 

42mmとしては程度は良いのですが、砂を噛んでいますね。バヨネットマウントの作動も非常の重いです。

 

流化したヘリコイドグリスが付着しています。すべて清掃をしてグリスを入れ換えます。レンズはコーティングなどはきれいですが、若干、持病の曇りが始まって来ているかなぁ??

 

繰り出しの最後付近でスコッと抜けていたのですが、新しいグリスで改善しています。現存の個体の中では状態は良い方でしょう。

 

 

次は70mmです。この個体はかなり分解でいじられています。内部はホコリの混入とヘリコイドグリスが完全に抜けた状態でスカスカです。

 

ネジ頭を見ると、複数回の分解ですね。真鍮のスリ割ネジは絞りクリック用ですが、ここも分解されています。

 

幸い、レンズにカビや拭きキズは無いので、きれいに拭き上げて鏡胴内も清掃しておきます。マウントの絞り機構がスムーズに作動するか。。

 

ヘリコイドグリスは自然に抜けたものではないようです。適正なフィーリングとなるように粘度を調整しておきます。外観の清掃で、絞りリングの彫刻文字の色が抜けているところが多いです。

 

このように補修をしておきます。

 

 

オーナーさんはOM使いさんですが、先祖返りでPENにも興味を持たれて機材を収集中とか。逆のケースは多いですけどね。この他に60mmも来ていましたが、良好なため今回は作業はしていません。しかし、羨ましいセットではあります。基本的にオークション購入ではなく、FVは近くのカメラ屋さんなど、ご自身で確認をされて入手されたそうです。選択眼が確かな証拠ですね。

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やっぱり慣れているPEN-S 3.5の巻

2016年01月19日 20時00分27秒 | ブログ

都会は雪に弱い。東京の多摩地区も積雪があって最寄りの青梅線も運休になり、通勤の方は大変だったでしょうね。今朝、駐車場から車を出そうとしたら、屋根の上と通路に積もって凍った雪を取り除くのに苦労しました。おかげで腰が痛い。こういう時に年齢を感じますね。で、同じコパルのシャッターでも、こっちの方が慣れていて良いです。PEN-S3.5のシャッターをO/Hしています。非常に薄く出来た地板なので、クラックが無いか検査をしてから組み立てて行きます。

このシャッターは、ピンセット部の弱いバネ1個ですべての作動を司っていますので、フリクションには特に神経を使います。

 

洗浄と調整をしたスローガバナーを取り付けます。

 

 

裏返し。シャッターを駆動するリングのコンディションが非常に重要。洗浄したシャッター羽根を載せて行きます。

 

完成したシャッターユニットを本体に搭載します。前カバーを取付けて・・

 

 

この個体はシボ革が全て剥がされていますが、すると材質の収縮が始まってしまうので、必要最小限の部分のみ剥離するようにします。

 

3.5の頃のシボ革は材質が少し硬くなって糊も厚くなっている印象です。よって、再接着が弱くなる傾向がありまして、今回は、元の糊を溶かしながら新しい接着剤と貼る方法としました。かなり接着強度は出たようです。

 

書き忘れましたが、オーナーさんは北海道のINOBOOさんです。で、一緒に来ているのは、以前にO/Hをしたセイコー・スピードタイマー6139-7080ですね。INOBOOさんのは左側で右側は私のお揃いです。この白い文字盤は純正ではなく、先日の6138-0030用の数字の欠落した文字盤と同じアフターパーツとしてe-bayに出品されているものです。

ほら、おんなじでしょ。針の違いなどで微妙に表情が異なりますね。で、アフターパーツだけに品質は純正品には及びません。4時のインデックスが剥がれています。

 

因みに私のスピードタイマーも増えて行きます。ケースの違いで色々なバリエーションがあります。


マミヤ・スケッチというカメラの巻

2016年01月17日 19時10分54秒 | ブログ

スピードタイマーは部品が届きません。8日に成田に到着しているはずなのに通関が終わっていない表示のままです。セカイモンは当てになりません。よって、到着までペンディングとします。昨日はセイコーの新10Bという戦後すぐの機械のヒゲゼンマイを交換していました。しかし、正確な振動数を得るためにひげの長さを決める「ひげ合わせ」という作業が難しい。専用の測定機械を持ってないからね。ひげ持のクサビを2本も飛ばしてしまって真鍮線から製作したり、この頃のヒゲゼンマイは非常に細くて弱いので、慎重で正確な作業が必要です。老眼の目には非常にきびしい。顕微鏡を購入しないとね。まぁ、良い勉強になりました。

茨城のご常連さんから、マミヤ・スケッチが来ています。1959年頃の製品でしょうか? 外観は非常にきれいで素晴らしいです。しかし、シャツター不動でファインダー曇りという状態。

 

どことなくPENに似ているので親近感がありますね。24X24フォーマットは「フィルムを5割増に使えるカメラ」がセールスポイントだったそうな。しかし、営業的にはハーフに負けたのね。作りはPENより数段丁寧でコストが掛かっています。まぁ、PENと比較では、コンセプトからしてアンフェアのような気もしますが。。

裏蓋内面はリンクル塗装を奢られています。PENは艶消し黒だもんね。

 

 

で、ファインダーが曇ってダメですね。距離計像はまったく見えません。

 

トップカバーを開けます。作りは良いですね。

 

 

ハーフミラーの金コートが完全に風化していて交換が必要でした。しかし、交換してもまだ像が見えません??? あ~、これだ。レンズが脱落しています。小さく欠けた部分は見当たりません。実用域は何とかなるでしょう。清掃と接着。

リンケージの摩耗か、無限遠で二重像が合致しません。調整範囲を超えています。調整ネジの相手側に金属板を貼って何とか来ましたね。しかし、縦ズレが修正出来ません。

 

 

実は、シボ革の材質が薄く糸入りではない只のビニールで、しかも風化が進んでいて接着剤が強固。この段階でシャッターの分離を諦めようと思いました。無理に剥がせば必ず破れてしまうからです。丁度、三光PENの初期と同じような材質。しかももっと薄い。オーナーさんからのご希望で剥がしましたが、ダメージはあります。(特にシンクロターミナル部)

コパルのシャッターだけあって、どことなくPEN-Sのシャッターと面影が似ていて親近感がありますよ。右がチャージレバー、左がㇾリース。状態は不動で、特に低速困難。ヘリコイドの回転ザラツキ。

 

このシャッターユニットは、ヘリコイドをすべて分離してしまうと再組立が非常に困難になるのでデータを取りながら分解します。

 

他のカメラにも転用されている非常に分かりやすいシャッターです。シャッター羽根、スローガバナー、タイマーなど全て分解洗浄して組んでいます。調子は良好。

 

 5m f8でパンフォーカスになるので、5mの位置でクリックが掛かるようにするためのリング。しかし、取付位置は個体ごとに調整で合わせなくてはならない。

 

スローも快調でヘリコイドの回転も滑らかになりました。

 

 

 PENのように慣れないせいもあるけど、シャッターを前板にセットするにも組み易いカメラとは言えないなぁ。既成のシャッターユニットを、オリジナルの本体に搭載するために、どうしても無理な設計もあるからね。で、ヘリコイドピンの移動量を受けるレバーの接触部がヤスリ掛けされています。工場での組立時の調整なのか、後の加工なのかは分かりませんが、ここを削られると、無限遠が調整ネジ一杯で調整できない理由が分かりました。こちらも真鍮板を貼って修正しました。お陰で、調整ネジに多少の余裕が生まれました。

シボ革は経験的に剥離するとバリバリに切れることは分かっていたんです。剥離し易いようにドライヤーで温めるのは良く知られた方法ですが、古いシボ革は温めるて冷えると、今度はより硬化して材質に柔軟性が無くなってしまうのです。分解上、嫌なところにプレートが貼られています。前板の分離時、僅かに掛かってしまうのです。

無限遠の調整をした時、例の5mでクリックが掛かるようにする調整は1回では無理で、何度か組み直してドンピタに持って行くのでは非常の手間の掛かる作業です。メーカーさんはどうしていたのでしょう? 仕上がってみると、巻上げやシャッターの感触はドイツ中級機のような感触で素晴らしい。明らかにPENとは設計思想が異なりますが、市場ではフィルムを節約したい層にはPENが支持されたということですね。マミヤ純正の19.5φフィルターを取付けて完成です。


新年初めはPEN-FTの巻

2016年01月08日 17時29分56秒 | ブログ

裏でセイコー・スポーツタイマーを製作していますが、もう少しでUPする予定です。で、カメラの方は新年初めはPEN-FT #3369XXと後期型で外観も悪くはありませんが過去に分解歴がありますね。最初のお話はセルフタイマーの作動不良でしたが、それだけではないようですのでオーバーホールをすることにします。露出計は作動していたとの事でしたが、こちらでは不動状態で、電池を点検すると完全放電しているので、新しい電池に交換しましたが、それでも作動しない。点検して行くと基板までに電圧が掛かっていない。原因は電池アダプターでした。当方のアダプターに交換して問題なく作動。あとは、巻上げ感が非常に悪いです。

ハーフミラーは清掃されていますが、33万台より以前のミラーに交換されているようです。拭き上げでメッキが薄くなっています。これは新品交換とします。

 

あぁ、ハンマーが開けられていますね。シャッター幕のアイドラギヤのカシメネジのスリ割が変なことになっていますよ。過去に見た記憶があるかも? はっきりとした記憶はありませんが、後天的にスリ割を着ける意味はないですね。

 

お正月休みが終わったと思ったら、また連休だそうですね。知らなかった。でと、この個体は、ブレーキのナットが緩んでシャッター固着となったようですね。

 

後期型ですから条数の多いシャッターバネです。ユニットも最終仕様ですね。特に摩耗や不具合はありません。洗浄、注油をして行きます。

 

前板関係もプリズムや光学系とリターンミラーユニットを洗浄注油して組みます。

 

シャッター単体では滑らかな巻上げ感触となっていますが、リターンミラーユニットが少し荒いフィーリングです。まぁ、最初の状態からはかなり改善されています。

 

前板をドッキングして、スライディングロッドを取り付けると・・あれれ、クラッチレバーと高さが合わないよ。過去に修理をした方は凝り性な方と見えて、緩めたネジに工場と同じ淡緑色の塗料を塗布してあります。(2か所) そうです、先端部の取付けが上下裏表なのです。

これが正解。余計なところに拘って、大事なところを間違える見本。

 

 

光学経路の組立。ハーフミラーは新品と交換して組みます。

 

 

不調で止まり気味のセルフタイマーの原因は殆どアンクルの動きによりますが、調子の悪いユニットは確かにありますね。何とか安定しています。

 

そもそものお問合せはセルフタイマー不調修理でしたが、古い精密機械ですから分解をしてみると色々と問題はあるものです。その意味でも全体のオーバーホールをお勧めしていますが、33万台の個体としては露出計のCdsの劣化が標準より進んでいて、過去の修理でもシャッターダイヤルのギヤの噛み合いをずらすことで、約2段ほど補正をしてありました。それでも感度低下の状態でしたので基板の抵抗により補正をしてありますが不安定感があります。最後に、剥離した文字の色入れを補修して完成です。

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