ツアイス・イコン社のコンテッサ35が2台来ていました。貴婦人という名前から気品のようなものを感じるカメラですね。テッサー28/45mmはTコーティングで写りも素晴らしいとの評価でドレイカイル式プリズムの凝った距離計として有名なカメラですね。両機ともシャッター低速止まりや露出計の動きが悪く、片方は巻上げが不能で何やらいじられているようです。私と同年代の貴婦人ですからシボ革も剥離気味で、この材質は作業前に接着をしておきませんと生地が割れてしまうので先に接着をしておきます。
左右のフィルムインジケーターと露出計ダイヤルが固着気味でゴリゴリです。鋼板製のプレートが錆びてダイヤルと擦れ合っているのです。分解研磨をして組み立てます。
コンテッサ35のセレン式露出計はダウンしていても多くは接触の問題で改善することが多いです。この個体もそうです。しかし、感度低下は進んでいます。
ファインダーの清掃をします。長いプリズムは貼り付いているので無理に力を掛けると割れる危険があるため慎重に分離します。
ドレイカイル式の距離計は素晴らしいですが、シャッターのメンテナンスをする場合、ドレイカイルユニットがあるため普通のカメラのように前玉、カム板分離してメンテナンスをすることが出来ません。本体からシャッターを分離します。
これは2台目の方ですが、何故か巻上げダイヤルが固着して動かない。ダイヤル下に意味不明のリングが挟まっていてそれがアンダーカバーと干渉してダイヤルが動かないと判明。次は巻き上げギヤが裏表に組まれている。問題は2つのスプロケットを支持するプレートを留めるネジの右側の頭が折れてネジが本体側に残っている。このプレートが正規の位置に固定されていないと、スプロケットにガタが多く出て、フィルムのパーフォレーション穴にきれいに合わなくなって飛び越してしまう不具合となります。
それから、2枚重ねの巻上げギヤの下側のギヤに真鍮ワッシャーが入っていますが本来の位置ではないと思います。どうも、修理を試みたが直せずに放棄した個体のようです。
問題は➡の折れて残ったネジを取り除く方法。観察すると炭素成分の多い硬度の高い鉄ビスです。これは厄介ですね。
ハイス鋼のドリルでは歯が立たず、超硬ドリルにて削り取りました。ネジもオリジナルと同じM1.7で再生してあります。
ネジ穴の修理で正常に巻上げとフィルム送りが出来るようになりました。
2台目の方も露出計が不安定ですので調整をしておきます。メーター窓のセル板が傷と曇りで見えにくいので研磨をしてから取り付けます。弱ったセル板は接着すると曇るので、縞々プレートで押さえるだけで固定に問題はないので接着しません。
露出計ダイヤルもスムーズに動くようになりました。メーター針の0点調整をしてナットを固定します。
こちらの個体も低速不良ですのでシャッターを分離しました。ドレイカイルユニットを止める6時位置のネジは側面のネジを外す必要があるため、シャッターを分離しなければ内部のメンテナンスが出来ないのです。
シャツターのメンテナンスとレンズの清掃を終えて本体に取り付けます。ドレイカイル式なので、本体側とは非接触が良く分かります。
2台完成しました。根強いファンが多くいらっしゃる定番のカメラと中古店様からお聞きしました。今回のネジを見ても非常に良い材質で作られているカメラだと思いました。長く貴婦人で居てくれるでしょう。