今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

コンテッサ35 2台のメンテナンスの巻

2021年05月29日 18時30分00秒 | ブログ

ツアイス・イコン社のコンテッサ35が2台来ていました。貴婦人という名前から気品のようなものを感じるカメラですね。テッサー28/45mmはTコーティングで写りも素晴らしいとの評価でドレイカイル式プリズムの凝った距離計として有名なカメラですね。両機ともシャッター低速止まりや露出計の動きが悪く、片方は巻上げが不能で何やらいじられているようです。私と同年代の貴婦人ですからシボ革も剥離気味で、この材質は作業前に接着をしておきませんと生地が割れてしまうので先に接着をしておきます。

左右のフィルムインジケーターと露出計ダイヤルが固着気味でゴリゴリです。鋼板製のプレートが錆びてダイヤルと擦れ合っているのです。分解研磨をして組み立てます。

 

コンテッサ35のセレン式露出計はダウンしていても多くは接触の問題で改善することが多いです。この個体もそうです。しかし、感度低下は進んでいます。

 

ファインダーの清掃をします。長いプリズムは貼り付いているので無理に力を掛けると割れる危険があるため慎重に分離します。

 

ドレイカイル式の距離計は素晴らしいですが、シャッターのメンテナンスをする場合、ドレイカイルユニットがあるため普通のカメラのように前玉、カム板分離してメンテナンスをすることが出来ません。本体からシャッターを分離します。

これは2台目の方ですが、何故か巻上げダイヤルが固着して動かない。ダイヤル下に意味不明のリングが挟まっていてそれがアンダーカバーと干渉してダイヤルが動かないと判明。次は巻き上げギヤが裏表に組まれている。問題は2つのスプロケットを支持するプレートを留めるネジの右側の頭が折れてネジが本体側に残っている。このプレートが正規の位置に固定されていないと、スプロケットにガタが多く出て、フィルムのパーフォレーション穴にきれいに合わなくなって飛び越してしまう不具合となります。

それから、2枚重ねの巻上げギヤの下側のギヤに真鍮ワッシャーが入っていますが本来の位置ではないと思います。どうも、修理を試みたが直せずに放棄した個体のようです。

 

問題はの折れて残ったネジを取り除く方法。観察すると炭素成分の多い硬度の高い鉄ビスです。これは厄介ですね。

 

ハイス鋼のドリルでは歯が立たず、超硬ドリルにて削り取りました。ネジもオリジナルと同じM1.7で再生してあります。

 

ネジ穴の修理で正常に巻上げとフィルム送りが出来るようになりました。

 

 

2台目の方も露出計が不安定ですので調整をしておきます。メーター窓のセル板が傷と曇りで見えにくいので研磨をしてから取り付けます。弱ったセル板は接着すると曇るので、縞々プレートで押さえるだけで固定に問題はないので接着しません。

 

こちらの個体もファインダーのプリズムを清掃しておきます。

 

 

露出計ダイヤルもスムーズに動くようになりました。メーター針の0点調整をしてナットを固定します。

 

 

こちらの個体も低速不良ですのでシャッターを分離しました。ドレイカイルユニットを止める6時位置のネジは側面のネジを外す必要があるため、シャッターを分離しなければ内部のメンテナンスが出来ないのです。

シャツターのメンテナンスとレンズの清掃を終えて本体に取り付けます。ドレイカイル式なので、本体側とは非接触が良く分かります。

 

2台完成しました。根強いファンが多くいらっしゃる定番のカメラと中古店様からお聞きしました。今回のネジを見ても非常に良い材質で作られているカメラだと思いました。長く貴婦人で居てくれるでしょう。

 

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コニカⅢAはまたまた大変の巻

2021年05月25日 20時00分00秒 | ブログ

先日、大変なコニカⅢAをやりましたら、ブログをご覧頂いたオーナーさんからご依頼を頂きました。「空シャッター時にセルフタイマーを巻いたら、うんともすんとも言わなくなった」とのことです。油切れのユニットはそうなりますね。精工舎MXLは古いシリーズのシャッターですけど小径でセルフタイマーが内蔵されていないので、別途本体側にセルフタイマーを内蔵する必要があるわけです。それがスプロケット軸の裏側というか表か?。前からは分解出来ないのです。スプロケット軸を分解するにはチャージ機構やギヤ列など、殆ど分解しなければならないので大変なんです。

トップ側からスプロケット軸に付いているカムの角度を記録しておきます。分かりますけどね。

 

 

画像を撮っていませんが、底部の巻上げギヤ関係を分解してスプロケット軸を外します。

 

 

レンズ右にレリーズリンケージがありますので、セルフタイマーユニットを取り出すのは知恵の輪的な作業になります。

 

あぁ、シャッターユニットは取り外しておきます。

 

 

ずいぶんと頑丈な作りのユニットです。油脂はカラカラの状態で油まみれですので何度も超音波洗浄をします。

 

右のギヤのダボが平板のリンケージを押し上げてガンギ車を止める構造です。良く見るとギヤ歯に合マークがケガかれていますね。ここが合っていないとセルフレバーの位置がへんてこになります。過去にメンテナンスをされたのでしょうかね。

 

注油とモリブデングリス塗布で組み込みました。では、スプロケット軸を組み立てていきますが、簡単には入りませんよ。良い子は分解しない方が良いです。チャージギヤとの合い位置が違うと正常に動きません。

 

セルフレバーを取り付けます。

 

 

作動を確認してカバーを取り付けます。

 

 

チャージのリンケージも油切れでしたので清掃をしてグリスを塗布してからシャッターユニットを取り付けます。

 

強力なゼンマイ動力のセルフタイマーは快調に作動しています。とにかく大変なカメラです。

 

 

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ローライフレックス・スタンダード他の巻

2021年05月21日 22時00分00秒 | ブログ

特に書くこともありませんが。ローライ二眼レフの通常作業をしています。ローライフレックス3.5Fですが、シャッタースピードと絞りを連動(露出計)させるディファレンシャルギヤ。車のデフギヤのミニチュアみたいです。歯車の位置を正確に合わせないと動ぎません。

 

シャッターの清掃と注油、レンズの清掃などをして行きます。

 

 

こちらはローライコード。個体の中にはチャージレバーの作動が非常に重い(渋い)個体があります。清掃とグリス塗布をしておきます。

 

革ケース入りの個体なので非常にきれいなのですが、どこかに当てて塗装剥離があります。

 

 

ちゃんとプライマーを入れてタッチアップをしておきます。

 

 

革ケースに入れて完成。

 

 

ローライフレックス・スタンダードは1932(昭和7年)となっていますね。零戦は1940(昭和15年)正式採用ですからそれより古いカメラを本気で使おうという方が居るのが不思議です。ビュー・テイクともレンズは曇っちゃっています。これ落ちそうもありません・・

 

一番の問題はシャッターは辛うじて切れるが中低速が全く利かない。BやTが作動しない。点検するとスローガバナーががっちり固着して動きません。スローガバナーは一種の時計ですので、零戦の計器盤に付いている航空時計を直せと言われているようなもの。

 

だってこれだよ。軸の固着を剥がせても、アンクルとガンギ車の微妙で精密な作動が出来るわけがない。

 

 

に注意。スローガバナーが正確に1秒刻んでいます。

 

 

次の問題。BとTが作動しない。シャッター羽根の動きとここが悪い。

 

 

問題はビューレンズ。後玉の後端がなぜか潰されていて後玉のリングナットが途中までしか外れてこない。

 

まぁ、出来るところまでということで・・完成したシャッターを前面ボードに取り付けます。

 

 

ローライフレックス・オリジナルでは前面ボードの繰り出し軸が3点で強度不足であったものがスタンダードでは4点となって改良されていますね。

 

スクリーンは水準器部分は素通しで残し他の部分をブラストしています。

 

水準器はバネ線のホルダーに支持されていてスクリーンに密着する構造です。

 

 

テイクレンズの前玉を分離して曇りを清掃します。

 

 

フィルムカウンターの復帰はこのボタンというかピンを押し込みます。巻上げレバーは真鍮板の打ち抜き製で、出っ張りがなく本体にピタッと添ってスッキリしています。

 

昭和7年と言えば零戦どころか零戦の64機撃墜王、坂井三郎氏が実戦配置前の延長教育で使用した複葉機の九〇式艦上戦闘機が採用された年ですね。同時期にドイツよりOPL(光像)式の射爆照準器も入って来ました(冨岡光学などでコピー)から光学兵器では日本は全く後れを取っていた時代で、このカメラも大変高価で貴重なものだったのでしょうね。

 

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新10Bのジャンクから作るの巻

2021年05月18日 15時10分00秒 | ブログ

時計やります。以前にオーバーホールご希望とのことでセイコー新10Bが来ていましたが、現在オークションで流通している個体は丸穴車の軸が折れているものがかなりありますね。この個体(左)も同様でした。地板の設計や材質がよろしくないのでしょうかね。修復には地板を交換する以外になく、この頃の機械は同じモデルであっても個体差が大きいですからニコイチ的な組み合わせは出来ません。オーナーさんが2つ目の個体(右)を入手されて来ました。果たして丸穴車は無事でした。しかし、ルビー(石)が入らない廉価判の機械です。

心配していたホゾ穴の拡大はそれほどでもなく使用に問題はないようです。しっかり超音波洗浄をして部品の点検から組み立てていきます。

 

香箱真の拡大もありません。ケースはひどい状態でしたが機械はそれほど悪くはないようです。

 

 

輪列組みました。ここまでは何事もありませんでしたが、ガンギ車の受けを絞め込むとアガキが無くなって固着します。この頃の地板の工作精度もあると思いますが、途中で部品の入れ替えがあったかも知れません。

テンプ関係を観察するとひげ棒が折れて無くなっています。では別の個体から緩急針を調達して交換します。その他、ひげ持ちのネジが無かったりスリ割りが欠けたりとアクシデントがありました。

 

天真の注油とアンクルの注油で元気よく動きだしました。しばらくエージングで様子を見ます。

 

 

ケース類は別の個体の方を使います。文字盤と針を付けました。ケースは軽く磨いて洗浄してあります。

 

 

組んだままのデータ。思ったほど悪くはありませんが、裏表での歩度差が大きいです。天真の摩耗です。

 

 

残念ながら石が入らない機械でしたが、それほどひどい状態ではなかったのはラッキーでした。洗浄で機械も輝いています。しかし、輪列のフリクションは石が無いせいか軽くはありません。

 

一緒に来ていたCYMAですが、応急処置で動き出しました。しかし、ゼンマイの小鉄車が滑って巻けません。

 

原因を調べて行くと・・あ~ダメだ。「小鉄車と丸穴車が滑るので地板を削って低くすれば良いだろう」と考えた馬〇者がいるのです。カメラの世界にも見受けますが、不具合があると簡単にオリジナルを壊してでも直してしまう考え方です。こうなると後々救いようがないのです。

 

で、CYMAは中止です。最近のオークション物はこのような個体の処分場所となっている気がします。新10Bについては、幾つかの個体を入手して組み合わせることで1つの完品を作るという考え方になりますね。戦後の腕時計にパリス環式のベルトを付けたかどうか知りませんが、オーナーさんのご希望なので取付けてみました。左はデッドストックを使って製作した私の私物。この頃の標準15mmのベルトは選択肢が極端に少ないです。

戦時中の二重ケースと比べると戦後の新しい空気を感じます。ご自身と同年齢の時計を動かしてみたい。というご希望は叶いました。

 

 

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PEN-S 3.5 兄弟の巻

2021年05月17日 11時30分00秒 | ブログ

同じ機種を同時に作業するのは効率的な部分もありますが、精神的には辛い部分もありますね。PEN-S 3.5は2.8に比べて生産が新しいものが多いので基本劣化は少なくメンテナンスで良好となる個体が多いと思います。#1109XX は保管が良くなかったようでメッキの酸化が認められ外観は汚れ放題です。しかし、未分解と思います。#1453XX はより生産が新しいのできれいですが、前面シボ革が剥がされたままで接着されていません。また、シャッター羽根に油のようなものがあります。

ます、#1109XXからやっつけます。ファインダーは曇りと汚れ放題ですが、返っていじられていない方が良いです。

 

シャッターは不調でしたがメカに特に問題はありません。最後期型の仕様ではなく一番量産されたタイプです。

 

 

シャッター羽根の錆などはなく非常に良好なシャッターです。

 

 

私のオーバーホールはすべての外装部品も洗浄から始めますので工数は多く掛ります。シャッターリングのメッキ腐食も無く完全にきれいになりました。

 

ターミナルはお約束の半田外れですので再半田付けをしておきます。

 

問題はレンズなのです。かなり糸状のカビがありますが、持病の後玉コーティング曇りは幸いありません。やはり新しいからでしょう。

 

後玉の菌糸状カビ。経験的にこのようなカビは除去できますが、クリーニング液の選定には留意する必要があります。

 

後ろから前玉を覗いたところ。

 

前玉分離して清掃をします。

 

次は#1453XX です。シャッターに油がありますね。内部から出る油は無いので故意に点けられたものです。

 

これはダメですね。完全に分解で超音波洗浄をしてから組み立てます。そもそも、このシャッターの製造とカメラ本体の製造年月が合いません。途中で交換されている可能性もあります。

 

ファインダーレンズの分離清掃をしてトップカバーに取り付けます。きれいですね。

 

 

トップカバーを本体に取り付けます。撮り忘れましたがレンズは過去に清掃を受けていて後玉コーティングに線傷がありました。残念。


右が#1109XX で左が#1453XX です。見にくいですがスプールがELダイブに変わっています。また、底部のスプールナットも樹脂製になっています。

 

しかし、2台共致命的な打痕などが無く非常に美品に仕上がりました。オーナーさんの選択眼は正しいです。片方には付属品も備わっているようですので大切にされてください。次はいつ頃UP出来るかなぁ・・

 

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