しばらく短縮バージョンでUPさせて頂きますね。このPEN-FTは #1035XX え~、最初期型じゃん。PEN-FTの発売は米谷さんの「オリンパス・ペンの挑戦」によれば1966年10月ということになっていますが、この個体は同年8月の生産です。発売に向けて作り貯めをしていたとすると初ロットということになりますね。しかし、美品クラスでキズなどの欠点がありません。裏蓋の蝶番に塗装ハゲがある程度。しかも、この頃の個体で露出計が作動するものは少ないのですが、この個体は作動します。オリンパスさんの瑞古洞に入っても良さそうな個体です。しかし、同梱の25mm(F用)がマウントにスムーズに入りません。変形はなく嵌合がきついのです。他のFTでテストをすると問題はありませんので、この個体のマウントが原因ということでしょう。マウントはFから継承しているわけで、特に初ロットだから問題となることはないと思いますが変ですね。内部の初期型特有な部分があると思いますので、それらをUP出来ればと思います。短縮バージョンでね。
巻き上げレバー裏のカバー留めネジは頭が丸いスリ割りの化粧ネジ。隙間から内部が見ますね。
残念ながら、露出計ユニットは後期のものに換装されていました。初期型ですと、調整抵抗が半固定抵抗となっているはずです。メーターへの緑のリード線も違います。
底カバーの留めネジも当然スリ割りネジです。みなさんご存じの通り、初期の電池蓋はピッチが細かいために斜めにねじ込んで、ねじ山を壊すトラブルがあって、中期以降は荒いピッチに変更しています。電池蓋は見分けのため変更後の荒いピッチのものは外周に溝を切って区別をしています。
一度、プロの修理の手が入っていますね。すべてスリ割りネジ仕様です。量産効率を上げるためには+ネジ採用が必要ですが、まだ採用されない頃の製品ということですね。
ダイカストに多くのキズがありますね。一度剥離をされた証拠。セルフタイマーのリンケージ留めネジ部分もヤスリ掛けがされています。意味は不明。工場での手直しか、後日の修理調整の都合なのか・・
露出計ユニットは恐らく30万台以降のユニットで、ハーフミラーは最後期に採用されていたタイプになります。基板別体タイプが出る以前の補修用として供給されたユニットかもしれません。
あまり防塵性の良いカメラではありませんが、特に初期型は画像のようにダストカバーが平プレートになっています。これは早い時期に左の(ピンセット)のタイプに変更となります。右手はPEN-FV専用部品。駒数カウンターは当然、変更前の仕様。
短縮バージョンと言いましたが、初期型なので、どうもそうは行かない雰囲気になって来ました。底カバーを開けてみると・・あ~、リターンミラーユニットまで分解された形跡がありますね。重修理を受けたということです。
とにかく全て分解をしていきますが、スプール軸ユニットなど全てのネジは真鍮スリ割りネジです。この部分は緩み止めが塗布されていますので、強引に緩めようとするとネジの頭からポロっと折れる確率が高いのです。分解を想定していない組立思想。
巻上げレバーユニットの駒数部分も初期型です。本体への組立はレバー下側は3本のネジで固定してありますが、中期からは画像の1本は省略されて2本となります。
問題発生です。駒数カウンターを作動させるための作動軸のギヤのカシメが不良で回ってしまいます。この部分のカシメ不良は過去にも数例経験しています。
再カシメ加工をしておきますが、部品構成がカシメ不良になり易い感じがします。
で、そもそも、この個体は巻き上げが出来ずフリーズの状態で来ました。シャッターユニットもかなりくたびれた感じがしますね。
巻上げたギヤの逆回転を防止するための爪が固着しており、巻き上げても逆転してしまう状態。
とどめは、メインスプリングの端をテンションシャフトに固定するピンが折れています。このピンは、スプリングの固定の他に、シンクロ接片を叩いてタイミングを取る役割もしていますので、金属疲労で折れたものでしょう。古い機械を再び動かそうとすると、このようなことが起こりやすいのです。初ロット機ですから、何とか復活させたいのですけどね。
ストックから探してきた。スプリングは初期型なので、当然条数の少ないタイプ。よって、テンションシャフトも2種類あって、刀のつばのような位置が異なります。じつは、最初に見つけたシャフトが変更後のタイプでがっかり。また探し出したのでした。
油汚れと摩耗粉でごってりのミラーユニットを洗浄したところ。初期のユニットは、地板や各部品の仕上げがあまりきれいではないのですね。
まぁ、何とか本体と前板側が完成しました。スローガバナーは当然、変更前のユニットです。
ここまで来てもまだ世話を焼かせる・・。シンクロ接片の切り替えスイッチ(M/X)に接する白い樹脂(ジュラコン?)部品がクラック入りでカシメリベットが外れています。これはカシメ不良というよりは、寿命だよね。こんなに永く使われることなど想定していないですよ。下の良品と交換します。
で、こんな感じで組み立てています。接眼プリズムホルダーはアルミ製ですね。と、手前にあるはずのセルフタイマーユニットが無いでしょ。これが調子が最悪です。アンクルの動きが良くないのです。短縮モードなのにぃ~。
セルフタイマーってやつは、実動時間から考えたら、殆ど新品のはずなのに、親の仇のように動かない奴があるよね。まぁ、50年前のアンティーク時計が動かないと思えば理解は出来るのかな? 悔しいから動かしちゃうけどね。
再初期型としては、裏蓋の塗装やトップカバーなども劣化がなく、素晴らしいコンディションを保っています。しかし、中身はそれなりの劣化はしているのです。特に露出計の換装は残念でしたね。私の手持ちには初期型の作動ユニットはありますけどね。
まだ終わらない。38mmと25mmのメンテナンスを実施します。
25mmはF用ですね。非常にきれいであまり使われた形跡はなく、持病のレンズの曇りもない個体ですが、絞り羽根の油付着ピントリングの回転が異常に重い。分解してみると、F用と製造時期が古いせいか、グリスは一般的なホワイトグリスではなく、飴色の普通のタイプが使われている。そのグリスが流化して内部はベトベトです。(写ってないですね)
すべて分解洗浄、脱脂をして新しいヘリコイドグリスに入れ替えてあります。
25mmはこのFTのマウントにはスムーズに装着出来ません。他のFTでは問題なく装着出来ますので、この初期型FTの問題ですね。Fからマウントの規格は変更されていませんので互換は確保されているはずですが、カメラ側のマウントとレンズ側のマウントの図面公差でカメラ側はマイナス一杯、レンズ側はプラス側一杯の組み合わせになっているのかも知れません。そうであっても不具合が出ないように公差は設定されているはずですが。
1966年8月の製造ですから、あちらこちらに耐用年数を超えたための不具合があって手間が掛かりましたが、現役機として保存をして行くべき歴史的意義のある個体だと思います。
http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/