今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

元箱付きのPEN-S3.5をO/Hするの巻

2015年01月31日 20時08分44秒 | ブログ

「遅れて来たペンマニアさん」から元箱付きのPEN-S3.5が来ています。とはいっても本体だけで画像は拝借です。この個体は、最近オークションで入手されたばかりだそうですから、見覚えのある方もいらっしゃるでしょう。取説と保証書は無かったのかな? するとオリジナルのセットか、後年に組み合わせたものかは分からないですね。

一般的に元箱付きの場合は、未使用のデッドストック状態が多いのですが、この個体は結構使われたままで汚れがありますね。

 

元箱に入っていた割りには保存状態が良くないですよ。特にメッキの劣化が進んでいます。全体的に表面がザラついていて、後期のメッキではないような感じさえします。

 

内部ですが、フィルムレールなどの腐食は軽微ですが、メッキのナット類が曇っています。

 

裏蓋の内部。モルト汚れが目立ちます。

 

 

シャッターは作動はしますが極端に遅い(眠い)感じ。すべて洗浄をした後、組み立てていきます。すべては、ここのスプリングが作動の起源です。

 

一か所不具合がありました。シャッターダイヤルのストッパーピンが曲がっていました。範囲外に無理に回そうとすると簡単に曲がってしまいます。気を付けましょう。画像は、曲がりを修正してから追加でカシメてあります。

 

その他は新しい? ので問題は無く組み終わりました。但し、コパルでの製造捺印(昭和40年1月)がネジの真上に押されていたため(こんなの初めて)分解のため止むおえず消してしまいました。後年の方への情報伝達のため、再捺印をしておきます。

洗浄をした本体の組立をします。スプール軸は少し摩耗気味です。普通に使用されていた個体です。

 

シャッターユニットを本体に取付けて、組立はほぼ終了。

 

 

PEN-S3.5のファインダーブロックはプラ製なので強度がなく、レンズ分解の時には破損に注意をします。接着剤の硬化時間が必要のため、作業の最初にレンズ分解清掃のうえ接着をしておきました。

 

かなり長期に渡って放置をされていた個体ではなかったか?カビがすごしです。

 

後玉も同様です。ただし、新しいせいかコーティングは健在で、清掃でほぼ良好な状態としています。

 

それほど多くのフィルムは通していない個体であったが、保管がねぇというところでしょう。極力努力をしてここまで復活をしています。良い感じでしよ。

 

元箱に同梱されているものに、品質保証書、カメラクラブ入会勧誘パンフ、振込票、カメラ登録証(送付封筒)などがあったはずですが、時代によって内容が変化しているかもしれません。

 

タグは付いていたようですね。この時代は腕時計など貴重品には洒落たタグ(しおり)が付いていましたね。レンズも良好、作動もスムーズに仕上がりました。

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ミノルタ・オートコードⅢ型のメンテナンスの巻

2015年01月28日 18時23分19秒 | ブログ

ぺリックスと一緒にミノルタのオートコードが来ています。特に問題は無いようですので、メンテナンスをしておきます。二眼レフでは人気の高いモデルのようで、作りも非常に良いと思います。モデルはⅢ型で定評があるROKKOR 75mm f3.5と120/220切り替えが特徴ですね。とにかく二眼レフは大きな暗箱なので、ホコリなど汚れが大量に入っているので、殆どクリーニングの作業です。

例によって、あまり写っていませんが、大量のホコリが堆積しています。これは拭いてもダイカストが粗面なので繊維は取れにくいですね。時計方式で清掃します。

 

ミラーには腐食があります。ホコリも多いので、このまま拭くと傷をつけてしまいます。

 

ピントグラスも汚れはありますが、まぁ、軽微な方でしょうね。

 

 

きれいになりましたね。

 

 

裏蓋の古いモルトは溶剤で完全に除去をしてから新しいモルトを貼ってあります。本体とドッキング。圧板は120/220によって分離変更します。

 

 

シャッターはシチズンMVL。調子は良好のため点検注油とレンズの清掃をしてあります。二眼レフのシボ革は貼りにくいです。

Ⅲ型は最終の生産モデルとのことで、新しい? せいか、美品ですね。120/220(12-24)の切り替えダイヤルが見えます。INOBOOさん、またコレクションが増えましたね。

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Canon PELLIX QLのメンテナンスの巻

2015年01月27日 12時30分07秒 | ブログ

では、心を入れ替えてカメラに戻ります。北海道のINOBOOさんから、キヤノン・ぺリックスが届いています。寒いのに精力的ですね。ぺリックスはリターンミラー部分にペリクルミラーというハーフミラーをセットして、「視野像が一瞬たりとも消えない」という特徴を持っていますが、フィルム面の光量も1/2になってしまうという制約もあります。資料用として1台をメンテナンスすることにします。

60年代のキヤノンは巻上げ下部分にシリアル№を彫刻してありましたが、下の個体#1697XXでは、巻上げダイヤル右に移動しています。1965年発売のPELLIXの改良型として1966年にQL付きで発売されたようです。

 

アイビースシャッターはスライド式になっていますね。

 

 

ペリクルミラーは汚れが激しいですが、腐食は少ないようです。後ろのシャッター幕が透けて見えます。

 

絞込み測光レバーを倒すと受光素子が持ち上がって来ます。なんか感動する。

 

プリズムですが、ブラックモデルからの移植をご希望でしたが・・。左がブラックモデルのプリズムですが、すでに劣化したモルトでメッキ面を侵されて素通しとなっており清掃をされていました。では仕方がない、オリジナルを清掃して使います。

犯人はこいつです。PP製の保護カバーですが、私も当時生産で組み立てていましたが、部品は平抜きで来るので、まずは折り紙するのです。合わせ目が重なっておれば侵されなかったのに、平滑面を優先した結果でしょう。

 

アイビースシャッターは暖簾式かな?

 

 

ご希望で、トップカバーを前期型に替えます。露出計調整用の穴は後期型にはないので、ブラックモデルからメクラ栓を調達します。色が合わない~。

 

アンダーカバーにへこみがありますね。修正をしておきます。

 

 

FT系で見慣れた眺めです。ピンセット先のホゾ穴はFTbでも同じで、油が切れると真鍮のブッシュが摩耗をして小判孔になってしまいます。

 

交換した前期型のトップカバーには、シャッターダイヤル座がカシメられていません。脱落した形跡もないのでオリジナルと思いますが、下部が透けて見えます。

 

懐かしや、クイックローディング。この頃の電池蓋にはFTbのように10円玉で回せるスリ割りがありませんね。じつは固着して外すのに苦労しました。

 

その他、各部清掃、注油をしておしまいです。

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SEIKO 新10B型の部品がそろったの巻(その2)

2015年01月25日 20時01分48秒 | ブログ

すみませんねぇ。じつは組み上げてみたところ、各ホゾやアンクルがガタガタで、やはり天真も摩耗していたことが判明して「これでは仕上がらない」と判断をしまして、この巻きを取り消しとしたのですが、ちょっと悔しいので、他のジャンクに機械を変えて続行することにしたんだわ・・

そこで2つ目の個体で作業をしていたのですが、じつはこの個体だけでも仕上がらない状況が判明。要するに、1950年代の機械で、現在オークションに出品されるものは摩耗や破損が進んでいて、単体では仕上がらないということです。そこで、3つ目(いくつ持ってるんじゃ)とニコイチで仕上げる方針に変更しました。画像は、天真の交換をするため、分解をしているところ。テンプが小さいので目がきついです。

天真を入れた状態で、バランスや振れをチェックした後、一度、地板に取付け、天真のアガキをチェックしてブロアーで風を送ってスムーズに回転することを確認しておきます。

 

それがら振り座とヒゲゼンマイを取付けて、静止した時、振り石が正しくアンクル真に向くようにビート合わせをします。しかし、実際に動かしてみると、段々テンプの振りが小さくなって停止。原因は、ヒゲゼンマイを留めるヒゲ玉の緩みでした。何度も分解を受けている(現存の殆どは天真交換を受けている)ヒゲ玉は軽圧入で位置を保持できないくらい緩くなっているものがあります。

まぁ、いろいろあって動き出しました。やはり天真を交換すると安定性が抜群に良くなります。天真の摩耗をした機械を調整するのがあほらしいぐらい。その他、この機械は竜頭のとなりの丸穴車の取付け軸部分が欠損している個体が多く(巻上げで負荷が掛かる)、今回も他の個体から調達したところ、角穴車、丸穴車などに寸法に互換性のない変更があって、正しい組み合わせの部品を見つけるのに苦労をしました。画像の左にある小さなゴミに見えるものが交換した天真になります。

結局、3個の機械を組み立てたようなものです。右上の個体が初期型のようで、受けにはコート・ド・ジュネーブっていうのかな? 化粧加工が施されていますね。以後は簡略した仕様になっています。昔の製品は作りが良いとはいうものの、この時代からすでに工程の簡略化が始まっていたということですね。

ステンレスのケースは意外に損傷は少なく、大きなダメージはありませんので軽く磨いた程度です。風防は当時のトキライトが入手出来ませんので、VERLUXの山高タイプを使用します。オリジナルよりは規格が少し大きなサイズを選択するしか仕方ないので、ちょっと絞ってベゼルの溝に嵌め込みます。

文字盤の規格は良く分かりませんが、僅かな寸法の違いで沢山の種類があります。今回は中古で入手をした画像のものを使います。この文字盤、針の穴が拡大されていて、何のためだろう? 残念なことです。秒針は元々付いていたものは、ちょっと小さく(9時)、この文字盤ですと取り付かないですね。たぶん、戦前のスモールセコンド機からの流用かな?と思います。今回は別の個体から新10B用を使います。

長短針がシルバーでも、秒針が金なのがオリジナルなのか? 機械をケースに収めて巻真を差し込むと微妙にセンターが合わない等々、この時代の製品は、部品精度や互換性については難があって、レストアはそれも楽しいとも言えますが、まぁ、気分がキリキリする時もありますね。ラグ幅16mmはベルトの選択肢が少ないですが、黒ベルトをセットしてみたところ。

モレラートの茶色ベルトにすると印象が変わりますかね? 精度や信頼性などは及びもつきませんが、この雰囲気は良いですね。じつはテンプの振り角が350°近くも振っていて、振り当たりを心配しています。ゼンマイは適性のはずなのに・・。まぁ、少しずつ調整をして行くことにしましょう。

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初ロット?奇跡のPEN-FTの巻

2015年01月15日 21時30分26秒 | ブログ

しばらく短縮バージョンでUPさせて頂きますね。このPEN-FTは #1035XX え~、最初期型じゃん。PEN-FTの発売は米谷さんの「オリンパス・ペンの挑戦」によれば1966年10月ということになっていますが、この個体は同年8月の生産です。発売に向けて作り貯めをしていたとすると初ロットということになりますね。しかし、美品クラスでキズなどの欠点がありません。裏蓋の蝶番に塗装ハゲがある程度。しかも、この頃の個体で露出計が作動するものは少ないのですが、この個体は作動します。オリンパスさんの瑞古洞に入っても良さそうな個体です。しかし、同梱の25mm(F用)がマウントにスムーズに入りません。変形はなく嵌合がきついのです。他のFTでテストをすると問題はありませんので、この個体のマウントが原因ということでしょう。マウントはFから継承しているわけで、特に初ロットだから問題となることはないと思いますが変ですね。内部の初期型特有な部分があると思いますので、それらをUP出来ればと思います。短縮バージョンでね。

巻き上げレバー裏のカバー留めネジは頭が丸いスリ割りの化粧ネジ。隙間から内部が見ますね。

 

残念ながら、露出計ユニットは後期のものに換装されていました。初期型ですと、調整抵抗が半固定抵抗となっているはずです。メーターへの緑のリード線も違います。

 

底カバーの留めネジも当然スリ割りネジです。みなさんご存じの通り、初期の電池蓋はピッチが細かいために斜めにねじ込んで、ねじ山を壊すトラブルがあって、中期以降は荒いピッチに変更しています。電池蓋は見分けのため変更後の荒いピッチのものは外周に溝を切って区別をしています。

一度、プロの修理の手が入っていますね。すべてスリ割りネジ仕様です。量産効率を上げるためには+ネジ採用が必要ですが、まだ採用されない頃の製品ということですね。

 

ダイカストに多くのキズがありますね。一度剥離をされた証拠。セルフタイマーのリンケージ留めネジ部分もヤスリ掛けがされています。意味は不明。工場での手直しか、後日の修理調整の都合なのか・・

 

 

露出計ユニットは恐らく30万台以降のユニットで、ハーフミラーは最後期に採用されていたタイプになります。基板別体タイプが出る以前の補修用として供給されたユニットかもしれません。

 

あまり防塵性の良いカメラではありませんが、特に初期型は画像のようにダストカバーが平プレートになっています。これは早い時期に左の(ピンセット)のタイプに変更となります。右手はPEN-FV専用部品。駒数カウンターは当然、変更前の仕様。

 短縮バージョンと言いましたが、初期型なので、どうもそうは行かない雰囲気になって来ました。底カバーを開けてみると・・あ~、リターンミラーユニットまで分解された形跡がありますね。重修理を受けたということです。

とにかく全て分解をしていきますが、スプール軸ユニットなど全てのネジは真鍮スリ割りネジです。この部分は緩み止めが塗布されていますので、強引に緩めようとするとネジの頭からポロっと折れる確率が高いのです。分解を想定していない組立思想。

巻上げレバーユニットの駒数部分も初期型です。本体への組立はレバー下側は3本のネジで固定してありますが、中期からは画像の1本は省略されて2本となります。

 

問題発生です。駒数カウンターを作動させるための作動軸のギヤのカシメが不良で回ってしまいます。この部分のカシメ不良は過去にも数例経験しています。

 

再カシメ加工をしておきますが、部品構成がカシメ不良になり易い感じがします。

 

で、そもそも、この個体は巻き上げが出来ずフリーズの状態で来ました。シャッターユニットもかなりくたびれた感じがしますね。

 

巻上げたギヤの逆回転を防止するための爪が固着しており、巻き上げても逆転してしまう状態。

 

とどめは、メインスプリングの端をテンションシャフトに固定するピンが折れています。このピンは、スプリングの固定の他に、シンクロ接片を叩いてタイミングを取る役割もしていますので、金属疲労で折れたものでしょう。古い機械を再び動かそうとすると、このようなことが起こりやすいのです。初ロット機ですから、何とか復活させたいのですけどね。

ストックから探してきた。スプリングは初期型なので、当然条数の少ないタイプ。よって、テンションシャフトも2種類あって、刀のつばのような位置が異なります。じつは、最初に見つけたシャフトが変更後のタイプでがっかり。また探し出したのでした。

油汚れと摩耗粉でごってりのミラーユニットを洗浄したところ。初期のユニットは、地板や各部品の仕上げがあまりきれいではないのですね。

 

まぁ、何とか本体と前板側が完成しました。スローガバナーは当然、変更前のユニットです。

 

ここまで来てもまだ世話を焼かせる・・。シンクロ接片の切り替えスイッチ(M/X)に接する白い樹脂(ジュラコン?)部品がクラック入りでカシメリベットが外れています。これはカシメ不良というよりは、寿命だよね。こんなに永く使われることなど想定していないですよ。下の良品と交換します。

で、こんな感じで組み立てています。接眼プリズムホルダーはアルミ製ですね。と、手前にあるはずのセルフタイマーユニットが無いでしょ。これが調子が最悪です。アンクルの動きが良くないのです。短縮モードなのにぃ~。

セルフタイマーってやつは、実動時間から考えたら、殆ど新品のはずなのに、親の仇のように動かない奴があるよね。まぁ、50年前のアンティーク時計が動かないと思えば理解は出来るのかな? 悔しいから動かしちゃうけどね。

再初期型としては、裏蓋の塗装やトップカバーなども劣化がなく、素晴らしいコンディションを保っています。しかし、中身はそれなりの劣化はしているのです。特に露出計の換装は残念でしたね。私の手持ちには初期型の作動ユニットはありますけどね。

まだ終わらない。38mmと25mmのメンテナンスを実施します。

 

 

25mmはF用ですね。非常にきれいであまり使われた形跡はなく、持病のレンズの曇りもない個体ですが、絞り羽根の油付着ピントリングの回転が異常に重い。分解してみると、F用と製造時期が古いせいか、グリスは一般的なホワイトグリスではなく、飴色の普通のタイプが使われている。そのグリスが流化して内部はベトベトです。(写ってないですね)

すべて分解洗浄、脱脂をして新しいヘリコイドグリスに入れ替えてあります。

 

25mmはこのFTのマウントにはスムーズに装着出来ません。他のFTでは問題なく装着出来ますので、この初期型FTの問題ですね。Fからマウントの規格は変更されていませんので互換は確保されているはずですが、カメラ側のマウントとレンズ側のマウントの図面公差でカメラ側はマイナス一杯、レンズ側はプラス側一杯の組み合わせになっているのかも知れません。そうであっても不具合が出ないように公差は設定されているはずですが。

1966年8月の製造ですから、あちらこちらに耐用年数を超えたための不具合があって手間が掛かりましたが、現役機として保存をして行くべき歴史的意義のある個体だと思います。

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