今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

2つの鉄道時計

2013年12月30日 14時07分24秒 | インポート

Img_328121 いよいよ本当に押し詰まって来ましたね。大掃除や帰省で多忙の方も多いと思います。私も御用納めのつもりでしたが、ご常連さんからカメラと時計が来ていますので、時計の方を進めることにします。鉄道用の懐中時計が2つですが、まず、このクォーツ時計は、スイス連邦鉄道で使用されていると思われるモデルです。何故か、他の時計屋さんでは電池交換をしてもらえないのだそうです。最近、この文字盤のデザインは良く見ますね。単純なユニバーサルデザインとして秀逸だと思います。SBB CFF FFSとプリントされていますが、スイスの公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語)の頭文字らしいです。ケースにも少し腐食が始まっていますね。

Img_328025 意外に使用されているムーブメントはETA 450 101と0石の安価なものです。ETAといえば、スイスのスウォッチグループの工場が火災のニュースが入って来ましたね。ユニットの供給に影響が出るかもしれませんね。一度ユニットをケースから取り出して、ケースの清掃をしておきます。古い電池は395ですので、スイスで生産されて依頼、電池交換を受けていないのかもしれません。

Img_328564 サイズは、19セイコーより一回り小さいですね。裏蓋は圧入式ですが、締めようとして気が付きました。本体側とのクリアランスがきつくて、簡単に嵌ってくれません。しかも、腕時計のサイズよりは大きいため、圧入工具のコマに適合するサイズが無いのです。アダプターを介して何とか締めましたが、工具の用意が無いショップでは蓋を締めることが困難ですので、それが断られる理由だったりして・・

Img_328266 セイコーの鉄道時計19セイコーですが、以前に手前の個体を手掛けましたが、19セイコーは永く作られましたので、製造時期によって改良による部品の変更が多く、仮に適合しないテンプとアンクルを付けてあった個体です。オーナーさんが部品取り用のジャンクを調達されて戻って来たのでした。しかし、ちょっと古そうですよ。

Img_328912 残念ながら、テンプ周辺はすべて古い仕様の個体でした。折角調達して頂きましたが使用することが出来ません。となれば、3個のジャンクを集めて作動する個体を作るしか方法はないですね。しかし、どの個体もすでに分解を受けており、単体でO/Hをすれば作動するというものはありません。また、ここでも部品規格の違いで、必ずしも良いところを使うわけにも行かないという難しい選択です。地板としては古めなのですが、この個体を基本に作ることにします。この個体の4番車のホゾが曲がっています。この部分に小窓の秒針が付きますので、分解組立時に秒針を抜き挿しする時に曲げたのか、それとも不用意に置いて曲げてしまったのか? これでは動きませんので良品と交換します。

Img_329291

適合する部品を組み合わせて何とか組み上げました。テンプは使えるものはこの1個だけ。ガンギ車とアンクルは微妙に合いませんね。

Img_329351 文字盤側。左の個体の方が設計は新しいようですが、部品の関係で使えません。

Img_329424 歩度調整中。寄せ集め部品ですから調整は難しいところです。ゼンマイを巻上げると、リューズの回転に周期的な重さがあって、角穴車と丸穴車の磨耗ですので、別の個体から交換してあります。まぁ、なんとか使えるかなぁ・・・

Img_329844 機械をケースに収めて針を付けます。しかし、機械が変わったため針の取り付け穴が適合しません。特に長針は何度かポンス台で穴を小さくする修正を受けています。今回もポンス台で穴を小さくする修正をした後、ヤスリで微調整をしています。スモールセコンドの場合は、短針が秒針と接触をする可能性があるため、殆どの個体は針を大きく曲げて接触を回避させていますので、きれいな針は少ないです。

Img_329957 針同士が接触をしないことを確認して、文字盤の清掃後、風防を締めて完成です。この時計は、ご依頼者のお父様が国鉄時代にお使いになられていた時計とのことですが、裏蓋の昭28にしては中身の機械が新しい気がしますので、定期のメンテナンス時に、機械を交換されているものかも知れません。どちらにしても19セイコーは設計変更の他に個体差による部品精度の差が大きくて、熟知するのには奥が深いモデルだと思います。

今年も当ブログにお付き合いを頂きましてありがとうございました。皆様、良いお年をお迎えください。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


平和なPEN-FTのオーバーホール

2013年12月23日 21時34分23秒 | インポート

Img_326366 その前に、私物のセイコー・クロノ6139Bを組んでいました。この個体はe-bayで入手したものですが、かなりいじられている機械で分解は下手くそです。組み上げてセンターの秒針を付けるところに来て、秒針が付きません。観察をすると、カナの先端が折れているようです。道理でセンター秒針が欠落していたはずです。全く、毛〇は不器用で正直でない。部品が調達できるまで中止です。

Img_326611 ではお仕事をします。本当に押し詰まって来ましたね。これが今年最後の個体になるでしょうか。PEN-FTの2330XXと中期頃の個体で、大きな設計変更は終っている頃です。特に問題はなく実用されているとのことですので、或いは書くことも無いと予想します。ご覧のように、過去に分解は受けていない個体ですね。巻上げのゴリツキや露出計が3段程度外れるとか・・一見、露出計の針は元気に見えますけどね。

Img_326731

特に書くことも無いかもしれませんよ。すでに完全に分解をして洗浄をしてありますが、底蓋を取りましたらボトムキャップの接着が外れて脱落していました。これって、意外に多いトラブルですよ。

Img_326966 巻上げレバー側の2軸を組立ててスムーズに作動するかテストをしています。巻上げレバーユニットの取り付け部に調整いワッシャーが入っている個体(殆ど)は、不用意にワッシャーを抜くと作動が渋くなってしまいます。

Img_326824 シャッターユニットは良好ですね。書くこと無いなぁ・・。洗浄注油をしておきます。

Img_327051 すでにシャッターユニットは本体に組み込んでいます。ロアーギヤにグリスを塗布してセットします。

Img_327134 中期頃のプリズムはコーティングが弱くなっていますから慎重に清掃します。まぁまぁの状態ですね。次はルーペを載せます。

Img_327245 接眼プリズムですが、コーティングが劣化していますね。こちらも慎重に清掃をします。

Img_327334 全体的には平和な個体ですが、シャッターダイヤルと露出計が連動しない時があります。確か、露出計が合わないというご指摘がありましたね。多くの個体を見ているとこの画像ですぐに分かるのですが、ウォームギヤが引っ込み気味なのです。それによって、シャッターダイヤル側のギヤと連動が外れてしまうことがあります。

Img_327475

これがウォームギヤです。右端(赤印)がセットされていた部品。隣りの部品と比べてくださいよ。長さが違うのが分かりますか? 0.5mm長いのです。この連動部分は、ダイカスト本体、前板、露出計ユニットとの部品の勘合によって、ジョイントするウォームギヤ部の長さが変化するため、調整部品を選択使用しているのです。今回は、長いタイプと交換をしておきます。

Img_327526 基本的には良い個体なんですけどね。どんな個体でも、何かしらの問題は抱えているということです。その他、電池室リード線とハーフミラーを交換しています。

Img_327655 すみません。画像を撮り忘れました。PEN-FTは38mmレンズの清掃を終えてお帰りになりました。で、余った時間で、オメガ、ジュネーブのANさんからプレゼントされたセイコー・クラウンの防水ケースタイプを応急復帰させておきます。クラウンは、マーベルの機械をベースに12型化した機械を搭載しているモデルで、後ろの金メッキ非防水ケースが一般的です。後期には、この個体のように防水ケースとなったものがありますが、生産数量は少ないので、現存は稀少です。ケースは残念ながらSS(ステンレス)ではなくてSTPというメッキケースです。このケースは、腐食が早いため、程度良く残っているものは少ないですね。この個体はきれいな方で、たぶん早いうちに使用を止めたものと推測します。裏蓋のパッキンが挟まって締められていましたので、大した修理は受けていないのでしょう。不動の原因は機械ではなくて、秒針の差込が緩くなっており、作動中に針の先端が上下して分針とゴッチンコしているもの。過去の分解時に針の入れ方が乱暴だったのでしょう。

Img_327726 秒針の差込部を工具で締めてきつくなるようにしてあります。しっかりと固定されて回転しています。

Img_327844 裏蓋を締めて、取りあえずは作動状態としました。GSまでに発展した優秀なクラウンの防水ケースモデルですから、次回にはO/Hをして使ってみたいですね。

Img_327922

愛用のオメガ・ジュネーブの秒カナ(秒針の軸)を交換しました。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/

「テキサス親父」が署名の協力を求めています。グランデール市の慰安婦像撤去についてのホワイトハウス署名。1/10までにあと26.000人の署名が必要です。

http://texas-daddy.com/

https://petitions.whitehouse.gov/petition/remove-offensive-state-glendale-ca-public-park/3zLr8dZh


OMEGA Geneve をレストアするの巻

2013年12月20日 00時05分38秒 | インポート

Img_319255 オメガ・ジュネーブのO/Hご依頼です。オメガの中では廉価版のモデルで、上級にはシーマスター、コンステレーションなどがあったそうな。1970年代のモデルで、Cal 565 5.5振動のロービートを搭載しています。この個体は、お父様から譲られた時計とのことで、大切にお使いになられているようですね。画像の後ろは私の愛用している同モデルです。では、と裏蓋を開けてみると・・あらパッキンが入っていませんね。これで長期にお使いになられていたのでしょうかね。水気が浸入した可能性があって、ローターなどが腐食しています。

Img_319445 機械を取り出してケースとベルトは研磨洗浄します。風防ガラスは傷とクラックがありますので、純正新品と交換します。

Img_320561 機械を分解して超音波洗浄をしたところ。幸い内部にまでは水気は侵入していないようです。しかし、長期間オーバーホールはされていないようで、ホゾ穴の油はカラカラの状態です。天真の磨耗が心配です。現状は60秒/日程度遅れるようです。

Img_321051治板の赤機械はカッコ良いですね。精密で非常に組みやすい機械と思います。

Img_321117 これで組立完成。自動巻きユニットは洗浄注油済みですが、ケースにセットの後で取り付けます。

Img_324066 文字盤はデッドストックの新品と交換しています。やっぱり新品はきれいですね。シンプルなインデックスです作りは良くて、機械にピタッと合います。セイコーよりも高精度と思います。

Img_324277 針付けをしました。針は先端の丸いタイプが一般的ですが、この個体は剣型のスリット入りが付いています。研磨したケースに、ご希望でカレンダーレンズ付きの風防を選択して圧入してあります。このケースはベゼルが無いため、風防内側のテンションリングで留まっています。

Img_324326 裏蓋と機械留めもデッドストック新品と交換します。

Img_324411 機械をケースに収めて自動巻き機構を取り付けました。

Img_324646 組立は完成です。光っていますが、ケースはヘアラインを入れてあります。文字盤と風防ガラスを交換していますので、新品のような美しさです。

Img_325301 専用ベルトもヘアライン研磨洗浄をしてあります。


何やら怪しい時計とSuper Ikonta

2013年12月19日 19時33分29秒 | インポート

Img_323025 またまた笹原ペンさんから怪しい時計が来ていましたよ。ROLEX EXPLORERが2つとCARTIERクォーツのペアウォッチ。この手の時計は良く分からないのですが、どう見ても機械は中華圏らしき雰囲気ですよねぇ。本物のロレックスに中枠はないと思うし・・

Img_323266 12時のインデックスが剥離して秒針を止めていたようです。再接着をしておきます。

Img_323315 これはもう1つの個体。機械が違うようですね。中枠は半分に切って入っています。こちらもメンテナンスをして、切れたベルトの修復と洗浄をしておきます。裏蓋に刻印がありますけど、知らないメーカーです。

Img_323853

こちらはケースとベルトは良く出来ているので、或いは本物かも知れませんが、中身はミヨタです。電池交換をしてあります。

Img_323421 次は、Super Ikontaです。レンズの各面が曇り放題です。

Img_323554 同梱された写真はコントラスト低下でピントも甘い感じですね。

Img_323624 レンズとファインダーを清掃しておきました。本物のロレックスに会って見たいものです。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


PEN-EE-Sをサンコイチで仕上げるの巻

2013年12月17日 12時51分58秒 | インポート

1段々押し詰まって来ましたね。クリスマスが過ぎればもうすぐお正月ですので、もう一頑張りですね。北海道のINOBOOさんからPEN-EE-Sを仕上げよとのご依頼。EE系にもちゃんと目を配る見識がすばらしいですね。で、その前に、地元で撮影した画像を送って頂きました。幕別町忠類にある丸山展望台からの眺望とのことです。わぁ、北海道は寒そうですね。まもなく、この場所へは雪のため、車では登れなくなるそうです。

Img_322122 そこで、PEN-EE-Sが3台来ています。残念ながら、どの個体にも外観やセレンなどに難があって、そこで1台に仕上げようというところですね。戸籍不明は作りたくないので、後期型として整合性が取れるように部品を選択します。ダイカスト本体は画像のものを使います。すでに洗浄を終えています。

Img_321944 では、ダイカスト本体に2軸を組立てて行きます。取付ける部品は、一番程度の良いものを選択します。3台分解しなければなりませんので、これは手間の掛かる作業なんですね。

Img_322264 シャッターユニットは最後期の状態の良いものを使います。シャッター羽根に僅かに錆が発生している以外は、レンズは素晴らしい状態。清掃、注油をしておきます。

Img_322394 セレンの起電力は良好です。ファインダーの清掃をして、ダイカスト本体に搭載します。

Img_322574 ドッキングさせて巻上げダイヤルギヤと連動させます。

Img_322684 裏蓋がねぇ。塗装が良さそうと思えば底部に傷があったりと、完璧はないのでこれに決めます。で、シボ革の黄ばんだ汚れを清掃したところ。

Img_322751 ということで、何とか完成しましたね。うちの在庫から程度の良い個体を交換した方が早かった気もしますけど、大量在庫の中から探し出すのが困難なのでサンコイチで仕上げました。左のセイコークロノ6139は私の私物でレストア途中です。イーベイで程度の悪い個体を掴まされてしまって、やっとケース研磨をしたところ。ペプシベゼルの退色劣化が激しいです。今回は、INOBOOさんから風防ガラスをEE-Sと同梱で送って頂きました。ありがとうございました。正月休みに仕上げたいと思っています。

Img_322855

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/