今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

きれいなローライ35Sブラックの巻

2024年06月27日 09時00分00秒 | ブログ

関東地方は蒸し暑い日が続いていますが、こう言う日にはゴキちゃんが出現してくることが多く私の部屋に出ました。私は何が嫌いと言ってもゴキちゃんが嫌いです。ホイホイを仕掛けたものの安心して寝ることが出来ず今日は睡眠不足です。で、きれいなブラックモデルが欲しかったのですが、ブラックモデルはカバーの材質がアルミなので、全く無傷という個体は高値になってしまいますね。

で、朝ホイホイを確認しましたらめでたく捕獲となっておりました。それをかみさんに処分してもらって安心して作業を続けます。まぁ、なかなかきれいな個体と思います。

 

内部も、あまり使い込まれた感じはありませんね。

 

 

不良というわけではありませんが、フィルムインジケーターの動きが少し緩いです。

 

多くの個体はウェーブワッシャーは2枚重ねて使われていますが、この個体は1枚です。調整をします。

 

通常作業のファインダーの清掃やスローガバナーのメンテナンスをします。ところで、のネジが4本共締めが緩い感じでした。清掃したファインダーを戻して組もうとするとファインダーが正規に位置に収まってくれない。これは、のネジ孔位置が微妙にずれていて、皿ネジを締め込むと組めなくなるので緩めてあったようです。

露出計の針の動きが不安定な感じです。回路を当たっていくと高輝度側の半固定抵抗に触れると針が動きます。回路をやり直して安定するようになりました。

 

回路修理をした露出計ユニットを組み込みます。

 

 

巻上げギヤは金属ギヤと樹脂カムの二段組み立て式ですが、大ギヤを分離しても小ギヤがバネにより回転(戻り)しない現象がありました。普通に組むと小ギヤが回転しなくなります。救済として軸部に極小ワッシャーを追加しました。どうもこの頃の部品品質は問題があるようです。

当初は未分解機と思いましたが、分解前の∞確認で∞が来ていませんでした。ズレ程度ではなく大きく外れています。前面の化粧リングを外してネジを確認すると過去に分解されていました。沈胴チューブも分離してフェルトの調整もしておきます。

35Sはチューブの内周にもヘリコイドネジが切られています。分解時にはデータを正確に記録しておきませんと元通りに組めなくて何度も組み直すことになります。

 

シャッターユニット内は分解された形跡はないような・・レンズもきれいです。ヘリコイドグリスを入れ替えておきます。

 

シャッターユニットを本体に組み込んでピントを確認しました。スプロケット軸の遮光紙が入っていませんでしたので、やはり分解されていたのでしょう。追加をしておきます。

 

底部の清掃と注油(グリス)をします。スプロケット軸にもグリスを入れておきます。

 

外観はきれいなので何も問題はないと思いましたが、いろいろありました。一番最初の画像に写っていますが、裏蓋のMADE BY SINGAPOREの「SINGAPORE」のみシルバーの色入れが消されていました。ドイツ製は無いのですから消さなくても良いと思いますけどね。入れ直しておきました。これで良いコンディションになりました。#2471XXX 。

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


初期のPEN-FVの巻

2024年06月23日 13時00分00秒 | ブログ

先日やりましたPEN-FVと同時期の初期型ユニットが使用されている個体#1171XX (1968年1月製)になります。セルフタイマーも含めて変更前のユニットですので信頼性が出るか・・見える症状としてはフィルムカウンターの固着でした。

この個体の場合、固着の原因は小ギヤの回転不良でしたが、リターンスプリングも変更前が使われているのでバネが弱く戻り不良となるものがあります。

 

ご指摘にはありませんでしたが、接眼枠に破損があります。

 

 

全反射ミラーは下部に曇りが出ています。清掃か新品交換か? それより問題はプリズムの汚れです。これはコーティングが劣化して剥離を起こしているもので、経験的に清掃をすればコーティングは失われます。

拡大するとこのようになっています。この頃の製造ではFTでも保管の悪い個体は同じようになります。

 

この個体にも裏蓋にモルトが追加されていますが、剝がれかかっていますし裏蓋の開閉の支障にもなるので取り除きます。

 

FT,FV共、初期型はまだスリ割(-)ネジが混用されていまして、吊輪部とスプールシャフトを留めるネジは真鍮の頭が大きな(-)ネジですが、強い緩み止めが塗布されていますので、無理に緩めようとするとネジ頭が折れるので注意が必要です。以後は標準の+ネジになります。

シャツターユニットは特に問題はありません。殆どの個体はトリガースプリングはの位置に掛かっていますが、この個体の位置に掛かっている個体も稀にあります。既定のテンションが出なかったのでしょう。

何とかプリズムのコーティングを残すことに成功しました。

 

 

それでは前板を取り付けます。過去にファインダーの∞調整をされていました。

 

修理や交換のご依頼はありませんでしたが、接眼枠の欠損部分を荒仕上で成形しておきました。サービスです。

 

セルフタイマー連動のRレバーは当然旧型が付いていますが、取り付けネジ部の寸法勘合によってはレバーにガタが出て、セルフユニットとの接続が外れてしまう場合があるので、裏側にベークのスペーサーを接着して動きを規制されているものがあります。しかし、その接着が剥がれているものが多いです。

レンズマウントの取付け部に調整ワッシャーが入っている個体があります。この個体の場合は8時位置のところ。分解時には注意をして、どこに入っていたかを正確に記録しておく必要があります。分からなくなった場合は殆どこの位置です。前板のダイカストの中央が慢性的に引けているのです。

問題のフィルムカウンターはすべて洗浄をして組み立ててあります。全反射ミラーはオーナーさんのご希望で新品にしてあります。これで組み立て完成。

 

PEN-FVは希少性から根強い人気がありますが、この個体の場合、FTで言うと20万台最初付近の個体と同じ頃の製造ですからFTであればすでに世の中から消えている個体が多いわけです。当然使われているユニットも変更前のものですから信頼性、安定性は落ちます。FVであっても変更後のユニットが使われている個体もありますので、入手の時はその点も考慮されても良いかと思います。ただし、変更後のユニットは別の問題もありますので必ず良いわけではありません。

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 

 

 

 


34万台なのに? PEN-FTの巻

2024年06月21日 13時00分00秒 | ブログ

少し間が空きました。遊んでいたわけではなくてローライフレックス2.8の特別仕様機なのかな? 金ピカのモデルが来まして、しかし、分解をすると茶色のシボ革を剥がさなくてはならないし、巻き上げクランクの接合ピンもきれいに金メッキがしてあるのにポンチで打ち抜くとメッキは剝げるし傷もつく。特に大きな不具合もないのでご相談の上作業はしないことにしました。では、通常の作業です。PEN-FT #3482XX(1970年3月製)と良い頃の個体ですが、外観はきれいなので使用は少ないと思いますが巻き上げがゴリつくのが気になるのと巻き上げレバーがトップカバーに接触しています。

相手がいくら硬い梨地クロームであっても、そのまま使用を続けると接触面のへこみや傷も付いてしまいます。これはレバーストッパーのダンパーが経時的に変形したためです。

 

34万台としてはハーフミラーの腐食が激しいです。これは放置期間が長かったのです。

 

内部は未分解のようですが、裏蓋に55.5.13と鉛筆で記入が有ります。何をしたのでしょうね。メーターユニットはぎりぎり変更前のものが付いています。

 

保管が良くなかったが基本的にはあまり使用されなかった個体です。おそらく問題になるところはないでしょう。チャージギヤと軸の摩耗もありません。すべて洗浄して新しいグリスを塗布して組み立てます。

先日の個体と違ってテンションシャフトも僅かな偏摩耗はありますが、巻き上げフィーリングに影響があるほどではありませんので当然再使用です。

 

10万台など前期生産機の場合はスプロケット上にウェーブワッシャーは入っていません。フィルムの上下安定を改善するためでしょう。ご自身の愛機を確認してください。

 

最初に書きました巻き上げレバーを受ける樹脂ダンパーです。裏蓋を下にして置くとレバーに押されてダンパーがへこみトップカバーに接触するようになります。パイプ状のダンパーを回転させて位置を変えることにより改善することが出来ます。

保管状態が悪い割にはプリズムはコーティングも完全に残っていました。清掃をして本体に取り付けます。

 

ルーペレンズの清掃とモルトの交換をして取り付けます。

 

 

ハーフミラーの腐食が激しいです。

 

 

新品と交換して組みます。

 

 

あまり書きませんが、露出計ユニットの清掃もしています。メーター針像は矢印の光路によって情報窓に導かれます。プリズムとミラーを清掃します。

 

裏蓋の記入は何だったのだろう? どこにも手を入れた形跡はありませんでした。最後にセルフタイマーのレバーロックに不良がありましたので清掃で改善させ組立しました。この後は調整作業をして完成です。

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 

 

 

 

 

 


定番破損のローライ35の巻

2024年06月14日 21時00分00秒 | ブログ

何か急に暑くなって来ましたね。今年の梅雨はジメジメ降り続かないとか。雨も嫌いだけど歳を取ると暑いのも堪えますね。で、新しくしたパソコンもWIN11のフォトアプリが変になって画像が取り込めない状態になりました。再インストールをして何とか取り込みは出来るようになりましたがまだ完治しません。で、作業の方は暑いのでね。ボチボチやっていましたが、ローライコードⅣは中々良い子で特に問題はなくシボ革を貼って終了です。

問題は次の子です。ローライ35ブラック #6262XXXはシンガポールですけど、巻き上げレバーが固着です。イヤな予感がしますね。

 

思った通り、樹脂のチャージギヤのカム部分が折れているのと、大ギヤの可動規制用ピンが抜けています。どんなバ〇力なんだよ。巻上げをしてあるかの確認の時は軽く巻き上げてくださいね。

そうそう私のところにも交換の良品部品が有るわけではありません。今回は修理で再使用します。と言っても材質がジュラコンなので接着は利きませんから。

 

その他は定番のファインダー清掃などして沈胴の調整もしておきます。

 

 

このシャッターは分解されている? 何か傷だらけだよね。

 

 

スリ割が壊れているので分解されて居るのでしょうね。

 

 

レンズとシャッターの清掃をします。ヘリコイドグリスが劣化しています。そもそもグリスをつけ過ぎなんだよね。

 

はみ出したグリスは横に流れて潤滑に使われることは無いのです。

 

 

何とか清掃を終えて本体に取り付けます。

 

 

清掃をした前玉を取り付けます。

 

 

ローライ35の距離目盛についてお問い合わせを頂いていました。距離リングは本体側には差し込まれているだけで、前縁のリングのネジを絞め込むことで挟んで固定しているだけです。そのため▽と∞を自由に合致させる調整が可能ですが、逆に言えば正確に合わせるのは瞳の位置でも見え方が変わるので厄介なんです。ローライ35Sは構造が異なるので調整は出来ません。

組み立てたところ。距離目盛は溶剤に非常に侵されやすい材質で、すでに接着剤のようなものが付着していました。私のしわざではありません。

 

上下カバーの材質はアルミ製です。これで完成です。

 

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 


難儀が続くPEN-FT(B)の巻

2024年06月11日 18時00分00秒 | ブログ

バタバタしておりまして気が付けば画像を撮っておりませんでした。では簡単にします。カメラ店様からのPEN-FTブラック#3489XX(1970年6月製)と本来でしたら良い頃の個体ですが、何故かカメラ店様からの個体は状態が悪いものが多いと感じます(個人の感想です)。考えてみれば世の中に埋もれているカメラを掘り起こす役目もあるわけですからオーナーさんから依頼されるカメラとは必然的にコンディションが違うのは当然かもしれません。

問題は恐らく長期に渡って革ケースに保管されていたことによる湿気と思われる不具合です。まずはハーフミラーの極端な劣化です。30万台以降の個体では見たことが無い程度。メンテナンス費用の限られる中、何とか清掃で再使用と思いましたが断念しました。新品と交換です。

次は露出計不動。この個体は1975年以降に恐らくSSにて露出計交換を受けていて、基板別体タイプが付いていますが、これが不良となるのは珍しいです。基板の修復により精度はともかく作動はさせましたが・・メーター針が0点に張り付いて動き出さない時があります。針のピポット部の腐食でしょう。何とか調整で動かします。

3つ目の不具合は、巻き上げが異常にゴリつくことです。シャッターユニットをメンテナンスして組んでみると・・巻上げのゴリツキの原因はFTのユニットが途中でバネを強化されたところから始まります。個々には要因はあるのですけどね。それらを修正してもリターンミラーユニットを連動させて負荷を掛けると、とても良品として販売は出来ない(私の基準)です。

問題はテンションシャフトです。右先端部が異常摩耗しているのが分かると思います。地板の軸受けとはこの部分でのみ接触をしています。しかも無給油で・・ルーペで拡大してみると自然な摩耗というよりは部分的にヤスリかリューターで削られたような摩耗です。いつもお話ししていますように、オリジナルの部品を削って修理をすることなど有り得ません。予算が無いのにこれは交換するしかありません。

メーターは何とか作動となりました。

 

 

トップカバーを閉めます。

 

 

付属の38mmも光学系としては同じ条件ですので各レンズのカビ、ヘリコイドグリス抜け、絞り羽根の油がありましたので清掃をしました。結果的にブラックFTを1台世の中に戻せたということですけど工数的には厳しいところでした。

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)