今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

連休に使いたいだって? PEN-FV

2012年04月28日 16時30分43秒 | インポート

Dscf106162 カメラをさぼって、普段使いの56キングセイコーを組んでいました。5625-7000と、現存数が一番多いタイプですね。文字盤と針は良くありませんが、風防ガラスは新品の純正品です。このモデルは、ワンピースケースで、裏蓋は開きません。機械は風防を取って入れることになります。すると、歩度調整の度にベセルを外さなくてはならないため、画像のように、ラグの間からドライバーで緩急針を調整できるようになっています。メクラ蓋のパッキンは自作したものです。ワンピースケースは、防水性を上げるためと思いますが、こんなビス孔があるんじゃ、あまり意味が無いようにも思えますけどね。分解が面倒なだけです。

Dscf106412 裏側です。ご覧のように、裏蓋はケースと一体で開きません。中央にはメダリオンが付いています。使い込まれた個体では、メダリオンが欠落しているものや、摩滅しているものが多いです。複製を売っている方もいますが、これはオリジナルのようです。

Dscf106354 さすが8振動、精度は安定しています。これぐらいなら、クォーツの精度に慣れた方でも支障はないでしょう。文字盤の太いインデックスと剣型の針がキングセイコーの特徴ですが、左は少し後の製造5625-7121です。こちらはワンピースケースではなくて裏蓋が開きます。ほら、こっちの方が合理的じゃないの。メダリオンは省略されたのは寂しいですけど・・ケースや文字盤など、少し軽いイメージになっていますね。両モデルは基本的に同じ機械ですが、緩急針の調整の違いでA、Bタイプに分類されます。

Dscf106588 で、到着のダンボールを開けましたら、あらら、「連休に使いたい」連休って入っているじゃん。幸い、初期型ですが、非常にきれいな個体で、このままでも問題ない程度ですが、メンテナンスのご希望ですので急いでやりましょう。

Dscf105455 フィルムの巻上げ不良以外は問題の無い個体と思ったのですが・・・だいぶ手が入っていますね。トップカバー裏の駒数ガラスなどは電動工具で研磨を受けていて、駒数ガラスも再接着されています。じつは、FVの初期は上下カバーの留めビスはスリ割り(巻上げレバー裏のみ+)のはずですが、全て+になっています。まぁ、途中のメンテナンスで替えられていることもありますが、この個体は、本体とカバーが合っていないのではないでしょうか?

Dscf105575 底部を見ます。あぁ、これは違いますね。ダイカスト本体はFTで言えば後期に属するもので、概ね27万代付近のボディーだと思います。たぶん、FTの後期型があって、トップカバーにダメージがあるので、機械が不調のFVから専用部品を移植して価値の高いFVを作った。そんなところでしょう。

Dscf105664 シボ革の剥離を見れば、分解した方の技量が分かります。キズだらけですね。

Dscf105777 スプロケットの滑りによる巻上げ不良を起こしている個体は、スプールのスプールバネが弱い傾向にあるというのを経験的に感じます。この個体もやや弱いので、強化バネに交換しておきます。

Dscf105886時間の無いときに限って厄介な個体です。通常、シャッター幕まで分離している分解は少ないのですが、この個体は分解してありました。グリスをべっとり付けて組立のビスは斜めに入っています。ねじ山を修正して組んでありますが、グリスを付けることより、部品の磨耗による金属粉を洗浄する方が先決だと思います。で、二軸を組んだボディーに完成したシャッターユニットをセットしました。ここで、スプロケットのクラッチをテストしようとボタンかけを取り付けますが、バネが外れてしまいます。これはFT用のバネを使っているためで(FTボディーですから当然ですが)電池室が無く、電池受けのみのため、FT用のバネでは外れてしまうのです。そう、FTとFVではバネの形状が異なるのです。FV用のバネは用意していませんので、ステンレスバネ材にて製作(セットしてあるもの)してあります。(ピンセット先は付いていたFT用バネ)

Dscf105942 あちゃー、写ってないね。オーナーさんから、スクリーンのシミをご指摘いただいていました。右下角部分にシミが確認できます。

Dscf105855 原因はこれです。下のミラーユニットに多量の通常グリスを塗布したために、流化して上方向にしみ出しています。スクリーンはすぐ上なので、スクリーンにもしみてきたということです。グリスの選択と塗布量及び塗布部分を吟味しなくてはなりません。

Dscf106057 前板の組立を終えて、シボ革を接着しますが、シャッターダイヤルをFV(Fと同型だが別部品)用に交換したのにシボ革を換えていないため(FTベースなので当然ですが)シャッターダイヤルの形状に合っていませんね。FTは単純な丸型でFとFVは上下にでっぱりがあります。F用に合わせてカットして使用します。

Dscf106197 本体は完成。付属のレンズは絞りリングがスムーズに回らないとのこと。原因は、絞りリングを受ける鏡胴の変形。分解歴がありますが、なんで変形させるのか意味不明。真円に研磨修正の上、全体の清掃をしてあります。元はFTにFV専用部品を移植してFV化をしたと言う個体ですね。個体数維持のために、止む終えずニコイチにすることは仕方の無いこともありますが、このケースでは、FVオリジナルを修理する選択肢は無かったのでしょうか? 私ならそうします。これで全て完成。細かな破綻個所を修正してしまいましたので、一般的には元FTであると言うことを見破ることは出来ないでしょう。(私は記録しています)この個体の場合、FVの初期なのに改良後のセルフタイマーユニットが付いている。上下ビスが+がヒントでしょう。後期型ベースなので、シャッターのトルクも出ていますので、調子はよろしいと思います。将来手放す時があれば、是非、FTベースであることを告げてください。いつもお土産を頂いていますので頑張りました。連休後半に使用出来ますね。


久しぶりのPEN-D3

2012年04月25日 23時26分00秒 | インポート

Dscf104924 久しぶりのコンパクト、PEN-D3 #4265XXです。巻上げはスムーズではなく、二重巻上げ防止が解除されにくいですね。ファインダーブロックが激しく腐食しています。放置時間の長い個体が、修理を受けているという印象ですね。

Dscf105058 トップカバーを開けてみます。露出メーターの透明カバーの汚れが激しいですね。余談ですが、このカバーの材質は普通の塩ビ板などではなく、帯電防止効果のある材質です。カバーの面積が大きいので、静電気で帯電すると、メーター針が吸い寄せられたりして作動不良となるためです。巻上げダイヤルも一度分離されていますね。ダイヤルカバーは、ビス留め基部を残して脱落しています。とにかく汚い印象です。

Dscf105178 シャッターユニットは本体からは分離されていないと思われますが、レンズ前面部と裏から後玉を分離した形跡があります。工具を掛けるスリ割りを損傷して、黒のタッチアップを派手に塗ってあります。こう言う個体は厄介なのです。観察すると、ピンセット先のコロが紛失していますね。たぶん、紛失したことも気がついていないのだと思います。では、全て分解して点検、洗浄をします。

Dscf105233 シボ革の接着の状態から、シャッターは未分解と思ったのですが、分解されていますね。シャッター羽根のセットの仕方も違っているし・・効果の無い処置もしてありました。

Dscf105376 途中はしょりますよ。シャッターのオーバーホールは終っています。特に磨耗もなく、問題はないユニットです。オーナーさんから、ピントレバーの動きが硬いとのご指摘でした。点検すると、オリジナルのグリスではなく、前回の修理の時に硬いグリスを使われたようです。D系のような口径の大きなヘリコイドの場合は、S系と同じグリスを使用すると硬く(重く)なってしまいます。軽めのグリスを使って入れ替えをしてあります。

Dscf105415 とにかく汚いカメラです。全て洗浄して、部品単位で磨いています。駒数板下のギャは樹脂製に変わっています。巻上げダイヤルカバーが脱落していました。オーナーさんはEE用のグレー色でもとのことでしたが、それはみっともないですから、在庫の黒色モールドを使います。但し、黒色の調達は困難のため、いつでも交換できるわけではありません。

Dscf105567 ダイカスト本体にシャッターユニットを組み込んで、前群を取り付けますが、ピンセットのコロが欠落していましたので、追加しておきます。通常は、このコロがないとチャージが完了しないのですが、この個体は作動していましたね。

Dscf105698 ファインダーの清掃と、激しく腐食していたブロックをタッチアップしてあります。全て分離した上で、焼付塗装も可能ですが、ダイカストの侵食が激しいので、これはこれで良いでしょう。基本的には消耗の少ない個体でしたが、保管が最悪で、その後の修理もあやしい修理でしたね。レンズの前玉をなんで瞬間接着剤と留めているのよ・・・


ストラップイヤーが変だねPEN-F

2012年04月23日 23時27分10秒 | インポート

Dscf104454 このPEN-F #2010XXはオーバーホールで来ています。作動はそれほど悪くはありません。但し、右のストラップイヤーが陥没しているように見えました。そこで、トップカバーを開けてみると・・・あらら、留めビスが2本共折れていますね。ここは緩み防止のため、エポキシ接着剤と併用で組立ですので、中に残ったネジを抜くことは非常に困難です。

Dscf104512 その他の部分を点検して行きますが、リターンミラーが変ですね。ホルダーから浮きぎみに接着されています。ファインダーのピントを点検してみると、大きく外れています。これは、再接着をしたため、調整がずれてしまったものです。ミラーを一度分離して再接着をすることになります。

Dscf104664

では、全て分解してダイカスト本体のみにした後、ストラップイヤーから始めます。ネジ孔に残ったネジ部を取り除かなくてはなりませんが、接着併用ですのでスリ割りを付けたぐらいでは回りません。本体側のネジ山を壊さないように切削で取り除くしか手はありません。

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真鍮のネジ部のみ削って取り除きました。ご覧のように、本体側のネジ山には損傷はありません。この部分は、何故か真鍮ネジですので、過大な荷重を掛けると折れる危険性があります。古い機械のレストアでは、このようなトラブルはまま起こります。それをリカバリーするテクニックが無ければなりません。

Dscf104129 リターンミラーを分離しました。観察すると、古いエポキシ接着剤を残したまま、ゴム系接着剤で貼ってあります。どうにもなりませんね。多分、シャッターを切った瞬間にミラーが脱落したのでしょう。その時の衝撃でミラーの角が欠けています。しかし、ミラー自体の状態はそれほど悪くはありませんので、このまま再接着で使用します。

Dscf104244 洗浄した、シャッターユニット。比較的良好なユニットだと思いますね。

Dscf104594 完成した本体とリターンミラー関係。ブレーキは交換してあります。張替えたリターンミラーを組み込んでカビの発生したスクリーンとプリズムを清掃して組んであります。

Dscf104615 右のストラップイヤーをM1.7X4の純正ビスで接着併用で取り付けています。この部分、左側のストラップイヤービスは鉄ビスなんですよ。よって、真鍮ビスを使用する右側が破断することが多いのです。全反射ミラーは再使用としています。

Dscf104852 よくよくトップカバーを見ると、ストラップイヤー付近が陥没していますね。ははぁ、ストラップイヤービスの破断は、落下による衝撃だったのですね。幸い、他の部分への落下による損傷はありませんでしたが、みなさんも不注意でカメラを落とすことのないようにしましょう。PEN-Fとしては、巻上げやシャッタートルクも良好な個体だと思います。


おかしなPEN-FTと時計2つ

2012年04月17日 20時15分26秒 | インポート

Dscf103995 PEN-FT #1945XXと時計2つが来ています。カメラ本体は、工場から出たままで、メンテナンスは受けていないのだろうなぁ、という感じ。巻上げゴリツキ、駒数カウンター復帰不良、セルフタイマー不良、裏蓋ラッチの跳び越しなどが確認できますが、問題は付属の38mm。ご覧のようにピントリングが1mから無限方向に回せません。これで撮影できてましたか? ピントリングのイモネジを緩めたか、分解をして鏡胴ヘリコイドを抜いていまったか? 一緒の腕時計はセイコーのスカイライナーでライナーのコストダウン機。文字盤はブラックで人気があります。使用中に動かなくなった由。もう一つは、9型のスモールセコンド。BEAUTY 15石という時計。リューズの位置が、通常の3時ではなくて12時になっていますね。これは、軍用時計のパイロットが使用するモデルにありますね。腕を前に伸ばして操縦をしている時に、文字盤が正立して見えるためのもの。海軍航空隊の搭乗員などが使用しています。緩急針はS一杯でも進み加減です。ひげゼンマイに原因がありそうです。

Dscf103982 裏蓋を開けて機械を見ます。何度も分解を受けてネジやテンプ受けなどがキズだらけですね。プロはこんな分解はしないと思いますが・・文字盤も針を深く入れ過ぎて、短針が文字盤と干渉していた形跡があります。これではトルクが失われますね。テンプをアシストすると数秒は動いて止まります。香箱(ゼンマイ)のトルクが輪列最後のガンギ車まで伝わっていないようです。

Dscf103955_3 分解のうえ、各部品を点検しましたが、ホゾ折れなどはなく、オーバーホールで復活できそうです。すべて超音波洗浄をして適正なオイルを塗布しながら組み立てて行きます。香箱をセットして受けを取り付けます。

Dscf104026輪列をセットして受けを取り付けます。香箱の角穴車を取り付けて、リューズを回して、ザラ回しで輪列の最後、ガンギ車がスムーズに回転することを確認します。問題がありませんので、アンクルをセットします。

Dscf104116 テンプを載せて動き出しました。作動に問題ないようですが、ツツ車や日ノ裏車、針などの負荷を掛けた状態で止まりなどが無いかを確認します。

Dscf104585 完成した機械をケーシングします。この時計は過去に何度も分解を受けており、文字盤や針も抜きキズや歪みが多くあります。文字盤には、中心部分に短針が接触した形跡があり(深く入れ過ぎ)状態は良くありません。しかし、この頃の黒文字盤は現存数は少なく、現在でも人気があります。私もセイコークラウンの黒新品を持っていますので、そのうち作りたいと思っています。文字盤の清掃と、針の研磨及び歪みを修正して取り付けました。歪みを修正しない状態では、針どうしが接触するか、クリアランスを取ると、今度は風防の内側に接触してしまいます。風防もキズの研磨をしてベセルで取り付けますが、古いケースですので、ベセルがパチッと嵌らず、脱落の危険性がありますので、接着と併用としています。裏蓋には前回のオーバーホール記録が記入されていますが、とても時計師の仕事とは思えませんので、それ以後にアマチュアさんが分解したのでしょう。

Img_2082121 すみません。今日は作業はサボって中央道を走って、長野県の松本市にある国宝「松本城」に行って来ました。桜がちょうど見ごろと聞いたからです。東京は曇り勝ちでしたが、内陸は良い天気で青空に天守と桜は非常にきれいでしたね。アマチュアカメラマンが大挙して撮影をしていましたが、今日は絶好の撮影日和となったでしょう。

Img_2077581 しかし、私はコンパクトデジカメのメモリーを入れ忘れるという大失態で、幸い、近くのコンビニで入手することが出来てラッキーでした。コンビニは便利ですね。そんな訳で、撮影は数枚です。松本城の天守は想像していたよりコンパクトでしたが、均整の取れた美しい姿でした。幕末維新には城は荒廃して天守も傾き、大修理により現在の姿に復元された由。天守の最上階まで登ることが出来ますが、私は体調により二階までとしました。

Img_208475 桜のほかに、これ梅ですかね。この後、お決まりのそばを食べました。気になったのは、こちらの道路を走ると、なんで信号が長いのでしょうね。東京の人間にはイライラします。おおらかな県民性だからでしょうか?

Img_2095991 帰路の途中、下諏訪にある時の科学館「儀象堂」に立ち寄りました。こちらは、900年以上前に中国で作られた水車時計「水運儀象台」を復元展示してあります。その他、歴史的に貴重な時計やセイコーの歴代製品なども展示されています。

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これは、私の生まれた時代の大好きな時計、セイコースーパーですね。私のスーパーとは微妙に文字盤が異なる。多くのバリエーションが存在したのでしょう。バンドはかなり渋いですね。私も今度付けてみましょう。女性職員のお二人と少しお話をさせて頂きました。私も機械時計を組み立てます。と言うと、熱心にお話しをしてくださいました。こちらでは、実際に工場で時計の組立をされていた先生が、組立を指導してくださるカリキュラムもあります。帰路のため、短時間の訪問でしたが、次回は、時計の組立を勉強するため、再訪したいですね。

Dscf103764 ではFTです。オーナーさんからは「O/Hをすれば、まだまだ使えますよね」と言われています。使えますけど、満身創痍の個体ですね。巻き戻し軸受は塗布されているモリブデングリスがカラカラに乾燥して、作動不良となっていたり、外観や内部のメカも一般的な個体よりグリスと汚れでドロドロの状態でした。それだけ良く使われたということでもありますね。幸い、部品交換をしなくてはならないところは無いと思います。画像は洗浄やクリーニングをした本体。では、組立を始めて行きます。

Dscf103921 シャッターユニットを分解洗浄しました。この個体はかなり使い込まれた形跡があって、各軸受のグリスは乾燥してカラカラの状態で固着傾向にありました。幸い、巻上げギヤや軸には著しい偏磨耗はありません。不思議ですね。コンスタントに使い続けていたからかな? 10年前から実用されているそうです。

Dscf104097 過去に何度か分解を受けていますので、シボ革を再接着した古い接着剤が残っています。このまま再接着をしてもごまかすことは出来ますが、私は完全に清掃をしてから接着します。この性分はロードレースをやっていた頃から変わりません。自分の命を託して走るエンジンを、見えないところだからといって手を抜いて組むことは出来ませんからね。シボ革は市販のものに交換をご希望です。

Dscf104092 組立はほぼ終了しています。駒数カウンターの復帰不良やセルフタイマーの作動不良などを修理調整してあります。この頃のセルフタイマーは変更前のタイプで調子の悪いこと・・ファインダーのピント再調整をされていますが、ストッパーが曲がるほど締め込んであります。シボ革の張替えご希望ですので、裏蓋のシボ革を剥離します。「指針動かず」、なんだ手直し機ですね。

Dscf104188 付属でついて来たシボ革。市販されているようですね。張替えには、ちょっとコツがいると思います。まず、寸法が微妙に合っていないこと、材質が牛皮のカーフのような柔らかい材質で寸法保持のための裏打ちがないため、貼り直しをすると強力な両面テープにより、ビョーンと皮が伸びてしまい収拾がつかなくなります。(私がやりました)画像の前面はシボ革の落とし込みが深いので問題はありませんが、皮厚が厚いため端部の収まりが悪い。下地のリベットなどの段差がそのまま表面に影響してしまう。などですね。

Dscf104295 裏蓋です。こちらはプレスで落とし込みを作っているため、シボ革が厚いと裏蓋よりも高くなってしまいます。この材料の厚みは0.7mm程度で、純正は0.55mmですから、その差分だけ盛り上がってしまいます。(特にペンは薄く出来ています)練習用として1枚余計にセットされているのは良心的だと思いますが、慣れている私でも、一発で位置を決めて貼るのは簡単ではありません。カメラ用のシボ革材料はこれらの不具合が無いように作られています。カーフではなく、ワニ皮のような材質であれば、もう少し寸法も安定し、なお且つ、滑り止め効果も高いのではと思います。両面テープ貼りのため、長期に安定した接着は望めませんが、細かなことは気にせず、お手軽に色替えをしたい向きには便利なものと思います。但し、ご自分の責任で貼ってくださいね。

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38mmレンズをオーバーホールしています。分解していくと、鏡胴とヘリコイドの間に切粉が挟まっていますね。鏡胴の組立面が切粉の形に陥没しています。これは工場での組立の問題ですね。厳密には、倒れが発生しているわけです。

Dscf103866 FT用のレンズには通常の絞り表示とTTLナンバーの両方をセットすることが出来ますが、これが問題で、絞りリングを力一杯に引かれると、ボール受けリングにカシメられているスペーサーが抜けてしまう不具合があります。意外にピントリングが回らないという場合は、この状態となっていることがあります。そこで、ポンス台を使用して、スペーサーを再カシメしておきます。

Dscf104334 レンズを分解する時には、ピントリングのイモネジは緩めないでくださいね。仕上がった本体に取り付けて完成です。改良前のセルフタイマーユニットには、止まりの症状が改善困難なユニットもありますね。アンクルの精度が悪い場合が多いのです。画像は、セルフタイマーの作動を確認しているところ。多少、水分が混入していた経過のある個体でしたが、コンスタントに使用されていた分、大きな問題は無い個体でした。まだまだ活躍してくれます。腕時計はスカイライナーは快調。9型は作業中止としました。


名前入りの三光PEN

2012年04月15日 18時27分52秒 | インポート

Dscf103024 ご常連さんですが、三光PENと共に時計が入っていました。ご自宅に古くからあったそうで、シチズンのデラックスですね。このモデルは1958年に「高精度の極薄型」を目指した設計として発売されたモデルです。さすがに同時期のセイコーマーベルやクラウンよりも薄く仕上がっています。機械は19石、21石、23石がありますが、届いたモデルは19石ですね。しかし、ケースは20ミクロンの金めっきを施されています。後ろの2つは私の所有機で、左側のベルト付きは19石の未使用新品です。ベルトはすでに劣化をしており、実使用はきびしいですが。右側は21石の特殊文字盤モデルです。昭和30年代のお洒落な雰囲気が良く出ているモデルです。

Dscf103167 では、本題です。しっかりとした劣化の少ない三光PEN #1346XXですが、トップカバーには、所有者の苗字が彫られています。今となっては残念な気もしますが、当時は、PENと言えどもカメラは貴重品ですから、盗難時の目印に名前を彫ることは普通に行われていましたね。

Dscf103368 本体からシャッターユニットは分離されていないようですが、前面のヘリコイドやレンズ部分は分解を受けています。しかし、下手くそな分解ですね。ナットを外すためにキズだらけにしています。ヘリコイドのグリスは普通のグリスのようですね。シャッター本体に流れ出しています。

Dscf103416 シャッターですが、Bバルブが利きませんね。ピンセット先のレバーがシャッター羽根が閉まるのをロックするのですが、バネの張力劣化により動きが悪く、シャッター羽根をロックすることが出来ません。

Dscf103588三光PENの頃に良く見られるのはスプロケット軸の上側の受けが緩んでいますね。工具を使わずピンセットで回ってしまいます。すべて分離した後、洗浄します。

Dscf103679洗浄した本体に組立をして行きます。スプロケットのクラッチは、ご覧のようにヤスリ掛けをされています。クラッチのプレス打ち抜き方向にバリが出てスプロケット軸のスリットに入らないものか、スリットの幅が狭くて収まらないための処置でしょう。どちらにしても、部品精度や公差が適正でないことによる不具合。組立現場で現物合わせでヤスリ掛けをしていたのでは、組立が軌道に乗るわけがありません。

Dscf103786  スプロケット軸とスプール軸を組んでいます。この頃は、駒数ギヤは初期の物とは異なり、その後のタイプと同様な形状になっています。但し、組立用の2孔はありません。また、ウェーブワッシャーも入らないのが特徴です。巻上げダイヤルカバーは熱カシメタイプから、それ以後のビス留めタイプに変更されています。この部分の変更は、比較的早く行われたことが分かります。

Dscf103759_2 途中画像撮り忘れました。三光PENとしては保存状態は良好で、特にレンズやファインダー対物ブラレンズなどは全くキズの無い状態で、ファインダーブロックもこの頃の個体に多い樹脂の劣化による白濁もありませんね。後期のPENと部品が入れ代っているのかとの疑問も持ちましたが、各部の特徴から、まさしく初期型のそれでした。ただし、ピントは全く不正確に調整されていました。また、良く間違えているのは、ヘリコイドの二条ネジの入れ方です。無限まで締め込んだ状態で、絞り表示が上面に来るようにします。彫り文字が無ければ最高の1台だったのですけどね。米谷さんのサインなら良かったですけど・・