明日に向けて

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明日に向けて(1541)原発は「ひずみ集中帯」が知られる前に建てられ何の対応もされていない!(大阪北部地震の考察―3)

2018年06月21日 14時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20180621 14:30)

大阪北部地震発生から78時間余りが経ちました。余震の数が減ってきています。
しかし次に何が起こるかは誰も分かりません。2016年4月14、16日に熊本地震が起こり、同年10月21日に鳥取地震が、2018年6月18日に大阪北部地震が起こったことを考えると、さらにどこかで「ひずみ集中帯」地震が起こる可能性は十分にあります。

前回の記事で福井の原発銀座も「ひずみ集中帯」にあると考えられることから「高浜・大飯原発を止めるべきだ」と主張しましたが、今回はさらに日本のすべての原発が「ひずみ集中帯」など理解してなかった時期に作られたことを指摘したいと思います。
なぜなら「ひずみ集中帯」は1990年代以降にGPSによる精密な測地が可能になる中で新たに発見されたものだからです。

ウキペディアの「歪集中帯」の項目には、2001年にこの言葉が使われた記録があると記されています。さらに2004年の新潟県中越地震(M6.8)を機に「歪集中帯で発生する地震や、地質活動などについての研究機運が高まった」としています。
マスコミや市民にこの知見が広がったのは2007年新潟県中越沖地震(M6.8)の時。なおここでは過去にさかのぼり、1502年1月の越後地震以降の複数の地震が「ひずみ集中帯」で起きた可能性を指摘しています。

歪集中帯
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%AA%E9%9B%86%E4%B8%AD%E5%B8%AF

原発との関係で重要なのは現存する日本の原発のすべてが、「ひずみ集中帯」が発見され、その仕組みの一端が理解される前に建てられてしまったことです。
以下の資料の4ページ目の原発一覧を見てみてください。そこに設置許可申請、設置許可、着工、運転開始などの年が書きこまれています。

日本の原子力発電の概要
日本原子力産業協会 2014年5月27日
http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press-kit_nuclear-power_japan.pdf

これを見ると一番新しい原発は泊3号でそれでも設置許可申請が2000年、着工が2003年であることが分かります。
あとはすべてそれ以前の着工。高浜3,4号着工は1980年、大飯原発3,4号機着工は1987年です。玄海3、4号も1985年の着工。
このようにこの地震の連続の中で動いている原子炉は、すべてGPSによる正確な計測が始まるはるか前に作られたのです。

端的に言って、だから福井の原発銀座をひずみ集中帯などに作ってしまったわけです。そこが危険な地震地帯だという知見がなかったからです。
このことに顕著なように日本の原発には、地震学の最新の知見が取り入れられておらず、科学的に明らかにされた危険性が反映されていないのです。だからもうすべて止めるべきなのです。

同じことが「加速度ガル」についても言えます。
前回の記事で、熊本地震や中越沖地震で、原発の基準地震動を大幅に上回る揺れが記録されたことを指摘しました。
実はこうした揺れの把握そのものも1990年代における地震計の発達の中で新たに観測可能になったものなのです。

この点は熊本地震直後にIWJのインタビューに登場した地震学者の島村英紀さんが詳しく述べています。
下記から15分のダイジェストが観ることができます。
本編はサポート会員は視聴可能、一般会員でも50円、非会員でも500円払えば視聴できます。
重要で分かりやすいので、大阪北部地震に直面しているいま、ぜひご覧になってください。

岩上安身による島村英紀教授インタビュー 2016.4.25
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/299324

この27分30秒あたりから31分あたりで島村英紀さんが、原発の基準地震動の数値「加速度ガル」について説明されています。ちなみに川内原発の基準地震動は620ガルですが、このインタビューのとき、益城町で記録された最大値は1580ガルとされていました。

島村さんによると「加速度ガル」とは、「そのものの重さに加速度をかけるとそのもののにかかる力を表すもの」だそうです。
ちなみに地球の重力も加速度で表され、数値としては980ガル。それで体重60キロの人に地震によって980ガルがかかると、この人には下から60キロ分の力がかかり一度宙に浮くことになります。重力が打ち消されるからです。

この980ガルを「重力加速度」と呼ぶのですが、これまで地震学では地震でそれほどの力がかかることなどありえないというのが常識だったのだそうです。
しかし阪神・淡路大震災以降に日本中に加速度計を置いて測ってみると、980ガルを越える加速度があちこちで記録されました。
2004年の新潟県中越地震では原発構内で2516ガルが東電によって記録され、さらに2008年の岩手宮城内陸地震(M7.2)では4022ガルという数値までが記録されました。

これに対して原発設計時の考慮は、大きく見積もってもせいぜい600ガルでした。それを越える振動などあるはずがないとされていたからです。
ところが実際には4022ガルという数値までが記録されてしまったので、原発が今となっては間違った地震学の知見で作られてしまったことがはっきりしたのです。すべてがアウトです。

人を相手にした法律では新しく作られた法で過去を裁いてはなりません。しかし科学の場合は違う。
原発が地震の揺れを大幅に過小評価して建てられてしまったことが明らかになったのですから、過去の揺れの評価で建てられた原発はもう終わりにすべきなのです。

高浜・大飯原発だけでなく「地震大国の上に立つすべての原発を止めよ!」との声をさらに強めましょう。

続く

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