明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(412)アメリカは300キロ以上の自主避難を検討していた

2012年02月23日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)~(500)
守田です。(20120223 23:30)

昨日、アメリカが福島原発事故の直後に、80キロ圏内の避難を自国民に通達し、
日本政府にも勧告を行なっていたことをお伝えしましたが、さらに東京新聞で、
アメリカが、300キロ以上離れた自国民に対しても、自主避難を促す検討を行
なっていたことが明らかにされました。

記事はやりとりの様子を次のように報告しています。
「議事録には、別の出席者が否定的な考えを示したにもかかわらず、なおも「正
しいのは、被ばくを合理的に達成可能な限り低く抑えることだ」と食い下がる様
子が克明に記録されている。」

実際には、300キロ以上のアメリカ国民への、自主避難勧告はなされなかった
のですが、このような論議が行われていたことが、今の時点で公開された点も重
要です。なぜなら日本政府の側が当時、何をどう考えたのかについては、「議事
録が残されていない」ことを理由に、明らかにされていないからです。

議事録を残さなかったこと自身が非常に罪深いことですが、あのような事態を前
に議事録を残さないなど考えられることではなく、議事録がないことを理由に、
またも事実を隠蔽してるのではないかという指摘もなされています。そして肝心
なことはそれでは事故への対処が正しかったのか否かが検証されず、経験が生か
されないこと、だから同じ過ちが必然的に引き起こされうるということです。
それが今、私たちの前にある危機の実相です。

今回の福島原発事故が明らかにしたのは、原発をめぐる「安全神話」の恐ろしさ
でした。原発は絶対に深刻な事故を起こさないという「想定」のもと、もし事故
が起こった時の対応が何もなされていませんでした。そのために避けられるべき
たくさんの人々の被爆が避けられませんでした。

ところがそのことが何ら反省されていません。それどころか、安全神話は、むし
ろ現に漏れ出した放射能への対応へと拡大し、今なお、避けられる被曝がえんえ
んと続いているのが実情です。福島原発そのものも、プラントとしては完全に破
産し、応急措置の積み重ねで、ぎりぎりで保たれていて、地震や津波で、いっぺ
んに危機が深刻化しうる状態にあるのに、その危機をみすえた避難訓練ひとつ、
行われていません。意図的にそのことが避けられているのです。

これは津波への対応が改められてようとしていることと、極端な対照をなす問題
です。今回の津波のときに、テレビなどで「予想される津波の高さは何メートル
です」という報道がなされましたが、実際にはそれよりも大きな津波がきてしまっ
た。にもかかわらず、この数値を信じて逃げ遅れた人々がいると思われるため、
今後はこうした数値を使わず、「大きな津波」などの表現に変えるというのです。

こうした捉え返しはとても重要であり、当然にも進められなければならないこと
です。災害が想定を超えてしまったのなら、想定を変えなければいけない。とこ
ろがこのことが、こと原発事故に関してはまったく何もなされていないのです。
ほとんどごまかしの「シビアアクシデント対策」が語られただけです。さらに繰
り返し強調しますが、まったくの想定外である、現在の福島第一原発の状況に即
した、災害対策・避難対策が何もなされていないのです。

こうした事態を打開するためには、市民がアクションを起こしていくしかあり
ません。アメリカの勧告を日本政府が無視したという事実、また原発の状況は
あのころ政府やマスコミが伝えていたよりも、格段に深刻だったという事実から
私たちが学び、自分たちに突きつけるべきことは、今もまったく状況はまったく
変わらないという事実です。事態は政府やマスコミが今、語っているよりも格段
に深刻なのだということです。

この点を踏まえ、私たちが何をなすべきかに結びつく情報解析と発信を続けたい
と思います。

**********************

深刻さ認識 米緊迫 福島事故で規制委
東京新聞 2012年2月23日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012022302000019.html

【ワシントン=共同】東京電力福島第一原発事故で、米原子力規制委員会(NR
C)が公表した電話会議などの議事録で、原発から三百キロ以上離れた場所にい
る米国民についても、自主避難を呼び掛けるかどうか議論していたことが二十二
日、明らかになった。

実際には、米国による避難勧告は半径八十キロ以内だったが、自国民の安全確保
を最優先に、さまざまな検討を行った様子が浮き彫りになっている。

昨年三月十三日の議事録によると、第一原発から百八十五キロ離れた海域で、米
側が通常の約三十倍の放射線量を検出した。

当時、日本は半径二十キロを避難指示、二十~三十キロを屋内退避としていたが、
同十六日の電話会議の出席者は「もはや日本の避難勧告には同意せず、原発から
五十マイル(八十キロ)以内の米国民に避難を勧告する」と伝えた。

この日の別の電話会議では、ある出席者が「第一原発から二百四十~三百二十キロ
で場合によっては一~二レム(一〇~二〇ミリシーベルト)の被ばくになる」との
予測を示し「この水準の被ばくを避けるため、自主的な避難を勧告するのが理にか
なうことではないか」と主張した。

議事録には、別の出席者が否定的な考えを示したにもかかわらず、なおも「正しい
のは、被ばくを合理的に達成可能な限り低く抑えることだ」と食い下がる様子が克
明に記録されている。

同十七日の議事録には、米国民を避難させる飛行機の手配に関するやりとりも。あ
る出席者は、フライトの半分は大使館員用、もう半分は一般の米国民用と説明。さ
らに「避難は自己判断だが、できるだけチャーター機を準備しようとしている」と
述べた。

藤村修官房長官は二十二日の記者会見で、米原子力規制委員会が、東京電力福島第
一原発事故発生直後から炉心溶融の可能性を指摘していた内部文書を公表したこと
に関し「当時の対応は政府や国会が検証中で、コメントすることはない」と言及を
避けた。

原発事故当事国として、震災関連会議の議事録が作成されていなかったことに関し
ては「記者会見などで情報発信はしたが、文書で随時記録されていなかったことは
事実。誠に遺憾だ」と述べた。

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