明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1282)伊方原発3号機ポンプ故障事故は大問題!再稼働を断念すべきだ!上

2016年07月24日 07時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160724 07:00)

先週末、講演で再び各地を駆け巡りました。
16日に奈良県橿原市で講演、17日に岡山県岡山市で放射性廃棄物問題の学習会に参加、18日に京都府宮津市で講演しました。
どの地域でも多くの方が熊本・九州地震の最中に川内原発が停められなかったこと、さらに中央構造線の上にのっかっている伊方原発が再稼働されていることに怒りを語られていました。

さらに参院選が終わるや否や、安倍政権は沖縄の高江に本土からたくさんの機動隊を送り込み、ヘリパット建設を極めて強行に推し進めようとしています。
沖縄で現職大臣が落選し基地反対候補が勝ったことに顕著なように、県民の基地を許さないという意志が明確に投票で示された直後にです。まるでこれでは選挙での民衆の勝利への暴力的報復に他なりません。
安倍政権の沖縄への蛮行を心の底から糾弾し、沖縄の方たちとともに平和の道を歩むこと、そのために危険な原発の稼働に反対し続けることをここで表明しておきたいと思います。

さてその原発問題ですが、7月26日に再稼働が予定されていた伊方原発3号機で17日に早くも故障が起こり、再稼働が8月にずれ込むことが四国電力により表明されました。トラブルは次のように説明されています。

 「定期検査中の伊方発電所3号機においては、1次冷却材ポンプの調整運転を実施していたところ、1次冷却材ポンプ3Bの第3シールリークオフ流量が増加するという事象が認められました。
 このため第3シールのシート状態を改善するための調整作業を行いましたが、運転状態を改善することができなかったため、本日9時20分、当該シールを予備品と取り替えることとしました。」

 伊方発電所3号機 1次冷却材ポンプの第3シール部のリークオフ流量増加について
 http://www.yonden.co.jp/press/re1607/data/pr003.pdf

これを朝日新聞は次のように報じています。
「四電によると、17日午前7時半ごろ、放射性物質を含む1次冷却水を循環させるポンプの調整運転中、ポンプの軸付近からの水漏れを防ぐ部品に不具合が見つかり、密封機能が低下している恐れがあることが判明。
四電はポンプを分解して原因を調べ、部品を交換する。」

各社それぞれで少しずつニュアンスが違ったりもしますが、ほぼ四国電力のプレスリリースにさらに質問をした内容にとどまっていて、それ以上、詳しい説明を試みていている新聞社はありません。
これが原発の中のどういう部分であり、故障の意味するものが何かという掘り下げがなされていない。それでここで分析を行いたいと思います。長いので上下に分けます。

今回の故障事故が起こったのは、加圧水型原発の核心部である一次冷却水系統です。ここには150気圧に加圧された水がまわっている。なぜ加圧しているのかというと、水の沸点をあげてよりたくさんの熱を水が媒介できるようにするためです。
なぜかというと、原子炉内で一次冷却水を沸騰させて、蒸気を発生させてタービンを回し、発電につなげている「沸騰水型原発」と違って、加圧水型原発では「蒸気発生器」という特有の装置を使っています。
ここまで300℃まで熱せられた水がまわっていき、たくさんの細管が二次冷却系統の水と配管を通して接して温度を移し、この二次系統で水が沸騰して蒸気が発生してタービンを回しているのです。

もともと原子炉内で沸騰させずにこのような方式をとったのは、この原子炉が潜水艦などのエンジンとして開発されたのだからだそうです。
なぜかと言えば、水中を自在に動き回る必要がある潜水艦では、原子炉内に水面があり、空間があると原子炉が傾いたときにさまざまな問題が発生する可能性があるからです。
このため原子炉内は完全に一次冷却系の中に水没しており、その熱を蒸気発生器を通じて二次系に移し、まさにそこで蒸気を作りだしてタービンを回す方式をとったのです。

しかしこの加圧水型原発は、この蒸気発生器に致命的な欠陥を抱えていることをこれまで繰り返し述べてきました。
そもそも蒸気発生器の中を無数に走っている細管には2つの課題がある。一つは熱を配管を通して伝えることで、そのためには当然にも肉厚が薄い方がいい。もう一つは150気圧の水圧に耐えることでそのためには肉厚が厚い方がいい。
この矛盾的なあり方を越える細管の開発がうまくいかず、熱を伝えるようにすると配管にピンホールがあいてしまうことが繰り返されてきたのでした。美浜原発ではピンホールが拡大し、配管が完全に破断して冷却水が急速に漏れ出す深刻な事故も起こりました。

さて今回、問題になったのはこの一次冷却材がまわっている途中に設置されている「一次冷却水ポンプ」でした。このポンプは蒸気発生器で熱を伝え、温度が低くなって戻ってきた冷却水が流れるところに設置されています。
どのような構造になっているのかというと、配管に吸い込み口と吹き出し口で接していて、その中をプロペラがまわり、流れを強める働きをしているのです。プロペラはそこに取り付けられたモーターによって回されます。
この際、技術的に問題になるのは、冷却材がまわっているところにプロペラを配置してモーターで回すと、モーターの軸の部分に回転に必要な隙間があるわけで、その隙間から150気圧の冷却材が漏れ出してしまいかねないことです。

このためこの軸受け部分には3つのシール部品が付けられているのです。冷却材に近いところから第1、第2、第3シールで、第3シールのすぐそばにプロペラを回しているモーターがあることになります。
このうち主に第1と第2のシールが冷却材漏れを防ぐためのものとされていますが、回転軸のための隙間をどうシールするのかというと、ここにも水(純水)をまわして隙間の封入を行っているのです。
つまりここにこの隙間を埋めるための水がこれまた別のポンプを介して循環しており、それで冷却材が入ってこないようにしているわけです。

理解を容易にするためにここでこのポンプを図示している加圧水型原子炉メーカーの三菱重工のページをご紹介します。
 1次冷却材ポンプ 三菱重工HPより
 https://www.mhi.co.jp/products/detail/reactor_coolant_pump.html

では第3シールの役目は何かと言うと、この軸受けの隙間にまわっている純水が漏れないように封じているのです。とくに第2シールの下流に流れている純水が、同時にシール部分を洗浄する役目を負っているのですが、それをシールするものとされています。
今回の事故が発生したのはこの第3シールであったとされていますが、報道を追いかけていくと、なんとこの部品は再稼働を前に新品に交換されているので、経年劣化以外の何らかの不具合が生じたことになります。
四国電力は部品を交換すると表明していますが、そもそもまだ今回の故障事故の原因も不明で、21日からやっとポンプの分解が始められたばかりです。

ここまでが故障事故の説明ですが、問題はこのポンプが1次冷却系統にとって極めて重大な位置を担っていることです。
冷却材は炉心の熱を運ぶものですから、この循環に何らかの問題が生じた場合、炉心の熱を取り去ることができず、最悪の場合、メルトダウンに向かいはじめてしまいかねないからです。
またなんといっても冷却材は150気圧の高圧でまわっていますから、シールがきちんとなされなければ、そこから漏れ出しが起こり、一気に冷却材の喪失が起こることにもなりかねません。それほどこの装置には重大な位置があるのです。

続く
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守田敏也 MORITA Toshiya
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[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4

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