明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1275)原発の寿命延長と老朽化の考え方(後藤政志さん談)

2016年06月22日 08時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160622 08:30)

後藤政志さんと6月24日舞鶴、25日向日市、26日彦根と講演と対談でご一緒させていただくことに向けて、後藤さんの最新のネットでの発信を前回より文字起こししています。
今回は後半の部分、「原発の寿命延長と老朽化の考え方」についてです。
ちょうど6月20日に、原子力規制委員会が高浜原発1号機2号機の40年を超えた使用延長への認可を与えてしまったことも踏まえつつ、ぜひ以下の後藤さんの指摘をお読み下さい。
(今回も文字起こし文の責任は守田にあります)

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科学の原則を無視した原子力規制
2016年5月25日公開 後藤政志
https://www.youtube.com/watch?v=gFNmpcA3qlA&feature=youtu.be

②原発の寿命延長と老朽化の考え方

もう一つ、最近の重要な話をします。原発の寿命延長の話が出ています。40年延長の議論が盛んにされています。その時に老朽化の問題、40年を超えてどうこうという問題には当然、幾つかの技術的課題があります。
代表的なものが原子炉の内部構造物の照射脆化、中性子があたって金属が脆くなる。とくに圧力容器、原子炉容器が万一のときは脆化して割れてしまう可能性があるということを口にされる。だからものすごく慎重になるのですね。
それで知見をつけてデータをとりながらやる。ですがここにいろいろな不確定性がある。どうも、予測式の間違いさえ指摘されています。

それから容器や配管の腐食・疲労・減肉・SCC(応力腐食割れ)、こういうものの壊れ方がいっぱいあって欠陥が時間と共に増えるわけですね。そうすると初期のころは問題はないのですけれども、10年、20年、30年となるとだんだんそれが溜まってくるわけです。

そうすると思わぬところに欠陥を内包しているというのが常識なのですね。同時に鉄筋コンクリートも劣化して亀裂が入る。亀裂と言うのは乾燥収縮といってコンクリートが乾く段階で小さな亀裂が入ります。さらに地震が加わると大きな亀裂が入っていく。
しかし亀裂が少々入っても、実は鉄筋コンクリートは簡単には壊れない。力をけっこう受けられる。ただし亀裂が生じるとそこから水が入って鉄筋が腐食するのです。ですから老朽化したときに怖いのは鉄筋の腐食なのです。コンクリート自身の劣化もあります。
いずれにせよ、鉄筋コンクリートといえども長い間経つと劣化があって、とくに亀裂が入ると、構造物の剛性といって硬さが変わるわけですね。すると揺れ方が変わるというのが大きな問題です。

それともう一つはケーブルの劣化です。ケーブルが劣化しますとケーブル間がショートします。絶縁によってケーブルとケーブルの間に電気が流れないようになっていますが、絶縁抵抗が減ってショートしてしまうと当然、いろいろな問題が起こる。
かなり深刻な問題なことが起こるのです。そういうことがきちんとできなくなるのが老朽化問題です。

これに関して私の申し上げたいことは、これについては「維持基準」といって、検査のやり方、どうやって検査をして判断するかの基準があります。
それはいいのですが、検査をして欠陥がなければOKということになるわけです。これは他にしょうがないからと言えばそうなのですけれども、ここが問題なのです。
実は実際には原子炉圧力容器も、全部検査できるか、溶接線を全部できるかというと検査ができないところがある。なぜかというと複雑になっていてものを外したくても溶接線を出して検査できない場所がある。
そういうところはできる範囲でやれば良いとなっている。本当にそれでいいのだろうかということです。

さらに非破壊検査などでいろいろなデータがでたときに、これは傷があるのかないのか、大きさはどうだとか、欠陥に対して、本当に大丈夫か大丈夫でないのか、いわゆるグレーゾーンの問題が起こります。
グレーゾーンのときにどうするかということが、きちんと安全側の評価基準になっていないと、極めて危ないわけですね。そういうことが言えます。

ですからここからが一番私の言いたいことの一つになるのですけれども、欠陥というものがあるのは危険なのは明らかですね。しかし欠陥が見つからないといういことは本当に安全なのかということです。
まあ、一般的には調べて「欠陥が見つからなければいいよね」となるのは分かりますけれども、老朽化した原発というのは40年経っていてそこら中に欠陥があることが推測されるのです。

老朽化しているということは、それだけ欠陥が多く多発している、容器や配管で言えば腐食とか疲労とか減肉、応力腐食割れ、こういうことが発生している蓋然性が高いのですよ。そのときに発見できなかったらいいというのはおかしい。
その時は全部確かめたらいいというべきであって、確かめられないのだったらホールドをかける。つまり「確かめることができないので、安全に運転できるとは言えない。だからちょっと待て」というのが原則です。
そうすると安全が確認できない、少なくとも主要な部位が検査がてきない場合、これは諦めて廃炉にすると言うのが当たり前だと思うのですね。
それが貫かれないようなら原子力規制はあってなきがごとしで、老朽化原発についての非常に問題なところだと思います。

これは考え方によるわけですけれども、福島でもまさかと思った電源喪失をしています。こういう形である面では技術的には常識的なこと、それがあったらダメなことを分かっていることを甘くみた結果が福島なのですね。
同じことなのです。老朽化して「いや調べたよ。調べた範囲はなかったよ」と。だけど「分からない場は当然あるよ」と。そこはたまたま見落としてしまった。では見落としたのは許されるのかと言うとこれは許されない。
40年経っているのですから。見落としなんてありえない。あっちゃいけない。だから40年が原則なのです。
それを超えていいというのは特別な原則として全部を見たからいいと。そういう関係になるということを忘れてはいけない。このことは一番老朽化問題のキモなわけですね。そのことを忘れて細かい議論をしても意味がないというのが私の意見です。

もちろん個々の問題について追及していくことは必要だと思います。ですけれども大原則としてそういうものの見方が一番大切であると私なりに感じましたので今日はあえてそういう話をさせていただきました。
どうもありがとうございました。

(後藤さん談・終わり)

以下、後藤さんの講演会と守田との対談連続企画をお知らせします。

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ほんとに大丈夫?私たちのまち(舞鶴)
https://www.facebook.com/events/2046900525535211/

6月24日 19:00
舞鶴市政記念館

講師 後藤 政志さん
コーディネーター 守田 敏也さん

主催 子どもの未来を考える舞鶴ママの会

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原発をなくす向日市民の会 第5回
記念講演会・総会のお知らせ

日時 6月25日(土) 1時30分開場 2~4時
第1部  記念講演 講師 後藤政志さん
     後藤政志さんと守田敏也さんのトーク
第2部 第5回総会
場所 慶昌院 (寺戸町西野2)
*年会費を集めます。講演は無料ですが、会場でカンパを募ります

お問い合わせは TEL/FAX(事務局 筒井) 075-931-3788
メールアドレス genpatsu.zero.20120714@gmail.com

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原発学習会「原発のほんまのこと」
https://www.facebook.com/events/1613695418958424/

2016年6月26日 13:30 - 17:00
滋賀大学経済学部 第6講義室(校舎棟1階)
〒522-8522 滋賀県 彦根市馬場1-1-1

原発技術者の後藤政志さんと、ジャーナリストの守田敏也さんに原発の実態について詳しくお伺いします。

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守田敏也 MORITA Toshiya
[blog] http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011
[website] http://toshikyoto.com/
[twitter] https://twitter.com/toshikyoto
[facebook] https://www.facebook.com/toshiya.morita.90

[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4

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