明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(721)福島3号機・・・再び「湯気」が出たり消えたり

2013年08月05日 20時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20130805 20:00)

福島3号機については、その後、情報が出てこず、こちらも同時に深刻に進行している汚染水問題の分析を進めていましたが、昨日(4日)から本日(5日)にかけて、東電の報道関係宛の一斉メールによる3号機の「湯気」に関しての3回のリリースが行われましたので、その点を分析したいと思います。

まず8月4日に発信されたメールでは、「7月24日午前4時15分ごろ、再確認された湯気がその後も継続的に確認されていたものの、8月4日午前8時00分ごろ、湯気が確認されなくなった」という発表がなされました。
ところが5日になって、「8月5日午前7時30分ごろ、再度、3号機原子炉建屋5階中央部近傍(機器貯蔵プール側)より湯気を確認」との報告がなされ、さらに「8月5日午後0時05分ごろ、湯気が確認されなくなった」と説明されました。

以下は、東電による一斉メール一覧ページです。マスコミ各紙が報じる前の東電からの第一次情報が見れますので、ぜひ多くの方にウォッチして欲しいと思います。

「報道関係各位一斉メール 2013年」
http://www.tepco.co.jp/cc/press/index_ho-j.html

一斉メールの内容から分かることは、一つには「湯気」は7月24日から8月4日午前8時まで継続的に出ていたこと。7月18日から始まった何らかの異変が長く継続中だということです。
二つに8月4日午前8時にいったん止まり、翌日5日午前7時30分に再び湯気を確認したものの、同日午後0時5分に再び止まっていることが確認されたこと。これらから少なくとも状態が一気に悪化するような急激な変化が起こっているのではなさそうだということです。
三つに、かといって、湯気がこのまま完全に止まる保障はまったくなく、この何らかの異常状態がさらに継続する可能性があるということです。

さらに本日(5日)のFNNのテレビニュースでは、午前10時に行った東電の記者会見で、東電が注目すべきことを述べていたことが放映されました。
何かというと、「湯気」を東電が「気温20℃前後、湿度90%以上になると確認されやすくなるのではないかと分析」しているというのです。

福島第1原発3号機建屋で、再び湯気のようなものを確認(13/08/05)
http://www.youtube.com/watch?v=Oy96hL883Uw

となると中から気体が出てきていても、気温や湿度がこの条件にあってなければ「湯気」としては確認できないことになり、湯気が出ているか出ていないかを、格納容器内部のものが漏れているかいないかの判断に直結させることはできないことになります。
確かに考えてみればそれも十分にありうることですが、となると気体の出ている状態は、7月18日の「湯気」の発生以前からあったのかもしれません。しかしそれが常態化していたのかといえば、長らく「湯気」が観測されることはなかったのですから、やはりこのころから何らかの異変が起こっていると考えるのが蓋然性が高いと思われます。
その意味で、ここ2日間ぐらい確認されなくなったり、また確認されたりを繰り返しているけれども、これまで10日以上も湯気が出続けていたわけで、にわかに湯気が見えない状態が続いても、それだけではただちに状態が収まったと判断できない・・・とまとめられると思います。
なんとも厄介ですが、いずれにせよ3号機の不安定な状態が続いていることを踏まえた警戒が必要です。


こうしたことが恒常化してしまっている中で、私たちの側が取るべきことは、いざという場合に備えて避難の準備を整えておくことだということをこの間、繰り返し述べてきました。ぜひそれぞれの地域で、職場で、ご家庭で、対策を話し合って欲しいです。
しかし当時に、汚染水問題も含めて、この事態を東京電力という私企業に任せていることの限界がいよいよ、耐え難い状態であらわになってきたことも私たちは見ておくべきです。

この湯気の問題一つとってもみても、非常に重要なポイントは、東電自身が何が起こっているのかよく分かっていないこと・・・3号機のコントロールが明らかに手に余っていることです。プレスリリースや記者会見の端々にそれが見えています。
しかも東電は初めから誠実さをまったく欠いています。汚染水など2年間も毎日400トンも海に流しておきながら、しらをきっていたわけで、そんなことがあまりにもひどく続くため、東電の情報はまったく信用できません。
私たちが、あるいは多くの人々が3号機の状態に、言いようのない不安を感じる原因の一つは、こうした東電が繰り返してきたあまりに不誠実な態度、虚偽的な体質によるものでもあります。何せまったく信用できない。東電が「大丈夫だ」と言えば言うだけ、得体の知れない不安が募ると言ってもよいほどです。

こんな状態が続くことで、世の中の大多数の人々は疲れ切ってしまい、もはや緊張感が間延びして「危機慣れ」してしまっているのが現実ではないでしょうか。僕は「それではいけない。最大級の警戒と備えを」と繰り返し述べるものですが、しかし社会的な緊張感の維持のためにも、こんな自己保身的な嘘を繰り返す東電には、もう後ろに退いてもらわないとどうしようもない。
僕が恐れるのは、このような社会的な危機感の摩耗とも呼ぶべき事態、あるいは東電の虚偽報告の重なりのもとでの正常性バイアスの広がりこそが、日本を、いや世界を破滅から救うために日夜格闘している現場の緊張感や士気を下げ、止められるかもしれない危機が止められなくなってしまうことです。

今、問われているのは、事態への対応能力も、社会的ないし企業的倫理観も著しく欠如した東電に代わって政府が前面に立ち、国内の、いや世界の優秀な技術者を集めて、破局を防ぐための対処を行うことです。その場合、現場のやりとりを公開すれば、より広範な科学者の力を結集させられるし、市民・住民にも緊張感を伝えることができる。原子力災害への対処をみんなで高めていけます。
そのために私たちは、自らが避難の準備をし、各級の避難訓練を行いつつ、一方で政府による現場への責任の東電への丸投げ状態をやめ、政府がきちんと責任主体となることを進めさせていかなくてはいけません。
政府に現場の責任を取るように、あの手この手で声を上げていきましょう。これもまた私たち自身の手で、安全を手繰り寄せていく大事な道の一つです。

 

 


 

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