明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(796)沖縄の問いかけるもの・・・辺野古、高江を訪れて(中)

2014年02月09日 12時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140209 12:30)

今日は東京都知事選の日ですね。都民の方、ぜひ投票をお願いします。

沖縄訪問記の続きです。
辺野古訪問を終えて、車は東海岸をさらにえんえんと北に向かって走っていきました。途中、お昼御飯を食べて、1時間弱、走ったでしょうか。やがて名護市をすぎて東村に入りました。正しくは国頭郡東村です。名護市との境界からさらに高江までは10キロ以上の距離がある。

途中で東村のメインストリートを通りました。とてもきれいな役場が見えている。「補助金だよ」とチョイさん。キャンプシュワブの押し付けと引き換えに落ちている金です。原発と米軍基地、どこでも同じ構造がある。いやがる住民を金で押さえつける。そうすると地域には必ず分断がもたらされます。買収にまみれたこの国のあり方に憤りを感じるばかりです。

車は海岸地帯を離れ、やんばるの森の中を上がって行きました。ちなみにこのやんばるの森には、イタジイという木がたくさん自生しています。本州にもあるスダジイの沖縄の呼び名がイタジイだそうですが、この樹は途中で幾重にお枝分かれして空に向かっていく。そしてそれぞれが横に広がって葉を出し、やがてはブロッコリーのような形に茂っていくのだそうです。やんばるの森の主な構成種です。

そのイタジイが、今、ちょうど新緑の時期を迎えていてとても美しい。本土の感覚しか持っていない僕にとって、この時期の新緑はまったくのサプライズでした。美しくかつ本土では見られない圧倒的な数のイタジイに目を奪われました。

そうこうしているうちに「もうすぐ高江だよ」とチョイさん。速度を落とすので現場なのかと思ったら、知り合いの方の車と挨拶を交わします。
そののちに「あれは見張り」とチョイさん。「えっ?」と僕。
「工事の車が来るのを見張っている」「一日中?」「そう一日中」「すごいなあ」
そう。そういう見張りの方が他にも各地にいるのです。ただしこれはあまり具体的に書かない方がいいでしょうね。

さらに進むとゲートらしきものの前に車が数台止まり、バナーなどが貼ってある場に近づきました。やっと現場かと思ったら、そこでもその付近にいる人に挨拶してさらに車は進む。「メインのところはこの先」とチョイさん。

僕のイメージでは、高江での行動はどこか一箇所に陣取って頑張っている・・・という感じだったのですが、実際にはかなり広範囲に人々が別れ、あちこちに陣をはって頑張っている。トランシーバーで交信しながらです。

やがてヤンバルの米軍演習場のゲートにつきました。ここにも車が何台も止まっている。その横に催事用のテントが貼っており、センター的な役目を果たしています。さらにゲートの両脇に、人が数人椅子に座れるテントがあり、それぞれ数名の方が座っていました。
この日はこの場に全部で10人弱ぐらいおられたでしょうか。

話を聞いてみると、地元の方は数名で、あとは日本各地からこられてきている方たち。なかでも京都の関係者が多かったのが印象的でした。

ゲートに近づいてみました。内部にはこんな文字が見える。
「US MARINE CORPS JUNGLE WARFARE TRANING CENTER」
「米海兵隊ジャングル戦争訓練センター」というわけです。

在日米軍の駐留根拠は、安保条約のもとに日本を守ることであるはずですが、ここではそんな建前さえ無視されている。日本防衛などとは関係ないジャングル戦闘のための訓練サイトが美しいやんばるの森の中に作られているのです。

ちなみにこれは沖縄返還前、ベトナム戦争の頃からの話だそうです。ここにはベトナムの村のモデルが作られた。米軍の襲撃対象です。その村の住民の役を、かつて高江の人々は担わされたのでした。高江や沖縄の人々の不屈の抵抗を収めた映画『標的の村』のタイトルの由来はここから来ています。

「米軍はフィリピンの基地を失ったから、今ではジャングル戦闘の訓練ができるのは沖縄だけなんだ」とチョイさん。「でもジャングル訓練だけじゃないよ」とも。ここに来るまでに通り過ぎたキャンプハンセンの敷地内には中東の村が再現され、米軍の制圧作戦訓練が繰り返されたのだそうです。イラクのファルージャなど、米兵による民衆をも巻き込んだ虐殺戦闘の訓練がこの地で行われてきたのです。なんたることか。

こうした戦闘に極めてよく使われるのがヘリコプターです。今もそのためにオスプレイが投入されている。この上さらにヘリパットなどを増やそうとしている。どうしてこれに黙っていられるでしょうか。

さてゲート前の光景をしばし写真に収めると、チョイさんがさらに先に行くという。「名物の人物がいるから会わせる」というのです。山城博治さんです。
しばし車を走らせると、フェンスの前にテントが一つ、車が4台ぐらいあって、フェンスを封鎖しているところがある。工事車両の入り道をふさいでしまっています。

テントの中に入っていると誰もいない。仕方がないので近くの高台に登って、訓練場の全体を遠望しました。とにかく見渡せるだけのやんばるの森が訓練場です。真ん中を通っている道路だけが違うのです。

やがて山城さんが戻ってこられました。「食器を洗いに井戸まで降りてました」と山城さん。「いやあ、食事をするのはいいけど、洗うのが大変でね」とかいいながら、バケツ中に入った食器を、テントの中に片付けていく。フライパンなどが吊るしてあって、生活臭が漂っている。
尋ねるとなんとここでもう8年も暮らしているというのです。8年・・・?驚きました。
どこで寝ているのかというと車の中。
「車もいろいろあってね。シートを倒してもけっこう凸凹していて痛い。それで一時期、その上に板を敷いて寝ていたのだけど、「山城さん、それはちょっと・・・」と言われて、さすがに縁起が悪いかと思ってやめました。今は、シートがフラットになる車を手に入れられたのでそれで寝ています」と笑います。

「攻防が激しいときは夜中にも業者がやってきてね。そのために飛び起きなくてはならないから、靴をはいて、運転席で寝てました」
・・・運転席、な、なんという根性でしょう。

すぐに山城さんとチョイさんの話が始まりました。具体的な今後の行動の打ち合わせで僕にはよくわからない話でしたが、途中で何度も山城さんがすっとんきょうな大声を出す。とにかくこの方が豪傑だということだけは分かりました。

名護の選挙のことに触れて山城さんはこうおっしゃいました。
「沖縄にはあの沖縄戦という本当に深い体験があります。誰もがそれを繰り返してはならないと思っている。ここは揺るがない基盤なのだけど、そこからフラフラ離れたり、やっぱりここに戻ったりの攻防が繰り返されているんです。だからいわゆる保革の争いというのとはちょっと違う。沖縄にあの体験があることは決定的で、それが崩れ去ることはないのです」。

沖縄には基地を許さない絶対的な基盤があるのだと語る山城さんの顔は誇らしげでした。仙人のような?活動を重ねられる根拠もここにあるのでしょう。
全国に先駆けて、覚醒を続けてきた沖縄の人々の横顔を、山城さんに見たような気がしました。いや、山城さんは沖縄の方たちの中でも、とくに飛び抜けた存在であるのは間違いないでしょうが。

山城さんとの話が終わり、人懐っこい笑顔に送られて、メインゲート前に戻りました。するとそこに大阪からきている僕と非常に親しいある方がいました。高江にきているとは聞いていたのですが、この場で会えたのは感激でした。

彼は沖縄への移住も検討しつつ、今は大阪から通っているのだそうです。今回は3週間の予定できているのだとか。大阪や京都で見たときよりも、とても生き生きしているのが印象的でした。

その彼につい最近、わずか3人でゲートに工事車両が入ることを阻止した話を聞きました。ちょうど芥川賞作家の目取真さんがおられた時だったそうです。3人しかいないのを見定めて工事車両が近づくと、目取真さん、持っていた傘を前につき出して、車の前に立ちはだかったのだそうです。

「そりゃ、凄かったで。あんなもん普通逃げるで。おっきい車やで。俺なんかもうオタオタや。何をしていいかわからへん。そやけど、目取真さんは、パッと立ちはだかった。根性がちゃうで、ほんまに」

目取真さんに驚いた車両は、彼を避けようとしたものの、近づいてしまって傘に接触。傘がバーンと壊れたのだそうです。「手もけがしたんとちゃうかなあ」
でもそれで工事業者は仰天。すぐに逃げていったのだとか。するともう一人の方が車でおいかけていったそうです。

・・・そんな果敢な体を張った行動も含めて、高江は、完全とヘリパット建設を阻んでいます。感動しました。

なお高江の方たちの気持ちをきちんとお伝えするために、ゲート前のテントに掲げられてた「座り込みガイドライン」を最後に紹介しておきます。

1、 私たちは非暴力です。
コトバの暴力を含め、誰もキズつけたくありません。
2、 自分の意思で座り込みに参加しています。
誰かに何かを強いられることはありません。
自分の体調や気持ちを大切に。
トイレや食事などではなれる時は周りの人にひと声かけてください。
トランシーバーやケイタイなどを活用して、ムリのないように!
3、 いつでも愛とユーモアを。
Let’s have a sense of humor and love.

続く

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