守田です(20200425 13:30)
大事な時ですから、連投をお許しください。
● ニューヨーク州では7人に1人、抗体確認とされている・・・
各国の抗体検査の結果が次々と報告されだしています。ただしこの検査、精度がよくないと言われており、なおかつどれぐらいの感度と特異度があるのかも出されていません。
このため、どこまで実態を反映しているか、まだ分からない面もあります。
しかし今回も、マスコミは「断定」調で書いてしまっています。こうした報道の仕方では、人々が振り回されてしまう。あくまでもいまは、精度が悪い中での数値であることを踏まえておく必要があります。
しかも、すでに何十と言う製品が出ているようですが、相当にひどい感度・特異度のものも見つけられているという報道もありました。
人々の不安を材料に儲けようとしている、火事場泥棒みたいな人々も、うごめいているのかも知れません。気を付けなくてはです。
ただそれでも人口の多いニューヨーク州内40カ所で、3000人を対象にした検査で、13.9%に抗体ありと出ているのですから、感染者数がこれまで思っていたよりもかなり多いと捉えることは、できるのではないでしょうか。
13.9%を州の人口にあてはめてみると、なんと感染していた方は270万人と推定されます。
ニューヨークは積極的にPCR検査を拡大しましたが、陽性者は約26万3千人。あくまで抗体検査の数値が正しければですが、見つけて隔離できたのはやっと10%に過ぎなかった。255万人が見つけられていなかったことになります。
数値が上下にかなり動くとしても、やはり感染者が、PCR陽性者をかなり大きく上回っているとは言えそうです。
NY州住民の7人に1人、抗体確認 コロナ検査
日経新聞 20200424
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58434040U0A420C2000000/
抗体検査について報じる日経新聞
● 感染者が何十倍もいるとすると
今後、世界各地からさらにデータがあがってくるでしょう。その中で、検査の精度や限界ももっと明らかになるのではと思えます。
ただそれでも、仮に、明日に向けて(1801)で紹介した、カリフォルニア州での28~55倍、50~80倍という幅のある値が、現実と大きくかけ離れていないとすれば、これまで推計されてきた「致死率」は、相当に下がることになります。
ただしこのことは「致死率」=「感染症の怖さ」とは言えないことも示しています。例えばSARS(重症急性呼吸器症候群)は、致死率が11%もありましたが、感染者が8,422人で亡くなった方は916人でした。新型コロナ死者数は現段階でも桁違いです。
つまり社会的には、すでにSARSよりも致死率のずっと低い新型コロナの方が、圧倒的な脅威を与えています。しかし自分が罹患した場合の、重症化や死亡リスクは、いま語られているよりずっと小さい可能性が浮上しています。
もちろん、それでもたくさんの方がかかれば、その分、死者は増えるのですから、感染を拡大させないための努力を、頑張って継続する必要があります。
とくに、医療や介護などに関わっておられる方は、自分が感染するリスクと、誰かを感染させてしまうリスクの中で、精神的緊張感をいっぱい背負ってくださっているのですから、その奮闘に感謝し、苦労をみんなでシェアして支え抜きたいです。
同時に率直に言って、各国政府がとってきた「どんどん検査を拡大して、感染者を見つけ、隔離して感染拡大を食い止める」戦略には、あまりに無理があることを、もはや認識すべきではないでしょうか。
カリフォルニア州では、検査を積極的に増やしてきたと思うのですが、今回の検査からは、感染者の28分の1から80分の1しか見つけられていないことになります。見つけられた割合は3.6%から1.2%になるのです。
とにかくもっと抗体検査の精度を確かめる必要はありますが、それでもいま見えているのは、PCR検査で感染者のすべて、ないしかなりの部分を見つけ、隔離するのは、あまりに無理な戦略だということです。
● 「検査の拡大」こそが、病院をクラスター化した可能性が高い
むしろPCR検査をすればするだけ、隔離しなければならない人が増えていきました。
韓国などをのぞき、各国とも軽症者や無症状者用の、代替施設を設ける前に、検査を拡大してしまったので、見つけた陽性者を病院に集めてしまうことになりました。
つまり3密を、自ら病院の場で作りだしてしまったのではないか。町をバラバラに歩いていた人々を、病院に集めてしまいました。だから病院がクラスター化してしまい、医療者にも感染し、胸が痛くなるような医療崩壊を招いたと思えます。
私たちがいま捉えるべき大事なポイントは、カリフォルニア州で見つけられていなかったとされる、残りの96.4%から98.8%とカウントされた人々のほとんどが、知らない間にかかり、なおかつ知らない間に治っていた可能性があることです。
だからこの方たちに貴重な医療資源を振り向けることなく、かつまた病院のクラスター化を避け、重症者治療に力を注ぎ続ける戦略が、やはり正しい選択だと思います。
ただし、重症化する方のケアにおいても、PCR検査が追いつかなくなりだした日本の現状は、もちろん越える必要がある。その点で、感染症対策の戦略としてではなく、重症者対策として、検査能力をアップする必要があります。
これに対し、PCR検査を戦略の軸にしてどんどん拡大する方針のもとで、かえって病院のクラスター化が起こりました。
それは「町の中にどれだけの感染者がいるか分からない」という不安が掻き立てられ、なおかつ渋谷健司氏のように、恐ろしさをあおり続ける人々がいたからこそ、よけいに広がってしまいました。
そして、そうするべきではなかったのに、感染者を病院に一気に集めてしまったのです。だからこそ、致死率はけして高くはないのに、どんどん医療崩壊がおき、死者が拡大してしまいました。とても悲しいです。
ニューヨークで検査のために病院におしかけた人々 クローズアップ現代より
しかしまだ、転換は可能だと思います。これ以上、やたらと死者を拡大させないために、各国政府に気づいて欲しい。いや十分に調べ切れていないのですが、すでにけっこう各国とも気づきだしているようにも見えます。
その点で、「検査抑制の限界を認めよ」と、日本の医療界に、ロンドンから圧力をかけ続けてきた渋谷健司氏にも、ぜひとも捉え返して欲しいです。
「検査の拡大による感染症拡大の阻止」という戦略のあやまりを認め、「これ以上、PCR検査をやたらと拡大して病院をクラスター化すべきではない」とのメッセージを、責任を持って発して欲しいです。
続く
抗体検査で、実は町の中に、想像以上に感染した方がおられることが見えつつあります。しかし実は、こうした状態に、もっとも見事に対応してきたのがクラスター潰し戦略でした。次回はこの核心的な点を書きます。
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