明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(130) 胎児は、小さいほど、直ぐに発症する(語り部の方より)

2011年05月29日 21時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110529 21:00)

僕のブログに、田川正則さんとおっしゃる方が、コメントを寄せて
下さいました。

広島原爆によって胎内被ばくをされた方で、
「覚えがある限り「シンドイ」病弱な人生」
を送られてきたそうです。

「勉強をする気力が湧かない
運動すると直ぐに疲れる
仕事は事務職を選んだが
泊まり勤務は「悲壮感」があるほど辛いものだった」
とも。


こうした傷害は、放射線による低線量被ばくによって
もたらされたと考えられています。
症例も多く伝えられていますが、国はこれまで、
こうした症状を原爆によるものと認定してきませんでした。

そのためこうした症状に悩まされてきた方々は、まるで「怠け者」の
ように扱われてきました。この症状のことも、「原爆ぶらぶら病」と
呼ばれてきました。


田川さんもそうした苦しみの中で生きてこられたために、
今回の福島原発の事故で、自分と同じ苦しみを味わう子どもが
増えるのではないか、「原爆ぶらぶら病」ならぬ、「原発ぶらぶら病」が
発生するのではと胸を痛めておられます。

福島をはじめ、原発近隣におられて、小さいお子さんをお持ちの方、
妊娠されている方が読むことを考えると胸が痛みますが、
やはりこれはお伝えしなければいけないことだと僕には思えます。
どうか、「語り部」であるる田川さんの文章をお読みください。


田川さんは、他のHPやブログにも同じ文章を投稿されていますが、
直接、いただいたメールによれば、「原発ぶらぶら病」については、
初めて発話をされたそうです。

福島で必死にお子さんを守ろうとするお母さんたちの姿と田川さんの
お母さんの姿が重なったためとおっしゃっていました。
子どもが大人になってから癌になることだけが怖いのではない。子どもの
時から、こうした症状に悩まされ、しかもそれを病気とみなされないで
苦しむことが内部被ばくなのだと、訴えておられました・・・。


なお、この田川さんの文章に対する解説を兼ねて、広島で、原爆投下直後
からたくさんの被ばく者を診察してこられてきた肥田舜太郎医師と、
六ヶ所村や祝島などの撮影を続けている映画監督の鎌仲ひとみさんの
共著から、内部被ばくや「原爆ぶらぶら病」について書かれている
ところを引用させていただきます。(引用箇所は肥田医師の文章です)

以下、田川さんの文章を貼り付けます。

*******************


胎児は 小さいほど 直ぐに発症する


田川正則



僕は胎内被爆を廣島で受けた

被爆しなかった兄弟と比べ

病弱だった

働きものの両親には何ら異常はなかった

・・・

どれほどの放射線に暴露されたかわからないが

胎児の僕には一生ダメージだった

勉強をする気力が湧かない

運動すると直ぐに疲れる

仕事は事務職を選んだが

泊まり勤務は「悲壮感」があるほど辛いものだった

・・・

覚えがある限り「シンドイ」病弱な人生だった

病院通いしたが

常に異常ナシの診断

しんどい為にジットしていると

怠け者に思うのか

それでは生きていけないと思うのか

父親からは

よく激を飛ばされたものだ

母はかばってくれた

・・・

廣島ではこのわけの分からない症状を

「ビカドン」

と同じように

「原爆ぶらぶら病」

と呼ばれていた


・・・


同時に

「被爆者」

以上に

この「怠け者」

の方を差別をしていた


・・・


医学的なことは分からないが

大人(両親のこと)は晩年まで元気だったが(癌を発症)

胎児で被爆した僕は

この歳・・・65歳になっても「シンドイ」が付きまとっている


・・・


おそらく

原発災害の福島の子供たちのかなりは

・・・廣島・長崎だけでなく

・・・チェルノブイリ原発の子供たちのように


・・・


病気と認定されない病気

健康診断で・・・僕がされたと同じように

医師から

<異常なし!!

<健康!! 

<正常!!

の烙印を押されたまま

・・・

「原爆ぶらぶら病⇒原発ぶらぶら病」で

・・・

勉学するのだろう

子供は意欲を失い

運動する・・・外で遊ぶ気力もなく

怠け者の差別を受け

苦しみながら

大人となるのだろうと僕は思う


・・・


当然

経済的にも苦しくなり

最後は癌などを発症すると思う


・・・


運よく結婚し子供が出来たとしても

何らかの遺伝があるという医学論文がある



・・・これは<語り部>としての僕の証言です



*****************

以下、肥田医師による解説です。


「内部被爆の脅威」肥田舜太郎/鎌仲ひとみ著
ちくま新書 2005年6月10日発行
 

<身体の内部からの被ばく-内部被曝>

 「爆発と同時に放射された放射線分子は塵や埃に付着して広範な地域に
飛散し、地上に降下する。一部は発生した水滴に混じり、いわゆる「黒い
雨」となって降下し、雨滴に触れた者に放射能障害を与える。また、空中、
水中に浮遊し、食物の表面に付着した放射性物質は呼吸、飲水、食事を
通じて体内に摂取されて肺と胃から血液に運ばれ、全身のどこかの組織に
沈着し、アルファ線、ベータ線などを長時間、放射し続ける。そのため、
体細胞が傷つけられて慢性の疾病をゆっくり進行させ、また、生殖細胞が
傷つけられて子孫に遺伝障害を残した。
 
 このような被ばくを内部被曝といい、これまで、アメリカの被ばく米兵と復員
軍人局の補償をめぐる論争のなかで、また広島・長崎の原爆被ばく者と
厚生省の認定をめぐる論争(被ばく者の疾病が放射線起因であるか否か)
のなかで、その人体に対する有害性をめぐって争われてきた課題である。

 加害者側は、被害を与えるのは体外からの高線量放射線だけで、体内に
入った放射性物質からの放射線は低線量(微量)であり、被害は一切無視
できると主張する。被害者側は、内部被曝は体外被爆と全く異なるメカニズム
で細胞を破壊し、微量でも重大な被害が起こされると訴えている。それを
裏付ける研究が数多く報告されており、また、世界的規模でも核実験および
諸々の核施設の内外に発生している膨大な被ばく者の数がこれを証明して
いると主張している。

 内部被曝の問題は、放射線被害をめぐる加害者と被害者の国際的な
規模での論争の焦点である。現在も「科学的根拠がない」として、被害者への
補償が全くされていない現実がある。この論争に終止符をうつためには内部
被曝のメカニズムそのものの解明が必要とされるが、内部被曝に関する研究
の成果がなかなか認められない複雑な事情、そして技術的な困難が横た
わっている。

 核兵器廃絶運動が「核兵器は戦争を抑止する」という抑止論を克服できない
のは、低線量放射線による内部被曝への無知と無理解と無関心が根源では
ないかと筆者は考えている。」
(同書74~77頁)


<どんな影響を及ぼすのか>

『広島・長崎の原爆被害とその後遺―――国運事務総長への報告』
(筆者らが、民医連を通じて国連に提出した報告書の抜粋)

Ⅱ-2 被害の医学的実態
(2)後障害
(g)原爆ぶらぶら病(当時はまだ症候群とは呼んでいなかった)
 原爆症の後障害のうちで、とくに重要と思われるものに「原爆ぶらぶら病」が
ある。被爆後三十年をこえた今日まで、長期にわたって被爆者を苦しめてきた
「原爆ぶらぶら病」の実態は、次のようなものである。

 被爆前は全く健康で病気ひとつしたことがなかったのに、被爆後はいろいろな
病気が重なり、今でもいくつかの内臓系慢性疾患を合併した状態で、
わずかなストレスによっても症状の増悪を現わす人びとがある(中・高年齢層に
多い)。〔中略〕

 簡単な一般検診では異常が発見されないが、体力・抵抗力が弱くて「疲れ
やすい」「身体がだるい」「根気がない」などの訴えがつづき、人なみに働けない
ためにまともな職業につけず、家事も十分にやってゆけない人びとがある
(若年者・中年者 が多い)。

 平素、意識してストレスを避けている間は症状が固定しているが、何らかの
原因で一度症状が増悪に転ずると、回復しない人びとがある。


 病気にかかりやすく、かかると重症化する率が高い人びとがある。

 以上に示すように「原爆ぶらぶら病」はその本態が明らかでなく、「被爆者の
訴える自覚症状」は、がん固で、ルーチンの検査で異常を発見できない
ばあいが多い。〔後略〕
(同書110~111頁)

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