明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて( 29 )水素爆発阻止のための窒素注入がもたらすもの

2011年04月08日 08時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110408 08:30)

幾つか記事を連続投稿します。

昨夜再び、大きな地震がありました。特に大きな被害は伝えられて
いませんが、広範囲に停電があったようです。多くの被災地が
不安な夜を過ごされたのではないでしょうか・・・。

福島第一原発1号機では特にダメージがなく、窒素の注入が続けられて
いると報道されています。「特にダメージがない」・・・もともとかなりの
ダメージを受け、しかもその実態がつかめていない状態でそう言っても
何かむなしい気もします。今のプラントの状態ではかなり厳しい揺れ
だったのではないでしょうか。

東電からリリースされた情報や、その後の報道によれば、この窒素
封入は、原子炉圧力容器内から、その周りの原子炉格納容器何に
水素が漏れ出し、格納容器の水素濃度が上がりだしたことへの
対応として行われています。

この措置は、米原子力規制委員会(NRC)の強い提案にのっとったもの。
NRCは冷却のために投入した海水が、真水よりも放射線による分解で
水素と酸素を発生させやすいため、水素爆発の危険性が高まることを
3月末より主張していたそうです。

東電は、格納容器内は水蒸気がつまっているため、水素爆発の危険性は
少ないと述べています。(危険性は小さくはあるということです)。しかし原子炉
の冷却がすすめば、水蒸気が水に変わり、圧力が下がって、水素と酸素の
濃度が上がる可能性がある。それぞれ4%と5%になると爆発します。

このため窒素を入れるわけですが、これは大きなジレンマを抱えることに
なります。なぜなら格納容器内は、もともと水素爆発に警戒して窒素が
入っていました。ところがベントを行った際に、水蒸気とともに、窒素が
抜けてしまったわけです。

ではベントはなぜ行ったのか。原子炉内が高温、高圧になったため、
水蒸気が格納容器内に逃げて来て、格納容器の圧力が上がったからです。
1号機は設計基準の4.3気圧をはるかに上回る8気圧を記録した。それで
ベントしたわけですが、窒素封入は再び圧力を上げることになる。

1号機は他に比べて未だ高温をたもったままです。7日現在で223.8度ある。
設計基準は302度ですから、この点からも危険性を抱えている。そのため
冷却のために投入された水分が、水蒸気となって再び圧力が上がる
可能性があります。そのときは再度、ベントを選択せざるを得ない。

そうなるとどうなるか。再び窒素が抜けてしまう。水素爆発の危険が生じる
ため、もう一度窒素を入れなければならない。そうするとまた圧力が上がる
というジレンマが生じます。その意味で窒素封入は、目の前の水素爆発の
危険性への応急処置であり、新たな困難を生む可能性があります。

これに対して2号機、3号機は、原子炉圧力容器の圧力が、大気と変わらない
状態になっている。圧力は心配いらないわけですが、同時にそれは容器の
密閉性が完全に崩壊していることを意味しています。原子炉に穴が開いて
原子炉格納容器内につながってしまっている。

また格納容器も明らかに損傷している。そのためここでの窒素注入は、
原子炉から格納容器内に漏れている水蒸気をそのまま押し出してしまう
可能性がある。ここには大量の放射能が含まれていると考えられるため、
それが大気中に放出されてしまう可能性が高いです。

これが1号機の窒素注入に続いて行われようとしています。しかも数日に
わたって行われるので、数日間、内部の放射能が押し出される可能性が
あります。窒素を入れた分だけ出て来てしまう可能性がある。このところ
下がってきていた大気の放射能汚染が再び強まる可能性があります


まとめます。
1号機から3号機まで、もともと原子炉格納容器に封入してあった窒素が、
ベントや格納容器の破損などにより、外に抜けていってしまいました。
その状態で、燃料棒を覆っていたジルコニウムから、また水(とくに海水)の
放射線による分解により水素と酸素が発生し、格納容器に移っています。

これは水素爆発の可能性が生じていることを意味します。そのためそれぞれ
の格納容器内への窒素注入が必要であり、緊急性の高い1号機から注入
が進められています。しかし他に比べて高温状態が続いている1号機では
圧力があがるため、今後の冷却いかんで、ベントが必要になるかもしれない。

しかしそうなると、再び窒素も抜けるので、その分の注入が必要になりますが、
それ自身が圧力を高める行為です。1号機は繰り返し高温・高圧にさらされて
おり、その上にダメージが繰り返し与えられる可能性があります。原子炉
格納容器の状態が心配されます。

2号機、3号機では、原子炉の圧力が大気とあまり変わらなくなっており、
原子炉に穴が開いて、格納容器内にかなりの放射能が移っている可能性
があります。しかも格納容器も破損しているので、ここに窒素を入れると
この放射能が押し出されて漏れてくる可能性が高い。

それらから、再び大気の放射能汚染が高まる可能性が高いこと、また
水素爆発の危険性も、不安定なままに抱え続けなければならないことが
分かります。原子炉は、いまだ、それぞれに非常に危険な状態にある。

これを踏まえて、ウォッチを続けます。

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