守田です(20150321 23:30)
東日本大震災と福島原発事故からまる4年を経て、私たちは何をなさなければならないのか。
今回は連載の続きとして、四つ目の原発再稼働を許さず原発ゼロの道をめざすことについて論じます。
今、再稼働に向けて問題となっているのは鹿児島県の川内原発と福井県の高浜原発です。
先に規制庁の新基準規制に「合格」したのは川内原発でした。昨年9月のことです。この時、川内原発は今年度中、つまり3月末までには再稼働するのではと言われました。
ところがその後に、九州電力が原発の機器の設計図など工事計画と保安規定の補正書が提出できず、再稼働に向けた動きが鈍っていました。
このため遅れて新基準規制に通った高浜原発が、先に再稼働を実現するのではないかと言われましたが、その高浜原発に対して福井地裁に運転差し止めの仮処分申請が行われ、今月末にも差し止め決定が出されるのではないかと言われています。
高浜原発の再稼働も暗礁に乗り上げつつあります。仮処分申請は大津地裁でも、昨年、一度却下されたものの、今年になって再度申請されています。
これらについては「明日に向けて(1040)」で詳報したのでご覧いただきたいと思います。
明日に向けて(1040)高浜原発再稼働阻止-原発事故から4年、脱原発行動をさらに盛り上げよう!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fdae6a4be0990078829942ec90785a21
さて新たな動きがありました。九州電力が難航していた工事計画書をようやく提出し、18日に規制庁によって認可されたのです。
このもとに実際の点検が始まり、九電は7月末に原子炉の制御棒を抜いて起動させ、8月下旬に営業運転を再開したいと述べています。
もちろんこれとても九電の見積もりであり、実際の点検の中でどのようなことが浮上するか分かりません。またこれまでもそうだったように私たち民衆の行動でまだまだ運転を阻む余地があります。
その際、重要なのは再稼働に向けた問題点を私たちがさらにしっかりと把握し大きく広げていくことです。
高浜原発についても、この一両日中に処分決定の期日が明らかにされ、運転差し止め命令が出される可能性が高いですが、そうであってもそうでなくても、やはり問題点をしっかりと把握しておく必要があります。
それが今後の、他の原発の再稼働の動きと対決する上での力にもなるからです。
この場合、大きく言って二つのポイントがあります。これは新規制基準の二つの側面でもあります。
一つは過酷事故を起こさないとする対策に合理性があるのかという技術的な側面ですが、端的に言ってどれも付け焼刃的な対応でとてもではないけれども安全が確保されたなどとは言えないものばかりです。
これらの点については、さまざまな方が指摘を行っていますが、中でも元東芝の格納容器設計者、後藤政志さんが繰り返し矛盾を具体的に指摘されていますのでぜひ注目して欲しいと思います。後日、詳報もお届けします。
今回指摘したいのは新規制基準の第二の点です。ここで規制委は端的に過酷事故・・・現在は重大事故と言い換えていますが・・・が防げない場合があると明言しています。
そもそもこれまでの規制の限界は、重大事故が起こらないものとしていてその対策がなかったことにあった、だから今回は、新たに重大事故が起こった場合を想定することにしたというのです。
ここには問題の重大なすり替えがあります。これまで政府と電力会社は、放射能が敷地内に大量に飛び出すような重大事故はあり得ないと語ってきたのです。その約束が破れたのだから、本来、それだけで原子力政策から徹底すべきなのです。
ところが重大事故を想定していなかったのが間違いだと開き直った。あってはならない重大事故があったのだから原子力政策を終わらせるべきであるところを、このように論旨をずらして延命しようとしているのです。
私たちはこの点に大きく注目し、重大事故を起こす可能性を前提としたものなど論外だということを何度でも声を大きくして訴えていく必要があります。
核心問題はここです。ここに政府と電力会社のとんでもない開き直りがあります。にもかかわらず、多くのマスコミがこの大事なポイントをスルーさせてしまっている。
原子力規制庁はこの点を新規制基準の中に盛り込ませたわけですが、これを3月3日から高浜町のケーブルテレビで流し始めたビデオで端的に語っています。
高浜発電所に関する原子力規制委員会の審査概要について
https://www.youtube.com/watch?v=azZk3mPHUrg
かなり驚くべき内容です。特に注目すべき点は以下のような内容です。
***
新規制基準では事故の発生を防止する対策をもとめ、それでもなお重大事故の発生を想定し、「止める」対策、「冷やす」対策、「閉じ込める」対策、対策を幾重にも求めている。
これらの対策により、福島第一原発事故のように放射性物質の大量放出に至るような事故の発生は極めて低いと考えられる。
しかしこれで満足するのではなく、それでもなお放射性物質が敷地外に放出されるような事態になった場合を考え、さらなる対策として放射性物資の拡散をできるだけ抑える対策を求めている。
審査では大容量ポンプで海水を大量に組み上げ、その水を放水砲で霧状に撒くことによって放出された放射性物質の拡散をできるだけ抑えるといった対策が備えられていることを確認した。
新規制基準では安全追及のための思考を常に止めないことが重要という考えの下、重大事故の発生という想定をもさらに越えて、大規模な自然災害が発生したり、
故意による大型航空機の衝突といったテロリズムによる発電所の大規模な損壊が発生した場合も考えて、体制や手順の整備を求めている。もちろんどんなものでも食い止めることができるというわけではない。
しかし審査ではそのような厳しい状態になった場合でも、環境への放射性物質の放出を出来る限り低減するよう、必要な体制、対応手順を整備することを確認した。
***
ここに明らかなように、規制委員会は、重大事故を防止するための「止める」「冷やす」「閉じ込める」対策が突破された事態を明確に語っています。つまりそういうことがありうると認めているのです。その時の対策を考えたのだと言う。
しかも紹介した二つ目の段落では、「重大事故の発生という想定をもさらに越えて」というくだりが出てくる。その結果「発電所の大規模な損壊が発生した場合」も考えると言うのです。
その際、「もちろんどんなものでも食い止めることができるというわけではない」とすら述べています。
私たちはこの点をこそもっと大きくクローズアップし、全市民的な論議にかけなくてはいけない。
ちなみに「全国民」ではダメです!日本に住まうすべての人に論議に参加してもらう必要があるからです。
そもそも政治的なあらゆる側面において、この国で税金を払っている方には参加する権利があるからであるとともに、放射能はこの国に住まうすべての人々を襲うからでもあります。
その際、一番、問わなければならないのは、「発電所の大規模な損壊」・・・つまり福島事故と同規模、ないしそれをも大きく上回るような事故を起こす可能性のある発電所を動かしてまで電気が必要かどうかという点です。
もちろん問うまでもなく答えはでています。そんなものいるわけないのです。そもそも原発ゼロの今だって何も困ってなどないのすから。例え困っていようと福島原発事故を上回る可能性のあるものなど即刻廃止すべきなのは当たり前のことなのです。
にもかかわらず・・・ある意味では規制委がここまで露骨に本音を語っているにも関わらず・・・ここが焦点になっていないことこそがおかしい。
もう一度いいます。規制の新基準は「発電所の大規模な損壊」の可能性を前提したものなのです。
新基準を認めることはそれを受け入れることです。安全どころの話ではない。重大な危機を受け入れるということです。この点をもっともっとハイライトしなければいけません。とても容認できるものではありません。
私たちはこの点をこそ、大きく広げて、さらに再稼働反対の世論を大きくしていきましょう。
続く