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ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『レター教室』

2007-11-08 11:58:44 | わたしの読書

『レター教室』三島由紀夫

携帯電話もパソコンも好き。
「5分以内に返信しないといけない」なんていう、若い人のルールとは無関係のおばさんのメールは、必要なときに、相手の時間を気にせずに使える、便利なシロモノ。
でもね、でもね・・・
手紙には、メールにはない、「ドラマ」があるのです。
この『レター教室』は、まさに、レターから始まるドラマです。

言葉の端はしに見え隠れする、人間の浅はかさやカワイラシサ、腹黒さ。
優しさやいたわりの気持ちが、痛いほど胸に響いてきて、時に泣けてきたりするのは、文章が上手いとかいう問題ではなく、それが、手紙という手段を用いているからに、ほかなりません。
選んだ便箋の絵にすら、書いた人間の想いが宿っているかもしれないのだから、
その奥深さは、とても、メールや電話には、適わないのです。
そう。手紙は、ドラマなんだなあ。

        
よし手紙を書こう!と思ったその瞬間から、物語は始まります。
書いているときの気持ちの高ぶり。
なぜか、書いているうちに、自己分析などしたりして。
そして・・・書き終わったときの満足感。

たった一通の手紙が、翌日もドラマを繰り広げます。
冷静になって読んだときの迷い。
「出そうかな?どうしようかな?やっぱり、明日にしようかな。」

その次の日にだって、ドラマは、待っています。
さらに冷静になっている自分が、どうして、あんなに興奮して筆をとったのか?と自分を戒めてみたりして。
そして、たどりつく悲しい結論。
「やっぱり、出すのやめよう。」
せっかく書いた手紙を、引き出しの奥に仕舞い込みます。
(なぜか、捨てられなかったりするのです)

何年か後に、ふと出てきた、その手紙。ドキドキしながら、読み返してみる。
ああ、なんだろう私ったら。
うふふ。そうそう、こんなときもあったわね。なんて。
        

そうなんです!!一通の手紙が、こんなにも壮大な物語を作り上げるのです。
手紙は、やっぱりスゴイ。素晴らしい!手紙のない人生なんて!

・・・・・ふう。
三島氏の軽快な文章にのせられたのか、この本を読んでいたら、なんだか妙に興奮してきてしまい・・・。
想像が一気に膨らんでしまいました。
それにしても、三島由紀夫の作品の感想に、「軽快な文章」だなんて。

中学生のとき、『金閣寺』に挫折してから、一度も手にとったことがない三島由紀夫。
どうしても、あのハチマキ姿が頭に浮かんでしまい、固いイメージが先行していました。
こんなユーモアあふれる、皮肉っぽい?俗っぽい小説?を書いていたとは。
本当にびっくりです。
同性同名の別人なのではないか?という疑問を抱いた程でした。
本当に面白い!!

特に、最後の「作者から読者への手紙」では、声を出して笑ってしまいました。
ああ、三島由紀夫の作品を読んで、声を出して笑うとは!
今までのイメージは、いったい何だったのか?
もし、まだご存命であったなら、カナラズやファンレターを出していたに違いありません。
「三島由起夫さま」とは、絶対に書きませんから、どうぞ、読んで下さいませね。
(氏は、手紙で一番重要なことは、宛名を間違わないことだと述べています・笑)

面白さのあまり、つい、悪ノリして感想を書いてしまいましたが・・・
文豪の作品を読みずらいと思っている人(私を含め)には、特に、おススメの一冊。
群ようこさんの解説も、良かったです。


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18 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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純文学の秋 (ぱせり)
2007-11-08 14:25:45
みしまゆきお!(おそれおおくて手が震えます)
一冊も読んだことが無いのです。

手紙、大好きです。中学生~大学くらいまで文通していまして、長い手紙ばかり書いていました。一番長いのが便箋20枚裏表びっしり、というもので、普通の封筒に入らないで困ったり・・・なぜか試験前になると長い手紙を書きたくなってしまって・・・

手紙の話なら、三島由紀夫様、読めるかも! しかもこももさんが声を出して笑ってしまったというお話に大いに力づけられています。
三島由紀夫初挑戦してみたいです。
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こんにちは。 (こうめ)
2007-11-08 16:31:38
自分の失敗のショックで、
ふらふらと、お散歩にきました~

この本、ことりにも置いています。

ことりは、ちくま文庫を、すこしえこひいきしています。

もっと置きたいものもあるけれど、
しいくんにとめられて、このあたりで
思いとどまっています。

(ほんとうは、なぎら健壱なんかも、置きたい・・)
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面白そう! (モリー)
2007-11-08 16:46:57
三島由紀夫は、若い頃『潮騒』だけは読んだかなぁ。
でも、山口百恵と三浦友和がどうしても頭に浮かんできてしまったような。(クライマックスのシーンはやっぱり良かったと記憶してます)

確かに私も、すいすい読めるジャンルの人ではなかったので、手に取ることも殆ど無かった三島由紀夫ですが、こももさんの感想を読んで、ぜひとも読んでみようと思いました。
私も、ぷっと吹き出したい。

しかしこももさん、ホントに読書がお好きなんですね。
紹介されてる本を、私も読もうかなと思ってると、もう次の紹介が。お忙しい身なのに、いやはや、えらいです。
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興奮気味です! (はらぺこ)
2007-11-08 17:45:05
だって、だって・・・この本、読んでみたいなと思っていたのですよ!
そんなにも面白いならば、これは早く読まなきゃいけませんな。
そして、そして・・・毎日のように、今日こそは友人に手紙を書かなければ!
と、思いつつも延ばし延ばしになってたのですよ。
先日は、久しぶりに万年筆で手紙を書こうと張り切ってたのに、
カートリッジ買うの忘れたドジな私だし。
その時は、それより早く書かなくちゃと、しかたなく普通のペンで書きました。
やっとカートリッジも買ってきたし、今日こそ書くぞ!!
やる気にさせてくれたこももさんへ感謝します。
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三島由紀夫 (新歌)
2007-11-08 19:33:53
私も、一度も読んだことがないのです。
私にとっても固くて、人間的に怖いようなイメージがあるので…
でも、こちらの作品は何だか楽しく読めそうですね^^
こももさんの楽しそうな感想を拝見したら
今度見かけたら必ず手にとってしまうだろう自分を想像しました♪

私も学生時代はよく手紙を書いていましたが、
今はやはりメールで済ませてしまいます。
日本文学科時代の友人は、やはり手紙が好きなようで
何かあると手紙をくれて、それがとても嬉しいのです^^
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おぼっちゃん (shorin)
2007-11-09 00:17:29
こももさん正直ー!
三島に対するその印象、なかなか鋭いと思います。

おぼっちゃんぶりはひとかたならぬ人だけど
耽美な気がしちゃうけど
おぼっちゃんだからあんがい深くないかも、三島くん。
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ぱせりさんへ (こもも)
2007-11-09 12:35:34
手が震えてしまうほどでしたか。ぱせりさん!!
なんだか、潔癖(美し)すぎて、触ってはいけないような
そんな気さえしていた三島由紀夫。
手が震えるお気持ちも、わかるかもです。
そんなぱせりさんでも、絶対に、読めると断言できます。
乱読ですが、苦手とみるや、さっさと放り投げてしまう私が、
言うのですから、絶対なのです。
三島由紀夫に、この本から入るというのも、裏技でアリ?なんて、勝手に思っています♪
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こうめさんへ (こもも)
2007-11-09 12:53:30
な、なんと!ことり文庫に、置いてあったんですねー。
どこらへんでしょう?
まだまだ、奥が深いです。ことり文庫さん。

ことりさんは、ちくまを ひいきしてるのですね!
うふふ。
すごーく、嬉しい!ものすごく、嬉しい!
だって、2日ぐらい前に、naoと「ちくま」について
熱く?語ったばかりなんですもの。

狙った訳ではないのだけれど、二人とも「ちくま」を読んでいたのですよ。
ちなみに、naoは「ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界」
を読んでいるそうで・・・
こうめさんも、読んだことありますか?

今度、うかがったときは、こうめさんの「ちくまセレクト」を
見つけるのを楽しみにしています。
でも、なぎら健壱は・・・
個人的には、大喜びですが、ことりさんとしては・・・
旦那さまが正しいのでしょうね(笑)
旦那さまは、陰から、ことりを支えて下さっているのですねえ。

失敗。読みました。
でも、そんなところも、こうめさんの魅力ですよー。
頑張って下さいね!
楽しみに待っています♪
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モリーさんへ (こもも)
2007-11-09 12:58:30
あはは~。そうですねえ。
私は、松田聖子の「野菊の墓」世代ですが、それでも、「潮騒」といえば、三浦友和と山口百恵!!です。きっぱり。
私も、是非、「潮騒」まで、手が出せるように頑張ってみようかと思います。
うふふ。
でも、その前に、モリーさんの息子さんおススメの太宰を読もうと思います!

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はらぺこさんへ (こもも)
2007-11-09 13:09:59
まあ、はらぺこさんも!!
私たちには、偶然が多すぎて・・・
もはや、他人とは思えません(笑)
実は、姉妹だったりして?
あ、いや、山口百恵を思い出したら、勝手に、想像がいきすぎてしまいました。
(そんな、赤いシリーズありませんでしたっけ?)

是非、読んでみて下さい。
とても、とても面白いです。
三島由紀夫の清いイメージは、消えてしまいましたが、それでも、読んで良かったデス♪

カートリッジは、買ってきましたか?
私も、万年筆大好きです。
万年筆やさんで、ちゃんとした万年筆を買うのが、夢なのですよー
(今は、そこらへんで買える、千円くらいのヤツなのです)
いつか、カナラズ
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