ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『機関銃要塞の少年たち』

2009-08-06 13:02:46 | わたしの読書

『機関銃要塞の少年たち』 ロバート・ウェストール作・越智道雄 訳

子どもの頃、戦争に関する本を、漁るように読んだ時期がありました。
小学校の高学年の頃から、中学生の頃。
小学校の図書館に置いてあった、日本を舞台にした戦争の物語を読みつくし、『ベトナムのダーちゃん』
から、今度は、外国の物語にうつっていきました。そして、出会った『アンネの日記』。母が、買ってくれました。
たしか?たぶん・・・このとき、『聖書物語』という本も、買ってもらったのです。

「お母さんは、キリスト教徒ではないけれど、聖書は、そうでない人も、一度は読んでみるべき本だよ。」

本を買ってくれた時の「その言葉」以外、一切何も言わなかった母の姿勢には、今更ながら関心します。
だからこそ、その言葉が、今でも、心にやきついているのでしょう。
(もしかしたら、その後のことなんて、ちーっとも感心がなかっただけかもしれないけれど・笑)


さて・・・。ユダヤ人という言葉も、ヒットラーという人も、その時、はじめて知りました。
(もしくは、聞いたことがあったけれど、全然知らなかったか。)

その史実は、私にとって、まさに衝撃。それからは、児童用の本では足りないと、町の図書館に通って、
歴史書を借りたのでした。まるで、とり付かれたようだった・・・怖い、女子中学生(笑)


そして、同じ位の年になった我が息子。
夏休み。せっかく本を紹介するのなら、一冊ぐらい、戦争の物語を紹介しても良いかも・・・と思いました。
そして、この本を手にとったのです。けれど、結局、紹介することは出来ませんでした。
あまりに、苦々しい読書感だったから・・・。それほど、リアルな物語だったのです。
じっくり、腰を落ち着かせて読んでほしい。感想文なんて、足かせのないときに。
・・・・・・・・・・・それが、今の気持ちです。


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子どもは、なんと傷つきやすく、なんと、たくましいのだろう。
物語の舞台は、第二次大戦下のイギリス。
自分の頭の上を、敵機が爆弾を落としながら飛んでいき、よく知っている町の人たちが死んでいく。
そんな生活の中にあっても、子どもたちは、絶望するどころか、生き生きと、たくましく、駆け回ります。

印象深かったのは、敵兵(少年たちの捕虜)ルーディと、子どもたちが、心を通わせていく場面。
同じ人間同士が殺しあう・・・。戦争とは、なんと虚しく、馬鹿らしいものか。
ルーディと子どもたちの友情を目の当たりにして、あらためて思わされます。
そして、一番、心に残った場面。
ドイツ兵が上陸してきたという誤報により、町中の人々がパニックを起こす中、子どもたちが、親の傍に
とどまることを選択せずに、自分たちで作り上げた要塞に集まる、ラストシーン。

一体、大人は、自分たちを守ってくれる存在なのだろうか?
敵の大群(そう思い込んでいる)を目の前にして、子どもたちが、自問自答するシーンは、あまりに衝撃的でした。
その通り。だって、この戦争を始めたのは、大人なのだもの。
何のメッセージも掲げない(たぶん、あえて掲げない)この物語において、それは、唯一と言ってもよい、作者からのメッセージのようでした。

敵兵だと思い込んだ軍隊の中に、自分の親や先生の姿を認めながらも、向けた銃口を下ろさない子どもたち。
彼らを立ち止まらせたのが、誰でもなく、敵兵のルーディだったという事実。
ラストシーンは、深く、深く、私の心の中をつきぬけていきました。
戦争の悲惨さや、反戦を訴えるような言葉が、一つとして出てこない戦争の物語。
子どもたちが、全くもって可愛そうでなく、逆に、生き生きと描かれていることが、なおさら、戦争の愚かさと、悲惨さを浮き彫りにします。

戦争という歪んだ世界の中で、狂気ともいえる遊びを作り上げる子たち。
子どもたちの一途さが、どうか、平和な世界の中で、別の方に向かう世の中であって欲しい。
子どもたちが、武器を集めるのをやめる日が、来ますように。