
『注文の多い料理店』
黒いろが好きな娘。ある晩、私の本棚から、この本をひっぱり出してきた。
選んだポイントは、たぶん、「黒」。
絵本で、表紙が黒のものって少ないので、目立つのかもしれない。
ちなみに、私の本棚の絵本コーナーで、黒の見出しなのは、他に『じこくのそうべい』と
『くまさぶろう』と『ゼラルダと人喰い鬼』だけだった。
娘は、一冊、一冊、引き抜いて表紙を確認し、この『注文の多い料理店』を見て
「よし、これにしようっと。」
と言った。
そういう本の選び方って、どうなんだろー

当時、3歳の娘だったので、私は、当然のごとく
「まだ、難しいよ。」
と言った。
でも、娘は、「絶対に、この本がいい。」ときかなくて、字がたくさんあるよと、中身を見せても曲げなくて・・・・・。
「仕方がない。一度読んだらわかるだろう。」
最初の読み聞かせは、そういう気持ちで読んだことを、良く覚えている。
ところが、どっこい!娘は、最後まで、ちゃんと聞いた。
おまけに、すっかり気に入って、それからしばらくは、毎日、毎日繰り返して読まされた。
途中、ほかの本にうつっても、思い出したように、この本に戻ってくる。
おかげで、4歳になった今も、定期的に読まされる本の代表作だ。
最近のお気に入りの読み方は、「眠い」ときに読んでもらう、というもの。
「ねえ、途中で、寝てもいい?」と、必ず確認するのが可笑しい。
先日、jasuminさんから、読んでいる途中で、お子さん達が寝てしまう話を聞いて、
(お母さんも寝てしまうらしいけれど

)この本のことが、頭に浮かんだ。
母の声を聞きながら眠りたいなんて、ちょっと、嬉しいですね。うふふ。
ちなみに、途中で寝てしまっても、必ず、最後まで読むのが私のお約束。
だって、賢治は、読んでいて、本当に面白いんだもの。
実は、私、子どもに読んで聞かせるようになるまで、賢治の作品が、そんなに得意では
なかったのです。
(『やまなし』だけは、小学校の教科書で読んで以来、ずっと好きな作品ですが)
でもね、賢治の作品は、声に出すと、本当に素敵なのです。
声に出すと、自分が朗読家になった気がします。本当です。
もちろん、最後まで聞きたいときにも、この本を持ってくる娘さんなので、
そろそろ、違う本にも挑戦できるかしらと、先日、母さんは、欲を出しました。
借りてきたのは、「雪わたり」。
かつて、小学生だった息子と、とてもとても楽しんだ本だったから、ものすごく
楽しみにしていたのだけれど・・・・・・・失敗。
もちろん、物語は面白いのだけれど。
・・・・・・・・なんというか、つまらないのだ。二人で読んでいても。
これはたぶん、まだ「読み時」ではないんだろうな。
『注文の多い料理店』より、小さい子向けだと思って読んだ『やまなし』も『雪わたり』
も、読んでみたら、もっと大きい子でないと理解できない世界だと知った。
もしかしたら・・・娘の方が、本を見分ける「勘」が優れているのかもしれません。
でも、いつ、娘と楽しめるのかな?という楽しみが加わったので、それはそれで良しとしましょうか。
娘との読み聞かせは、「読み時」を楽しみに待つという、新たなお楽しみ付きみたいで、それが
なんとも、ワクワクするというか、気持ちがはやるというか。面白いです。
時々、「読み時」を間違えて、がっかりするのも、また、愉し。