ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

経済的豊かさ・本当の幸福、幸福を目指すベクトル  アイデア三題噺 233

2019-05-14 16:11:06 | 日記

 日本経済が戦後急速に成長を遂げたのですが、幸福度が上昇していないと言われています。日本人の生活満足度は、1963年の63.5%から1995年の72.7%がピークになりました。この年の72.7%をピークにして、それ以降は低下傾向を続けています。この生活満足度と経済成長が、結びついていない点に注目が集まっているのです。
1人当たり実質GDP(国民総生産)は、1963年の26万円から、2007年の404万円へと15.4倍に増加しました。所得の上昇だけでは、幸福を得られないということを示したわけです。2008年度国民生活白書はこのことを踏まえて、「経済的豊かさは生活満足度の上昇に結びついていない」と指摘しています。経済的豊かさが生活満足度の上昇に結びついていないという現象は、先進国に共通していることでもあるようです。
 そこで、生活の満足度や幸福について考えてみました。2010年におけるアメリカの1人当たりGDP46,000ドルは、1985年当時17,000ドルの2.7倍の豊かさをもたらしました。でも、自分が幸せと考える人の比率は、ほとんど変化しなかったのです。そこで、幸福を測る尺度が、GDP からGNH (国民総幸福量)というもので計ってはどうかという意見が出てき始めました。この概念は、ブータンという国から発信された概念です。 精神面での豊かさを重視するものと考えて良いでしょう。国民の幸福は、精神的豊かさ、社会や文化の洗練された豊かさによるものとしています。
 経済成長が必ずしも幸福感や生活の満足度を高めるわけではないことは、先進国の中で証明されてきました。福祉の理想を求めて、ヨーロッパの近代福祉制度は試行錯誤を繰り返してきました。その変遷は、経済力や福祉政策だけでは幸福に到達しないことを示してきた歴史ともいえます。この世界に完全無欠な福祉社会など存在し得えないと断言してしまえば、身も蓋もありません。ヨーロッパでは、幸福を求めて人間が生きていくうえで欠かせない要素に、自助努力があるということに達したようです。人間が生きるための社会基盤は、自助努力を尊重することを前提にを構築する必要があると仮説を立てるようになったわけです。まだまだ、明確なものはなく、これからも幸福を求める旅は続くようです。
 一方、世界で最も幸福な国といわれているブータンは、どうなのでしょうか。幸福の価値基準が、「家族が互いに助け合っているかどうか」、「睡眠はどれくらい取っているか」、「医療機関の距離はどれくらいか」、「自殺を考えたことがあるか」、「人をどれだけ信用できるか」「自分が幸せだと思うか」などにあるようです。ブータンは、貧しい国でした。他国を旅行する人びとも、少なかったのです。他の世界に存在する別の価値に関する知識が、少なかった時代が続きました。ブータンにおける高い幸福は、人々が等しく貧しい状況の中で培われてきたものでした。ブータンの人びとは、より少ない物品やサービスで心の満足感を得ていたともいえます。現在、GNH (国民総幸福量)が高いとされるブータンの人びとも、魅力的な物を見ると目が輝き始めるようです。最新のエレクトロニクス商品、ファッションブランドを手に入れたがります。豊かさを象徴である物品やサービスを目の前にすると、自分の欲求を抑えることは難しいようです。
 ブータンと似た環境に、スイスがあります。この二つの国では、医療機関が近くにあることが、幸せの一つになっています。スイスは医療機関との物理的距離を、ヘリコプターなどの機動力で補っています。ブータンは、心理的距離で補っているかもしれません。世界で最も経済的に裕福なスイスと経済的には貧しいが幸福であるとされるブータンに、幸福のヒントが隠されてるように思えます。それが分かれば、人間のベクトルはそちらに向かうことになります。幸せに向かっていると分かれば、より楽しい人生になるかもしれません。