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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」97

2018年09月11日 | 物語「約束の夜」

盗人はあっという間に取り押さえられる。

「全く、市場の大通りで
 油断も隙もないやつだな」
「とっちめてやるぞ」

その様子をおおーっと眺めていた京子に
声がかかる。

「北一族の市場は
 いろんな人が集まるから
 注意しないと」
「あ、ええ。ありがとう。
 荷物を取り戻してくれて」

京子を助けてくれたのは
白色系の髪と瞳の青年。

「どういたしまして。
 北一族の村が物騒なだけじゃないと
 分かってもらえれば」
「それはもちろん。
 何度も来ているけど、
 華やかでいいところよね」
「………なんども」

来ているのか、と
青年はあきれる。

「君、何回も来ている割には
 警戒心無さ過ぎだね」
「違うわよ!!
 今回はちょっと、考え事をしていて」

そこまで話して二人は笑う。

「本当に助かったわ。
 ねぇ、お礼に夕ご飯でもどう?」
「そんな気にしなくても良いよ」
「まあ、そう言わずに!!」
「……圧が強っ」
「いいから、お願い。
 私、飲食店(特にがっつり食事系)
 1人で入るの苦手なのよ」

むしろ、良いカモ見つけた、
付き合え、の意味合いだった。

「そこまで言うなら良いけど。
 君さ、もうちょっと人を警戒しなよ」

「………前にも誰かに言われた気がする」

忘れるな京子。
千さんだぞ!!

一度宿に戻った後、
大通りの店に二人は入る。

「ふぅん、一日待ちぼうけ、ね。
 考え込む訳だ」
「笑い事じゃないわよ。
 夕暮れ時の鐘が鳴った時点で
 泣くかと思ったのだから」
「東一族と待ち合わせる西一族ね。
 ………恋人?」
「違う!!そんなんじゃないのよ
 あとツイナ、………海一族もいるし」
「恋人じゃない
 東一族と西一族と海一族!!?」

どういう関係?と
青年は面白そうに笑う。

「どう、と言われると
 説明が難しいけど、
 サークル?部活動??遠い親戚同士??みたいな」

「まぁ、何か事情が出来たのだろう。
 もう一日待ってみなよ」
「………うん」
「大丈夫だって。
 約束に遅れはすれ、
 すっぽかすような奴じゃないんだろう」
「そうね」

うん、そうする。と
仕切り直して京子はご飯を食べる。

「うんうん。
 北一族の豆乳料理美味しい」
「ありがとう。
 地元民としても誇らしいよ」
「あなた、北一族よね。
 さっきも、魔法で助かったわ」
「そう?
 北一族ではあれぐらい普通。
 あぁ、京子は西一族だったな」
「うん。魔法はさっぱり。
 でも使えたらステキよね」
「西一族の狩りも見応えあるって聞くけど」
「腕前がある人の狩りは
 本当に見ていて凄いのよ、あのね」

そのまま話は盛りあがり、
思っていた以上に楽しく夕食を終える。

宿まで送ってもらい
京子は手を振る。

「それじゃあ。
 今日は本当にありがとう」
「こちらこそ夕飯ごちそうさま。
 色々、気を付けるんだぞ」

じゃあね、と
宿屋の入り口を跨ぎかけて
京子は戻ってくる。

「どうした?忘れ物?」
「そう言えば、
 あなた名前は?」
「一晩限りの男、とでも」
「言い方!!!!」

「それじゃあ、また会った時にでも」
「そういうのは
 絶対に合わないパターンじゃない」

もう、と言いながら
京子は宿屋に引き返す。

今日は色々あったけれど、
最期はこうやって楽しく過ごせた。
それだけでも、
明日頑張ろうという気分になる。

京子が宿に入るのを確認して
青年は歩き出す。

「おやすみ、京子。
 明日は仲間と会えるといいな」



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