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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」25

2017年11月07日 | 物語「約束の夜」

「最悪だわ」
「落ち着いて、美和子」
「これだから、南一族は苦手なのよ」

少しだけ時間は遡り、
南一族の村に着いた二人は
まず、今日の宿を見つけることにした。

観光地である北一族の村とは違い
他一族の村には宿が多くはない。

が、

聴いた相手が悪かった。

「つまり、泊まる場所を探している、と」
「えぇ、そうなんです」
「それなら、我が家に泊まれば良いわ!!」
「……宿屋の方、だったんですね?」

偶然馬車乗り場に居合わせた女性。
彼女の髪は黒髪だが、
連れている息子であろう男の子の髪は白色系。

南一族って凄いなぁ、と
京子がぼんやり眺めている横で
女性と美和子は宿の交渉をしている。

「いいえ、
 うちはごくごく普通の農家よ!!」

「???」
「でも、家に泊まればいいわ」
「意味が分からない」

「先日、旅行で出かけた際に、
 他一族の方にとても良くして頂いたの、
 だから、私も誰かの役に立ちたい、と」

「良い心がけだと思います。
 でも、それはそれ、これはこれ」



それはそれ、これはこれ、の
ポーズを美和子が取る。

「ごちそうを準備するからね」
「話しを聴いて。
 私達!!宿屋に!!泊まりたい!!」
「大丈夫よ。
 お金のことなら気にしないで、
 食事代ぐらいしか頂かないから」
「貰うのかい!!」

こんな美和子見たこと無い。
南一族って凄い、と
さっきとは別の意味で
京子は感心する。

「早速準備をしないと、
 夫にも話して、ベットを出さないとね。
 さぁ、行きましょう!!!」
「今どき人攫いでも
 もう少し上手に勧誘するわよ!!」

家の場所と名前を告げて
南一族の女性はあっという間に去っていく。

勢いが凄い。

「最悪だわ」
「落ち着いて、美和子」
「これだから、南一族は苦手なのよ」

えぇい、と
美和子は荷物を京子に手渡す。

「いい、京子。
 私はちゃんとした宿屋を探しに行く。
 京子はさっきの人の家に行って
 お断りをしてきて!!」
「私がっ!!?」
「いい?
 何を言われても、絶対に
 首を縦に振っちゃダメよ」
「そんな、美和子ずるい。
 二人で行こうよ」
「二人で行ったりなんかしたら
 それこそ、帰れなくなるわよ。
 もう一人が待ってるからって言うのよ」

「えぇええ」

それだけ言うと、
美和子はさっと、行ってしまう。

なんだか、耀を探す前に
くたびれてしまいそうだ、と
京子は肩を下ろす。

「私は、あの人の家でも良いんだけど」

悪い人じゃなさそうだし、
案外楽しく過ごせるかも知れない。

と、言うと
美和子は警戒心が足りない、とか
怒るだろうか、と

そちらもはっきり想像出来て
京子は苦笑いを浮かべる。



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