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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」26

2017年11月10日 | 物語「約束の夜」

「やよぉい!!」
「お帰り、飛鳥くぅん!!」
「驚くなよ! 今日のお客さんが増えたぞ!!」
「なんてこと!」

とにかく大きな声で会話する、南一族の夫婦。

飛鳥と弥生(やよい)。

「そして、こっちが子どものマジダと桃矢(ももや)だ!!」
「そして・・・?」
「あたし5さいね!!」
「あなたはどこの黒髪なのかしら!!」
「かあさん、このひと、すじょうがしれないわ!!」
「黒髪だから南か東の人よ、マジダ!」
「ねんしゅーとか、かのじょいるのかとか、きいたほうがいいとおもう!」
「そうよね!!」

「・・・・・・」

「さあこたえなさい、たびのひと!!」

「いったん、外に行ってもいいですか?」

「それは無理だ!!」

頭を抱えた満樹を横目に、
ばぁん、と、飛鳥は扉を開く。

「外はもう夜だ! しかも雨!!」
「雨っ」

予想だにしない展開に、満樹はさらに頭を抱える。

ここから出たい。

「今日は我が家に泊まるのだから問題はない!」
「ないわね!!」
「ないわね!!」
「さあ、紹介しよう。今夜一緒に泊まるお客さんを!」

騒々しさで、気付かなかった。
見ると、椅子に腰かけている者が、ひとり。

「――っ!?」
「・・・あっ!!」

飛鳥が云っていた通り、西一族。
しかも

北一族の村で満樹が助けた、

「京子ちゃんよ」

満樹と京子の目が合う。

京子も目を見開いている。

東一族と西一族。

そもそも、接触する機会は少ない。
それなのに知っている顔に、また会うことになるとは。

飛鳥が云う。

「どうした西の嬢ちゃん! 元気がないな!!」
「それがね・・・」
弥生が云う。
「連れの人が来ないのよ」
「何!!」

京子の顔は暗い。

満樹は京子を見る。

来ないわけではない。
おそらく、どこかで落ち合う約束をしていたのだろうが
南一族の勢いに負けて、探しに行くことが出来ないのだ。

「監禁・・・」
「何か云ったか、東の兄ちゃん!!」
「いえ、何も」

「大丈夫だ、西の子よ!!」
飛鳥が云う。
「朝になったら雨も上がるだろう! 俺が連れを探してくる!!」
「飛鳥くんかっこいい!!」
「当たり前だ! せっかく豆料理があるんだからな!」
「そうよね!!」

「待って」

そこで満樹は口を挟む。

「俺が探します」
「何!!」

京子も驚いた顔をする。

「いや、しかし、」
「大丈夫。俺が見つけます」

と、云うか
これがこの家を出る(脱出する)機会。

「なんと、・・・東一族よ!!」
「・・・素晴らしいわ!」
「これで俺たちは」
「豆の収穫に専念出来るわね!」

飛鳥と弥生はてきぱきと動く。

「そうと決まったら、料理を食べて!」

並ぶ、鍋と皿。

「ほら、京子ちゃんお腹が空いたでしょう」

泣かないの、と、弥生が京子を慰める。
でも
おそらく、そう云う涙じゃない。

「今日は鳥と豆を煮こんだの」
「やったぁああああああ!!」

喜ぶ、南一族の子。

「さあ、東のお方もどうぞ!」
「俺は肉を食べられません」
「そんなことないわ!!」
「いえ。食べたことがないので無理です」
「俺はベットを準備するぞ!!」

どこからともなく現れるベット。

「西の子はあっちの部屋、東の兄ちゃんは向こうの部屋な!」
「俺は、大丈夫です」
「遠慮はいらない!」
「・・・何と云うか」

満樹が云う。

「朝起きるのが苦手で、・・・」
「つまり!」

相変わらずの大声で、飛鳥が云う。

「起きられないから起きておくと云う!!」
「ええ、まあ」
「お前天才だな!!」



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