TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」28

2017年11月17日 | 物語「約束の夜」

小雨。

暗闇の中を、京子と満樹は進む。

「場所は判るのか」
「ええ」
京子は頷く。
「大体の場所は美和子から聞いたから」

南一族の村の、広大な畑を通り過ぎ
中心部へと向かう。

少なくとも、そこに店や宿屋が集まっているはずだ。

が、

もちろん、夜中。

たどり着いても、ほとんどの店に灯りはない。

「南一族は早く寝るのか・・・」
満樹の呟きに、京子は続ける。
「朝の畑仕事のために?」
「ありうる」
「うちも、狩りの当番のときは早く寝るけど」

京子の言葉を、ふぅんと満樹は流す。
他一族の情報として、
出来るだけ、聞かないように。

「北一族の村なら、夜通し明るいんだが・・・」
「そうよね」
「・・・・・・」
「そんなに何度も、北に?」
「あなたこそ、・・・あ!!」

京子が指差した方を、満樹は見る。

宿屋。

「美和子!」

京子は走る。
満樹も追う。



京子が宿屋に入ったのを確認して、そこで立ち止まる。

待つ。

この宿屋に、連れがいたのなら、京子は出てこない。
それならばそれで、いい。
もし、連れが、東一族の自分を見たら驚くだろう。
場合によっては、
西一族から、京子は咎めを受けるかもしれない。

だから、満樹は宿屋へと入らなかった。

小雨が降る中、満樹は待つ。

「・・・・・・」

満樹は首を傾げる。

京子が、宿屋から出てくる。

「連れはいなかったのか?」
「・・・ええ」
「なら、ほかの宿を探してみよう」

満樹は歩き出す。
京子も続く。

小雨。

京子が呟く。
「美和子、どの宿屋にいるのかしら・・・」
その顔は不安げだ。

満樹は歩く。
少しずつ、歩みを早める。

「ねえ。どうしたの? 急ぎ足」

満樹は指差す。

「あれ、宿屋じゃないのか」
「本当だ!」
京子は満樹を見る。
「中を見てくる!」

満樹は頷く。

「連れがいるといいけど」
「ええ」
「もし、連れがいなくても」
満樹が云う。
「そのまま、その宿に泊まればいい」
「・・・え?」
「このままだと、雨が強くなるかもしれない」
「そう、か・・・」

京子は考える。

「じゃあ、あなたの部屋もないか見てくるわ!」
「俺は大丈夫だけど」
「見てくるから!」

京子は宿屋の中に入る。

満樹は、その姿を確認する。

小雨。

まだ、夜は明けない。

満樹は振り返る。
云う。

「そこにいるのは誰だ。なぜ付いてくる?」

ゆっくりと、誰かが姿を現す。

雨に紛れ

足音を消すように。

「お前、・・・」

誰かが云う。

「東の満樹、だな・・・?」



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