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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」30

2017年11月24日 | 物語「約束の夜」

雨の中。

京子に背を向ける形で、満樹が立っている。

そして

その先に

誰かがいる。
ふたり。

姿がよく見えない。
闇に紛れるような

そんな恰好をしている。

「満樹・・・?」

一歩踏み出そうとする京子を、静止するように
満樹が後ろ目で見る。

「動くな」

「え・・・??」

京子は状況がわからない。
けれども
けして、いい雰囲気ではない。

「えっと、」
「ずっと後をつけられていた」
「後、を??」

満樹は前に向き直す。

「お前の知り合いか?」

云われて京子は、そのふたりを見ようとする。
はっきりとはわからない。

でも

「いえ」

知るはずもない。

「なぜ、俺たちをつけている」
満樹が云う。
「俺たちの、どちらをつけている」

「・・・ふ、」

雨音の中、そのふたりは笑う。

「・・・どちら?」
「・・・どちらも、だよ」

満樹は眉をひそめる。

「どう云うことだ」

「・・・人を探している」
「・・・それだけだ」

瞬間、ふたりの姿が消える。

「――!!」

声にならない声を、京子は上げる。
すぐ横に、そのふたり。
とっさに携帯している護身の短刀を掴もうと、する。



強い力で引っ張られる。

満樹、が

「・・・何を!」
「・・・おい!!」

京子を抱えて、跳ぶ。

「っううう!?」

思わず閉じた目を、京子は開く。

雨が打ち付ける。

横にいるのは、満樹。
あのふたりは、いない。

すぐ横の満樹は、静かに、と首を振る。
京子は足元を見る。

――木の上。

満樹は、京子を支える。

「・・・どこへ行った!」
「・・・出てこい!」

ふたりは、満樹と京子の場所を把握出来ていない。

「・・・無理だ。雨が強い」
「・・・深追いは出来ない」

ふたりは声を出す。
満樹と京子に聞こえるように、

「・・・おい、聞け!」
「・・・我々は、お前らのような奴らを探している」
「・・・よく考えろ!」
「・・・俺たちの仲間になる方が、徳だと!」

雨が降る。

ふたりの姿は、ない。

満樹は、枝を掴みなおす。
首を傾げる。
「お前らのようなやつって、いったい何だ?」
そう云って
「降りるぞ」
満樹は、枝を蹴る。

地面に降りる。

「わっ!」

腰が抜けていたのか、京子は地面に転ぶ。

「大丈夫か?」
「ええ、少し動揺しただけ」
「いや。訳も分からず追われたから、動揺するだろう」
「はは、」

京子は、息を吐く。

狩りでは冷静に、と、云われている。
どんな状況でも、落ち着いていなければ。

が、

立ち上がろうとした京子は、さらに驚く。

満樹が差し出した、手のひらに。



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