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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」32

2017年12月01日 | 物語「約束の夜」

「お客さん!」

その声に、京子はハッとする。
体を起こし、辺りを見る。

南一族の宿の部屋。

窓を見る。
日は高い。

「寝坊っ!!」

「お客さん! 起きてるの!?」
「はいぃいいっ!!」
「そろそろ掃除したいんだけど!」
「すぐに支度しますっ!」

京子は手早く身支度を済ませ、荷物をまとめる。

満樹の部屋へと行く。
が、もう、空室。

「満樹!?」

宿の受付・・・には、誰もいない。

「お会計ってどうなっているの??」

朝に弱い京子は、混乱する。

一方。

満樹は

南一族の村の中心部に来ていた。

「東の兄ちゃん!」
「豆料理食べてってよ!」

屋台では、ことごとく呼び止められ豆料理を進められる。

「それより、南一族で消えた人のことなんだけど・・・」
「ええ?」
「行方不明になった人がいるって」
「そんなことより、豆料理を食べなって!!」

南一族、「そんなことより」なのか・・・。

仕方なく、満樹は豆料理を受け取ろうと、手を差し出す。

「鶏肉と煮込んであるからね! おいしいよ!」
「いや、待って。俺は肉は食べない」
「いいから、食べてみなって」
「よくはない」

にこにこと、南一族の屋台主が云う。

「最近は物騒だからねー。」

その言葉、昨日も聞いたと、満樹は思う。

「その消えた子って云うのは、東の兄ちゃんと同じ年くらいかな」
「へえ」
「南一族なのに魔法を使うのが苦手でね」
「・・・・・・」
「それは、この手のひらに秘密があるって云われたからだ!とか」
「・・・・・・?」
「わけのわからないことを云っていたねぇ」
「手のひらに秘密?」
「そうなんだよ」

屋台主が云う。

「誰かにそう云われたらしい」
「・・・・・・」
「それで、秘密を求めて魔法の修行の旅に!!」
「旅に!?」
「行ったのかもしれない!!」
「どこまでが本当!?」

・・・疲れる、南一族。

満樹は、息を吐く。

手のひらの秘密は判らないけれど、
魔法を使うのが苦手、なのであれば
魔法を使う一族の中には居辛かったのかもしれない。

自分と同じように。

満樹はふと、自身の手のひらを見る。



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